X



新人職人がSSを書いてみる 33ページ目 [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001新人スレ住人 ◆tOSpv3Q.fqF6
垢版 |
2016/04/03(日) 21:39:32.46ID:vT7Fwf4M0
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。

分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。

現在当板の常駐荒らし「モリーゾ」の粘着被害に遭っております。
テンプレ無視や偽スレ立て、自演による自賛行為、職人さんのなりすまし、投下作を恣意的に改ざん、
外部作のコピペ、無関係なレスなど、更なる迷惑行為が続いております。

よって職人氏には荒らしのなりすまし回避のため、コテ及びトリップをつけることをお勧めします。
(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。

前スレ
新人職人がSSを書いてみる 32ページ目
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1433946144/

まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
http://arte.wikiwiki.jp/

新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2)
0306三流(ry
垢版 |
2017/07/01(土) 00:39:07.23ID:czl7hMFV0
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第六話 裏ジャブロー


−ウゥゥゥゥゥーーーッ!ウゥゥゥゥゥーーーッ!−
−全戦闘員戦闘配置、各部署の隊長、艦長、および指揮官はブリーフィングルームへ至急集合のこと−

ルナツーに鳴り響く警報、全員が慌ただしく動く。特にメカニックは至急の出動に各兵装の準備に追われる。
エディは小隊長として会議室に行き、ジャックはメカニックの手伝いで自分のジムの最終チェックをする。
初出撃を迎える彼らのジム、しかし不安は無かった。
オハイオ小隊スペシャルのジム、見た目は普通のジムではあるが、その中身はCPUルーチンを徹底して組み直した
彼らだけの専用プログラム、幾多のテストを経てその動作性能を向上させ続けたジム。
そのシールドには、かつての雪辱を晴らすべくシャークペイントが施されていた。
願わくば、この戦闘であの青いやつと戦って勝ちたい、俺たちの顎であの高速のカジキをかみ砕いてやる!

やがてブリーフィングが終了し、各隊の長が部署に走る。ジャックの元にもエディが走ってくる。
「準備は!?」
「オールグリーンです、即行けますよ!」
「よし!」
それだけを話してサラミスに搭載されているジムのコックピットに乗り込む、詳しい話は乗ってからでも出来る。

「ジオンがジャブローを総攻撃?」
「ああ、ほんの少し前に掴んだ確かな情報だそうだ。本日15:00、ジオンの総攻撃があるってな。」
「それで、なんでこっち(宇宙)で出撃なんすか?しかもこんな突貫で総員出撃とか・・・」
確かに、今から出撃して地球降下しても戦闘には間に合わないだろう、そもそも全軍出撃しても
地上降下ができる舞台はほんの一握りのはずだが・・・
「ジオンにしてみりゃこれは天王山の一戦だ、地上に踏みとどまれるかどうかのな。これを阻止したら
奴等はもう地球から撤退せざるをえない。」
ひと呼吸おいてエディが続ける
「奴等にしたらまだ、負けても宇宙に撤退すればいい、って考えてるだろう。そんな奴等に、宇宙での連邦の
攻勢が始まった、つったらジオン兵はどう思う?」
「ケツに火が付きますね、ジャブロー攻撃どころじゃなくなるかも・・・」
「ご名答、つまりこれから地上にいるジオンに『嫌がらせ』の攻撃をするってことだ。」
理にかなっている、敵の後方を扼すのは戦術の基本だ、ということは・・・
「標的はジオンの小惑星基地、各隊がいくつかの敵基地を突いて敵を混乱させるのが目的だ、深入りするなよ。」
やはり、この戦闘はポーズでいいんだ。どうりで突貫の出撃になるわけだ。
0307三流(ry
垢版 |
2017/07/01(土) 00:40:01.00ID:czl7hMFV0
「第6艦隊、サラミス級シルバー・シンプソン、出撃する!」
艦長の号令一下、二人を乗せたサラミスが発艦する。第6艦隊は彼らを含むマゼラン級1、サラミス級3、
ジム小隊6、ボール小隊4の中規模編成、目指すはソロモンの手前にあるジオンの小惑星基地、
敵要塞ソロモンの近場のため、長引けば援軍にこられて袋だたきに合う、かといって早期撤退すれば
地上のジオンへの牽制にならない、引き際の判断が作戦の成否を決める。


「ハロウィンのパーティでも始めるつもり、なのか?」
ひときわ不機嫌な表情で毒を吐くモニク・キャデラック特務大尉。後ろにいる士官、オリバー・マイ技術中尉は
言われると思った、という表情で首を振り、手持ちのタブレットを操作、詳細を表示する。
「MA-04X、モビルアーマー、ザクレロ。強力なスラスターと大出力の拡散レーザーを備えた機動型兵器です。」
ジオンの小惑星基地マドック、そこに603技術試験隊は停泊していた。試作兵器であるこのザクレロのテストの為に。
しかしそもそもこのザクレロという機体はすでに評価試験を終了している、不採用機体として。
同時期に開発されたモビルアーマー、ビグロとの正式化競争に破れ、テスト機のこれが残るのみだ、
ただ戦局逼迫のため、不採用であっても使える機体は使う、それは603が今まで何度も経験済みのことだった。

それだけにキャデラックはなおさら腹が立つ、603は兵器の乳母捨て山か、リサイクルセンターとでも思われているのか。
同時に試作兵器を受領した604技術試験隊は地球降下用の兵器を受領したらしい、それが何かは知らないが
少なくともこんな面白機体ではあるまい。
彼女のセリフ「ハロウィン」は言い得て妙だった。その機体の前面は、そのまんまハロウィンに登場する
カボチャのお化け「ジャックオーランタン」の顔にそっくりだった。
外見が戦争における心理を動かすこともあるとはいえ、あまりにチープなデザイン、これを見て
連邦軍兵士は笑うことはあっても戦意喪失して逃げ出すことはあるまい。
0308三流(ry
垢版 |
2017/07/01(土) 00:40:54.38ID:czl7hMFV0
「トリック・オア・トリートってか?そりゃいいや。」
当のパイロット、デミトリー曹長は全く気にしていないようだ、若く、ハンサムではないが気骨ありそうな面構えの青年。
彼自身、ずっとこの機体のテストパイロットを続けてきて、この機体がビグロに及ばないことは痛感している
しかし彼は気にせず、淡々とこのザクレロと付き合ってきた。それは彼が生粋の軍人であるように思わせたが
実際に深いところでは別の理由があった。
士官学校からずっと世話になった先輩士官、トクワンがそのビグロのテストパイロットを担当していたからだ。
ジャックにサメジマがいるように、デミトリーにはトクワンがいる、尊敬し、手本にするべき先輩が。
だからザクレロがビグロに敗れたのは不満ではあったが、仕方ないとも感じていたし、何よりここに至っては
ザクレロも実戦配備されるのだからそれも論外だ、自分の部署で、自分の兵器で、ベストを尽くすのみ。

マドックの基地内の電源が全て赤に切り替わる、そしてけたたましく鳴り響くサイレン!
「敵襲!敵襲ーーーーっ!」
反射的に動き出す全要員、全ての艦艇が、モビルスーツが、発進に向けて動き出す、
モビルアーマー・ザクレロもその例外ではなかった。

「各艦は敵基地に向け一斉射撃後、モビルスーツを展開して反時計回りに後退、待機宙域にて援護射撃!
モビルスーツは一気に敵基地に肉薄せよ!」
連邦軍艦隊が一列になって突進、敵基地の前で弧を描きつつ砲撃、ジムやボールを展開し離脱していく。
完全に先手を取れたようだ、うまくいけば陥落までもっていける。
「こちらジョージ大隊長、敵の反応が遅い、一気に仕留めるぞ!」
ジム・ボールの全体指揮を執るジョージ中佐の激が飛ぶ、このまま敵モビルスーツが発進する前にたたければ理想だ。
基地に設置された主砲が反撃の雨を降らす、基地に詰めていた艦艇がゆっくりと動き出す、間に合うか・・・?

残念ながら一歩遅かった、直前でザク、そしてより重厚な体を持った紫色のモビルスーツが基地から次々と発進
玄関先でジム・ボールとの乱戦に突入する。
「ドムってやつか!」
「気をつけろ、火器や装甲はザク以上だ!」
「上等っすよ!」
エディとジャックのジムも乱戦に身を投じる、まずは動きを止めないこと、乱戦の鉄則。
無理に小隊編成の隊列を保つことは、相手にとっても狙いを定めやすくなる。バラバラに動く時は
いっそ徹底的にバラバラに動くべきだ、これもサメジマが残した戦法の一つ。
「エディさん、グッド・ラック!」
「生きて帰れよ、ジャック!」
0309三流(ry
垢版 |
2017/07/01(土) 00:41:38.85ID:czl7hMFV0
声をかけると同時に2匹の鮫は逆方向に機動、エディはドムの小隊に突進、ジャックは基地とは逆方向から包囲
しようとするザク3機に向かって突撃、ビームサーベルを抜くと、すれ違いざまに一機のザクをなぎ払った。
連邦の部隊を包囲しようとしたザク3機には油断があった、また視界を広く持つ必要があったため、
自分たちに向かって単機で突進する相手にあまり気が向かない、誰かが倒すだろうという油断が仇となった。
すれ違ったジャックはサーベルを仕舞い、ビームガンを抜く。機動を止めずに弧を描いて残りのザク2機に迫る、
「くそったれえぇぇ!」
マシンガンとバズーカで反撃するザク、しかし二人とも遠距離兵器のため照準合わせに気がいって動けてない
足を止めることの愚かさを失念しているのだ。
ジャックはここでザクの頭部に向け起動する、兄貴によく聞かされていたザクの死角、それは上方向。
特に上方斜め後ろを取れば、ザクは方向転換に2アクションを必要とする、振り向いてる間に仕留める!

ジャックのジムが放ったスプレーガンは見事、1機のザクに命中。しかしもう1機は思い切った機動でビームを回避
そのまま弧を描いてジャックのジムに向かい、銃弾を浴びせる、ジムも懸命に起動してかわし、撃ち返す。
ザクのマシンガンはジムの大きな盾に阻まれる、シャークペイントが施されたその盾にすっぽり身を隠されてしまえば
ザクマシンガンではルナチタニウムの盾に穴をうがつのは困難だ、それがザクに腹を決めさせた。
弧を描く機動を止め、真っ直ぐジムに突進するザク、マシンガンを捨て、ヒートホークを抜く。
ジムは未だビームガンを持っている、サーベルを抜く前に接近して一撃を加えんと突撃!

しかし彼が相手にしているのは普通のジムではない、戦場での可能性を徹底的に検証し、新たな動作ルーチンを
書き加えたオハイオ小隊スペシャル・ジムなのだ。
ビームガンを持っていないと遠距離では戦えない、持っているとビームサーベルは使えない、ではガンを
持ってるときに敵に接近されたら?答えは明白。ビームサーベルだけが武器じゃない、左手には超硬度の鈍器。
突進してくるザクに真っ直ぐ盾を突き刺すジム、ルナチタニウムの板先を顔面に受けたザクは
そのまま頭部を胸まで埋め込まれ動きを止める、すかさずスプレーガンを至近距離から打ち込む!
0310三流(ry
垢版 |
2017/07/01(土) 00:44:30.13ID:czl7hMFV0
「ぶはぁあっ!」
爆発するザクから離れ、大きく息をはき出すジャック。初の戦闘の緊張感から一瞬解放され、忘れてた息をつく。
いける、このジムなら俺でもジオンと互角の勝負が出来る、兄貴が残したスピリットで俺たちが育てたこのジムなら!
余勢を駆って次の標的を探す、彼がまず捕らえたのは基地から離脱しつつある大型輸送船、戦艦で無いなら
狙う勝ちは無い、と思った瞬間彼の目に入ったのは、その艦のハッチ付近に浮いているモビルス−ツ。
「青い・・・ヅダかっ!」
全身が熱くなる、何故輸送船にいたのかは分からない、はっきりしているのはアレが連邦軍にとって
脅威だと言うこと、そしてサメジマの兄貴を間接的とはいえ倒した機体であること。
−そん時は敵を褒めるんだよ、あのサメジマを倒すとはたいした敵だ、ってな−
兄貴の言葉が頭をよぎる、やってやる!アンタを褒めて、そして倒す!ヅダに向けて起動するジャックのジム。

その時だった、ヅダに引っ張り出されるようにして、黄色い機体が格納庫から引き出されてきたのは、
その異形の「顔」にジャックの背筋が凍り付く。
「なんだ・・・ありゃあ。」

第六話でした。そう、今回の主役機はジムです(今更
603の面々もようやく登場、今後の活躍にこうご期待・・・活躍できるのかなぁw
0312通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/01(土) 20:37:17.46ID:Eug48m790
乙です
大きな口をもつ化物同士の戦いとなるといよいよハロウィンじみてますな
裏方の意地同士のぶつかり合いも見れていいと思います
0313三流(ry
垢版 |
2017/07/02(日) 23:15:20.70ID:c4SS+G9s0
感想があると速筆になりますね、調子にぼるともいいますがw
続き投下します。

MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第七話 鮫と怪物

「ありえないんじゃないっすかねぇ、こんな発艦って!」
試験支援艦ヨーツンヘイムのハッチ前、ヅダの操縦席でワシヤ中尉はひとりごちる。
彼は今、ハッチから巨大なモビルアーマーを引っ張り出す作業にかかっている。
「ぐちぐち言うな、戦闘中だぞ、急げ!」
後方からモビルアーマーを押し出しているヅダのコックピットから、キャデラック特務大尉の激が飛ぶ。
「へへっ!すいませんねぇ大尉、中尉。上官のお二方に手間かけさせちまって。」
特徴的な前歯を見せながら、ザクレロのコックピットでデミトリー曹長は苦笑いを浮かべる。

モビルアーマー・ザクレロ。タテ、ヨコ、高さ共に大型のそれは艦艇の中に収まるのには向いていない
だが、この手の機動兵器は、戦場の移動には燃料消費の観点から、どうしても艦に頼る必要があった。
牽引という手もあったが、試作兵器でありメンテやデータ収集が必要な都合上、無理矢理ヨーツンヘイムの
艦内に押し込められていたのが、急な戦闘では災いしてしまった。
モビルスーツなら架台の上に立ち、スラスターを受熱板に当てて反動で飛び出すのも可能だが
このザクレロを支える架台は無いし、スラスターの位置が低いので受熱板も当てられない、
結局、至急の発艦なら何らかの方法で引きずり出すしか無かった。

「そう思うなら戦果で示せ!」
キャデラックの注文に、デミトリーは目を光らせて答える。
「もちろんでさぁ、ここはまさに俺が、そしてコイツが望んだ戦場だ。」
艦から引きずり出されるザクレロ、その複眼のような切れ目が妖しく光り、スラスターが青い光を灯す。
そのコックピットのモニターには戦場の隅、連邦軍の艦隊が陣取る方向を捕らえている。
「ザクレロ発進!目標、敵機動艦隊!!」
そのスラスターが火を吹き上げ、巨大なモビルアーマーは急速発進する。初の、そして理想の戦場に。

「ま、待てっ!」
ジャックは反射的にその黄色い巨体を追跡に入った。何故ヅダを差し置いてそいつを追ったのかは分からない
ただ、アレが見た目以上に危険な機体であること、そんな予感が彼を動かしていた。
しかし、ジムの速力ではとうてい敵わなかった、黄色い化け物にみるみる置いて行かれるジム。
その進む先を見て、ジャックの嫌な予感は確信に変わった、あいつは・・・ヤバい!
「拡散ビーム砲クーベルメ、発射準備!」
膨大なGに耐えながらスイッチ操作するデミトリー、4隻の連邦軍艦隊との距離がみるみる詰まっていく。
「みんな、逃げろーっ!!」
通信に向かって叫ぶジャック、もう止められない、惨劇が目の前にあった。
0314三流(ry
垢版 |
2017/07/02(日) 23:16:11.67ID:c4SS+G9s0
「敵、単機で急速に接近してきます!」
サラミス級シルバー・シンプソンの艦橋に報告が飛ぶ、その言葉の意味を租借する前にコトは起こった。
「発射あーっ!」
ザクレロの口から前面に拡散ビームの花が咲く、それを照射したままザクレロは連邦軍艦隊のど真ん中を通り過ぎた。
5本のビーム杖は連邦軍艦隊の中を踊り、通過する。あっという間に離れていくモビルアーマー。
後に残ったのは、爆発するマゼラン級戦艦の艦橋、そして推進部、砲撃部・・・致命傷であった。
一瞬の閃光と共に、艦隊の中心で爆発する旗艦マゼラン、多くの兵士は何が起こったのか理解出来ないまま逝った。
それを最も理解したのは、ザクレロを追ってきたジムのパイロット、ジャックだったのかも知れない。
「全速で突っ切って・・・すれ違いざまに広範囲ビームで薙いでいきやがった、通り魔かアイツは!」

「うまく行ったぜ、減速、反転!」
ニヤリと笑うデミトリー、このザクレロの初の戦果がマゼラン一隻、上等だがまだまだ!
最高速と広範囲攻撃に特化したこのザクレロにとって、小回りがきくモビルスーツ戦は不向きだ。
しかし艦隊に対する突撃突破式のヒット・アンド・アウェイならこの機体は最適だ。
高速で機動中は照準もままならないが、戦艦なら的が大きいから照射しながら通過すれば運次第で命中する可能性大だ、
しかも今、連邦軍モビルスーツはこちらの基地に詰め寄ってきている。後方に控える艦隊がダメージを受けたとなれば
奴等も悠長に基地攻略に当たっているわけにもいかない、帰る船が無くなればいくら基地を陥落しても
ソロモンからの援軍に叩きつぶされるのみだ。事実、効果は絶大だった。

「マゼランが撃沈!?マジかよ」
「艦の防衛はどうなっていたんだ!」
「サラミスは無事なのか?」
「好機だ、連邦の犬どもを押し返せ!」
「603の試作兵器か?さすがオデッサの英雄!」
敵味方に飛びかう通信、戦場は攻勢が連邦からジオンに移りつつあった。

「いけぇっ!」
再度艦隊に突っ込むザクレロ、艦隊も応戦するが、戦艦に対して小さく、高速で起動するその的に命中弾は出ない
再び5本のビームが艦隊内を踊り、通過する。その姿を艦隊の真上で捉えるジャック。
通過したとき、1機のサラミスが爆発する、それは・・・ジャックの乗艦であるシルバー・シンプソン!
「野郎おおおおっ!」
すでに遙か向こうで光点になった黄色い悪魔を睨む、同じ艦の仲間が一瞬で消えた、またひとつ帰る場所を失った。
喪失感と怒りに満たされながら、しかしジャックは心の芯でひとつの言葉を思い出していた。
−相手を褒めるんだよ−
分かってる兄貴、やつだって単機で艦隊のど真ん中に特攻してるんだ、ひとつ間違えば認識もできない死だ。
勇敢さがあって初めて出来る戦法、なら俺は・・・
0315三流(ry
垢版 |
2017/07/02(日) 23:17:04.26ID:c4SS+G9s0
「敵機、再接近!うわあぁぁっ!」
残りのサラミスの艦内に悲鳴がこだまする、悪魔のようなモビルアーマーが三度、この艦に突っ込んでくる
すれ違いざまに放たれたビームは、今回は虚空を薙いだだけだった。もともと照準も付けずに撃っている、
残艦が少なくなれば命中率が下がるのも仕方ない、そんなことは折り込み済みだ。
機体を減速させて次の攻撃をアタマに描いた瞬間、デミトリーは妙なモノを見た、
自分の前を、同じ方向に飛んでいく機体、603の観測ポッドか?いや違う、こいつは・・・
相対的にまだそいつより速かったザクレロが「ソレ」を追い抜く、それは・・・
「連邦軍のモビルスーツ!なんでこんな所にっ!」
「いらっしゃい、待ってたぜ悪魔!」
相対速度がほぼ同じである以上、両者は併走状態になる、この間合いはモビルスーツの間合いだ!

「くたばりやがれっ!」
ザクレロの真上からビーム・スプレーガンを乱射するジム、全弾直撃し反射の火花が咲く、やったか!?
「何っ!?」
ザクレロの頭部は黒くすすけてはいたが、穴は開いていなかった。
「対ビームコーティングかっ!」
「マシンガンなら良かったんだがな、惜しかったなモビルスーツ!」
ジムに向き直り、右手のヒートナタを振りかざすザクレロ。
「くっ!」
盾でそれを受けるジム。通常の受け方では無く、下面から縦方向に受け止める、先のザクにも決めた打ち込み方、
エディとジャックがジムの操縦方法を研究する課程で、ルナチタニウムの盾の使い方は大きな研究材料だった。
これのみがガンダムと同じ強度を持つなら、その使い方次第で防御力も接近戦での戦力も非常に重要だ。
普通の盾の受け方をして早々に使用不能にならないようにする動きがオハイオ・ジムには組まれていたのだ。

しかしヒート・ナタも並みの武器では無い、刃の先端が盾に食い込んだ状態からナタを加熱し、ジムの盾を
溶かしながら斬り進んでいく。
ここでジャックは思い切った行動に出る。盾ごと左腕を回転させ、テコの原理でヒート・ナタを巻き込み、ひん曲げる。
薄刃な上に熱を通しているその刃は、横方向の力を受け折れ曲がり、熱を失う。内部で断線したのだろう。
宇宙の低温で急激に冷やされる両金属、特にルナチタニウムは加熱から冷却による固着が速い。
そのままヒート・ナタを取り込み、盾と鎌は溶接されたようにくっついてしまった。
刃がちょうど盾のシャークペイントの顎の根元で止まっているその姿は、まるで鮫がザクレロの腕に
食らいついているようだった。

「もらった!」
もう逃がさない、ビームサーベルを抜き、ザクレロに突き刺そうと振りかぶるジム。しかし次の瞬間大きく揺さぶられ、
木の葉のように振り回される。ザクレロがジムを振りほどくべく急激に方向転換したためだ。それでも両者は離れない。
「くそっ!ひっついてんじゃねぇ!!」
デミトリーも必死だ。ザクレロの機動力を持ってすればモビルスーツに取り付かれる心配などない。
しかしこういう形で食らいつかれてはやばい、あのサーベルで突き刺されたらコーティングも持たないだろう。
死にものぐるいで振りほどきにかかるザクレロ、必死に姿勢を直し、サーベルを刺そうともがくジム。
黄色い化け物とそれに食らいついた鮫、2匹はそのまま戦場を不格好なダンスで横断していく。
0316三流(ry
垢版 |
2017/07/02(日) 23:17:41.86ID:c4SS+G9s0
「曹長!」
ヨーツンヘイム付近からワシヤ中尉のジムが飛ぶ。
「あの、バカ!」
基地周辺からエディのジムが機動する。

幾度かのダンスの後、振り回されながらもついにサーベルを刺さんと姿勢を取るジム、しかしそれはザクレロの
真っ正面での体制だった。ザクレロも口内ビームをジムに向ける、外しっこない距離、どっちが速い!?
ジムのサーベルだ!しかしそれは命中直前で突っ込んできたヅダのシールドが受け止める、返す刀で発射される
ザクレローのビーム、直撃かと思われたが、別方向から高速機動してきた別のジムによって的をかっさらわれる
溶接された部分がちぎれ飛び、ジャックのジムを抱えて飛び去るエディのジム。
「ぐは、っ・・・エ、エディさん?」
「もう十分だ、撤退するぞ!」
「・・・え?」
分からない、もう少しであの悪魔を仕留められた。逃がせばまた脅威になる。しかも艦を半分失い形勢不利な
この状況で撤退は・・・
「あれを見ろ!」
ジオンの基地に目をやる、そこには小さな爆発の光芒が連鎖的に起こっていた。

「な・・・マドックが、沈む!?」
呆然と見やるデミトリーに、ワシヤが説明する。
「多分、内部に侵入されていたんだ、戦闘開始してすぐだろう、内側からやられたら手の打ちようが無い、
ここは引くぞ!」
「ぐっ・・・」
歯がみしながらもザクレロをヨーツンヘイムに向けるデミトリー。見ると基地に詰めていたムサイやパプアも数隻
離脱を開始している、残存するモビルスーツもそれに向かう、基地が無くなればそこを死守する意味は無い。
連邦軍もまた残った2艦のサラミスに撤収しつつあった。もともとポーズだけの小競り合いの予定だっただけに
基地を沈めたらそれ以上は望まないし、旗艦マゼランを沈められた以上、長期戦も出来ない、いい潮時だろう。

サラミスに取り付いて帰還の途に入る連邦軍、全員が戦死者に敬礼を送りつつ宙域を後にする。
ジャックはふと、自分のジムの盾に刺さったままの敵の刃を見やる。
同胞はこいつに殺された、憎むべき敵の刃。・・・いや、違うな。敬すべき勇者の牙の痕。
それを盾からもぎとり、その空間にそっと投げ落とす、その刃を見送って敬礼をし直す。

数時間後、ジャブロー攻防戦が連邦軍の勝利に終わった一報が入る、
ジャックもエディも、これから苛烈になる戦争の予感を感じていた。


第七話でした。ザクレロは前作でも出しましたが本当に好きな機体です。
しかし唯一の華がトゲだらけのバラというべきキャデラックさんとは、色気の無いSSだ。
そのへんは艦これの人に任せるか(失礼w
0317三流(ry
垢版 |
2017/07/02(日) 23:23:25.01ID:c4SS+G9s0
あ、致命的な誤字・・・
>>316
×ワシヤ中尉のジム
○ワシヤ中尉のヅダ

・・・何やってんの俺orz
0318三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:41:30.39ID:vRohA6le0
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第八話 ソロモンの時間、前編

「大隊長就任、おめでとうございます。」
ジャックがグラスを掲げそう言うと、周囲の30人ほどから拍手が起こる。まぁグラスの中身は全員ただの水ではあるが。
「ありがとう、みんな。隊長としての責任を痛感するよ。」
薄く笑いながらエディ・スコット大尉がグラスを上げ、言う。
ソロモン決戦の直前、部隊編成に際しエディは前回の戦闘の功績が認められ、ジム・ボール大部隊の
指揮官に抜擢されることとなった、その記念顔合わせパーティ。
「まぁ特進、抜擢も当然ですよ、ドム5機にザク3機撃破ですからね。今やルナツーのエースだし。」
「しかしお前は曹長のままか、貧乏くじだったな。」
エディ大隊、その末席にはジャックも加わることになる。しかしエディは功績と抜擢の都合上
一気に大尉まで抜擢されたのに比べ、ジャックは元々雇われ軍属であり、正式な軍教育を受けていないことから
階級、立場共に変化無しだった。
「別にいいですよ、出世したくて軍に入ったわけじゃなし。」
かつては復讐のため、しかし今は自分の居場所と、無き兄貴の意思を継ぐため、自分はここにいる。
「そういや聞いたか?お前がやり合ったあのモビルアーマー・・・」
「ええ、先日の戦闘であっけなく倒されたそうですね、あの「ガンダム」に。」

ジオン軍モビルアーマー、ザクレロ。先日の基地攻防戦において、ジャックと死闘を演じた悪魔。
その最後はあっけなかったものらしい、連邦軍のフラッグ・モビルスーツともいえるRX-78/2・ガンダムとの
遭遇戦で最後を迎えたそうだ、ものの30分もかからない戦闘で。
憎き敵ではあるが、敬意を払うべき強敵でもあった。それがいともあっさりと散ったことにジャックは
切なさを感じずにはいられない、そんなにも差があるのか、ジムとあの「ガンダム」には・・・
「そういやあのガンダムを乗せた戦艦も合流するらしいな、ホワイトベース、だったっけ?」
「ああ、指令も話してたよ。少年兵がほとんどのの部隊らしいが、各地で大活躍したらしいぞ。」
グラスの水をあおり、ひと呼吸置いてみんなを見回して言う。
「さぁ、俺たちも負けてられないぞ!そろそろ任務に戻ろう!」
「はいっ!」
全員が一斉に敬礼、散開する。ここは旗艦マゼランの中、本来は彼らも任務中だが、艦の指揮を執る
ワッケイン指令の計らいで設けた小休止の席、いつまでも浮かれてはいられない。
0319三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:42:09.70ID:vRohA6le0
ルナツーおよび地球から出動した大艦隊、その中心に彼らはいた。いよいよ敵要塞ソロモン攻略「チェンバロ作戦」、
この決戦に際し、ルナツーをほぼカラにして出てきた。理由は一つ、ソロモンの陥落後、そこを前進基地にするため。
捕らぬ狸の何とかという者もいるが、連邦軍には確固たる勝算があった。
ソロモンの防壁は強固を極めている、中でも脅威なのが「ネズミ取り」と言われる自動選別攻撃装置。
無人のビーム砲台なのだが、基地表面や通路の各所に無数に配置されていて、しかも見えないように
カモフラージュされている。
識別信号を発していない機械が近づくと無条件で攻撃、撃滅されてしまう。戦闘がモビルスーツ戦に特化しつつあり
要塞攻略がモビルスーツによるアタックに準じるならば、このシステムは攻める側にとってまさに脅威だ、
基地に取り付いたジムは、敵モビルスーツと戦いながら、いつ別方向から狙撃されるか分からない恐怖にさらされる。
逆に敵はその場所を熟知している、誘い込んで十字砲火を浴びせるなど戦術はいくらでもある。

ジオンに潜入しているスパイから得たこの防壁を突破する方法、それに連邦軍はチェス盤を
ひっくり返すような方法を採用した。
−新兵器ソーラーシステム−
無数の集積ミラーを使い、ソロモンの外壁をネズミ取りごと焼き尽くし、そこから内部に突入しようというのだ。
敵がネズミ取りをあてにしているなら、敵部隊はソロモン表面からそうは出てこないだろう、それを逆手に取り
この新兵器で一気になぎ払ってソロモンを陥落させる腹だ。

「俺たち第三艦隊は時間稼ぎが目的だ、ただ手を抜いて敵さんにバレたら最悪、ソーラーシステムの展開前に
鏡を全部割られるってこともある、引っ越しの荷物を全部ルナツーに持って帰るハメになるぞ。」
エディ大隊のジム・ボールにエディの通信が飛ぶ、最終ミーティングは出撃前のコックピットでするのが恒例だ。
だが、エディの軽口にも笑う余裕のある者は少ない、各機体のモニターには、不気味な十字の要塞が映し出されている
猛将ドズル・ザビの守護する軍事要塞、さらに決戦ともなればジオンの名のあるエース達も出てくるだろう。
赤い彗星シャア、白狼マツナガ、深紅の稲妻ジョニー・ライデン、アナベル・ガトー・・・
現場の兵士にとって、この戦闘が上層部の思い描くような楽観的な戦闘では決してないのである
0320三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:44:19.10ID:vRohA6le0
宇宙世紀0079:12月24日、ソロモン会戦が開始される。
連邦の先行部隊によりビーム攪乱幕を展開、要塞設置の主砲が無力化されたことにより、ジオンは艦隊を発進、
水際の戦力を分散させることに成功する。
第三艦隊のモビルスーツ部隊はいくつかに別れ要塞を襲撃、別働隊の第二艦隊がソーラシステムを展開するまで
時間を稼ぐのが任務だ。
「各人、時計合わせ。3・2・1・・・スタート!」
全員がシステムの、そして手持ちの時計のアラームを合わせる。今からきっかり一時間後、
ソーラーシステムが照射される。
それまで敵を要塞に釘付けし、時間直前に離脱する、時計を見ながらの戦いに緊張が走る。
その時に逃げ遅れると味方の武器で焼かれる羽目になる、かといって時間が来たからといって撤退する敵を
ジオンが放っておくはずも無い、敵との押し引きの間合いが鍵となる。

「エディ大隊、全機発進!」
大隊長の号令と共に、マゼラン1隻、サラミス5隻の艦隊からモビルスーツ・ジムとモビルポッド・ボールが
次々と発進、合計30機が隊列を組み、敵要塞の右上部分にむけて突進する。
他の艦からも次々にモビルスーツ等が発進している、遠目には特徴的な形状のペガサス級戦艦ホワイトベースの
姿も見える。彼らは別働隊、例のガンダムの活躍は見えないか、とジャックは思う。
「まぁいい、俺は俺の戦いをするまでだ!」
エディ大隊の先頭を切ってシャークシールドのジムが進む、その目標点の要塞部から、次々に光点が発進していく。
来た、敵モビルスーツ部隊、かなりの数、相手も大隊クラスか。
「フォーメーションα!攻撃開始!!」
ジャック含む前列の6機のジムが一斉にバズーカを放つ、クモの子を散らすように散開する敵モビルスーツ。
先行のジムはそこで分散、自分たちの隊列の中央に穴を開けると、二陣に控えていたボール6機が一斉に砲撃を開始する。
密集した状態での連続砲撃が次々とソロモン表面に着弾、そこでボールはブレーキをかけ停止、固定砲台としての
位置を確保する。
先行していたジムに続き、第三陣のジム・ボール部隊18機が突撃。ジムはマシンガン、ボールは近接戦闘型、
相手の懐に飛び込んで飽和攻撃そ仕掛ける算段だ。
0321三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:45:09.31ID:vRohA6le0
だがジオンもしたたかだ、ボールの砲撃に動揺せず、散開したザク・リックドム部隊が小隊ごとに連携、
手近なモビルスーツを包囲して叩きにかかる。連邦の機動&飽和攻撃vsジオンの連携攻撃、戦闘の空間に
ひとつ、またひとつ、爆発の光芒が咲く。
ジャックはすでに要塞表面近くまで来ていた。ビーム攪乱幕が充満しているため、スプレーガンや
ビームサーベルは使えない。残弾の尽きたバズーカを捨て、モビルスーツ用のマシンガンを装着
敵モビルスーツに銃撃を浴びせる。だが敵も動きを止めず、直撃を盾で巧みに防ぐ、こいつら・・・強い!
先日の攻防戦とは明らかに敵の練度が違っていた。操縦するのが困難なジオン製モビルスーツを
まるで手足のように使い、小隊規模で囲んで倒しにくる。
ドムがバズーカを放ち、ザクがマシンガンの死角からヒートホークをかざして接近、彼らはここで
目標の破壊を確信しただろう、しかしそれはジャックが仕掛けた罠!
突っ込んでくるザクに盾を打ち込む、モノアイスリットを丸ごと破壊するジムの盾。次の瞬間には
ザクはマシンガンの銃撃を浴び、爆発する。その刹那、機動したジムを別のドムのヒートサーベルがかすめる。
油断も隙も無い、一瞬の油断も即、死につながる。考える暇すら惜しんで起動し、戦闘のワルツを踊るジム。
後詰めの部隊の援護砲撃によりなんとかドム2機の追撃を振り切るジャック、そこで振り返り、戦場を見る。

明らかに押されている、砲台の役目を担うボール部隊は敵に接近されると危険度が増す、それを逆手に取り
ボールを狙うと見せて、フォローに入るジムを囲んで倒す。遠距離射撃を防ぐべく閃光弾で有視照準を狂わせ
ボール部隊に切り込むドム。やはり要所で機動力に劣るボールがアキレス腱となり、的確にそこを突いてくる。
「要塞表面に集結しろ!」
エディ大隊長の檄が飛ぶ、広範囲空間の戦闘は敵に一日の長がある、だが要塞周辺に迫られれば敵も
戦闘のみでなく防衛も意識せざるをえない、時計を確認、あと25分!持つか・・・?
足の遅いボールを先行させ、敵の攻勢を食い止めるジム達、その動きにさすがに敵も焦りを見せる。
一斉にソロモン表面に殺到する敵味方モビルスーツ。
0322三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:45:53.21ID:vRohA6le0
要塞表面で味方を待つジャック。しかしその時、彼は背中に冷たい気配を感じ、振り返る。
要塞のハッチから、一機のモビルスーツが姿を現す。銀色に輝く、見たことの無い機体、新型か!
嫌な予感を感じ、即そのモビルスーツに特攻するジム、マシンガンを放つが、レモンのような形の盾に蹴散らされる。
次の瞬間、猛烈な勢いで機動する銀のモビルスーツ。あっという間にジャックとの距離を潰し、体当たりを食らう。
「ぐわあっ!」
ぶちかましを受け、吹き飛ばされるジャック機、次の瞬間にはそのモビルスーツが抜いた両刃のビーム長刀が
ジムを胴薙ぎにしていた。
「ぬ、ビーム攪乱幕か、なるほど・・・」
銀色のモビルスーツ、ゲルググのコックピットで男が呟く。薙いだはずのジムの胴はまだつながっていた。
新型の機体、その性能に気がいって戦場の状況を把握しきれていなかった、攪乱幕がビーム長刀の
威力を弱めていたのだ。
しかし彼の目的はジム1機の破壊ではない、戦場が膠着しつつあるのを見て、彼は指揮から戦闘に仕事を変えた。
大隊長である自分が自ら敵をなぎ倒し、味方を鼓舞し、敵の戦意を潰すために。
ジャックのジムを無視し、連邦軍部隊のまっただ中に突き進むゲルググ、マシンガンを猛射し、
ボールを、ジムを討ち取る。

「カスペン大隊長!」
「俺たちがやります、無理をせずに指揮を!」
ジオン部隊に合流したモビルスーツが声をかける、カスペンがそれに返す。
「私に気を遣ってる暇など無いはずだ、攻勢をかける機会を見逃すな!」
突如現れた強力な新型モビルスーツ、その存在に連邦部隊は明らかに動揺していた。もしあの銀色の機体が
次々と要塞から出てきたら・・・
「させるかあっ!」
銀色の機体が脅威と感じ取り、すかさず突撃するエディ大隊長のジム。こいつが戦場にいるだけで味方は萎縮する
しかし今こいつを倒せば状況は変えられる、敵のモビルスーツとのわずかなやり取りから、この機体の主が
この大隊の指揮官であることをエディは読み取っていたのだ。
マシンガンを撃ち、敵に突進するジム、ゲルググも受けて立つとばかりに機動、盾を前面に構えマシンガンを蹴散らし
ヒートホークを打ち込む、盾で受け止めるエディのジム。、しかし出力の差がありすぎる、そのまま押し込まれる。
その接触を合図に周囲でも激しい軌道戦となる、しかし士気の差は歴然。一機、また一機と落とされていくジムとボール、
もともと撤退する予定だっただけに、不利になると逃げたい衝動がどうしても沸く。それは練達の部隊相手の戦闘で
致命傷になる隙だった。
0323通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/06(木) 23:53:49.08ID:YdysfcqhO
@@@@
0324三流(ry
垢版 |
2017/07/06(木) 23:54:06.42ID:vRohA6le0
ゲルググに押し込まれ、どんどん要塞から遠ざかるジム、目の前で自分の部下が次々に戦死していく。
「くっそおぉっ!」
食い込んだヒートホークごと盾を捨て、ゲルググをいなして戦場へ向かう、それは大隊長としての責任感、
しかし機動力で勝る敵に背中を向けることは自殺行為に等しかった。
追撃するゲルググはあっという間にジムに追いつき、とどめの一撃を加えんとす。
その時、カスペンは目の前のジムの陰から、勢いよく特攻してくるジムを発見した。
「野郎おぉぉぉっ!!」
ジャックがゲルググに吠える、エディを救うため、コイツにさっきの借りを返すため、戦場のど真ん中を突っ切ってきた。
ゲルググに体当たりを食らわすジャック・ジム。間に盾を挟み、サメの顔のペイントをゲルググのモノアイにたたきつける。
「すまん、ジャック!頼むぞっ!」
ゲルググをジャックに任せ、主戦場へと飛ぶエディ機。時計を確認、ソーラーシステム照射まであと3分!
間に合うか・・・?


第八話でした。
戦闘シーンは正直文章にするのが難しいです、頭の中で描いた戦闘を文章にしても
読んでる人がその光景を思い浮かべられるかというと・・・正直自信が無いです。
感想待ってます。
0325彰悟 ◆/kMkUoNu4nM8
垢版 |
2017/07/07(金) 20:23:15.14ID:QQcobQdK0
マリナがガンダムファイターだったら...という仮定のストーリーを今日書いた分だけですが投下します。
至らないところもあるかと思いますがよろしくお願いします。

簡単に言うと00にGガン的な要素を加えた感じです。また、マリナの設定が原作と違っている箇所もあります。
実を言いますと、ちょびっとだけHなシーンと、決してグロではないですが肉体的な痛みに関するシーンがありますので、もし行き過ぎと言うご意見がありましたら改善しますので教えて下さい。
0326彰悟 ◆WGq.sh.Da.
垢版 |
2017/07/07(金) 20:25:25.69ID:QQcobQdK0
皇女の戦い 第一話

西暦2307年......太古より続く戦争に終止符を打つ為人類は代理戦争を開始した。
兵器ではなく、MF(モビルファイター)による格闘...「ガンダムファイト」。
勝利した国は四年間地球における覇権を握ることができる。
ユニオン、AEU、人類革新連盟...これら強大な組織を構成している国々もこぞって参加している。
...そしてそれは中東の国家アザディスタンも例外ではなかった...


ここはアザディスタンの王宮にあるシャワールーム。
白い大理石でできたそこはある女性を中心に仄かな花の香りが漂う。
シャンプーでその細い肢体を洗うのは当国の皇女マリナ・イスマイール。
艶と深みを持った長い黒髪はシャンプーの香りを纏わせながらお湯に濡れ静かに揺れている。
清廉かつ雅な顔立ちは穏やかな時に浸りながらもどこか物憂げだ。
無理もない。彼女は皇女でありながらこの国を代表するガンダムファイターとなり、公務と同時にその訓練にも身をやつしているのだから...
0327彰悟 ◆/kMkUoNu4nM8
垢版 |
2017/07/07(金) 20:26:52.66ID:QQcobQdK0
「もうじき決勝...」訓練のみならずサバイバルイレブンという時期に挑戦してくる複数の国のファイター達を何とか倒し経験を積み、自信を持ち始めたとは言え不安が残る
やはり強豪達の戦力を全て把握することは当国の情報網をもってしても難しい。
音楽の道を自ら諦めてでも国を守りたくて正式に皇女となったマリナ。一見闘いなどとは無縁そうな彼女はいくら戦争ではないとはいえ身を以てしてでも国の為に尽くす為周囲の反対を強く押し切りガンダムファイターとなった。
まだファイトの制度が影も形もなかった時、命がけで戦っている軍人達や難民達のいる場所に直接慰問に行こうとしても大臣達から止められた。その歯痒さがあっての決心だった。
確かに国内での争いは終わったが、今度こそ、豊かな資源と高度な医療を手に入れて国を豊かにしたいと願っている。
(もっと強くならなければ......誰も守れない...)
小振りな胸に細い手をぎゅっと押し当てる。

彼女の身体は普段王宮にいる時や外交時の服からは少し想像できないかもしれないが、生来の華奢で綺麗な体型はそのままに訓練の成果もありほんのりとだが引き締まっている。
ファイターとしての最低限の動きをする為のトレーニングと、非力さを補う為の合気道と弓の訓練。
鉄球や斧と言った重い装備を扱う機体はやはり彼女には荷が重い。
ファイターの動きが機体に反映されるモビルトレースシステムにはそういう側面もあるが国を立て直す以上耐えなければならない。
非力な彼女には軽量の武器と相手の力を活かす合気道が必要不可欠だった。
0328彰悟 ◆/kMkUoNu4nM8
垢版 |
2017/07/07(金) 20:28:25.44ID:QQcobQdK0
「マリナ、また物思いに耽っているの?」
低く怜悧な馴染みのある声に振り替える皇女。
「シーリン?待って今上がるわ。」
今まで自分が考えていたことを悟られたかのような気がして気恥ずかしくなり、慌てて身体を拭くと就寝用の服に着替えて廊下に出ればそこには声の主が立っていた。
「あまり考えすぎると戦いに影響するわ。今のあなたは普通の皇女ではないのだから...」
そこに長年の関係故の優しさを感じて微笑を浮かべるマリナ。
「ありがとう。でも大丈夫よ。貴女やみんなの力があったからここまで来れたし...最初の時の私ではないわ...」
「だと良いのだけれど...」一瞬穏やかな笑みを浮かべたがどこか思案の色が残るシーリン。
彼女は知っていた、マリナには生まれ持っての甘さが多少残っていることを。
「お休みなさい、私達のガンダムファイター...」
ゆったりと、だが凛とした足取りで寝室に戻るマリナを淡々とした声で見送った。
0329通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/07(金) 20:29:48.34ID:QQcobQdK0
今日書いた分はここまでです。
また時間のある時になるべくコンスタントに書けたら良いなと思います。

それでは。
0330彰悟 ◆uY9yPxz22U
垢版 |
2017/07/07(金) 20:33:22.47ID:QQcobQdK0
すいません、トリップミスなので変えました。
失礼しました。
おやすみなさい。
0331通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/09(日) 19:50:47.04ID:S/4jpYTJ0
お二方乙です。

三流(ry氏さん
個人的にですけれど、視点移動が目まぐるしくてちょっと混乱してしまうことがあります。
けれど、それが文章のスピード感に繋がっているとも思うので、上手い落としどころを見つけられればなと。
僭越ですが。

彰悟氏さん
まさかのマリナ様ファイター化に戸惑いが隠せませんでしたw
オービタルリングがプロレスリングになるんですかね
続きを待ってます。


ところで、自分の環境ではスレ容量が466KBになってます。
これはこのスレの頭の方で議論されていた通り、ワッチョイ導入で次スレを立てたほうが良いですか?
いかんせんこのスレを覗き始めたのは最近なので勝手がよく分かっていません。
誰かレスポンスお願いします。
0333通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/09(日) 23:49:37.03ID:6aZ7LO6W0
こっちは432kb
ちょうど次のssが来たら十分な感じになるってかんじ
次投下する人が立てればいいんじゃないかね
ワッチョイいる?
0334通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/10(月) 00:16:12.23ID:fsuPpCt90
ワッチョイは自分は特に要らないかなあ
読者の立場だけど、荒らしは内容ですぐ分るし、投下してくれる職人さんがワッチョイで基地外に他スレまで粘着されても申し訳ない
0335通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/10(月) 03:28:08.49ID:9X3TggiZ0
今のところ荒らしも現れてないし、要らないんじゃね
次で前みたいにあらしが酷くなったら再度検討ってことで
0336ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 18:29:56.60ID:fA1jv6E30
――艦これSEED 響応の星海――


「敵影発見! 攪乱酷くて数補足できないけど・・・・・・13時方向、距離15に敵の増援だよ!!」
「10時方向から魚雷接近、数9!」
「ト級砲撃! 直撃コース来るぞ!」

三日月陰る深夜3時。
曇天で光源に乏しい大海原。一寸先だってまともに視認できない暗闇で、佐世保の命運を賭けた防衛戦が開始されて早6時間、榛名率いる第二艦隊は敵侵攻部隊の第4波襲来を感知した。
現在、単縦陣にて同航戦。左舷は敵雷巡隊に、右舷は敵軽巡隊にと阻まれている格好にあり、このまま前進すれば敵増援に頭を抑えられる状況下にあった。早い話が、包囲寸前の絶体絶命である。
しかし、榛名の顔にはまだ余裕があった。

「取舵30、第一戦速で回避。木曾と瑞鳳はそのまま右舷ハ級群に火力を集中。響さん!」
「了解。響、突撃する」

状況だけを見れば確かに劣勢。だが、この程度ならまだまだ余裕で切り抜けられると確信していた。
敵第3波の生き残りも残り僅か、第4波到着前のこの攻防で片付けられるだろう。

「Урааааа!!!!」

響が吠え、単身最大戦速で左舷側、雷撃戦を仕掛けてきた深海棲艦の群れに突っ込んだ。
苦し紛れに魚雷を撃ってきた化物3体がターゲット。前衛に軽巡ホ級が2、後衛に雷巡チ級が1、そのどれもが手負いだ。
左腕に装備した12.7cm連装砲B型改二でホ級に牽制しながら、扇状に放たれた魚雷の隙間を勘と経験頼りにスルリと滑り抜けた響は、あっという間に中央のチ級に肉薄する。

「ギ、ギッ!?」
「無駄だね」

白い仮面で覆われた頭部と、右腕に装備した盾のようなパーツが特徴的な深海棲艦は甲高い呻き声を発し、後退して更に魚雷をバラまこうとした。
しかし、もう遅い。
艤装に備えられた超重量の錨(いかり)を投擲し、チ級を弾き飛ばし絶命させた響はそのまま速度を落とさず、
一息で防御態勢に入っていたホ級の間を抜ける。同時に反転、両脇に備えた61cm四連装酸素魚雷発射管から一発ずつ、無防備な背中めがけて魚雷を射出した。
直後、爆発。

「ガ、ア゛ァァァァッーー――・・・・・・・・・・・・」
0337ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 18:32:06.02ID:fA1jv6E30
まともに喰らえば戦艦だってただでは済まない一撃に、深海棲艦達は赤々とした爆炎に包まれる。更に、その光を頼りに標準を定めた榛名の35.6cm連装砲が火を噴き、左舷敵雷巡隊は完全に沈黙した。
その間わずか十秒。
速さだけが取り柄の駆逐艦の身でありながら、熟練の早業で格上の巡洋艦クラス3隻を手玉にとった響は、涼しい顔で錨を回収しながら木曾達に合流する。右舷ト級群はとっくに全滅していた。
どうやら全員が無傷のまま、第3波の撃退に成功したようだった。

「おつかれさま―。大丈夫? 怪我ない?」
「大丈夫だよ。全然」
「瑞鳳、敵増援はどうなっている?」
「あ、ええと・・・・・・うん視えた。こっちに向かってるのは・・・・・・戦艦ル級3、重巡リ級4、軽巡ヘ級6、駆逐ロ級6、駆逐ニ級10――かな、多いなぁ。方位0-3-5に向けて20ノットで進行中」
「松島方面か・・・・・・使えるな。榛名」
「十字砲火でいきましょう。榛名達はこのまま敵陣右翼後方につきます。木曾は信号弾を」
「応」

状況はそう悪いものではなかった。
長崎半島周辺を守備する第二艦隊は、開戦当初こそ敵侵攻部隊のあまりの数に泡食ったものの、後方火力支援隊の尽力もあって、迅速かつ安全に殲滅することができたのだ。
その後も第2波、第3波と大部隊が押し寄せてきたものの、長年のチームメイトでもある彼女達は今まで迎撃戦を主体にしてきたという経験もあって、苦もなく戦い続けることができていた。防衛ライン構築にあたり構成員
をシャッフルされた第一艦隊と第三艦隊と異なり、人数こそ減ってしまったものの「いつものメンバー」のまま据え置きで運用されることになったのも大きい。
阿吽の呼吸によるコンビネーション攻撃は、彼女らの一番の武器だ。

「しかし大盤振る舞いだね今夜は。なにか良いことあったのかな」

速力と防御力を活かした近接格闘戦を得意とする、特三型駆逐艦二番艦の響。

「借金取りにでも追われてるんじゃないか。なんにせよ、オレに勝負を挑む馬鹿は三枚おろしだ」

長距離雷撃戦と対空戦を本領とする参謀役の、球磨型重雷装巡洋艦五番艦の木曾。

「そうだ。今のうちにお弁当食べる? 私も大盤振る舞いして特製卵焼き、たくさん持ってきたんだから」

艦載機を使役して艦隊の「目」となる攻防の要、祥鳳型軽空母二番艦の瑞鳳。

「あら、いいですね。榛名はこの前のダシ巻きが気に入ったのですけど、ありますか?」

そして圧倒的な砲撃能力と継戦能力を備える、リーダーの金剛型戦艦三番艦の榛名。
佐世保の遊撃担当であった面々は、この現状では最も安定した戦力となっていた。
0338ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 18:41:41.52ID:fA1jv6E30
すいません。
本文中にNGワードがあるみたいなので、調べる為に投下を中断します
0339ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:10:48.05ID:fA1jv6E30
当然だ。この状況で不安にならない方がおかしい。明るく気丈に振る舞っていても、なにより瑞鳳は航空母艦で
ある身、艦載機を発艦できない闇夜では自衛すらままならない艦なのだ。辛うじて水上夜間偵察機は飛ばせるので「なにもできない」というわけではないが、その不安も一入だろう。
加えて、第二艦隊はここまでは思った以上に順調にきているのだ。その事実は他の艦隊を気にする余裕と、逆に「こんなに順調でいいのか」という焦燥感を醸しており、それを感じているのはなにも瑞鳳だけではない。
夜の海は気分を滅入らせるものだ。・・・・・・舞鶴には夜になるとテンションが上がる艦娘がいるらしいが。

「大丈夫ですよ」

榛名はしいて明るく前向きに応えた。

「まだ【Titan】が現れたという報告は来てないわ。大丈夫です。金剛お姉様達も、山城さん達も絶対に」

五島列島周辺を守備する第一艦隊――金剛、翔鶴、多摩、雷、電――からも、佐世保湾正面を守備する第三艦隊――山城、鳥海、暁、白露――からも、まだ誰かがやられたという報告も、強敵が現れたという報告もない。
軽傷者は何人か出ているが、皆健在の筈だ。
西に機動性に優れた第一を、東に同じく高機動な第二を前衛として展開し、北に火力に優れた第三を後衛として鎮座させるこの鶴翼の陣は、まだ崩れていない。これを維持できている限り自分達は大丈夫。
それに、と榛名は言う。今までは手ひどくやられっぱなしだったが、今回はしっかりバックアップを整えた陸を背にした防衛戦。いつもの孤立無援な沖とは違うのだと。
残りもたかが17時間。遠くインド洋で戦った時のことを思えば、これくらい。

「仮に現れたとしても、勝手は榛名が赦しません! 【Elite】だろうと【Flagship】だろうと【Titan】だろうと、要は先に叩けばいいんです。そして榛名達ならそれが可能です」
「流石は榛名。そうこなくっちゃな」
「現れないに越したことないけどね」

みんなが内心の恐怖とも戦っていることは重々承知。それが少し溢れたからって的外れな叱責なんてするわけないし、ここは率先して気持ちを共有して元気づける場面だ。
――たとえ空元気であろうと、Titan相手なら苦戦は免れないことを知っていても、皆を励ましてこそのリーダーである。
世話焼きたがりのお姉さん気質であるからこそリーダーに選ばれた榛名は、持ち前の明るさを発揮して叫ぶ。


「そしてなにより! 金剛お姉様は!! 無敵です!!!!」


「・・・・・・えぇー」
「そこで個人、なのかい・・・・・・」

盛大に滑った。
0340ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:12:13.96ID:fA1jv6E30
「え、ダメですか?」
「駄目だろ。お前達姉妹じゃなきゃ通じないだろ、そのまじないは」
「そうですか・・・・・・」
「そうだよ。・・・・・あぁしょげるなしょげるな頼むから」

金剛四姉妹はこれだから、と木曾は思わず頭を抱える。
基本的にみんな優秀でイイヤツなのだが、長女である英国生まれの帰国子女・金剛に心酔――もとい絶対の信頼を寄せていて、それはいいのだが「他者もきっとそうだろう」とナチュラルに思っちゃうところが玉に瑕。
金剛自身は紛れもなく人格者で凄いヤツなのは認めるが、台無しだよと叫びたい気分の木曾だった。

「――ふふ、ありがとみんな。元気でちゃった」

ただまぁ、それでも一定以上の効果はあったようで、瑞鳳の口元には若干の笑みが戻っていた。
響も木曾もつられて、苦笑じみた微笑みを浮かべる。
どうやらリーダー渾身の自爆によって、少女達の不安も道連れにシリアスな空気は轟沈したようだった。「不本意です。あそこはバッチリ決めたかったです」とは後の榛名の談。

「士気を落とすようなことを言って、ごめんなさい。もう大丈夫よ」
「そ、そう・・・・・・。それならよかったです。・・・・・・さて――」

響によしよしと頭を撫でられていた榛名も立ち直り、いつもの和気藹々とした雰囲気が復活した。
もう怖い物はなにもない気分だった。

「――所定の位置についたわ。面舵60、微速前進。総員砲雷撃戦用意。」

そうしてタイミング良く、第二艦隊は次の戦場に到着する。
おしゃべりの時間は終わり。
榛名の号令に従い、速やかに戦闘モードに切り替えた面々は深海棲艦の連中に鉛玉をブチ込むべく、主砲の照準を合わせていく。その瞳にはギラリと戦意が煌めく。
気分は上々。不安や恐怖に囚われることなく戦いに赴ける心持ちは、戦士にとっては一番に大事にしたいものだ。精神状態が生死に直結していることを身に持って理解している少女達は、先のやりとりに密かに感謝した。

「戦車隊発砲まで、残り10秒。同時に突っ込むぞ」
「了解」

目の前に広がる暗黒の海。
このわずか2マイル先に計29隻もの深海棲艦が、自分達に背を向け北進している筈だが、ここからでは視認できない。後ろに回り込むべく隠密行動で航行していたのだから、当然偵察機や探照灯は使用できず、
事前に計測した結果が正しいことを信じる他ない。
向こうも此方には気づいていないことと、進路と速度に変わりがないことを祈りつつ、戦闘開始の合図を待つ。
艦娘も深海棲艦も、暗視能力までは持ち合わせていない。これは賭けだった。
そして――
0341ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:14:10.92ID:fA1jv6E30
水平線の向こう、8マイル離れた東の地から、遠雷のように重い砲撃音が轟いた。


一拍置いて、2マイル先の海が文字通り火の海となる。
何十何百と打ち出された徹甲弾と焼夷弾が、木曾の信号弾によって指定されたポイントに雨霰と降り注ぐ。続けて照明弾。暗闇に閉ざされた海上に、辺り一帯を照らす小型の太陽が生まれた。

「ビンゴ!!」
「報告!」
「戦艦ル級――1隻小破。重巡リ級――1隻中破、3隻小破。軽巡ヘ級――全滅、駆逐ロ級――2隻撃沈。駆逐ニ級――全滅!!」

沿岸部にずらりと整列した対深海棲艦用の最新国産主力戦車、その主砲である40口径145mm滑腔砲から吐き出された弾丸の数々が、敵戦力を次々と削り取っていく様が浮かび上がる。
戦果も上々。先んじて偵察機を飛ばした瑞鳳からの報告に、賭けには勝ったと榛名は膝を打つ。

「全艦斉射後、分隊。一気に制圧します!」
「測敵良し!」
「照準良し!」
「――てぇーッ!!!!」

畳みかけるように、榛名達もそれぞれの主砲と魚雷を打ち込んだ。
東の八朗岳麓に待機していた戦車隊と、南の榛名達との十字砲火。奇襲を受けた深海棲艦は状況を正確に認識することもできないまま、あっという間にその頭数を半数以下にさせられる。残り、12隻。
ここまで減らせれば充分、むしろ予想以上の戦果だと、木曾は再び信号弾を撃つ。
撃ち方止め。
その要請に従って焼夷弾を最後に戦車砲は途切れ、木曾と響は更に魚雷を射出しながら接近する。この一連の連携こそが、佐世保の防衛がここまで上手くいっている要因であった。
国土防衛の要である戦車隊の後方火力支援によるバックアップ。
入院中の二階堂提督が、持てるコネクションと権力をフル活用して九州北西部に揃えた決戦用の布陣。いつもの孤立無援な沖での戦いとは異なり、陸を背にした防衛戦だからこそ採択できたもの。
これにより戦局を有利に進められるからこそ、佐世保守備軍は戦力の差をものともせず敵を撃退できるのだ。
誘い込んで一網打尽。古来より防衛側のほうが有利なものだ。
因みに、最新鋭の40口径145mm滑腔砲といっても深海棲艦を撃滅できる程の威力はない。
量産できる陸上戦車の主砲としては破格の威力だが、所詮は艦艇でいうところの軽巡の主砲に毛が生えたようなもので、敵の主力である重巡級、空母級、戦艦級を墜とすには少々心許ない。
その分多種多様な弾頭を速射することが可能で、これにより人類の主力である艦娘を援護することこそがコンセプトである。

「響、お前は右から回り込め。追い込むぞ!」
「Всё ништяк!!」
0342ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:17:03.30ID:fA1jv6E30
そうして打ち込まれた焼夷弾と照明弾によって轟々と照らされた目標に向かって、木曾と響は左右に散開。敵の混乱に乗じて挟撃し、釘付けにする算段だ。
しかし敵もさるもの、接近に気づいた個体が素早く戦闘態勢を整え、おぞましい奇声を上げながら反撃してきた。

「おおっと!」
「当たらないね」

山なりの軌道で降りかかってくる敵砲弾を、タイミングを計って小刻みに機動することで器用に回避。とにかく狙いを絞らせないように動きまわり、時には急制動・急加速して着弾位置をずらしていく。
二人は敵を中心に円を描くようにして対角線上から砲撃。
響は右肩の10cm連装高角砲を、木曾は左肩の25mm三連装機銃を速射しながら、徐々に距離を詰めていく。更には遠方の榛名が二門の41cm連装砲で追撃し、一隻一隻確実に撃破していった。
これで敵残存戦力は、戦艦ル級2、重巡リ級2、駆逐ロ級1、駆逐ニ級4。いずれも小破以上の損傷を負っている。
機動戦に持ち込まれて長引いては厄介だ。一気呵成に、一歩も動かさないまま決める。
だが物事はそう狙ったようにはいかない。

「――ッ!」
「!! おい!?」

ここでル級が動く。
両手に一つずつ携えた、巨大な甲羅のようなシールドから四門ずつ突き出された砲口が火を噴き、後衛の榛名と瑞鳳の至近距離に水柱が立ちのぼる。ちょこまかした響達前衛を無視して、鬱陶しい後衛から潰すつもりか。
他の深海棲艦達もそれに習い、火砲を榛名達に集中させる。
そうはさせじと、響が加速。
鋭角なターンで接近し、焼夷弾の影響で未だ燃え上がる海も、木曾の制止の声すらも無視して突撃。こっちを見ろとばかりに乱射する。
響が得意とする、超至近距離での機動戦で囮となり注意を引きつけるつもりだ。仕方なく、木曾もそれに乗じた。
二人で急接近と急離脱を繰り返し、後衛に対する砲撃を中断させる。
ここまでは少女の計算通りだ。
だが、そう、物事はそう狙ったようにはいかない。

「響!!??」
「・・・・・・この!!」

全ての砲がたった一人、響のみに集中する。
耳鳴りがする程に重なった砲撃音。幾十もの砲弾が、幼い少女を粉々にせんと降り注ぐ。対する響は艤装への負担を度外視して一気にトップスピードへ。防盾を構えながら45ノットで疾走しつつ弾幕を張り、魚雷で敵集団
をばらけさせようとする。はずみで幾つかの敵を撃墜しながらも、粘り強く砲撃圏内から逃れようとした。
しかし、ル級の砲弾が一つ、響の足下に着弾する。
最高の火力と最高の装甲、人類で言うところの戦艦の特徴に見事に合致するル級の一撃は、深海棲艦の中でもトップクラスの破壊力を秘めている。直撃こそ避けられたものの、あまりの衝撃により響の小さく軽い身体は、
大きな水柱を伴って空高く吹き飛ばされた。ふわりと、上空30mの高度で滞空する。
0343ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:20:02.04ID:fA1jv6E30
ル級が、無造作に無防備の響を狙う。当たれば駆逐艦の響はひとたまりもない。

「チィ!」

響は咄嗟に、錨を前方下側に投擲、左腕と右肩の砲を後方上側に向けて撃った。
直後にル級の砲撃。

「ぐぅうううう!!!!」

呻きながら、響は必死に錨と艤装を繋げる鎖を握る。
掌の皮をまるごと持って行かれそうになりながらも鎖をピンと張り詰めさせた、空中で踏ん張りのきかない少女の身体は、錨の重量と運動エネルギーに引っ張られてガクンと降下。
同時に放った砲の反動と、木曾の牽制射撃も手伝って、ル級の砲弾は響の黒帽子を道連れに虚空へと消えていった。
続けて、錨を再度投擲。

「――Урааааааа!!!!!!」
「!? 無茶だ、退け!! ・・・・・・クソッ!」

九死に一生を得た少女は、榛名と木曾の猛攻を受ける敵群に再度突撃する。
衝撃で軋む骨格を無視して投擲した錨はリ級に絡みつき、響は渾身の力で鎖をリリースして落下速度そのまま、『着地』がてらドロップキックをかました。
甲高い悲鳴と水しぶき。更に12.7cm連装砲と10cm連装高角砲を接射、此方に背を向けていたロ級もろとも蜂の巣にし、少女はようやく着水する。
残存、戦艦ル級2隻のみ。
しかしそこまで。
着水し、身を屈めたままの響の頭部にゴリッと、ル級の砲口が押しつけられる。
回避も防御も絶対不可能。誰が見ても「これは死んだな」と確信する状況。直後の未来を予測して、響は俯いた。
いや、正確には全体重を両手の指先に集めるようわずかに重心をずらした。
その様はまるで、クラウチングスタートでもするかのような。

「――おォッ、ラァ!!」
「・・・・・・ギィ!?」

スパリと湿った音を立てて、ル級の腕が切り落とされた。
振り抜かれた刀身が、炎を映してキラリと瞬く。それは、木曾の軍刀。背後から稲妻のように接近した、彼女の最後の切り札であった。青とも黒ともつかない液体をまき散らし、巨大な盾が海に没する。
洋風のサーベルで隻腕にされたル級は思わず後退、もう一方の盾を掲げて追撃の横一閃を防御する。

「・・・・・・?」

しかし、手応えがあまりにも軽い。更なる斬撃も来ず、一瞬、不自然なまでの静寂が海を支配した。
0345ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:22:12.48ID:fA1jv6E30
何か来るとル級達が身構えた、その時。
榛名の41cm連装砲と35.6cm連装砲が、背後からその胴体を真っ二つにした。
敵第4波、全滅。
榛名の砲撃を予期して一目散に離脱した響と木曾は、揃って安堵の溜息をつく。ギリギリではあったが、辛くも綱渡りは成功したのだ。
今回も全員無事である。

「Спасибо。助かったよ」
「こんの、馬鹿野郎が!! たまたま間に合ったから良かったものを!!」

安心するにはまだ早かった。
余韻もなにもなく、お折檻の時間が始まる。

「信じていたからさ。おかげでさっさと終わらせることができた」
「そういう問題じゃねぇ。いくら突撃癖があるっつってもな、それがいくら有効的だろうとな、此方は心臓が止まるかって思いなんだぞ、毎回」

響の反論をピシャリとシャットアウトして、木曾は正しく怒る。
今回ばかりは、怒鳴らざるをえなかった。
そう。別に響が囮になって危険な橋を渡らなくたって、この戦闘は無事に勝利することはできたのだ。
榛名も瑞鳳も、あんな砲撃に当たるほどノロマではなく、当初の予定通りに付かず離れずの砲撃戦をしていればそのまま終わらせられた戦いだった。
それを仲間が攻撃されたからってムキになって自らを危険に晒すなど、言語道断。確かに予定よりも早く戦い終わったが、それより安全な戦法を採択するほうが何百何千倍と重要だ。最近はなりを潜めていた後先考えない
無茶無謀な突撃戦法を目の当たりにして、それをなんとも思っていなさげな少女の態度を目の当たりにして、木曾はなんとも言えない気分になる。
木曾はこの目前の、しゅんとしていつもより小さく見える駆逐艦のコイツは、なんで突撃癖があるのだろうと思う。通常の砲雷撃戦でも並の駆逐艦よりずっと強いのに、どうも接近戦に拘っている節があるように感じるのだ。
それはいい。冷静であり、かつ軽巡級程度が相手ならまったく危なげなく処理できることは知っている。
だが、特に仲間が危機に陥ると暴走しがちだ。それはまるで特攻のようで、戦い方が乱暴になる。それでいて敵は確実に仕留めて、なにがなんでも生還するのだから、生きたいのか死にたいのかも判らない。
時たま「突撃隊長様」と揶揄することはあるが、なにも特攻しろとは言ってない。今後も絶対言わない。
実際、響が空に投げ出された時は心臓が凍るような思いだったのだ。もうあんなのはゴメンだと木曾は頭を振る。

「とにかく。あんま心配させてくれるな。突撃も結構だが、誰かに頼まれた時だけにしろ。もっと仲間を信じろ」
「っあぅ・・・・・・、ごめん」

木曾はデコピンして、この話はここまでだと少し焦げたマントを翻し水上を滑る。もっと何か言いたげなようだったが、榛名と瑞鳳と合流しなければならない。遠くで二人が手を振っているのが見えた。
響はあんまり痛くないおでこを抑えながら、その後に続く。

(・・・・・・そういえば、なんで私は接近戦に拘るんだろう)
0346ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:28:42.13ID:fA1jv6E30
そして密かに自問する。
自分で自分のことが解らないのはいつものことだが、木曾からのお叱りを受けてふと、響は自分の根源に疑問を持った。
接近戦には自信がある。
艦娘の戦法は独自の艤装と素質により決定づけられるもので、艤装は人それぞれの特徴があり形も装備もバラエ
ティ豊かだ。その点、特三型駆逐艦は艤装に防盾と錨が標準搭載されていて、持ち前の身軽さとスピードも相まって接近戦向けと言える。
自分には素養と適正がある。
姉妹の暁・雷・電も同様で、今は呉鎮守府にいる師匠からは格闘戦の手ほどきも受けたこともある。
だが師匠は、接近戦は護身用、最後の手段だと言っていた気がする。姉妹も師匠も、サーベルを持つ木曾だって、積極的に仕掛けることはしないのだ。
思い返せば、自分だけなのだ。日常的に積極的に接近戦を仕掛ける艦娘は。

(あいでんてぃてぃーってヤツなのかな、これは)

それは困った性質だなと、響は他人事のように分析した。
『本当の理由』を知っていながら、それを知らん振りをして。
確かに今回は無茶無謀だった。それは認めよう。自分自身、もうあんなのはゴメンだ。でも身体が勝手に動いてしまうのだ。これを制御するのはなかなか骨だなと思う。
もっともこの突撃癖はもう周知のもので、提督も榛名もそれを前提とした戦術を組むことは多々ある。敵が少数で駆逐級、軽巡級であれば殲滅してこいと送り出されるのが主だ。
そういえば戦艦級相手に立ち回ったのは久しぶりだっなと、今になって身震いがした。
本当にアレは、死ぬ一歩手前だ。それが二回連続で。
とりあえず当面は、木曾の言うとおり控えようと思った響だった。

「――なんですって!?」
「わっ! なに、どうしたんだい」

考え込んでいるうちに合流していたのだろう、気づけば目前にいた榛名が、珍しく大きな声で瑞鳳に食い掛かっていた。
全員無事に敵第4波を撃退したというのに、榛名は誰の目でみても明らかに焦っていた。信じられないという一心で、沈鬱な面持ちの瑞鳳の肩を掴む。
まさか、もう第5波が来たのか。だが、それにしては様子がおかしかった。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔の木曾と響は、なにごとだと戸惑うばかりだ。

「・・・・・・うん、間違いない。このスピード――どうしよう榛名。このままじゃ・・・・・・」
「なんだ。なにがあった」
「それは――」
0347ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:31:15.93ID:fA1jv6E30
瞬間。


一条の閃光が、煌々とまっすぐに。榛名達の頭上の空気を灼いた。


遅れて、ヴァシュウッ! と、特徴的な擦過音が耳を打つ。
それは、聞き慣れた実体弾とは異なる音。それは、最近になって聞くようになった音。
それが意味するものは。

「・・・・・・【Titan】」
「おいでなすったか・・・・・・!」

深海棲艦にはランクがある。
通常のものよりも強い個体を【Elite】、群を統括する個体を【Flagship】と呼称する。
更に上位種に【姫】や【鬼】が存在するが、長らくこの【Elite】と【Flagship】の二種が、全ての海域に複数生息する、あまりにも強い敵として提督達を悩ませたものだ。
そして。
例の隕石が落ちてから出没するようになった、佐世保がここまで追い込まれることになった一番の原因。
10mまで膨れ上がった巨体で、荷電粒子砲や高誘導高速ミサイルを自在に操る、新たなる強敵。未知の機械を取り込んで異常進化を遂げたコイツこそが、二階堂提督が暫定的に【Titan】と名付けた新種の深海棲艦だった。
コイツの為にいったいどれほどの犠牲があったか、考えるだけで腸が煮えくりかえるようだった。

「6時方向、距離10。・・・・・・すごいスピードでこっちに来てるよ」
「弾が足りないよ」
「速度も射程もヤツのほうが上だ。コンテナに戻る前に追いつかれる」
「でも、ここで待ち受けることもできないわ。第五戦速で後退します。木曾は信号弾を」

今のままでは到底勝ち目がない。
弾薬がない砲塔はただの鉄屑だ。
続けざまの戦闘、予想よりもずっと速い敵の襲撃、このまま戦艦よりも硬い巨人などできるはずもない。
そう即座に判断した榛名は東に舵をとる。目指すは8マイル離れた八朗岳麓だ。

「囮もなにも使わず皆でただ逃げる。そうだな」
「ええ。逆襲はその後です」

先ほど火力支援をしてくれた隊を頼るほかなかった。途中で追いつかれるだろうが、そこからは戦車隊の善戦に期待するしかない。まずは補給しなければ。

「行きます!」

榛名達にとっては二日ぶりの、三度目となる【Titan】との戦いは、撤退戦から始まった。
0348ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:33:22.65ID:fA1jv6E30
「くそ。なんて射程だよ」
「10mあるんだもん、私達よりずっと遠くまで視れるはずよ。・・・・・・羨ましいなぁ」
「ただでさえお前は小柄だもんな」
「ほ、ほっといてよぅ」

小柄な軽空母こと瑞鳳の最大速度である33ノットに準じた第五戦速(30ノット=約55km/h)で蛇行して、荷電粒子ビームを避けつつ愚痴を言い合う。
艦艇に準じた能力を持つ艦娘や深海棲艦といえども、通常の艦艇に明確に劣っているものがある。それは全高の低さに起因する、索敵能力の低さだ。
艦娘も深海棲艦も大体人間サイズ、つまり視認できる水平線は3マイル未満だし、電探も4〜5マイル程度に制限される。必然的に交戦距離は3マイル前後となり、これにもう慣れきっていたのだが、10mの巨人が相手とな
ると話は違ってくる。Titanなら目視で6マイルは見通せるだろう。
文字通りスケールが違う。索敵とは、高いところになければ性能を発揮できないものなのだ。
こちらからは見えないが、敵はもう自分達を完全に射程内に収めている。
夜目が利かない筈なのに、驚くべき精度だ。
今が夜でなければと、瑞鳳は歯がみした。
アウトレンジ攻撃は空母の華にして専売特許。それを踏みにじられた気分だった。

「追っかけてくるのは、あの一体だけみたい。やっぱり【Titan】は単独行動なんだわ」
「ならば打つ手はありますね。複数体ならどうしたものかと思ったのですが・・・・・・火力の限りフルボッコです。お姉様直伝のフルバースト、今こそお披露目です!」
「・・・・・・時々金剛さんが提督に怒られてたのって、まさかそういう?」

だが、今は自分のできることをできる限りやらなければ。
恐怖に押しつぶされそうな心を雑談で誤魔化しながら、瑞鳳は索敵と警戒に専念する。さっき泣き言を漏らしてしまったからこそ、全力で突破口を見出そうとよくよく目を凝らす。
偵察機のキャノピーを通じて飛び込んでくる視界には、鎧のような装甲やパイプ、謎のシリンダーを取り込んだ巨人の姿が確認できた。右手には大型のライフルが握られており、そこからビームが次々と射出される。
差し詰め、ビームライフルといったところか。
左肩にはミサイルポッド、背部には青白い炎を吐き出す推進ユニットを背負っていて、一目で今までの深海棲艦の装備とは趣が違うことがわかる。まるで、人類が造った機械をそのまま身につけているようだ。

「砲撃、来ます! カウント5。・・・・・・3、2、1、今!!」
「くぉ・・・・・・!」
「心臓に悪いね、これは・・・・・・」

瑞鳳が叫び、艦娘達は大きく進路を変えてビームを回避する。
超高熱のビームは海面に着弾すると同時に、小規模の水蒸気爆発を引き起こす。必要最低限の機動で回避、とはいかなかった。
急制動・急加速によって着弾位置をずらす常套手段も使えない。実弾相手なら、この遠距離なら、山なりに頭上
から落ちてくる砲弾の座標さえ避ければよかった。しかし、縦軸さえ合っていれば直進する光の矢は容赦なく背中から貫くだろう。どんなに遠距離であろうと、なにがなんでも横軸をずらさなければ回避できないのだ。
0349ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:36:32.11ID:fA1jv6E30
砲撃音を聞いてからでは間に合わない、いつもよりずっと体力を使う回避動作。
特徴的な擦過音がただ通り過ぎるのを祈るしかない。御札が欲しいと切実に思う。
「ミサイルも来るよ! 数は10!」
「対空用意!!」

そうして逃走劇を始めて、5分が経った。
実弾砲と魚雷による戦闘とはまるで勝手も次元も違う、ビームとミサイルによる猛攻に追い立てられた第二艦隊は、当初の予定からは相当外れた航路を進み、ついに追いつかれてしまった。
最大にして唯一の誤算は、巨人達の速度が予想よりもずっと速かったことに尽きる。
背部推進機関によって戦車砲さえも機敏に避ける巨体は、孤立無援となった第二艦隊の前に壁となって立ちはだかる。

「この・・・・・・!」

木曾が毒づいて、左肩の25mm三連装機銃を向けた。しかし、ミサイル迎撃に酷使されたそれは既にすっからかんの鉄屑である。
それでも、構えずにはいられなかった。まともに戦うことも許されずに敗北するなど、認められるものではなかった。

「ッ、みんなは! 榛名が!! 護ります!!!!」
「・・・・・・諦めるにはまだ早いさ!」

まだ弾薬に余裕があった榛名と響が腹をくくり、火力の有りっ丈を巨人の右腕に向けて放つ。ビームライフルさえ封じればまだ活路はある。今までもそうやって倒してきたのだ。
しかし。

「学習しているとでも言うの・・・・・・!?」
「まだだ!!」

【Titan】は左腕を突き出し、ライフルを庇った。
代わりに左腕はズタズタに引き裂かれ使い物にならなくなったがそんなもの、こちらにとっては何も嬉しくない。弾を無駄に使ってしまったショックのほうが断然大きかった。
当然そんなことで挫けちゃいられない。今度こそと二人は散開し狙いを定めるが、今度は【Titan】が背部推進機関を噴かして跳躍、巨体に見合わない俊敏さで上空へ回避するとともにライフルを榛名に向ける。

「――!!」

――避けられない!
榛名は直感する。いつも当たって欲しくない事ばかり当てる戦士としての直感は、お前はここで死ぬと耳元で囁いてきた。上空の巨大な砲口を見上げ、一拍思考が停止する。
音が遠くなる。後悔の念だけが押し寄せる。
0350通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/10(月) 20:38:25.22ID:fA1jv6E30
連投回避
0351ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:40:08.25ID:fA1jv6E30
瑞鳳が、夜であるにも関わらす弓に矢を番え、艦載機を出そうとした。
木曾が、思わず足を止めてしまった榛名を庇うべく走り出した。
響が、なんとかして狙いを逸らそうと錨を投擲した。
榛名は、そんなみんなを見て自失から醒め、最期まで抗おうと砲撃しようとした。


そして。
そのとき――


一筋の光条が天から降り注ぎ――


今にも発射されそうだった【Titan】のビームライフルに直撃し、小爆発を起こした。
0352ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 20:48:13.19ID:fA1jv6E30
今回は以上です
どうもNGワードを含んでいた箇所があるようですが、どうにも特定できなかったので
そのあたりをバッサリカットしてしまいました・・・こういう時ってどうすればいいんでしょう? 
とりあえず今回の題は、第3話:闇夜の防衛戦になります。
まとめに載っけて頂く際にカットした部分を挿入してもらおうと思います。
自分も超感想欲しいです。


次スレですが、ちょっと外出しなくてはならなくなったので30分後ぐらいに
自分が建てようと思います。お待ちください。
テンプレ変更なし、ワッチョイなしでOKですよね?
0353ミート ◆ylCNb/NVSE
垢版 |
2017/07/10(月) 21:23:14.96ID:fA1jv6E30
・・・・・・すいません。
テンプレに「NGワード書きすぎです。」と出ちゃってスレ建てできませんでした
どなたか代わりにお願いしますorz
0359通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/12(水) 02:23:55.62ID:76Nw/+jJ0
こういう時は容量高い人に合わせた方がいいの? それとも低い人?
個々人の環境によって容量が変化するにしても、個人的には高い方に合わせたほうが安全だと思うけれど
0361三流(ry
垢版 |
2017/07/12(水) 22:58:33.72ID:pNgwjlKD0
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第九話 ソロモンの時間、後編

「てえぇぇぇいっ!」
盾を内から外に薙ぐジャックのジム、カスペンのゲルググの胸元を盾先がかすめる。
その反動をアンバックに振り分けて宙返り、スラスターの噴射を合わせて
一気にゲルググの背面に回り込む。
「ぬん!」
腕の振りで後ろに向き直り、ヒートホークを打ち下ろして反撃するゲルググ、
しかしそれもジャックに、いやオハイオ・ジムには織り込み済みだ。
サメ顔の盾で受け止めると、それをいなし捌きつつ反転して蹴りを入れる、かろうじて盾で受けるゲルググ。

「くっ!」
カスペン大佐にとっての誤算は3つあった。ひとつは最新型モビルスーツ、ゲルググの操縦にまだ馴染みが薄いこと。
操作自体はザクと同じだが、反応速度や操縦桿の遊び、取り回しはまるで別物であり、違和感はぬぐえない。
2つにはこの宙域にまき散らされたビーム攪乱膜、ゲルググの特徴であるビームライフルやビーム長刀などのビーム兵器が
軒並み使えなくなっていること、やむなくザクの武器を携帯して出てきたが、照準も握りの感覚も合わない。
しかし彼にとって、そんな戦場での不都合など論じるに足りないことだった。

3つめ、この目の前の連邦軍モビルスーツ・ジムの、そして操縦者の恐るべき技量、これこそが脅威だった。
先読みをし後の先を取る、いわゆるニュータイプとは違う。とにかく先に動いてこちらに何もさせずに制圧を狙ってくる
その為の動きのバリエーション、行動ルーチン、普段からの練度がうかがえるというものだ。
防戦一方になりながらも、カスペンは冷静に反撃の機会をうかがっていた。
「あの盾を振り回すのが行動の起点になっておるな・・・そこから次の行動を読み違えなければ!」
何度目かの盾の大振りから機動をかけるジム、その瞬間にゲルググも動く。読み違えなければ性能はこちらが上なのだ!

ゲルググをジャックに任せ、ソロモン表面で戦闘する仲間のもとに向かうエディのジム、もうソーラーシステム照射まで時間がない。
すでに味方は片手で数えるほどに撃ち減らされていた、敵のモビルスーツ部隊はいまだに20機ほど健在、このままでは全滅も
時間の問題だ。部下たちを助けなければ!ここでエディは思い切った行動に出る。
「全員退避!ソーラーシステムが来るぞーっ!」
通信に絶叫するエディ、「通常回線」を「開いた」状態で、つまり味方のみならず敵にも聞こえるように。
敵味方が一斉に反応する。しかし連邦とジオンでその解釈は全く違っていた。
かろうじて生き残っている連邦兵、つまりエディの部下たちは、このままここに留まって戦闘を続けることが
確実な死を意味することを知っている、味方の攻撃によって。
ジオン兵にとっては違っていた。彼らはソーラーシステムの詳細を知らない。聞きようによってはここに連邦の新手が
来るようにも取れる。何より彼らの任務はこの地点の防衛、何が来ようと迎え撃ち、阻止するのが任務。
0362三流(ry
垢版 |
2017/07/12(水) 22:59:04.34ID:pNgwjlKD0
一斉に離脱するジム3機とボール2機、ザクやリックドムの多くはその場にとどまり、周囲を警戒する。

しかし反射的に逃げる敵兵を追おうとする者もいる、ザク3機とドム1機、その真っただ中に特攻するエディのジム。
追撃をしようとしていた所に、カウンターの体当たりを食らい激しく弾けるジムとザク、その自殺行為にも見える体当たりに
異常な空気を感じ、動きを止めるほかの追跡者たち。
システムのいくつかに異常を感じながらも、盾を振り回して白兵戦の機動を始めようとするエディ・ジム
しかし思うようには動けなかった、肝心の盾をさっきのゲルググの戦闘で捨ててきていたために。
次の瞬間、ドムのヒートサーベルがジムの腹を貫く、それを引き抜いた瞬間、別のザクのマシンガンがジムに集中する。
爆発までの数舜の間、エディは部下を少しでも逃がせたことに、ささやかな満足感を感じていた。
「ここまでか・・・ジャック、生き延びろよ・・・」
ソロモンに小さな爆発の光芒が咲く。そしてそれがまるでマッチを擦ったように、ソロモンの一角が明るく照らされていく。

カスペン大隊の精鋭たちは、何が起こったのかも分からぬまま、発生した太陽に焼かれ、溶けていった。


ジャックが何度目かの機動を開始した瞬間、ゲルググは腰からあるモノを取り出し、背後に放り投げる。
激しく機動してきたジムが、ゲルググの背後を取った時、それと接触する。
ザク用の兵器、クラッカー。モビルスーツサイズの手榴弾。
「しまっ・・!」
言葉を紡ぐ暇もなく、至近距離で爆発するクラッカー、吹き飛ぶジムに追撃の斧を振り下ろすゲルググ、勝負あった。
システムに甚大な被害を受け、パイロットも衝撃のGで激しく揺さぶられ、意識を飛ばす。
「手ごわかったな、褒めてやろう。」
とどめの一撃を加えんと構えるゲルググ、しかしその時、妙な光が視界に入る。
思わずふりむくカスペンは、信じがたいものを見た。
「な・・・」
ソロモンが輝いている、要塞の一角が、まるで太陽のように。わが精鋭たちが死守している区域が。
その光にあてられるように、失神したジャックが一瞬、意識をともす。
「ソーラーシステム・・・」
その光が消え、宇宙が再び闇に包まれるのに引き込まれるように、再び意識を閉じるジャック。
彼が最後に聞いたのは、一般回線から聞こえる、野太い声の軍人が絶叫しながら部下の名を呼ぶ悲鳴だった・・・

「リック小隊長!フレーゲル中隊長!応答しろ!ザガート軍曹っ!どこだあぁぁぁっ・・・」
0363三流(ry
垢版 |
2017/07/12(水) 22:59:33.00ID:pNgwjlKD0
懐かしい顔を見た。
叔父や叔母、その周囲の面々。故郷シドニーでの気の合う仲間、旧友たち。
働きに出てたサイド2、アイランド・イフィッシュの工場の仲間、口うるさい上司、同い年の片思いの女学生、
そしてサメジマの兄貴、サラミス級シルバー・シンプソンの乗員たち、その傍らにはエディ・スコット。
そんな大勢の集団が無表情でこちらを見ている。
ふと、一人の男がジャックの横を通り過ぎ、その集団に向かって歩いていく。
背筋の伸びた、少しやせた金髪の軍人。堅苦しい面もあったが、深い情を持つ司令官。
「・・・ワッケイン指令、エディさん、どうして、そっちに・・・」
彼らは遠ざかり、光とも闇ともわからぬモヤに包まれ、そして、消えた。

ジャックは目を覚ます。涙はなかった、ただ深い深い喪失感だけが彼を包んでいた。
上半身を起こし、辺りを目にする。、周囲には無数のベッドとその上に寝る患者。
「おっ、目が覚めたか。」
医師が声をかける、枕もとのカルテを手に取り、言う。
「お前さんは外傷は無かったよ、意識さえはっきりしてればもう大丈夫だ。」
「・・・ここは?」
「ソロモン、改めコンペイトウ、つまり連邦軍の占領基地だよ、その医務室だ。
ああ、戦闘は連邦が勝ったのか、と思うジャック。しかし自分の部隊は・・・聞こうと思ったが、この医師が知るはずも無いだろう。
そのままベッドから起きだし、医務室を出るジャック。
医務室の外は各人が慌ただしく動いている。占領したばかりの敵基地、彼らにもやることはいくらでもある。
彷徨った末、コンソールルームを見つけ、個人情報を画面に出す。

『エディ大隊長、エディ・スコット:戦死』
『第三艦隊司令官 ワッケイン:任務中、テキサス・コロニー方面』
0364三流(ry
垢版 |
2017/07/12(水) 22:59:57.91ID:pNgwjlKD0
・・・え?
一瞬の驚きの後、悲しみと安堵の両方の感情が押し寄せる。
サメジマの兄貴の意思を共に継いできたエディさんの死、それはソロモンがソーラーシステムで焼かれたのを見た時から
覚悟はしていた。実直で責任感の強い彼なら、あの場に部下を残して生き残ったりはしないだろう。
きっと部下をかばって逝ったろう、その姿を想像して目頭が熱くなる、兄貴とは違った意味で立派な人だった・・・。

ただ、嫌な夢を見た後だけに、ワッケイン指令が健在なことに安堵していた。
思えばルナツーで自分がかかわってきた人物では、もう彼くらいしか印象に残る人物はいなかった。
戦場の後方でふんぞり返っている偉いさんなど知ったことではない、ただ彼だけには生き残ってほしい。
戦争が終わって後、上層部として活躍するのは、ああいう人であってほしかった。
そのまま部屋を出て、自分の部隊の待機室を探しに歩いていく。

後に残ったコンソールの画面が、自動更新され、表示が切り替わる。

『ー第三艦隊司令官 ワッケイン、戦死ー』


第九話でした。実はPCがぶっ壊れて、書いてた分全部トビました orz
>>331さん
感想ありがとうございます。なるほど、場面転換や視点切り替えにも気を使ったほうがよさそうですね・・・
0365彰悟 ◆CEip2yjO.6
垢版 |
2017/07/13(木) 01:48:08.71ID:YfSo2Lws0
お久しぶりです。
皇女の戦いの続きを書いたので投下しますね。
0366彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 01:53:50.67ID:YfSo2Lws0
皇女の戦い 第二話 PART1

「みなさん、お待ちかね!ガンダムファイトに備えて各国の選手達が集まってきております!」
ここは今回のガンダムファイトの開催地イギリス・ロンドン。
荘厳かつ新しいコロシアムには幾多の観客達に見守られながら多くのガンダム達が姿を現している。
空気を裂くようにして突如姿を見せるステルス機能搭載機。
大地を強引に割ってくる一際巨大な機体。
時計塔を天高く飛び越えるジャンプ力重視の機体。皆各国の最新技術をアピールする登場を見せている。
 
アザディスタンの王宮のテレビにもその雄姿が映し出されている。
「これが今回の代表の機体......」青紫の正装をしたマリナは下ろしていた拳を握る。
以前戦ってドローになった機体、テレビや合法的なネットワークで知っていた機体もあるが、やはり繊細な顔立ちは緊張りつめた心を隠せない。
「......?」突然消えた画面に驚いて振り向けば、リモコンの主はシーリンだった。
「今から自分を緊張させてどうするの?」
首を横に振ると微笑んで「他国の機体を少しでも知っておいた方がむしろ緊張を解せると思って。」
「肩、強張ってるわよ?」言われると恥ずかしそうに苦笑いするマリナ。
「だめね、どうしても下調べみたいなことをしなきゃ気が済まないところがあって。」
一度はすくめた肩をゆっくり張る。
「ふう......それだけの自覚があるのは良いけど逆効果な時もあるわ。責任感に押し潰されたら戦う前に負けるわ。そうなれば傷つくのはあなただけじゃないでしょう?」
口をキュッと結びながら頷くマリナ。「そうね。国のみんなの将来がかかっているものね......」
「そろそろ時間ね。行きましょう、シーリン。」その表情は紛れもなく皇女にしてガンダムファイターのものだった。
0367彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 01:54:47.15ID:YfSo2Lws0
皇女の戦い 第二話 PART2

「マリナ様!絶対に勝って!」「必ず我々に資源を!」「ご武運をお祈りします!」
首都に住む多くの人々が王宮に集まり出発前のマリナを出迎える。幼い子供含め老若男女あらゆる人々が皇女に声援を送り、そして望みを託している。公務やファイトの修行の合間を縫って首都内の孤児院や病院に慰問を重ねてきたマリナには顔なじみの子供も大勢いた。
マリナの傍にいるシーリンは彼らの気持ちはわかるものの先を急いでいるといった面持ちだが邪険にする態度は取らなかった。それはマリナも同じだ。
「皆さんの思いは必ず果たします。離れていても私の戦いを見ていて下さい......
私に力を授けて下さりますから...」
真摯に答えるマリナに5歳ほどの女の子が大切そうに抱えた袋を持って寄ってくる。孤児院で何度も言葉を交わした子なので皇女相手にもそれ程緊張した様子はないが、その瞳は真剣そのものだった。
「あら、こんにちは。」両膝をついて微笑むマリナ。「これを私にくれるの?」
袋を開けると中には白を中心に赤、、黄色といった小さな花が1つに繋がった花飾りが出てきた。
「ありがとう、こんなに素敵なものを私に......」綻びながら少女の髪を優しく撫でる。
「いっぱい探して集めてきたんだよ。」少女はにこやかに、そしてどこか誇らしい笑みを浮かべた。
「マリナ様、この子が院の近くの山から採ってきたのです。土に汚れながら毎日少しずつ集めて......」少女の後ろにいたシスターの言葉にハッとして少女をそっと抱いた。
「そうだったの......貴女の為にも必ず勝つわ。信じて。」
0368彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 01:55:45.63ID:YfSo2Lws0
皇女の戦い 第二話 PART3

以下が会場到着までの過程。
アザディスタン軍の基地内にあるガンダム(といっても保護用の巨大な飛行船に収納されているのだが)に乗り込みそのまま会場に向かうというシンプルなものだ。
ガンダムもその飛行船も過去のあらゆる軍事兵器や工業製品よりも頑強に作られているが、最新の注意を払う必要がある......

基地に向かう車内にはドライバーの他にマリナ、シーリン、腕利きのSPが3名。
道路の左右には王宮前よりも更に多くの国民達が皇女の乗った車に声援を送っている。
中には病を押して必死に手を振っている人もいる。マリナは微笑みながら丁寧に手を振り返す。
「マリナ、良かったわね。」「ええ...私、もっと強くなれた気がする......」
少女からもらった花飾りの入った袋をそっと、だが大切に抱きながらシーリンに応える。
「必ず勝つわ、私を信じてくれたみんなの為に......」
ガンダムファイター......本来格闘に身をやつした者が進む道を政の頂点にいる彼女自らが反対を押し切り選んだのだ。
無様な結果を残せば飢えと貧困に苦しむ国民だけでなく、彼女の無理を受け入れてくれたシーリン達にも申し訳が立たない...
(絶対に、敗北は許されない...)
「......」旧知の仲故かその切実な思いを見逃さなかったシーリンは、しかしいつもの冷然とした声で告げた。
「見えたわ、マリナ。」目の前にはアザディスタン軍事基地が質実剛健と聳えていた。
0369彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 01:57:02.85ID:YfSo2Lws0
皇女の戦い 第二話 PART4

「今日という日をずっと待っておりました。私が皆様の礎になれるよう務めを果たします。」基地にて彼女達を出迎えた軍のトップに深々と頭を下げるマリナ。
「皇女自ら我らの為に御尽力下さるとは誠に光栄であります。」
トップの言葉と敬礼と同時に軍の上層部のメンバーも敬礼した。
一人一人に皇女が向けた視線は真剣さだけでなく、悲しげでもあった。
争いを好まないマリナも戦時中に命を懸けてきた彼らを尊敬している。だからこそ殊更に切なかった。
今回の闘いで国が豊かになれば少しでも彼らの犠牲も報われる...その感情もファイトでの力になっていたのは紛れもない事実だった。

基地内の格納庫はいつもより張り詰めた空気を孕んでいるように思われるのはファイターの思い過ごしだろうか。
技術者と整備員達とて同じような面持ちで皇女を送り出す準備に励んでいた。
「機体の最終点検は既に終了しました。ユディータの力があれば必ず......」
「はい、期待に必ず応えて見せます。」ずっと彼女のファイトを物理的に支えてきた技師長と握手を交わすマリナ。

「シーリン、先に行ってるわね。また会いましょう。」「ええ、気を付けてね。途中には何があるかわからないから。ここからがすでに戦場よ。」
厳しいながらもずっと見守ってくれた旧友と握手を交わすと慣れた足取りでタラップに乗って眼前の巨人・ユディータへと入っていった。
0370彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 01:58:03.01ID:YfSo2Lws0
皇女の戦い 第二話 PART5
ガンダムユディータ......他国の機体とは一線を画す華奢でしなやかなそれは雪のように白い...
脛や前腕は濃紺に塗られており、白さと引き立て合う色使いになっている。
顎の上にスリットはなく、小さく細い顔。
出来得る限り攻撃のダメージを受け流す為全体的にボディのめりはりが強調されているが、胸と肩幅は小さくて狭い。
本来は弓術専用の機体だが、マリナのファイター志願により合気道にも対応すべく尚も柔軟なフレームシステムへと進化を遂げた。
背部にマウントされたケースからは縮小された特殊金属性の矢が収納されている。
(ユディータ、私を導いて...)
サバイバルイレブンを共に駆け抜けてきたこの機体に思いを馳せながら、孤独な戦場ともいえるコクピットに入っていく。

内部には上下に二つのリングがある。
丁寧に脱いだ衣服を折り畳むとそれらは一時的に粒子となって消えていく......
締まりつつもファイターらしからぬ細い肢体は決心を固めながら祈るように胸の前で手を握り、片膝を着く。
上方のリングからスーツが優しい色合いに似つかわしくない圧力を伴いながらマリナの身体に張り付いていく。
身体は強張り現在の態勢を保つのが精一杯。
「......っ!」いつものように苦しみながらも必死で手足を動かしスーツを纏わせていく。
ゆっくりと腰を上げ、立ち上がる。
最初の時に比べれば圧倒的に装着時間を短縮している。
実戦未経験の時は、スーツを着た直後でも体に負担がかかり動きがおぼつかず、フラフラしていたのだ。
それを国によるスーツの調節、柔軟性と(他のファイターには負けるが)最低限の筋力や動きのトレーニング。
これらの甲斐あって時間と負荷を最小限に留めるに成功したのだ。
各国共通の肩、手首、足首についたイエローのセンサー
無駄のない細い胴体を包む水色の爽やかなスーツがほんのりした腹筋を浮かび上がらせている。
撫で肩と股を守るのはうっすらとした水色。そしてそれらから伸びる長い手足と小さな臀部はユディータ同様の純白。
一口で言うと、手足に向かうに連れて薄い色になっているスーツだった。
そして胸にはアザディスタンの誇りを象った国の証が描かれている。
ずっとこのスーツと機体で戦い続けてきたのだ。
天井のハッチが開けば中東の真っ青な空がマリナを祝福するように広がっていた。
シーリンや技術者に会釈をするとシンプルな形状の格納型飛行船に乗り込み大空を旅立っていった。
皇女と国民の願いを風と轟音に乗せどこまでも......
0371彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 02:00:37.79ID:YfSo2Lws0
今日の投下は以上になります。

改行忘れてすいません。読み辛いですよね...orz
今度から気を付けます。

それではお休みなさい。
0372彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/13(木) 20:47:03.74ID:YfSo2Lws0
>>331さん、読んで下さってありがとうございます。
リロってなくてレス遅くなってしまいすいません。

自分でもちょい奇抜?と思ったのですが、あのマリナが...という感じのギャップを出せたらいいかなと思ってます。
敵ファイター達の設定も考えていますので、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。

>>355
遅れましたがありがとうございます。

昨日書き込んだ自分が言うのも何なのですが、容量の問題...しばらくはこのスレを使わせて頂いてもよろしいでしょうか?
自分のところでは534KBです。
すいません。リロって事情を把握すべきでした、気を付けます。
0373彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/14(金) 22:35:37.40ID:n0YyhdGF0
こんばんは。続きを書いたので投下します。

皇女の戦い 第三話 PART1

 中東の乾いた風が吹きすさぶ大空。
ガンダムによる飛行訓練をしているといつも思う。
自分が住んでいる国に貧困やそれによる犯罪が溢れているなんて嘘のような気がする...と。
そんな思いが今戦いに向かうマリナの気持ちを少しでも和らげていた。
自身のスーツよりも青々とした空に少しずつ晴れた表情になっているのがわかる。

「......っ!?」コクピット内に警報が響き渡る。それだけでなく何かが近づいてくる感覚に息を飲む。
「誰?」しかし辺りを見回しても何もない......ただ青空とそこに浮く白い雲があるだけ。
この気配は決して空腹の猛禽類ではない...もっと強烈な意思......≪人間の殺気≫だ......
幼いころより周囲の貧困を見てきた彼女は人々の金品や食料の取り合いを全く見なかったわけではない。
皇女の座に着いてからは極度に不満の爆発した国民の怒りも目の当たりに、その度に心を痛めてきた。
しかし、この殺気はそれまでのものとは違う。もっと純粋な敵対心。絶対に避けることができないことを彼女は感づいていた。
「どなたです?姿を見せてください。」
できるだけ毅然と落ち着いた声色で呼びかけた次の瞬間……
0374彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/14(金) 22:36:46.97ID:n0YyhdGF0
皇女の戦い 第三話 PART2
「はっ!」一瞬捉えられないように思えた太く、龍のように長く紅い光が澄んだ空を駆けていく......
避けたは良いが飛行船は右半分が溶けて白い鋼は形を歪ませ、溶けていく。あくまでそれはガンダム専用、マリナ以外誰も入っていなかったのが幸いだった......
勿論ユディータの巨大な白い痩身は右半分程が露出してはいるものの傷はないのがせめてもの救いだった。
「一体、何なの?」混乱する感情をできるだけ落ち着かせるマリナ。ファイターとして精神を鎮めることも教わっていた。
今朝テレビで見たステルス機能搭載のガンダムを思い出した。尤も、あれは既に会場に到着しているので今の連中は全く別人。偶然類似した技術を用いていたか、はたまた盗用したのか。
それはともかく目先の「空気」に視線を冷静に這わせるよう努めた。
0375彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/14(金) 22:37:28.76ID:n0YyhdGF0
皇女の戦い 第三話 PART3
「ふふ、中々いい避け方だったぜ。ちょっと惜しかったが。」「随分綺麗な機体じゃねえか。やっぱ皇女様が乗るものは一味違うな。」
どこか人を喰った、荒くれたような喋り方の男の声が2名聞こえてきた。
「私にはこんなことに付き合っている時間はないのです。どいて下さい。」
すると周囲にあった青空の一部が少しずつ人のような形となり浮かび上がってきた。
......いや、正確にはそれまで空中に擬態して隠れていた。
その姿はモンスターではなく、人の手で作られた歴とした機械...MSだった。
黒く無骨なシルエットと不気味に紅く光るモノアイ。まるで獲物を見つけて喜々とした獣のように見える。まるで狩人のように銃を構えて狙い撃ちするのを楽しんでいるような雰囲気さえある。
(今ここでまともに相手をしている時間はないわ......こうなれば...)
機体内部のパージスイッチを押すと残りの飛行船が外れゆっくりと地上に落ちていく。
こうなればデッドウェイトでしかないそれは、マリナの定めた狙いのままにゆっくりと緑の乏しい山に向かっていく。
誰もいないのは明らかなので一番安全な場所と言える。
0376彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/14(金) 22:38:30.40ID:n0YyhdGF0
皇女の戦い 第三話 PART4
背中にマウントしていた弓を携え矢を構える。
精度が高く、硬度と柔軟性を併せ持ったアローは幾度もマリナの窮地を救ってきた。
それに時に迫られている彼女にとって頼みの綱になるのは遠方から相手を狙える弓術しかない。
堂々とした構えで敵機二体のライフルを一気に弾き落とす。
「ぐっ、こいつ!」「やりやがって!」
「......私はガンダムファイターの端くれです。殺し合いなんて望んでいません。
......これ以上は......早く帰ってください。」
ファイトと違い明確な悪意を持った敵、しかしそれでも命を奪わずにいられることに越したことはない、そんなマリナの気持ちを嘲笑うかのように二体は太めのサーベルを取り出し襲い掛かってきた!

「仕方がないわ!残念だけど...」訓練で培った相手の動きを読む技術......マリナは柔らかい動きで回避するとさらに素早く構えた矢で一体の右腕、頭部を狙った。
センサーであるモノアイは外したが、空中でバランスを崩しつつ何とか存在している。
「野郎!」向かってくるもう一体に一切逃げる素振りを見せず弓の準備をするマリナのガンダムユディータ。
あともう少しでサーベルが頭部に届くかという所で瞬時にかわし、相手の懐に飛び込んだ。
「もうこんなことさせないで...」切なそうな声と共に相手の両肩を至近距離の射撃で破壊する。
衝撃で両腕は脆くも地上に落下していく。

「どうする、あいつ中々の腕前だぜ?」パイロットの一人が呼びかけた空間には誰もいない
...いや、いるのだ。マリナは犇々と感じていた。この二人よりさらに強い殺気を持った何者かがその空間にいるのだ。
「......!」ファイターになってからまだ数年も経っていないマリナですら緊迫感でその相手に目を見張らざるを得なかった。
「相当やるみたいだね......皇女さん?」
冷たく挑戦的な声と共に堅牢な装甲の巨人が浮かび上がって......
0377彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/14(金) 22:41:20.60ID:n0YyhdGF0
今日は以上です。
脱線気味?に思われるかもしれませんが、これからの伏線(というか前置き)のような展開にしました。

それではまた。
0378三流(ry
垢版 |
2017/07/16(日) 12:08:53.86ID:pcJWScTn0
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十話 掌からこぼれる水のように

「諸君らの階級、所属は以上だ、なにか質問は?」
ソロモンのブリーフィングルームにて、壇上に上がっている指揮官から、部屋に座っている30名ほどの士官に通達がなされる。
ジオンとの最終決戦と目されるア・バオア・クー攻防戦、「星一号作戦」に備えた最終部隊編成、その会議場。
その一角にジャック・フィリップス「少尉」もいた。ほんの5分前から彼はこの階級と、自らの部隊の隊長を任じられた。
付く部下は5名、自分を合わせて6名の中隊クラス。彼に限らず、先のソロモン攻防戦の生き残りはほぼ全員が
先任として隊長クラスの地位に就くことになる。

それは連邦軍の如実な人材不足を示していた。もともとこの戦争は最近までジオン優位に進んでいた、それは
モビルスーツ等の兵器の差が主な原因であった。そこで連邦は兵器、特にモビルスーツの大量生産を重視してきた。
事実それは功を奏し、戦場をわずか数か月で地球から一気にジオン本国手前の月面周辺まで押し返した。
だがいくら兵器がたくさんあっても、それを動かす人間がいなければ意味がない。コロニー落としから初期の劣勢で
兵士の絶対数不足は軍にとって深刻な問題ではあった。そんな中、実戦経験者である彼らは連邦軍にとって
貴重な戦力であったのだ。

「質問がなければ、兵士の振り分けに入る、入ってきたまえ。」
後方のドアが開き、広くとられた部屋後ろのスペースにぞろぞろと人が入ってくる。会議のさ中、廊下で待機していたらしい。
しかし入ってきた彼らを見て、その部屋にいた先任パイロット達は驚きを隠せなかった。
あどけない顔、華奢な体、似合わない軍服、そう、子供だ。明らかに軍に所属し、戦争をする年齢には見えない。
100人以上が入室してきたが、おおよそ軍人らしい人間を探すのが難しいレベルだ。
「司令!こりゃ・・・なんの冗談ですか。」
年長の士官が壇上の人物に問う。無理もない、この士官の息子でももう少し年がいっているだろうから。
「彼らはみな、シュミレーションで上位の成績を収めた優秀者だ、志願兵だから意欲も高い。」
「そんな問題じゃねぇでしょうが!」
別の士官が吐き捨てる。なるほど、確かに若いと対応力も高いだろう。シミュレーションなら頭の固い大人より
彼らのような若者のほうが好成績をあげられるのも無理はない。
しかし戦争で部下として使うということは、彼らに「死んで来い」と言うことすらあるのだ。
まだ20年も生きていないような子供を戦火に放り込むというのか・・・
0379三流(ry
垢版 |
2017/07/16(日) 12:09:32.46ID:pcJWScTn0
「彼らには志願した理由がある、ジオンを打倒したいという共通の認識が、な。」
指令の言葉に息をのむ士官たち。なるほど、彼らはジオンに恨みがある、つまり家族や友人、近しい人を
この戦争で亡くしているのだろう。
だが、だからといってやはり前途有望な彼らを前線に出すのは気が引ける。そんな空気を読み取ってか、こう続ける指令。
「決戦での戦力比は10対1と想定されている、とにかく数で圧倒する必要がある以上、人員は必要なのだよ。」
戦力差10対1、それはもう戦闘にもならないほどの圧倒的大差である。この物量作戦をもってすれば
敵の戦意を削ぎ、ろくに戦闘にならずに勝つことも十分ありえるだろう。
ただ、それにはまがいなりにもモビルスーツが動いてなければ意味がない、無人操作で戦闘できるような
機体は今の連邦にはないのだから。
「では、振り分けに入る、名前を呼ばれた士官は起立、そのあと呼ばれた新兵は起立した士官のもとに行くこと。」
「「はいっ!」」
「リチャード・アイン大隊長!所属兵、ニック・ノーマン一等兵、アルフ・リキッド軍曹・・・」
次々と名前が呼ばれ、起立した士官の机に少年たちが集まってくる。
「次、ジャック・フィリップス中隊長!所属兵ビル・ブライアント軍曹、キム・チャン一等兵、サーラ・チーバー一等兵・・・

振り分けが終わり、それぞれの隊が個室に移動してブリーフィングを始める。
「ジャック・フィリップス少尉だ、30分前からな。じゃあ、時計回りに自己紹介を。」
ジャックに促され、順に紹介を始めていく。
「ビル・ブライアント軍曹です、ジム搭乗。隊長もずいぶん若いっすねぇ、俺19ですけど、いくつ?」
5人の中では比較的、軍人に見える長身の青年、とはいえ軍人を基準にすると単なるチンピラにしか見えないが。
「キム・チャン一等兵、ボール搭乗、17歳です。」
眼鏡をかけた、背の低い少年兵、色白で少し小太りな、戦うイメージが全く見えない。
「サーラ・チーバー、ジムのパイロットです。18ですけど、ご不満ですか?」
ブロンドの髪を目の前でかき分け、見下ろす長身の少女。これまた生意気そうな、そして扱いにくそうな娘だ。
「マリオ・サンタナ一等兵、ジム、17!」
それだけ言うと着席する、浅黒い肌の少年。礼儀正しいのか緊張しているのか・・・
「・・・あの、ツバサ・ミナドリ二等兵・・・ボール搭乗、16歳です・・・。」
最後におずおずと挨拶をする内気そうな東洋系の少女、なんとも頼りないこのメンバーの中でも一際頼りない・・・

「ちなみに俺は18だ、同じ世代だが、不満があるか?」
全員の紹介が終わってから、最初のビルの質問に答えるジャック。彼の意図は見え見えだ、かつて俺が最初サメジマの兄貴に感じた
頼りなさを感じ取っているのだろう、あえて挑発を向けてみる。
「年下っすかぁ!ま、いいや。戦場では己の腕ひとつですからね。」
「そうね、自分の身は自分で守らないと、ね。」
ビルとサーラが返す。暗にお前の指揮に従って命を落とすのは御免だ、と言っているのだろう、頼もしい限りだ。
だが2人に勝手をさせれば、他の3人がどうするか困るだろう。彼らを死なせないためにも統率は必要だ。
思えばサメジマの兄貴やエディさんもこんな苦労をしていたんだろうなぁ、彼らなりのやり方で。
0380三流(ry
垢版 |
2017/07/16(日) 12:10:04.56ID:pcJWScTn0
ソロモンから艦隊が発進する、いよいよ星一号作戦の開始だ。一列に並べればソロモンからア・バオア・クーまで
繋がるのではと思うほどの大艦隊、搭載されているジムやボールの数もすさまじいものだ。
そんな中、ジャック中隊は突貫訓練を行っていた。艦隊速度が安定した時点で艦を出て、実戦形式の戦いをする。
6名の中隊なら、うち3名を率いる小隊長も必要だし、自分が戦死した時の指揮官代理も決めておく必要がある。
その資質を実戦練習で見極め、また彼らにもシュミレーションではない実機の操作を決戦までに身につけねばならない。

最初はジャックがキム、サーラ、マリオの3人と対戦。
もちろん結果はジャックの圧勝だった。3人とも少しは搭乗経験もあるようだが、まだまだ戦場に出せるレベルではない。
サーラもマリオもまだまだジムの基本ルーチンすら使いこなせていない、特別ルーチンを開発、搭載し、実戦で鍛えてきた
ジャックのジムとは比較のしようもなかった。キムの機体はボールだが、練度はそこそこの線に行っていた、小隊長候補かな。。
彼らが母艦に補給に行くと入れ替わりに、ビルとツバサがやってくる。ジャックは気が付かなかったが、ツバサにはすれ違う時に
ビルとサーラが軽くコンタクトを交わしたように見えた。
「あ、あの二人、もしかして・・・」

「さて、お手並み拝見と行きますよ、中隊長殿。」
ビルは自信満々だ、性格からくるのだろう。ただ戦場という場においてこの性格がうまくハマれば伸びる可能性は十分ある
対戦をこの組み合わせにしたのも、ビルの自信家っぷりの影響を気弱そうなツバサにも受けてほしかったから。
ジャックはいつの間にか、彼らの隊長であることを自覚し始めていた。ルナツーからこっち、周りはみんな先輩で
誰かに何かを教えることなどなかったから。
この訓練が終わったら、サメジマの兄貴に教わった大事なことを5人に教えてやろう。
敵は恨むものじゃなく褒めるものだということ、殺しあう相手だからこそ、それは大切なこと、自分の人生を後悔しないために。

なるほど言うだけのことはある、ビルのジムの練度は5人の中でも飛びぬけていた。基本ルーチンをうまく使いジムをぶん回す、
これでサポートのツバサがうまく動けばジャックも不覚を取りかねないだろう、それを見越して接近戦に持ち込むジャック。
こうなるとさすがに練度の差が出る、ダイナミックなアンバックを駆使してのトリッキーな動きでビルを翻弄、彼の背中に
ペイント弾を打ち込む。
「くっ、くそおっ!」
「自分一人で何とかしようとするからだ、援護砲撃できるボールがいるんだから、たまに距離をとってその機会を作れ。
あとツバサはもっと動け、戦場では静止してると的になるだけだ。」
「は、はいっ・・・」
「じゃあ、もう一回いくぞ、お前らの機体がペイントで真っ赤になる前に一本取って見せろ。」
「イエッサー!」「はいっ!」
たった一回の訓練で、ビルは少し従順になり、ツバサは強い返事ができるほどにはなった。そう、1の実戦は時に
100のシュミレーションを上回る価値がある、ジャックは今まで感じたことのない充実感を覚えていた。
0381三流(ry
垢版 |
2017/07/16(日) 12:10:26.75ID:pcJWScTn0
―そしてその時、宇宙が輝いた―


その恐るべき野太い光の筒は、連邦軍艦隊のど真ん中を通過していく、恐るべき破壊と殺戮を伴って。
直径数キロ、長さ100キロにも及ぶ超巨大レーザーが、艦隊のど真ん中を焼き払って行った。
その光景にジャックも、ビルも、ツバサも、言葉を失った。確実なことは一つ、連邦軍艦隊の大部分が
壊滅したということだけだった。

突然、高速でその艦隊に起動するビル。
「うわあぁぁぁーっ!サーラ、サーラあああっ!」
絶叫しながら艦隊に向かうビル、明らかに取り乱している。その態度が逆にジャックを落ち着かせた。
「おい、待てっ!」
消滅した艦はともかく、ダメージを負った艦に不用意に近づくのは危険だ。止めに走るジャック。
「やっぱり・・・あの二人・・・」
ツバサは冷静に、しかし悲しい声で二人を見送る。

「サーラ!どこだ、返事しろおぉぉっ!」
爆風の熱波が残る空間で、サーラの姿を探すビル、しかし当然ながらどこにも見えない。
無理もない、彼らの母艦は艦隊のほぼ中央、つまり巨大レーザーのど真ん中あたりにいたのだ。
「落ち着けビル!この空間は危険だ、避難しろっ!」
すぐ右に半分吹き飛んだサラミスがいる、いつ大爆発してもおかしくない。ビルのジムの腕をとり、その場を離れるジャックのジム。
「離せ、離してくれっ!サーラが!サーラが・・・うわあぁぁぁぁーっ」
爆発するサラミス、その余波で少し前までいた空間が炎に嘗め尽くされる、まさに間一髪だった。

ツバサと合流する二人、ビルは未だに嗚咽を洩らしている。強気な彼にもこんなに脆い一面があったのか。
もっとも彼の態度を見れば、ビルとサーラの関係は容易に想像がつく。恋人同士か、それに近い関係だったのだろう。
それが戦争、愛しい者が簡単に消え去るからこそ・・・
「あ、あれ・・・?」
ジャックは自分が泣いていることに気づいていなかった。過去に故郷の仲間や兄貴が死んだ時にも涙はあった。
しかし今回は違う、彼らは自分が守るべき、そして大切なコトを伝えるべき部下だったのだ。
サーラ、キム、マリオ、この3人を失った事実、それはまるで掌ですくった大切な水が手の隙間からこぼれていくように
止めようのない悲劇を悲しむ感情だった、覆水を止められない自分の無力さを噛みしめる涙・・・

ジャックはソロモンで聞いた、銀色のモビルスーツ乗りの指揮官の絶叫を思い出していた。
あれほどの軍人でも部下が死ぬのは身を切られるように辛いのだ。
ジャックは声を上げずに、黙祷してさめざめと泣いた。短い間だったが、決して忘れたくない俺の初めての部下。
彼らを失った喪失感、それは「過去」ではなく「未来」の自分の居場所を削り取られたようだった・・・。


第十話でした。
部下から上官へ、最終決戦を前にジャック君の立場も変わりつつあります。
物語も終盤、上手くまとめられるか不安なところですので感想、アドバイス頼みます。
0382三流(ry
垢版 |
2017/07/18(火) 22:36:23.75ID:EXn3Dp580
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十一話 光芒の星々をすり抜けて

―ソーラレイ―

ジオンの最終兵器、コロニーそのものを砲身とした超巨大レーザー。
ジオン公王デギン・ザビを乗せたグレート・デギンもろとも連邦軍艦隊を薙ぎ払ったその一撃は
連邦主力の4割をもぎ取っていくという大戦果を、そして悲劇をもたらした。
圧勝のはずの星一号作戦は一転、どちらに転ぶかわからないほどの戦力の拮抗を招いた、未だ数的には連邦有利とはいえ。
しかし、ギレン・ザビ以下、ジオン首脳は正しく理解していなかった。このソーラレイで数的不利を覆したツケが
連邦軍全体に憎悪となって刻み込まれたことを。
数で圧倒し、降伏したものには寛大な処置をしえた思考から、憎しみに塗りつぶされた復讐戦と化したことを。
上は指揮官から下は前線の兵士まで、ジオン憎しの意識を燃え上がらせたことが、のちの悲劇につながることを。

戦艦マゼランの兵士待機室、その一角に座り込み、俯いて床を見つめる兵士がいた。涙は枯れ果て、その瞳は憎悪に燃える。
「ジオン・・・許さねぇ。皆殺しにしてやる。ぶっ殺してやる、一人残らず・・・」
ビル・ブライアントが最愛の人を亡くしたのはほんの十数時間前、最後に交わした言葉は、ジムの訓練中、隊長ジャックに
こてんぱんにノされたサーラに「カタキはとってやるぜ」と冗談めかして送った通信だった。
返信はなかったが、彼女のジムが親指を立てて合図したそのポーズが、その奥のコックピットにいる彼女の表情を
浮かび上がらせる、がんばって、と。
そのサーラは見ていただろう、彼が結局ジャックに及ばなかったこと、そしてそれを決して残念には思わなかったことを。
無事に帰ったなら、「やるじゃない、ウチの隊長クンも。」などとウインクを投げて言われただろうことを・・・

ジャックはそんなビルの前に立ち、かける言葉を探していた。ジャック自身アイランド・イフィッシュの仲間、
シドニーの家族、尊敬する兄貴、先輩、そしてつい先日には長く世話になった司令官さえ失ってきた。
しかしただひとつ、恋人を亡くした経験はなかった。その悲しみがいかほどか、それを推し量ることはできなかった。
あるいはそっとしておくべきかもしれない。戦場において彼の憎しみがプラスに働くこともまた否定はできない、
赤く燃え盛る憎悪は破滅しか招かないが、青く静かに燃える憎悪の炎は戦果と生還につながる可能性がある。
兄貴は俺をぶん殴って目を覚まさせた。しかし彼を今殴っても憎悪の質を赤い炎にするだけかもしれない。
彼は一言、ビルにこう告げた。
「サーラは、きっと見てるよ、お前を。だから・・・死ぬなよ。生きて彼女をまた思い出してやれ。」
0384三流(ry
垢版 |
2017/07/18(火) 22:41:40.53ID:EXn3Dp580
部屋を出るジャックを追いかけて、ツバサが部屋から出てきた。
「あの・・・ジャック中隊長、その、お願いがあるのですが・・・」
「何だい?」
自分でも信じられないほど優しい声で返すジャック。先のビルとのやりとりの余韻もあっただろうが、最終決戦を前に
ただ二人残った自分の部下、しかも少女となれば自然と語句も柔らかくなる。
「その・・・コックピットで、音楽、かけてもいいですか?」
「んあ?」
「そ、その、同期の人に聞いたんです。彼の所属の隊長が、出撃時に音楽をかけるって。だから、私も・・・ダメですか?」
「・・・どこの隊、それ?」
「えっと、部隊名は忘れましたけど、確かイオ・フレミング隊長とかいう・・・」
有名どころだ。激戦区であるサンダーボルト宙域を戦い抜いてきた猛者、連邦でも数少ないフラッグ・モビルスーツ
「ガンダム」を乗りこなし、数々の戦果を挙げてきた英雄。しかし音楽を聴きながら戦闘してたというのは初耳だった。

「私、音楽を聴くと落ち着くんです、そうすれば戦場でもきっと冷静になれると思うんです、だから・・・」
「・・・通信は聞き逃すなよ。」
「え、いいん、ですか・・・?」
「好きにするといい。」
それだけを言って背中を向けるジャック。正直、彼女の技量では最終決戦を生き延びれる可能性は少ない。
その確率を少しでも上げられるなら、多少のワガママにも目をつぶれる。
背中で「ありがとうございます」の言葉と、深々と首を垂れる彼女を感じながら、ジャックは愛機の待つハンガーに向かった。

ハンガーに格納された彼のジム、その中身は兄貴のスピリットを受け継ぎ、エディさんとの研鑽の結晶が詰まっている。
そしてその盾には、その象徴である精悍なサメの顔が映っていた。
「ねぇサメジマの兄貴、それにエディさん、俺にも部下ができたんだぜ・・・」
シャークペイントに向かって語る。まるでそこに二人がいるように感じられたから。
「これで最後だよ、長いようで短かったけど、今回で最後にする、きっと!だから、見ててくれ。」
獲物をかみ砕く顎(あぎと)、兄貴のお気に入りであり、エディさんが苦笑いで受け入れた勇敢の証。
その牙に誓う。これを最後にすること、彼らから自分につながれた命を、必ず部下の二人に託すことを・・・
0385三流(ry
垢版 |
2017/07/18(火) 22:43:01.55ID:EXn3Dp580
―宇宙世紀0079、12/31、星一号作戦、開始―

攻撃目標ア・バオア・クーを上方から見て4つのフィールド、東西南北を示すE、W、S、Nに区切り
うち3方向から一気に制圧を目指す。主力をNフィールド、搦め手をSフィールドに振り分け、Eフィールドには
牽制部隊が送り込まれる。とはいえどの戦場でも、戦力は連邦のほうが圧倒的に優位だ。
しかしソーラレイでの戦力減退が、安易な降伏や停戦を許さないほどには戦力を拮抗させたことは否めない、
つまりどの空間でも剝き出しの殺し合いになることは確実だ。

ジャックの所属する部隊は牽制のEフィールド、しかしその配置は敵索部隊によって敵にも知られている。
本命のSフィールドやNフィールドに比べ、ジオンの戦力の振り分けが少ないのは確実だろう。
となれば最初に敵の防衛線を突破し、ア・バオア・クーに取りつくのがこのEフィールドの部隊であっても
なんら不思議ではない。

マゼラン1、サラミス6艦から吐き出された大量のジム・ボール部隊がEフィールドに展開する。迎え撃つは数隻のムサイと
そこから発進するザクを中心としたモビルスーツ部隊。双方の戦艦は対に位置し、その間の宇宙でモビルスーツが激突する。
例えるなら艦隊はサッカーの両ゴールで、フィールド内のモビルスーツは選手といったところか。
モビルスーツの勝敗が決すれば、大量のシュートが敗れた方のゴールに打ち込まれるだろう、そしてそこでの勝敗が決する。
モビルスーツという巨人の群れ同士の殺し合いが始まった。

「ビル!ツバサ!絶対に動きを止めるなよ!」
激しく機動しながらジャックが叫ぶ。こうも敵味方が密集していると、狙いをつけるだけでも大きな隙となる
攻撃は適当でいい、味方を誤射さえしなければ。3機で離れすぎないように飛び回り、戦場のフィールドを横切る。
密集地を抜けたところで終結し、わずかな時間を射撃に費やし、そしてまたフィールドに飛び込む。
ジャックにとって意外だったのは、ビルが思ったより冷静だったことだ。突出して身を危険にさらすことを
心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。
爆発の光芒の中を両陣営のモビルスーツが飛び交う。そして優越が徐々に偏っていく。押しているのは連邦だ。
一度優劣がつくと、そこからは早かった。1機のザクに複数のジム、ボールが殺到し仕留めていく。
もともと数で劣勢なジオンにとって、負け始めると崩れていくのは加速を増す。やがてザク部隊はムサイ周囲まで下がり
母艦を逃がすための殿(しんがり)として最後の抵抗をする。そこに殺到するジム・ボール。

その側面に、大量のミサイルが降り注ぐ。正面にしか注意が行ってなかった連邦軍はこの不意打ちに大きなダメージを受けた。
ミサイルの後に来たのはモビルスーツではなかった。円筒形の、ドラム缶を横倒しにしたようなモビルポッドだった。
その数約30機、思わぬ新手に連邦の攻勢が止まる。再び戦場は互角の攻防になるかと思われた。
しかし連邦も押し返されてばかりではない。攻勢に便乗しようとしたサラミスやマゼランの艦砲射撃がザクやその後ろの
ムサイに殺到する。次々に撃沈していくムサイ。そしてザクに代わりムサイの前に立ちはだかるジオンのモビルポッド。
0386三流(ry
垢版 |
2017/07/18(火) 22:45:06.34ID:EXn3Dp580
「オッゴってやつか!気を付けろ、先日月軌道上でボール2個小隊がこいつに食われているぞ!」
大隊長が叫ぶ。モビルポッドでもボールとは違い、アタッチメントを使用してザクのマシンガンやバズーカを搭載
動きもモビルポッドとは思えないくらい速く、なおかつ3機1組で編隊飛行しているために、今しがたまでの
対モビルスーツ戦闘とは毛色の違う戦いを強いられてしまう、頭の切り替えの遅いジムやボールが仕留められていく。
とはいえ艦砲射撃によりムサイはほぼ轟沈、残った最後の一艦もたまらず退避を始める。これによりオッゴが
補給を受けるべき母艦はなくなった。マゼランやサラミスは健在、数は互角、ボールはともかくジムは性能が上位、
未だに連邦の優位は動かなかった。

ここで連邦は部隊を2つに分ける。居残って戦闘を続ける者と、一度母艦に帰艦して補給を受ける者に。
一時期戦場は不利になるが、その行動自体を罠と思わせるような巧みな全体機動で敵に警戒させる、これが功を奏した。
連邦側は知らなかったが、実はジオンのオッゴ部隊は学徒兵の部隊だった、戦場において攻勢をかけるべきタイミングを
つかむためのカンが働かなかったのだ。
一度両サイドに分かれる連邦とジオン、素早い着艦で補給を済ませ、再出撃するジムやボール。
この判断をした連邦軍の大隊長は自分の判断の成功に思わず舌なめずりをする、彼は勝ちを確信した。

その時、その大隊長のジムを含む補給を終えた数機が、突如飛んできた光に飲み込まれた。
戦場を走るその光線は、そのままサラミス1隻を薙ぎ払い、爆発させる。
敵味方が一斉にその方面に目をやる。そのビームを放ったのは戦艦ほどもある、巨大な赤い影に。

「また新型かっ!」
ジャックが叫ぶ。地球軌道でヅダ、基地攻防戦でザクレロ、ソロモンで銀のゲルググ、そしてこのア・バオア・クーでの
この赤い巨大モビルアーマー、ジオンの開発の速度は一体どこまですさまじいというのか・・・。
「なんだ、アイツは!」
「隊長・・・」
ビルとツバサが動揺を隠せずに発する。彼らはこれが戦場デビュー、次々変化する展開に付いてこられるか不安は尽きない。
だからジャックは機動する、その赤いモビルアーマーに向かって。部下を委縮させないために。
「お前らは離れて他との戦闘に集中しろっ!」
二人にそう言い捨てて、怪物モビルアーマーに突撃する鮫の顎。そのほかにも判断の早い者、つまり戦場の急変に動じない
パイロットたちがそれに突撃する。コイツを仕留めればもうジオンに後はないだろう、と。
0387三流(ry
垢版 |
2017/07/18(火) 22:47:34.83ID:EXn3Dp580
十一話でした。
いよいよ書きたかった青葉区の攻防、イグルーのチンピラ連邦軍が
ここで何を考え、どういう意思で行動したのか、それをフォローするのが
このSSのテーマの一つでしたから。
0388三流(ry
垢版 |
2017/07/21(金) 00:07:24.63ID:R+/pgzL40
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十二話 赤の無双

突如現れたその巨大な赤いモビルアーマー、いきなりサラミス1隻を沈めたその巨体に連邦のジムが殺到する、
次々と発射されるビーム・スプレーガンがモビルアーマーの表面に花火を咲かせる。
だがその巨体に致命傷を与えるにはエネルギーが不足していた。おそらくメガ粒子砲クラスでないと
その装甲に穴をあけることは敵わないだろう、だがそれでいい、牽制射撃から近距離まで切り込めば
ビームサーベルで本体を切断することは可能なはずだ、ソロモンでガンダムがビグ・ザムにしたように。
だが、その目論見は外れた。巨体の側面に設置された発射口から無数のランチャーが発射される。
それはジムには向かわず、モビルアーマーの周辺で起爆、爆発は小さく、代わりに粒子がまき散らされる。
切り込んだ1機のジムがビームサーベルを抜くが、刀身部分はゆらぎ、形を成さずに消える。

「ビーム攪乱膜!」
ジャックが叫ぶ。ソロモンで連邦軍が使用したビーム兵器霧散システム、ビーム兵器の効力を著しく
減少する効力がある。この瞬間から火器を持たないジムはこいつに対して無力になった。
すでに戦闘が始まって相当時間がたっている、戦闘開始時にはバズーカやマシンガンを持っている
ジムも多数いたが、すでに皆使い切り、無尽蔵に使えるビーム兵器に頼る情況になっていた。
「みんな、離れろっ!」
そう叫んでモビルアーマーから離れるジャックのジム、しかし遅かった。切り込んだジムたちは、ことごとく
モビルアーマーの大型バルカン、または周囲を飛ぶオッゴの十字砲火によって爆散していく。

後退し、再び中隊と合流するジャック。ビルとツバサに叫ぶ。
「ビル、あいつに近づくな!ビーム攪乱膜だ、何をやっても効かないぞ!ツバサ、残弾はあるか?」
「すいません!たった今、使い切りました・・・」
無理もない、これが戦場デビューの、しかも気弱なツバサであれば、弾を使い切る前に戦死しなかった
だけでも上出来だ。
「母艦で補給してこい!皮肉だがこの戦場ではボールの砲撃が頼りだ!」
「はいっ!」
反転して母艦マゼランに向かうツバサのボール、ジャックとビルは追撃を防ぐべく援護に入り、オッゴを狙い撃つ。

他の隊も同じ判断だった。ビーム攪乱膜を使われた以上、あの化け物の周辺ではボールの砲撃が頼りだ。
いくつもの部隊が合流し、オッゴに対するジムと、モビルアーマーに攻撃を加えるボールの群れに分かれる。
幸いあのデカブツ、さすがに機敏さは無いようだ、ボールの機動力でも十分にとらえられるだろう。
事実、ほどなくボールはモビルアーマーを包囲しつつあった。
が、バルカンの砲門を開いたモビルアーマーは、意外ともいえる細かな弾幕で次々とボールを打ち落とす。
それでも巧みな機動で、一機のボールがモビルアーマーの側面を確保し、砲撃を加えんとコックピットを狙う。
0390三流(ry
垢版 |
2017/07/21(金) 00:09:45.45ID:R+/pgzL40
その瞬間、信じがたい事が起きた。
モビルアーマーはその左腕を動かし、そのボールをわし掴みにする、動いてるボールを、だ。
そして球技の投球のように振りかぶり、そのボールを投げ捨てる。吹き飛んだボールは何と、
側にいた別のボール部隊に次々に激突、まるでビリヤードのように跳ね返り、当たったボールすべてが爆発した。
その信じがたい行動を目の当たりにした誰かが、通信で呟く。
「ニ・・・ニュータイプ、かっ!」
予知能力やテレパシーを有し、目で見ずとも周囲の状況を把握、念動力さえ使うと言われるエスパー、
もしそんなものが存在するなら、今の神業も十分に説明がつく。
そして、そのモビルアーマーは、そんな悪い予感を確信させるように無双を始める。

ボール部隊が苦戦とみるや、そのフォローに入ろうと突っ込んできたのは2隻のサラミス。
モビルスーツと違い、これだけの巨体なら戦艦や巡洋艦の砲撃でも命中は容易だ、艦砲のエネルギーなら
ビーム攪乱膜を貫いて撃沈も可能と判断したのだろう。
だが甘かった、モビルアーマーから先手を打ってミサイルランチャーが発射される。3発放たれたその弾は
曲線を描き、正面から突進するサラミスの横腹に食らいついた、瞬く間に爆発する2隻のサラミス。

遅れて突撃するのは旗艦であるマゼランだった、サラミスが瞬く間に散った以上、もう後戻りはできなかった。
殺られる前に殺る、戦艦の火力で撃たれる前に沈める、メガ粒子砲を赤い悪魔に向けて放つ。当たれ、当たってくれ!
願いむなしく特大ビームはモビルアーマーの頭をかすめる。ビーム攪乱膜の影響もあっただろうが
サラミスが撃つ前に撃たれた焦りが、砲手の照準を狂わせた事実もあった。
その返礼とばかりに、モビルアーマーのクチバシが開く。黄金の光が灯り、瞬時に強力なレーザーが吐き出される。
その咆哮は周囲のビーム攪乱膜を薙ぎ払い、マゼランの甲板から上を嘗め尽くし、吹き飛ばす。
あわや体当たりかというほどの近距離を、炎上したサラミスとモビルアーマーが交錯する。
操縦者も指揮官も焼き尽くされた戦艦はそのまま横を向いて爆発、炎上する。

わずか10分ほどの間に多数のジムやボール、巡洋艦2隻、そして旗艦の戦艦1隻がこの戦場から消滅した。
その恐るべき破壊力、パイロットの技量に、連邦軍の戦士たち全員がほぼ凍り付いていた。
例外のうちの一人が通信に向けて絶叫する。
「ツバサ!ツバサ・ミナドリ二等兵!応答しろーっ!!」
ジャックが叫ぶ。先ほど吹き飛んだマゼランは、その直前にツバサが補給に向かった戦艦だった。
どうか無事でいてくれ、その願いに対する通信は・・・無言。またひとり部下を失ったのか・・・
0391三流(ry
垢版 |
2017/07/21(金) 00:12:24.24ID:R+/pgzL40
「ニュータイプ、赤いモビルアーマー・・・まさか、こんな戦場に!?」
誰かが発したその通信に、連邦兵の多くがひとつの事実を認識する。赤い機体を扱うことで有名な
ジオンのエースパイロット、この手薄なEフィールドに、なんという恐るべき配置を敷いたのか!
「一時後退して、部隊を再編するっ!」
戦死した隊長に代わる隊長代理が撤退を命令する。一斉に撤収するジムやボール。艦もすでにサラミス3隻しかない
全員が補給し、部隊を再編するまで多少の時間は要するだろう。
しかしそもそも敵がビーム攪乱膜を使う以上、実弾兵器の装備は不可欠だった。バズーカやマシンガンを持ってこないと
冗談抜きであの赤い悪魔に全滅させられる危険すらあった、撤収の判断は大正解だったのだ。

「ビル、俺の分も頼む!」
「隊長は?」
「奴を見張っている、待っているぞ。」
そう告げると、ジャックは先ほどマゼランが爆発した地点に向かう。戦艦が爆発したなら破片も多く、
身を隠すには最適だろう。しかしビルはもうひとつの目的にも気が付いていた、だから短くこう答える。
「アイ、サー!」
撤収する仲間を追うビルのジム。後ろに赤い悪魔を感じながら、待っていろ、と闘志を燃やして。

手ごろな破片の後ろに隠れたジャックは声をかけ続ける。
「ツバサ、応答しろっ!誰か、生存者はいないかっ!・・・」
返信はない。マゼランは完全に爆発したのだ。そのエネルギーは戦艦全体を包んで余るエネルギーを発して散った。
生存者がいると考えるほうが不自然だろう。ジャックはヘルメットを上げ、ぼやく視界を直すべく目を拭った。
やるべきことはある、敵の行動を注視し、駆けつける仲間に報告する。この短いインターバルに、
敵が罠を仕掛ける可能性は十分にある。
しかしジャックが見たのは、それとは別の意味での敵の脅威となる行動だった。
0392三流(ry
垢版 |
2017/07/21(金) 00:14:37.55ID:R+/pgzL40
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
過呼吸にあえぎながら、赤いモビルアーマー、ビグ・ラングのコックピットで、オリバー・マイ技術中尉は
自らの仕事、試作兵器の評価をしていた。
「ビーム攪乱膜は極めて有効、しかし、ジェネレーターの出力にふらつきを認む。これはひとえに
パイロットの技量不足に起因するものと思われる・・・」
初めての実戦、殺すか殺されるかの戦場に、戦力としての参戦。それでも彼の本文は評価試験なのだ。
たとえ最終決戦でも、のちに生かすデータがなくても、彼は実戦の中で得たデータを言葉で記録する。
同時に彼は、このビグ・ラング本来の任務を遂行する。下部の巨大な格納庫にオッゴを収納し、兵装を補給、
負傷した部分を溶接し修理、次々と船内に収納し、補給、修理して船外に出す。
そう、このビグ・ラング本来の目的はオッゴの補助兵器なのだ。ただ完成間近で開発が断念され、
最終決戦用にビグロを連結、牽引させることで一応の兵器の体を取った、まさに急造兵器だった。

それを考えれば、彼のここまでの戦果は大健闘と言えた。母艦ヨーツンヘイムを守るべく3隻の敵艦を
破壊したのを皮切りに、この戦場に到着してからも多数の戦艦やモビルスーツを仕留めてきた。
巨大な格納庫をもつビグ・ラングは、エネルギーや格納空間のキャパシティが非常に高い。それを兵器に転用すれば
超強力なメガ粒子砲を発することも、高性能なランチャーやミサイルを多数搭載することも可能だ。
その火力と攪乱膜に助けられ、戦場初心者の彼がここまで戦い抜くことができた。
しかし幸運は長くは続くまい、とも確信していた。おそらく敵は実弾兵器を補充してくるに違いない。
そうなればこのビグ・ラングは巨大な的でしかない、撃沈されるのは火を見るより明らかだ。
それでも彼に迷いはない、彼の周りにいるのは紙装甲のモビルポッドを操る少年兵なのだ。
彼らに比べて、強力な装甲と兵器を持つ機体に乗る自分は何と幸運なことか。
ならせめて彼らを支援する、それがこのビグ・ラングの役目なのだから。彼らを一人でも多く生還させる、
その為にたとえ自分が散ることになっても・・・幾人ものテストパイロットの死を見てきた彼は、
いま自分がその立場にあり、その覚悟さえも備えつつあった。

補給工場となったモビルアーマーを見て、ジャックが呟く。
「なんてこった、移動補給基地だったのか、あの化け物が!」
この空間にジオンの艦艇はいない、オッゴがもう補給を受けられないだろうという連邦軍の思惑すら、
この赤いモビルアーマーに破壊されてしまった。
だが出来ることはある、こっちはその事実をつかんだ、再決戦の前に仲間にそれを伝えれば、油断や慢心からの
死と敗北を減らすことができる。ジャックは味方を待ちながら、通信の準備をする、言葉を決める、勝つために。

やがて連邦軍の部隊が光の点となり見え始めた。一気に距離を縮める彼らに通信をすべく、言葉を発しようとしたその時
別の回線から通信が飛び込んできた。
「一般回線」に。

―こちらア・バオア・クー司令部、すでに我に指揮能力なし、残存の艦艇は直ちに戦闘を中止し、各個の判断で行動すべし―


12話でした。いやぁマイさんすっかりニュータイプ扱いです。まぁあの戦果じゃぬべなるかな(プロホノウ風)
0393三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 01:07:06.08ID:lmBsZLjX0
なんか私だけになってしまった・・・みんなどこ行ったんだよー




MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十三話 叫ぶ宇宙


―繰り返す。こちらア・バオア・クー司令部、すでに我に指揮能力なし、
 残存の艦艇は直ちに戦闘を中止し、各個の判断で行動すべし―

敵も味方も固まっていた。通常回線から聞こえるその通信が意味するところを、信じられないがゆえに。

停戦命令。このア・バオア・クーでの戦争終結を示唆する、そしてこのジオン独立戦争そのものの
終結を意味する宣言。この戦場はジオンにとって、総力を結集した最終防衛線であったことは
連邦、ジオン共によく理解している。そこが墜ちた、つまり向かう先は、終戦―

このEフィールドにおいて、その事実に対する受け止め方は、連邦、ジオンで全く違っていた。
ジオン兵にとって、敗戦の足音はここ最近、日々大きくなっていた。その時がついに
来てしまったのか。覚悟はしていたが、やはり無念ではある。
が、これで戦争は終わる。どうにかこうにか自分たちは生き延びたのだ、との安堵感もある。

対する連邦軍は違っていた。自分たちは戦争に勝っていない、このEフィールドにおいて。
戦闘艦4隻を含む多数の仲間が散っていった、その敵を討つために武器弾薬を補充してきたのに
自分たちの知らないところで勝手に戦争が終わってしまっていたのだ。
ましてやこのEフィールドに投入された新兵たちは、その誰もがこの戦争で肉親や友人を亡くしてきた。
全てジオンの都合だ。コロニーを落としたのも、地球に侵略して略奪されたのも、今さっきまでこの戦場で
多くの仲間を焼き尽くされたのも、すべてジオンの独立したいというワガママのもとに実行された非道、
この上戦争終結までジオンによって決めつけられてしまうのか・・・誰もがやるせない思いにとらわれていた。

それはジャックも同じだった。故郷を滅ぼされ、居場所を消され、兄貴を、エディさんを、指令を殺され
はじめての部下3人をソーラレイで焼かれ、ついさっき、もう一人の部下もいなくなった。
それで都合が悪くなったら降伏か!どこまでジオンのワガママで俺たちを踏みにじれば気が済むんだ!
合流したビルからマシンガンを受け取ると、ジャックは憎しみに満ちた目で、赤いモビルアーマーを睨む。
0395三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 01:09:20.64ID:lmBsZLjX0
―敵を褒めるんだよ―
はっと我に返る、尊敬している兄貴からの言葉を思い出し、その言葉を心に染み渡らせるジャック。

ヅダは実弾を携行していない状態で、ボール部隊に果敢に向かってきた。
基地攻略でのザクレロは勇敢だった、艦隊に身ひとつで特攻し戦果を挙げた。
ソロモンの銀のゲルググは、己の部隊を鍛え上げ、それが全滅した時に悲痛な叫びをあげた。
そして目の前の赤いモビルアーマー。火力はすさまじく、ビーム攪乱膜もある。
しかし冷静に考えれば、一度連邦部隊が撤収した時点で、実弾兵器にさらされることくらい理解しているはずだ。
それでもアイツは逃げない、オッゴを修理し、彼らをかばうべくこの戦場に中心に居座っている。

彼の心から、敵愾心がすっと消えるのが理解できた。停戦命令が出た以上、戦いは終わったのだ。

「くっくっく・・・」
「へへへへへ、へっ、へへへっ!」
通信から聞こえる笑い声にジャックはそのとき気付いた、下卑た、憎しみに満ちた笑い声。
それは連邦軍兵士の憎悪を音にした、つい先ほどまでジャック自身も心に湧き上がっていた感情の音。
それは一人や二人ではなかった、対峙する連邦軍のジムから、ボールから、その全てから敵に向かって
刺すような殺気が向けられていた。
「おい、ビル・・・」
部下を制しようとしたその瞬間、ビルのジムは機動をかけ、飛ぶ。敵の鼻先にいるオッゴの目前に。
ジャックは理解した、彼は赤く燃えさかる憎悪にとらわれている、恋人を殺された悲しみが
行き場を失ったことが、彼を狂気に駆り立てる。ビームガンを抜き、目の前のオッゴに向ける。

「ノーサイド、ってか!?」
ラグビーの試合終了を意味する用語。ホイッスルが鳴ったら、その時点でサイド(陣営)は無くなる。
共に同じフィールドで戦った相手をたたえる時を迎える。
しかしこれはスポーツではない、戦争だ、ましてや連邦兵にとって、これは復讐戦、敵討ちなのだ。

「レフェリーは、ここにゃいねぇよおぉっ!!!」
口上を述べたのは、ビルの最後の良心だったのかも知れない。最初に銃を向けたのだからさっさと逃げるか
反撃でもすれば、自分が無抵抗の相手を殺すことは無い、だが彼の希望は叶わなかった。
無抵抗の相手に引き金を引き、それがオッゴに直撃し爆発、ひとりの少年兵が終戦後に命を落とした。
0396三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 01:11:01.79ID:lmBsZLjX0
それを合図に、連邦軍が一斉に攻撃を開始する。ボールがオッゴを打ち抜き、ビグ・ラングに弾丸が集中する。
「ああっ!待ってくれ、停船命令だ、撃つなーっ!」
敵兵の声が通常回線から響く、その発信源はすぐに分かった。目の前の赤いモビルアーマー。
「何が停戦だ!さんざん俺たちの仲間を、焼き殺しておいてーーっ!!」
憎しみと悲しみに満ちた返信が返ってくる、もう理性は働かなかった。ただ殺戮の意思だけが連邦軍を支配する。

ジャックは皆を止められなかった、元々そんな権限もない、しかも戦端を開いたのは自分の部下、言い訳は効かない
開始された戦闘の責任をとる必要ができてしまった。機動をかけ、悲しい戦闘に突入する。
「どうしてだーーーーっ!」
モビルアーマーのパイロット、オリバー・マイの絶叫が通信に響く。ビグ・ラングは再び砲門を開き、
ランチャーを連射する、そのひとつがまっすぐビルのジムに向かっていく。
ビルは動けなかった。自分がしでかしてしまった事への後悔と、自分が打ち抜いたオッゴのパイロットの悲鳴が
通常回線からはっきりと聞こえていたから。あれは・・・子供の声だった。その行為に対する罰が、
ランチャーの弾丸に姿を変え、ビルのジムを爆発に包んだ。

「バカ野郎・・・っ!」
ビルの無抵抗な死を見てジャックは悟った、彼が似合わないことをして後悔していたことを。
それが恋人サーラが望んだ復讐ではなかったことを。
「あの世で、幸せに・・・なりやがれっ!」
涙を振り払いジャックのジムが飛ぶ。初めてできた5人の部下はすべていなくなってしまった。
もう何もない、あるのは後始末だけ。この戦場を支配してきたあのモビルアーマー、あれさえ破壊すれば
連邦兵の復讐心も和らぐかもしれない、もう他に方法は考えられなかった。

戦場は、地獄と化していた。

停船命令が出た時点から、すべての機体の通信はすべて開かれる。敵味方の報告や指示を聞き逃さないために。
だが戦闘継続中に開かれた通常回線からは、敵味方の絶叫が、悲鳴が、断末魔が、泣き叫ぶ声が
否応なしに飛び込んでくる、ほぼ全て少年の声で。
0397三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 01:12:25.54ID:lmBsZLjX0
「助けて、死にたくないー・・・」ブッ
「お母さん、お父さーーーんっ!」
「墜ちろ、墜ちろ、おちろおぉぉぉっ!」
「嫌あぁぁぁぁぁっ!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁー」ブツン
「ははは・・・あははははははは」ザッ、ザー・・・
「なんでだよ、もう終わったじゃないか、もう嫌だ、いやだイヤダ嫌だいやだ・・・」
「死ね!死ね死ね死ねえーーっ!」ブツン!

幼い少年たちの、狂気に満ちた声が響く戦場、それが尚更狂気を呼ぶ。彼らは死を目と耳で感じながら
泣き叫び、生存のための戦いに身を投じていた。理性も戦術もフォーメーションもない、
味方同士激突して四散する機体すらあったのだ。

ジャックはそんな中、赤いモビルアーマーに狙いを定めていた。向かってくるオッゴをいなし、銃撃をかわし
下を取るべく機動をかけていた。あの機体は下部がオッゴの収納庫であることを知っている、
そこがおそらく奴の弱点だろう。簡単にはいかないが、そこに辿り着ければ・・・
だが、それは彼以外のジムが先に実行する。バズーカを構え、モビルアーマーの腹を狙う。

「スカートの下!」
他とは違う、平静さを保った女性の声が通信に入る。その瞬間、ジムは銃撃を食らい爆発する。
「大尉、大佐!」
戦場外から2機のモビルスーツが突入してくる、青い機体ヅダと銀色のゲルググ!
「世話を焼くのは慣れていても、焼かれるのは慣れていないか。」
女性の声を発するヅダはモビルアーマーの横で止まり、ゲルググはそのままオッゴの前まで飛び出す。
「待たせたな、ヒヨッコ共!」
そう言うとビームライフルを2連発する、その先にいた2機のボールが爆散する。
「友軍の脱出まで、このEフィールドを維持する!」
0398三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 01:13:22.00ID:lmBsZLjX0
ジャックは反射的にゲルググに突進していた。あの声、間違いない。ソロモンで戦ったあの指揮官!
速度を止めずにゲルググに向かい、シャークペイントの盾を叩きつける。
「貴様!この盾はソロモンの・・・」
「連邦軍、ジャック・フィリップス少尉だ!」
「ヘルベルト・フォン・カスペン大佐である!」
戦場では珍しい口上を述べ、2機のモビルスーツの戦いが始まった。盾を起点としたアンバックから
縦横無尽に動くジャックのジムと、ビーム長刀を自在に振り回し応戦するカスペンのゲルググ。
何度も打ち合い、離れ、そしてまた接近。モビルスーツ戦の集大成のような激しい機動戦と
その前の二人の名乗りは、戦場での決闘をイメージさせた。

戦場から悲鳴が消えていた。二人の堂々とした戦いぶりに感化され、冷静さを取り戻し
少年から戦士に戻っていく両陣営のパイロット達。

それと入れ替わるように、戦場に似つかわしくない「歌」が、通常回線から流れ始めていた。

―夢放つ遠き空に、君の春は散った。最果てのこの地に、響き渡った―




13話でした。少年兵の悲鳴を書いていて自分で鬱になってしまった・・・
で、また夢轍です。この戦闘にこの曲は絶対外せません。
0399彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/22(土) 12:09:57.83ID:y1Nfo/Co0
すいません、専ブラ?の方に四話目は書いたのですが、非専ブラには反映されてなかったので念のためここでも書かせてください。

皇女の戦い 第四話

 それは全身がダークグレーの装甲に包まれたMSだった。
僚機同様にステルス機能を宿していたその正体は強靭としか言いようのない姿をしていた。
全身に緑色の小型・板状スラスターが埋め込まれているのも相俟ってどこか冷ややかな印象を与える。
肩と太腿には太めのマッシブな装甲、身の丈程もあるバスターを軽々と持つ腕と脛は程良い太さなのが体型的なアクセントになっている。
兜のような頭部は簡単に貫かせてはくれないような硬さを持っていた。
「流石ガンダムファイターの端くれだな。皇女が参戦するというからお飾りと思っていたら......国を背負って立つだけのことはあるか...」
どこか中性的な声はまるで獲物を狙うかのような響き......
MF内のマリナには音声通信だけで相手の姿こそ見えないが...
冷たく蒼いバイザー状の頭部メインカメラ、中東の太陽に照らされて艶を見せる装甲はパイロットの威圧感を伝えるには十分な外観だ。
「引いて下さい...あなた達との戦いは決して望むものではありません...
私が行くべき場所は知っているのでしょう?」
マリナが感情を訴えるように下げたままの両腕を広げれば、華奢な機体も同じ動作をする。しかし...

「ふふふ、そんな温いことを言っても無駄さ。......お前達、絶対に手出しはするんじゃないよ。」
釘を刺すような声に僚機二体はじっとして動く気配を見せない。
荒くれ者達を従わせる辺りかなりの手練れだと悟ったマリナは口をきっと結ぶ。
0400彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/22(土) 12:13:32.75ID:y1Nfo/Co0
埋め立てですか、という表記のエラーが出たのでここでのレス(専ブラではない場所の)は一旦中断します。

スレ汚し失礼しました。
0401三流(ry
垢版 |
2017/07/22(土) 18:37:19.26ID:4IkYhA59O
>>400さん
あ、それ連投規制です。
他の誰かが書き込むと続きが投稿できますよ。
私は1レス投稿したあと自分のガラケーで割り込ませていますw
0402彰悟 ◆9uHsbl4eHU
垢版 |
2017/07/22(土) 20:23:43.85ID:y1Nfo/Co0
教えて頂いてありがとうございます。
規制だったのですね。

不勉強なものでw
自分でももっと色々2chのこと調べてみます

裏技もメモさせて頂きましたw

僕の場合、ここに書くと専ブラの方のスレで僕の文がダブってしまうのでここに書くのは止めようと思います。
重ね重ね失礼しました。
0404通常の名無しさんの3倍
垢版 |
2017/07/22(土) 23:24:44.77ID:7OBY2cGa0
ちょっとわからんな
ひょっとしたらなんだったっけ、一昔前にできた2chのそっくりさんサイトと二重投稿になってるってことなんだろうか?
だとしたらだけど普通に専ブラ1本で投稿すりゃいいだけではないのか
違ってたらすまん、そして職人氏方投稿乙
0405三流(ry
垢版 |
2017/07/23(日) 11:16:09.74ID:NO7CT/iv0
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十四話 心の青山


戦場は整然とした機動戦へと変貌しつつあった。オッゴが小隊単位で編隊を組み、
ジムはボールと連携して狙撃と格闘戦を入れ替える。他の戦場から駆けつけたザクやリックドムは
オッゴの隙間から彼らを支援し、巨大なモビルアーマー、ビグ・ラングを守る。
その戦場の最中心で、激しく機動し、戦う2機のモビルスーツ。
鮫の顔が描かれた盾を持つジャックのジムと、ジオン軍カスペン大佐の銀のゲルググ。
その激しい戦いに、誰もが横槍を入れることはできなかった。誤射して味方を討つ危険もあるし
なにより見惚れるほどの見事な機動戦、彼らはちょっかいを出すのではなく、二人に負けない
戦いをしたいと思い、他の敵と対峙する。

「やるな小僧!、だがそれだけの研鑽を経ていながら、何故だ!」
寡黙なカスペンが珍しく敵に問う。通常回線が開いている現在、間近で戦うジャックの存在は
息遣いまで感じられる。
「何がだ!」
ビームサーベルとビーム長刀で鍔迫り合いをしながらジャックが返す。
「停戦命令は聞いているはずだ、貴様ほどの技量を身につけていながら何故戦う、道理はわきまえぬか!」
それは説教のようでもあり、現在の状況にいたる経緯を説明させる質問でもあった。それを察してジャックが返す。
「道理?俺たちの居場所を、大切な人を奪い続けたお前たちがそれを言うか!」
自分の意見より、むしろ戦場の味方の本音を代弁するつもりで返し、続ける。
「コロニー落とし、地球侵略、各所の戦争、お前らの独立のためにどれだけの人が居場所を失ったと思ってやがる!」
鍔迫り合いを打ち払い、ゲルググの盾を蹴って距離を取る。しばし対峙し、カスペンが返す。
0406三流(ry
垢版 |
2017/07/23(日) 11:17:28.52ID:NO7CT/iv0
「青臭いな、小僧。」
思わぬ返答に顔がこわばる。反省や謝罪など期待してはいなかったが、その言葉には黙っていられない。
「なんだと!?」
「居場所とは作るものだ・・・我らスペースノイドが、常にそうしてきたようにな。」
「作る・・・?」
その言葉を咀嚼するのには、ジャックにはしばらくの時間を要した。
「人生至る所に青山あり、我々スペースノイドの指針となる、東洋の言葉のひとつだ。」
骨を埋める場所はどこにでもある、生まれ故郷にこだわらず、どこにでも行って活躍しなさい、という意味の諺。
「宇宙という過酷な環境、真空の恐怖、衣食住の確保、そんな敵と戦い続けて、我々はジオンという
『居場所』を築きあげてきたのだ、先祖から与えられたのではない、自分たちで作り上げたな。
その居場所の独立を願って、なにが悪いというのだ?」
カスペンの口調は、いつのまにか年少者を諭すものに代わっていた。素晴らしい技量を持つ若者なればこそ。

「我々が殺戮をしていないとは言わん、恨まれるのもぬべなきこと。だが、それに溺れて未来を見ぬなら
貴様もそれまでの男でしかないぞ。」
言葉を聞くジャックは、それが憎むべき敵の建前でないことを感じ取っていた。それは目上の人の言葉、
かつての兄貴に教えられた言葉を聞く感情と、すごく似ていた。
「居場所がなくなったのなら探せばよい、作ればよい。失ったことを嘆くばかりでは何も変わらぬ!」
「・・・余計なお世話だ!」
盾を振って機動、スラスターを噴射し、ゲルググの右下を取り、サーベルを振る。
憎しみはもともと消えている。ただ、彼の言葉を連邦の兵士はどう取っただろうか、聞く余裕はあっただろうか。
そのサーベルを盾で止めるゲルググ。

「今は戦っても構わぬ、だがそうするならその恨み、決して未来に持ち込むな、貴様は貴様の先を見ろ!」
ビーム長刀を回転させ、ジムに切りかかる、ジムは盾で受ける、シャークペイントの横面が焼け、傷つく鮫。
もう言葉はいらない、言いたいこと、言うべきことは言った。あとは戦いが未来を決めるだろう。

―果て無き夢轍、照らす我が運命、燃え尽きること知らず、どこへ向かうのか―

回線から流れる歌が、少年戦士たちの心に染みる。生きたい、自分たちの向かうところを知るために。
それでも戦闘を止めることはできない、ここは戦場であり、彼らは未熟なれども職業軍人なのだ。
停戦命令の後でも、味方が危険なら身を呈して戦う、それが兵装を持つ国家軍人の業。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況