「今はなんとかやっているが、私たち夫婦が倒れたら本人はどう生きていくのか」。都内の70代の父親は、約30年間ひきこもっている40代の長男をそう心配する。
 70代の妻と長男の3人暮らし。長男は中学3年生の時にいじめがきっかけで不登校になり、夜間高校に入ったもののすぐに通わなくなり、ひきこもりになった。
長男は精神的な不安定さから暴れて物に当たり、自宅の壁には穴が開いていた。
 父親は単身赴任が長く、長男と向き合えないまま過ごしてきた。仕事を引退した10年ほど前から、ひきこもりの子供がいる親らの家族会に参加するようになった。
「まずは息子を受け入れよう」と考えるようになり、徐々に会話ができるようになっている。
 ただ、生活は父親の年金に頼っている。長男には月2万5000円の小遣いを渡しているが、
「自分たちが死んだ後はどうするのか。息子が自立できるよう、人とやり取りできるようにさせて、いろんな経験を積ませないといけない」と、焦りを感じている。