まさか、自分にあんな映画のヒーローのような体験のチャンスが巡ってくるとは、その時は夢にも思わなかった。宇都宮線内で、俺はたまたまその事件現場に遭遇してしまったのだ。
「やめてください、お願いですから……」哀願する女子生徒を取り囲むように、
「いいじゃねぇかぁ、少しくらいつきあってくれてもよう!」と、3人のチンピラ。
「……やめないか、悪党!」思わず、口をついで出てしまった挑発の文句。もう後には引けない。逆上する3人のチンピラ。ナイフを手にしたやつもいる。ならば……と、俺は左手で、懐から生徒手帳を取り出す。
「生徒手帳キック!」俺はすかさず、正面のナイフを持ったチンピラの鳩尾に蹴りを叩き込む。悶絶し、倒れるチンピラ。
「生徒手帳裏拳!」返す右拳を、唖然とするモヒカン頭の顔面に叩き込む。鼻の骨が砕け、昏倒する。
「生徒手帳エルボー!」もう一人のチンピラの頭蓋骨を砕く。
「生徒手帳チョップ!」残るひとりの頚動脈を断ち切る!
一撃必殺!
一瞬にして、俺を取り囲むように倒れ悶絶する血ダルマが、4つできあがった。
「次からは、相手を見て喧嘩を売ることだな……。」
返り血で真っ赤に染まった生徒手帳を拭き取りながら、そっと、俺は勝利をくれた生徒手帳につぶやいた。
「なって良かった。正義マン。」