■高橋大輔選手、宇野昌磨選手らにインスパイアされた“もうひとつの世界”を小説で味わってほしい。
スポーツライターの小宮良之さんが小説『氷上のフェニックス』を刊行します。

――取材者として、高橋大輔選手のどこに惹かれますか? 

小宮:やはり、「開拓者」であるという部分ではないでしょうか。日本男子フィギュアスケートは、かつて五輪でメダルを取ったことがなかった。
それを2010年のバンクーバー五輪で初めて勝ち取ったのが高橋選手で、その後の日本にフィギュア人気をもたらしました。
他にも、世界選手権やグランプリファイナルでも日本男子初優勝を果たし、次々に風穴を開けていきました。
陳腐な言い方になりますが、「パイオニア」は格好いいと思います。

――高橋選手にインタビューしてみて、なぜその快挙を成し遂げられたのか、何か見えてくるものはありましたか? 

小宮:彼は人間として、とても真っ直ぐでした。何の濁りもないというか。子供のままの無邪気さを失っていない。
それは巨大なエネルギーになると思います。だから、未知のことに体当たりできる。
高橋選手と話をしていると、とても柔らかい口調だし、気づかいも細やかで、冗談にも乗ってくれるんですが、
絶対に嘘をつかないし、大切なことはけっして誤魔化さない。物事に対して、とてもまじめで。
その不器用さが男っぽくも映ります。卵が先か鶏が先かですが、尊敬できる人柄ですね。