同様のことは、安倍首相についても言える。

昨年の2月に、当該用地の貸借及び売買契約締結過程に対し疑義が生じた時点で、
「私は関与していないが、国有地の売買等の問題は重要なので、念のため、麻生財務大臣に指示して、経緯について調査させる。」
と明確に表明すべきであった。

しかし、安倍首相は、実際には、
「私や妻が関わっていたら、首相や議員を辞める。」
と大見得を切ってしまった。

仮に、前記のような調査が速やかに行われていれば、当該用地の問題は、
「籠池氏という強引な人物が近畿財務局に強硬にねじこんだため、財務局及び財務省内で、公正とは言い難い意思決定が行われ、執行された」
という構図で終わったことだろう。
また、今般の行政文書改変問題も、発生しなかった可能性が高い。
その意味では、やはり危機管理における初期対応において致命的な過ちを犯した。

首相と財務相の両者に共通しているのは、対決相手を野党と見るかメディアと見るかにせよ、過剰な防衛反応が働くこと。
しかし、それがゆえに危機管理を失敗するのでは、戦略的思考の欠如という非難を免れない。