X



あ part3  .
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0585ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:29:33.82ID:a9TrVj340
機動戦士ガンダム ジオンの還る日 ~ U.C.0079 無銘天翔 ~
第104話 カナメモチ白書 ~ 枯れ木も山の賑わい ~

OPテーマ Rynat Gaysyn, Aygul Ulkenbaeva - Saltanat
https://youtu.be/HNaZUx5WJJE

~ 旧カザフスタン アルマトイ ~

「リンゴ酒のかほり...ハンス・ギーベンラートにでもなった気分」(ヴィシー)
「この季節の川に落ちたら死にますよ?」(カロル)
天山山脈を越えて入った南都アルマトイは、飄々と雪化粧を被っていた。

~~~~~

> 第二次世界大戦中、アルマ・アタには戦火を逃れるために工場や病院、大学、映画撮影所などがヨーロッパ・ロシアから続々と疎開してきた。
>ソ連の映画撮影所モスフィルムとレンフィルムが移転したアルマ・アタに中央合同劇映画製作所が発足、当時のソ連製映画の約8割がアルマ・アタで制作された。
>アルマ・アタで映画技法を学んだ人物の中から、中央アジアの映画界で活躍する人材が多く現れた。
>戦後には日本兵捕虜の収容所が設置され、科学アカデミーや発電所の建設に使役された。
>市内には日本兵捕虜が葬られた墓地が3か所存在する。

~~~~~

 市街地は全体的に、斜面になっていた。
「なんでまた、こんな高い方に停めるんすか?」(フィッツ)
「高山地帯では高いところの方が貧しいと、相場で決まっているんだ。
 貧すれば自然と秩序は崩れる、無秩序の中なら...例えばMSが入っても目立たない」
「もっとずっと高いスペースコロニーに流される人たちも、あんまりお金ないもんね」(イオン)
「稼いだら連邦政府に税金むしり取られるし...」(ペペ)
「いっそジオン軍に投降しちゃう? 保護者同伴なら着いていってもいいわよ」(シ=ラーチャ)
ペペに笑いかけるシ=ラーチャにカロルは苦笑する。
「無謀な家族計画は置いといて...僕はデッシュを整備して、不凍液ぶっかけてから夜間偵察に出ようと思う。
 この際だから、ヴィシーさんにも要領を掴んでもらおう」
「分かりました! では、何から?」
「では先ず、不凍液が機内に入らないよう、コーク切れの確認から...」
「カロルさん、出来る感じになってきたんじゃないスか?」
「じゃ、私たちは例によって買い出しに行きましょ♪ 
 イオンだって地球の闇市は全然知らないでしょうから」(シ=ラーチャ)
「何それ、気になる!」
「じゃ、わたしはフィッツと留守番してるね」(ペペ)
「いや、ぺぺはフィッツのおつかいを見守っててくれ」
「? 何か不足でも」
「少し大きな買い物をしてもらう」
カロルが渡した紙を、ぺぺは思わず二度見した。
「これって…」
コクトべ遊園地の駐車場跡には他にも、何処の馬の骨だか分からないテントやキャンプカーが疎らにあるようだった。
0586ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:30:42.74ID:a9TrVj340
ーーーーー

~ アルマトイ 尾根側 ~

「偵察隊が挙動不審のファットアンクルをキャッチ、霧のため追跡を断念したとのことです」(コルラ・リ・ハザラ)
「機体に割り振られた番号が、カラコル基地のものと一致するとのことだな?」
「はい、塗り潰す間もなかったのでしょう」
奴らめ、ジオン軍の敵味方識別コードまで何かに使うつもりか、とシュパエフは眉間に皺を寄せた。
「どのみち、この気温では塗料の渇きも遅い...
 引き続きの探索と、悪天候時はくれぐれも無理をしないよう念を押すこと」
「はっ」
(フォーヴズ、いや今はネストルだったか...こんなところで死ぬのではないぞ)
バレク・シュパエフ大尉のギャロップ改・ダブルダッチは高所を取り
宿敵のカロルたちを見つけ次第、一気に駆け下りて討ち取る構えだった。

「ねぇ、もしもこの娘が向こうにいたら教えてよ」
その男はシュパエフの背後を取り、写真を見せてきた。
「...この作戦は貴官のガールハントに非ず、キャスパー殿」
「違うってば、ここの印字を見てごらん。
 これは僕の実家、フラナガン機関のマグショットだ。
 マハの仕事を、マルチタスクで引き受けてほしいだけだヨ」
「なるほど、それなら承知した。...正直、気に入らん。女をつけ回すなど」
「僕も戦場で気に入ってなかったら放置してたと思う」
「戦った? ニュータイプとは、分かりあって争わないものなのでは?」
「無理を言っちゃいけない」
キャスパーはカラカラと笑った。
「…屈服させたい時だってあるのさ」

ーーーーー

~ アルマトイ 麓側 ~

 イシク・クル東岸カラコルを後にしたバルクイチ基地の連邦軍は、
キャタピラーのついたジュノー級潜水艦「ザトイフェル」を用いてアルマトイの山裾を占拠していた。
「知りませんでした、ジオンならともかく連邦軍でこんなビックリドッキリメカを...」
「それはそうだろう、一度開発中止でお蔵入りになっていたものを
 天山特務が廃棄リストの流用でコツコツと完成させたのだ。
 コイツの活躍はここからよ」
リヒャルト・ゾルゲ改めウィリアム・アブエル少将は、包囲網を広げつつ支援装備の来着を待っていた。
「連邦軍の検問、とくと見よ」

 電報を手に、通信兵が立ち上がる。
「ミデア隊、間もなく到着とのこと!」
「この上、何が来るんです...?」
0587ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:32:11.12ID:a9TrVj340
ーーーーー

~ アルマトイ市街地 ~

「ねぇ、何処まで行ったのかしら」
「? 地球の何処まで来たかってこと?」
乾いたナイトマーケットの雑踏の中、シ=ラーチャの問いかけに困惑するイオン。
「黙ってたって分かるものよ、あの山で何かあったんでしょう」
「カロルは何も悪くないよ、あたしが寝てる間にやった」
「キスとか?」
「Cまで全部」
「...あらまぁ」
シ=ラーチャは顔を顰めて、すぐ口元を手で隠した。
「...Dに向かってないことを願うわ」
「かっぱらった軍用機にもゴムくらいあったよ」
「ゴム? どの辺り?」
「そりゃタコ部屋のベッドの...気にしてない?」
「私とカロルはもっと深いところで繋がってるから。
 ...貴女は彼が好きなの?」
「......優しくしてくれた」
「...お尻の軽いことで」
「うっさいバイマザコン」
闇市は賑わいを見せていた。

~ アルマトイ上空 ~

「こっちがウケ(パッシブ・レーダー)でそっちがタチ(アクティブ・レーダー)、それから目視も忘れないように。
 分からないことは?」(カロル)
「いえ特には。
 風が落ち着いたら、早速交代しても?」(ヴィシー)
「勿論、どうぞ」
「しかし...綺麗な夜景ですな」
「戦争でなければもっと瞬いていることでしょう」
「今だけの景色、今だけの関係...」
「様々な経験をされたのでしょうね」
「何でしたらシライさんとイオンさんとは戦ったこともあります」
「え、何処で?」
「ブラナの塔あたりで、彼女たちのガンタンクと撃ち合ったのですよ」
「...ジオン軍所属?」
「抜けてきました、本土に帰ることも出来そうにないので」
「成程...カザフ(放浪者)の大地だ」
カロルは山裾に広がる都市圏に目をやる。
「ずっと飛んでいたら目立つ、そこの民間空港に降りましょう。
 コーヒーの1杯も如何です?」
「いいですね、地球産のうんと熱いのを」
「遊牧民は旅人に優しい、僕の経験則です」
0588ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:33:56.37ID:a9TrVj340
ーーーーー

~ アルマトイ 麓側 ~

 ミデアから降りてきた士官は、防寒着の1番上だけを留めてマントのようにしていた。
「強がってんのか?」
「白い悪魔を貰って中二病かよ」
「お年頃ねぇ」

「歓迎する、ええと」
「サバス・サマワ少尉です、こちらこそお世話になります」
ウィリアム・アブエル少将は熱いコーヒーを勧めた。
「ミルクは?」
「ブラックで結構です」
「なぁ……女性の身嗜みに好みを言うつもりはないのだが
 そのコートから覗く、背中の猟銃は下ろしてくれないだろうか?」
「…失礼しました」
猟銃を抱えて置き直すサバス少尉はやや赤面しているようにも見える。
「今日は酒でも飲んで休むといい、あと猟銃はコックピットに仕舞っておくこと」
「了解です!」
アクアビットの瓶を勧めるアブエルも大概だった。

~ アルマトイ 尾根側 ~

「所属不明のデッシュをキャッチ、民間空港です。
 また連邦正規軍のセイバーフィッシュも複数飛来している模様。
 合力したのかもしれません」
電報を受け取った士官が外のシュパエフに報告する。
「ご苦労。さて、疑いは濃厚だが…」
近年の連邦軍も多少のミノフスキー粒子対策はしており、デッシュ程度ならラジコンで暫く飛ばせるという報告もある。
「威力偵察なんていいよ、一気呵成に攻め取ろう」
「キャスパー殿」
その男はウォッカを1パイント空けてグッと飲み干した。
「その紙飛行機たちの中には僕の恋敵がいる。
 人質にはピッタリだし…花火にしても注意は引けるさ」
「そこまで仰るのなら、今回はキャスパー殿の勘に賭けるとしよう。
 総員出撃準備!」
武装ホバークラフトのハッチが次々に開いていく。
「感謝するよ、シュパエフ大尉」キャスパーは陽気な笑みを浮かべた。
0589ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:34:08.79ID:a9TrVj340
~ アルマトイ市内 民間空港 ~

BGM Darkhan Juzz - Erikpe
https://youtu.be/HiuR7Ao-6hU

「ガマルニクさん。
 僕はバーテンダーとして客の詮索はしない主義なのですが、ここはカフェです。
 旅には土地勘のある人がいれば心強いものだし、いくつかお尋ねしても?」
「ええ、かまいませんよ。
 私はエゲル・ヴィッサリオン・ガマルニク。
 ジオン公国の31バンチ/ブリュタール出身で、前職は長くエレカ整備工などを。
 この戦争では工兵として突撃機動軍に入れられ、先ずオデッサ基地に配属されました」
カロルはまだ熱いコーヒーに軽く口をつける。
「でも戦っていた、ということはMSにも乗っていたのですか?」
「ギガンの改造機体です、立ってるものは親でも使う有様でしたよ」
「…となれば、この戦争も終わりが近い」
ヴィシーは一口もつけずに湯気が立つままにしている。
「少なくとも重力戦線はもう直ぐ終わりますね、やたらと残党が潜伏しない限りは」
「…フロッグボールを売る先は、直ぐにでも見つけたいですね」
「ごもっともです。次の生活を考えないと」

 後ろで銃声が鳴り響く。
カロルとヴィシーは咄嗟にテーブルを倒してその影に潜んだ。
「嗚呼、このスリルから立ち直れるのだろうか…」
「フロッグボールをシェルターにしてみては?」
「生きて帰れたら考えましょう」
二人は拳銃を抜いた。
0590ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 11:35:34.09ID:a9TrVj340
ーーーーー

 対空砲仕様の小型アッガイとセイバーフィッシュ、グフ飛行試験型と陸戦型ジム。
民間空港周辺では既に戦闘が始まっていた。
「こっちに倒れてくるぞーっ」「私の家が…」
アルマトイの画一的な町並みが火に包まれていく。

 カロルとヴィシーも空港施設を出て、瓦礫と粉塵の中を掻い潜っていた。
「止しましょうカロルさん、デッシュはもう…」
(油断した、というのか…)
「カロル!」
「無事っスか!」
丁度ぺぺとフィッツのガンタンクが空港に乗り付ける。
「丁度いい、ちょっと向こうまで乗せてくれ!」
「手際のいいことで」

「無理ッスよ、諦めないと」
デッシュは翼やコックピットに流れ弾を受け、とても飛べそうにはない。
「コアユニットだけでいい、剥がせるか?」
「えっ、そういうのはちょっと」「やってみるね」
「ぺぺ?!」ガンタンクのマニピュレーターは意外に器用だった。
「こんな感じでよかった…?」
「…よくやった!」
「年金の足しには十分ですな!」
「まだ子供なんだけど…」

「デッシュのコアとガンタンクの通信機能を接触回線させれば
 カプチャガイ(近郊都市)まで連絡できる、ありったけの白バスを出させるんだ!
 チャコとイオンには直ぐ戻ってファットアンクルを発進させるように!」
「はっ、はい!」
「ぺぺ、慣れないとは思うがマニピュレーターで瓦礫を退かして逃げ道を作れるか?」
「わ、分かった! カロルはどうするの?」
「買い物は出来たな?」
「う、うん」
「それを使う、ヴィシーさんも来てくれ」
「私でお役に立てるので?」
「…車輪がついてればみんなエレカだ」
滑走路には灰の雪と火の玉が降り注いでいた。

EDテーマ アミーロフ : 弦楽オーケストラのための交響曲「ニザーミーの追悼のため」第4楽章
https://youtu.be/ZiHSq_HVfdw
0591ダーバン亡命政府 ◆PujdL0.qWI
垢版 |
2023/03/20(月) 12:00:54.72ID:a9TrVj340
第104話脱稿!
ピーチェルから中国の目と鼻の先まで来ました

掲載時期からかなり前になるので補足しますと、シュパエフが言ってたネストルというのはカロル一行の初期メンバー、ネストル・ドニエストルです。
同郷のよしみで一度見逃した敵を未だ案じてるわけですが、彼女はカザフスタン編1周目のアクバスティ回で大火傷して一旦リタイアしているのを相手は知らない、という具合

やたら偽名を使っていた連邦軍の少将さんはウィリアム・アブエルで一先ず固定です。
この名前は実在のスパイ、ルドルフ・アベル(本名ウィリアム・フィッシャー)をもじったものです。
ジムばかりだとカロル一行と紛らわしいので、今回の戦闘からガンダムタイプを導入します

カロルがカプチャガイから呼んだ白バスはペテロブルク回にも出たもので、WW2中にユダヤ人を救出するために使われたソレが戦争難民全般に適用されてるという設定です。
カプチャガイは去年からコナエフと呼ばれてるそうですが、昨今ロシア風の名前は如何かと思い旧称を当てています

次はとりあえずモビルワーカー戦記の続きを出します、では!
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況