第23話 新街大波乱 Part3

「見て驚け、俺の普通免許はバイクだって乗りこなしてみせる!」
「僕だってアッポルダムでゴールド免許を取ったさ!...ママチャリの」
堤でズッこけて還って来れなそうな怪我をしたチンピラ達からバイクをおパクリ、
僕たちは Roaring 20 とバルトを追って夜のとばりをひた走る。
さて山南のバイクがドーンと音を立てて散らばったので、僕も一時停止するとドーン...
互いにチリチリパーマのガニ股サ...ろくに点検してない事故車両には二度と乗るまい。

そうして着いた先はヴィトスラヴリツィ、すなわち「木造建築ミュージアム」。
短機関銃の銃声、対戦車ロケットランチャーの爆音。
博物館の静かな恍惚感には程遠いBGM、いやBGVがヴァンダルの特別展示を催していた。
「来たけど、どうするよ」
「どうするもこうするもねぇよ」
そんな音も徐々に止み、双眼鏡を手に博物館をタダ見すると、
大半のゴロツキが蜂の巣となっており(ローターに巻き込まれた者は不出来なスライスに散った)
最後の2人を1人、また1人とファンファンのオプション機関銃が掃除しているところだった。
やがてファンファンもホバリングを止め、静かに着地する。

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「大将を仕留めた......うぅ......連中も独り独りは弱いから、もう襲って来ないよ」
駆け寄ってみると、バルトは腹部に銃弾を浴びていた。
おそらく脂肪が出血を抑えているが、多分もう...
「バカ野郎......ガラにもねぇ......ハッチも閉まらない機体を使うから......」
僕には、かける言葉が思いつかなかった。
「サンちゃん、頼みがある......ふぅ...僕を、この機体と一緒にヴォルホフ川に流してくれないか...?」
「それは出来ない」
「...そうか、.........武運を祈るよ」
バルトは漸く、平和な世界に旅立ったのだろう。
「バルト...山南?」
「...展示品を運ぶトレーラーがあそこにある、幌を外せばコイツらも運べるだろう」
「......分かった、ペペたちの方も気になるしな」
なるべく痕跡の残らない石畳を選んで、僕たちは悪夢のナイトミュージアムを脱した。