脳裏にあったのは、「あの時は本当に大変だった」と振り返る17年5月9日の大規模システム障害だ。
同日は「通貨の価格が他市場の10倍くらいの異常値がついた。
原因究明などのために6時間もサーバーを止めた」のだ。
障害発生から取引停止まで約20分間取引が可能だった時間帯があったが、
その間に成立した売買をなかったことにするロールバックという措置を適用。
ロールバックに納得できない顧客が「会社まで訪ねてきた。
電話もひっきりなしに鳴った。2週間休みなしで顧客対応に追われた」という。

 「次やったら、僕、逮捕されちゃいますよ。それくらい今は会社の規模が大きくなっている」。万が一、次にシステム障害が起きたらどうしますかと聞くと、冗談交じりにそう答えた大塚氏。
この9時間後、17年5月のシステム障害など比較にならない大事件が起きるとは、想像だにしなかっただろう。

記者会見で大塚雄介COO(右)は歯切れの悪い回答を繰り返した
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 26日午後11時30分。コインチェックの和田晃一良社長、
堀天子・顧問弁護士とともに東京証券取引所の記者会見室に現れた
大塚氏は前日とは別人のようだった。
黒のスーツに黒のネクタイを身につけ、表情は暗く沈んでいた。