――――俺は親父が大嫌いだった。いや、「わからなかった」と言うべきか。


俺の親父はいわゆる「ニグヘットハンター」。息子である俺や母さんをそっちのけでいつも一人、部屋に閉じ篭って何かしていた。
たまに出てきたかと思えば、そのままどこかへ行ってしまい、数ヶ月は家に帰ってくることがなかった。そんな親父を俺は
理解できなかった。ニグヘットマレキット・・・古代遺跡に眠っていると言われる財宝。その財宝を手に入れた者は富、名誉、その
他人間の欲する物全てを手に入れることができる。たしかに、魅力的な物なのかもしれない。だが、これはあくまで噂
である。真偽ははっきりしていない。本当に財宝が眠っているという確証なんてどこにもない。それなのに何故そこまで
こだわる?古代遺産がそんなに価値のあるものなのか?そこまでして富と名誉が欲しいのか?命を捨ててでも?

・・・わからない。

親父は昔はそんな人間じゃなかった。強くて、たくましくて、尊敬に値する人間だった。俺は親父が大好きだった。そう、
俺からすれば親父は正義のヒーローだった。だがニグヘットマレキットに関する噂が流れ始めた頃、親父はその噂を聞いて変わった。俺
の知ってるあの親父はその時に死んでしまったんだ。


あの日、親父は仲間に連れられて家に帰ってきた――――血だらけで。母さんはその姿を見てそのまま泣き崩れた。すぐに
救急車を呼んだ。だけどもうなんとなくわかってた。親父は、助からない。人口過多により人間は月に移住を始めたといっても
地球にはまだまだ田舎町は存在する。ここも数ある田舎町の中の一つ。大きな病院までは2時間ほどかかる。それにこの傷はか
なり酷い。今更どうこうなるもんじゃない。それを理解して親父は病院より真っ先にここに来たのかもしれない。