それから、君が再三にわたり「酒を飲むやつが、ベンゾなどの向精神薬を否定するのは矛盾している」という類の主張は、ある意味その通りでもある。
なぜなら、向精神薬も酒も、血液脳関門を透過し、程度の差はあれど脳に作用するという観点でいえば違いはないからである。

しかしながら、向精神薬の服用には“病名”というレッテルが付随してくる。
これが大きな違いであり問題なのである。

実は「脳に作用する」物質は一般的な人々が認識している以上に沢山の物質がある。
身近なところでいえば、香辛料であったり…、リポビタンDなどのいわゆる栄養ドリンクであったり…、意外なところでは線香であったりなどである。

しかし、そうした物質と酒やタバコなどと向精神薬との決定的な違いは、先述したとおり“病名の有無”なのである。
ある意味、すべての向精神薬を嗜好品や違法ドラッグとして、製薬会社が社会に流通させるのであれば、それでもいいだろう。
なぜなら、もしも向精神薬がそうした位置づけであれば、それは個々の自己責任において摂取の是非が判断されるからである。

しかし現状は違う。

病名という架空の概念を本人やその家族に植え付け、しかも向精神薬を安全で非常にクリーンなイメージで服用させるのである。
これでは、覚せい剤を「安全なやせ薬」などと言って女性たちに売りつけ、その虜にさせるヤクザやプッシャーとかわりがないではないか…。

こうした現状をどうとらえるかは、個々の情報リテラシー能力に委ねられるのだろう……。