機動戦士ガンダムU.C.0079 ガラス瓶の中の舟
第2部 手をつないで

 マリモラ・オセチアーナは遠縁の親戚を便り、サイド6のバマコ・コロニーに疎開してきた少女である。
ある夏の日、扶養家族は彼女を置いて休暇に出てしまった。
プライベートビーチにまで、給仕を連れていこうとは考えなかったのである。
「ふぅ......Zzz...」
天気のいい朝、マリモラは悪い気はしなかった。
よそ者の自覚があればこそ、こういう時に気を抜ける。
彼女は庭の白樺の幹に背中を預けて、うたた寝をしていた。
「ばぁ!」
「ひゃっ!......なんだ、ラジーじゃない」
ラジー(ラザルス)は木の枝から逆さにぶら下がって出てくると、
器用にジギタリスの花茎を、マリモラの黒髪に差してやった。
「どうしたんだい?ため息なんかついて」
「(髪に何を差したんだと訝しがりながら)
 あたし、あんたみたいに元気っ子じゃないだけよ。
 知ってるでしょうに」
「せっかくの休暇なんだから、外に出ればいいじゃないか」
「何処に?」
「へへっ」
ラジーはマリモラの手を引いて、駆け出した。