>>111

 (男の右頬には 大きな傷跡がある。 固唾を呑んで 身をこわばらせる恵子)
 (男は しゃがんで、割れた陶器製のフクロウ人形を 地面から拾い上げる)

影山 「俺も 粉々に 砕けてしまった……」

 (大切そうに 両掌に乗せたフクロウの欠片を、虚ろな目で 影山が見詰める)

恵子 「(胡乱な者を見る眼) 何 言ってんの? 人間、そんなに簡単に壊れたりしないわ」

 (堅気とは思えない不審な相手にも、 恵子は 勝気な態度を崩さずに言い放つ)

影山 「……… (無反応)」

恵子 「私も そんなお守りに頼らないで、また明日から 頑張ろうっと (微笑)」

 (御利益の無かった御守を捨て、清々した表情で 背を向けると、恵子が立ち去っていく)