20歳で日本将来連盟を退会した竹俣紅さんにエールを送る
2019/04/20 06:00

漢字が好きだった竹俣は子どもの頃、書店で「玉」「飛」「金」「歩」などの漢字が図面に書かれた将棋の本をたまたま見た。それをきっかけに将棋を覚えた。やがて、めきめきと上達した。


竹俣は2010(平成22)年、12歳のとき、プロ公式戦の女流王将戦にアマ枠で出場し、2人の女流棋士を連破してアマ小学生として本戦に初めて進出した。

竹俣はその後、「研修会」に所属して腕を磨いた。そして、12年に森内俊之九段(48)の門下で女流2級としてプロ入りした。「タイトルを取れる女流棋士になりたい」と抱負を語った。

私は、高校時代の竹俣とたまに話したことがある。将棋の普及に意欲を燃やしていて、聡明な様子が印象的だった。

竹俣はある将棋イベントで仲の良い女流棋士Tと色紙に1字ずつ書く企画で、Tは席上対局で竹俣に敗れた腹いせに「殺」と書いた。しかし、竹俣は動ぜず「菌」と書き、「殺菌」とまとめる“神対応”を見せた。

後にクイズ番組やバラエティー番組に出演した竹俣は、そのエピソードのように、機転を利かした場面がよくあった。

16年10月に「電子機器不正使用」問題が起き、将棋連盟の理事会から疑われた三浦弘行九段(45)は公式戦を欠場する事態に追い込まれた。

将棋関係者が押し黙っていた当時、竹俣は「一番恐いのは、(中略)人間が人間の人生を奪うことだということがよくわかりました」と、その一件と思われることをブログに書いた。私は、事の本質を捉えた竹俣の見識に共感を覚えた。

理事会と三浦九段は17年5月に和解したが、一人の棋士生命を奪いかねないあの問題は、まだ終わっていないと私は思っている。

竹俣の6年間にわたる公式戦の通算成績は30勝36敗。タイトルを取れるような活躍はできなかった。しかし、昨年12月に女流王将戦で清水市代女流六段(50)に見事に勝ち、女流棋士として有終の美を飾った。

今年の3月末日で将棋連盟を退会した竹俣の将来の進路は不明だが、「これからも、ずっと将棋が大好きですので、それが何か役に立つ日が来たらうれしいです」とブログに書いている。今後はそれに期待したい。

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