普段なら喜んで頬擦りし返すしづねも今は膨れっ面のままだったが。

「さっきの仕返しですかぁ?」
「そんなつもりはなかったんだけどな」
「……ん」
「バニラ欲しいの?」
「誰かさんのお陰様で頭が湯だってしまいましたので」

小鳥のように口を開けて催促する。
徹も同じようにバニラを一掬いするのだが、行く先は彼女の口でなく自分の口へ。
そして。

「んぐぅ!」

目を閉じて待っていたしづねには完全に不意討ちの形になった。
咄嗟には受け取れきれない想いが白濁となって口の端から顎を伝ってた溢れてしまう。
舌先まで侵入してきてより一層パニックに。
口内の至るところに甘さを塗り込んだ上で、とどめに溢れたアイスを舐めとり、跳ねるしづねへと徹は素知らぬ顔でこう聞くのだ。

「美味しい?」
「余計に、お熱上げさせて、どうするんですか、ばかぁ」

とろり、と。
アイスのように蕩けた瞳は蠱惑的に彼を煽り、次を催促している。

「熱くなったなら冷やすためにもう一口どうだろう」
「……ちゃんと準備させてくれたら良いですよ」

同じ運命を辿るチョコミントが、先に溶け落ちるということはなさそうだった。