そんな訳でニトログリセリンを使った短編です、はい

機動戦士ガンダムU.C.0079 ガラス瓶の中の舟
第1話 ひかりひとしずく 1/3

OPテーマ 佐藤博 - Hopeful Heart
https://youtu.be/k99QoF8igks

 サイド6(戦後は新サイド5)の23バンチコロニー・バマコはかつて連邦寄りの中立表明島だったが
急進派の新市長がジオン寄りの政策を示した為、不穏な空気が漂い、さながら火薬庫の様相だった。
またこのコロニーは隣接する24バンチ・クールラント(完全中立)と折り合いが悪く
時折、互いに目掛けて推進力のついたスペース・デブリが流れる程だという。
なおバマコとはバンバラ語で「ワニの尾」という意味である。

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 ラザルス・コーウェル(9)は、ツチハンミョウが掘ったにしては大きすぎる穴を刮目していた。
「何だろ、これ」
そこから顔を出してたのは、平べったいがツチハンミョウの幼虫の顔ではなく、瓶の蓋だった。
ツチハンミョウよりは大きいが、それでも彼の小さな手で掘り出せる程だ。

 この悪童は通学路のコンクリート擁壁に伸びた葛の蔦を登り、その上のセイタカアワダチソウの茂みを越え、
(彼にとっては)彼だけが知っている秘密の場所、立派なタイサンボクの木陰に、ローゼルの苗を植えようとしていた。
(木の爺さん、ゴメン。でもこうしないと、ぼくのアパートじゃ花を育てられないんだ...)
それで木陰の中でも陽当たりが良くて、タイサンボクを傷つけないような場所を探していたら、これを見つけたのだ。
「せいさんコーラでも入ってたら怖いなぁ...でも気になるや」
ラザルスはコロニーの外にも、中にも、危ない物を捨てる悪い大人がいるのは父や母や兄から聴いていたので、
この歳頃の悪童にしては、慎重な方だと自負していた。
実際、虫の知らせのようなものがあり、彼だけ友ガキ連中でも妙に叱られにくいという実績がある。
ラザルスは大根を引っこ抜くようにではなく、周りを柔らかく崩して、井戸に落ちた子象を引き上げるような手つきで
それを、悪い顔して、手中に収めた。
「穴は、つかえる!」
そしてお詫びのつもりか、残った木陰の穴にローゼルの苗を植え込み、そろりそろりとその場を後にした。

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 しばらくして、同じ場所で二人の若者が転がりながら殴りあっていた。
「ないってどういうことだよ、ヤッフェ!!」ゴロゴロ...
「こんなところに来るヤツもいるまいに、瓶もないんだよ、ブルース!!」ゴロゴロ...
「ないない尽くしで済むか、この野郎!!」ボコボコ!!
「じゃれてる場合かよ、こん畜生!!」ボコボコ!!
「おっと、崖だ!!!」キキーッ!
「あふ '' ねぇ!!!」グググググ...
「...見ろよ、泥のついた靴で降りた後があるぜ」
「大人の幅じゃないな、子供か小人症だ」
「「探せ!!」」ボロボロ
ブルース&ヤッフェ vs ラザルス vs ダークライの鬼ごっこが始まる。
その様子をタイサンボクの木と、ローゼルの苗だけが見ているようだった。