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ワイが文章をちょっと詳しく評価する![81]
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/11/25(土) 13:32:31.96ID:+X6VrcEw
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する![80]
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1508420228/
0688この名無しがすごい!
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2017/12/15(金) 22:56:35.46ID:NnJQmUMQ
あれっ?ごめんなさい!
エラー修正した時にしくじったみたいです
0690第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/15(金) 23:41:36.88ID:aKWJAcaK
 六畳一間に響き渡る私の獣のようなうめき声がようやく止んだ、かと思えば今度は赤ちゃんが激しく泣き叫ぶ声。
物の少ない部屋は必要以上に音を反響させてしまう。壁の薄い部屋だから隣近所に響かないか心配だ。
 仰向けに寝ころんだ私は乱れる呼吸を整えようと胸を大きく上下して息をした。
口を大きく開けたので痛みをこらえるために咥えたハンカチが口から零れ、冷たい空気が心地よく体に流れ込んで来た。
ラマーズ法なる呼吸をすればもっと楽だったのではないか、そんな事を今更ながら思い出す。
後先をよく考えずに行動してしまうのは私の悪い癖である。
 現状にしたってそうだ。高校進学ほどなくして一つ上の先輩と付き合い、流れに任せて交わった。
そして妊娠して彼に捨てられ、親にばれて大ゲンカの末に勘当されて、逃げる様に家を飛び出し、
格安オンボロアパート見つけて転がり込んだ。それが今から数か月前。それからは徐々に大きくなるおなかが
好奇の目にさらされるのが嫌で人目を忍んで生活し、終いには自宅で出産に至った。我ながら呆れた人生だ。
 私は大きく開いた股の間に目をやった。埃っぽい畳にタオルが敷かれただけの簡素なベッド、そこに赤ちゃんが
血やら何やらにまみれていた。手が血に濡れる事も厭わず私は背中に手を回して抱き上げた。
こんな時普通の女性なら何と言うのであろう。「生まれてきてくれてありがとう」などと言うのだろうか。
しかし私の口からそんな言葉は出てこない。貯金も尽き果てているというのに食いぶちが増え、
それでなくても家賃を滞納していて追い出されそうなこの現状、感謝する余裕なんて微塵もない。思わず涙が流れてきた。
 玄関のドアがドンドンと音を立てて叩かれた。大家さんが家賃を回収しに来たのだろうか、暗澹たる運命が
さっそく私の元へやって来た。疲労困憊の私は声を上げるのも億劫で、赤ちゃんを抱いたまま横になって目をつむった。
このまま眠るように死ねたらいいのに、私はそんな事を考えた。
 が、それと同時に考えた。私が死んだらこの子は一体どうなるのだろう。ほどなくおなかをすかせて死んでしまうか、
それともこの劣悪な環境に体を壊して死んでしまうか。いずれにしても生まれた途端に私のせいでそんな事になっては
あまりに不憫ではなかろうか。この子だけでも、幸せに生きることは出来まいか。
 私は体に鞭打って立ち上がり、ドアに向かって歩いて行った。この先にどんな未来が待ち受けているかは分からない。
しかしどうせ死ぬならこの子の為に、私らしく後先考えないであがいてみよう。そんな思いで私はノブに手をかけ、ドアを開けた。

「……ぁさん! ねえ、母さんっ!」
 呼ばれている事に気が付いて私は我に返った。目の前で呼んでいたのは娘だった。
純白のウエディングドレスに身を包み、白い花束を抱いていて嗚咽している。
「どうかしたの、母さん?」
「いいえ何でも無いわ。それよりあなた、涙でひどい顔してるわよ? せっかくの花嫁が台無しじゃない」
「だってアタシ、嬉しくって……。それに母さんだって、人の事言えないじゃない」
 言われて頬に手を当てると確かに涙に濡れていた。式中は毅然と振舞おうと思っていたのにいつの間に泣いたのだろうか。
私はなおも流れる涙を手でぬぐった。
 私はあの後、生まれて間もないの娘と共に実家に帰った。両親に何度も頭を下げて許してもらい、
それからは学業、育児、就職、教育、娘の為にとにかく何でもがむしゃらにやった。私によく似てじゃじゃ馬に育った娘に
苦労させられはしたが、無事にこの良き日を迎えることが出来たのだ。今となっては全て楽しい思い出だ。
 娘が私に抱きついてきた。
「母さん、アタシ、幸せでした。アタシを産んでくれて、本当に、本当にありがとう」
彼女は声を震わせてそう言ってくれた。でもそれは違う、あの時救われたのは私の方だ、だから感謝すべきはむしろ私の方なのだ。
生まれた時の事なんてきっと知らないだろうから、いつかきっとあの時の話をして改めてお礼をしようと私は思う。
でもひとまずは、この一言だけは言わせてもらう。
「結婚おめでとう、ツタ子。そして、生まれてきてくれてありがとう」
 私は涙に濡れた手を背中に回し、娘をそっと抱き寄せた。
0692この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 00:01:32.67ID:AJ2uQl8R
>>668
私は今回が初めての参加で、このスレッドを知ったのも二週間ぐらい前です。
しばらく読み専門で他の人の作品とワイさんの指南を見て書き方の勉強をしていました。
510から初めて作品投稿をさせてもらいようやく起承転結も掴みかけた段階で的確なご指南に感激です。

みなさん長くいる方々なんですね。道理で制限内でも文章力が高い。
私はミステリーやサスペンスを全く見ないので不慣れなお題に苦戦しました。
どうにかトマト祭で場を和ませ無理やりサスペンス?に繋げたのが無理やりすぎたでしょうか。
なんか空気が違う感が半端無いです。

サスペンス、ミステリー、ホラー、スプラッタ、どれも見ないので違いが調べても分からないのですが、
どういう違いがあるのでしょうか。
サスペンス(殺人事件を刑事が解決/よく夜に主婦が観てる印象)ミステリー(歴史的事件の探究/ピラミッドの謎とか)
ホラー(幽霊物/貞子とか怖い系)スプラッタ(狂った人が出てくる/13日の金曜日?)で合っていますか?
0693この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/16(土) 00:10:35.92ID:AJ2uQl8R
>>690
いい話...(T_T)
0694ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/12/16(土) 00:31:36.32ID:sNrPvtFR
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>651
>>649
>>655
>>661
>>672
>>685
>>690

只今、十三作品!(`・ω・´)
0695ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 00:35:24.83ID:sNrPvtFR
>>692
そんな感じ!

その実、作者の主張でジャンルは決まる!
読者が「えー、これってスプラッタだよねぇ」と云ったとしても、
作者が「これはスプラッタホラーだからジャンルはホラーなんだ!」と言い張ればホラーになる!

その程度の物と認識していればよい!(`・ω・´) さて、寝るか!
0696第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/16(土) 02:37:46.52ID:Aa5v1PUX
雪は荒れ狂う海面をこするようにして、聳え立つ崖に激しく吹きつけていた。時折断崖の上に斜めにせり出していた積雪が、
凄まじい轟音と共に一気になだれ落ちる。その度にこの島全体が揺れるような錯覚を覚えた。

「ご安心下さい。貴女様の周囲の温度は20度、湿度は50%に保っております」山道の先を歩きながら神主の男は言った。確かに私の半径5mの半球状空間に雪は侵入していなかった。
融けもせず消滅する。組織を抜けてから色々な異能力者と関わってきたが、かなり珍しいタイプだ。
「素敵な能力ですね」「ただの傘代わりですよ。でもまあ、2万年の伝統を誇るお家芸ですね」神主は淡々と答えた。

山道は鳥居に差し掛かった。その先に神社がある。佇まいに日光東照宮を思い出す。
「立派な神社ですね」「建て変えの度に豪華になりまして。先祖がミーハーですと困ります」

私たちは神殿に至った。ご神体は仏像に近い。高さは2m。広げた腕が左右3本ずつの合計6本。こちらに背を向けて、錐体に心臓部を貫かれた上体を前に傾け、
脚を一歩、大きく前に踏み出している。一糸纏わぬその筋骨は隆々としている。肌は夏に繁る葉を陽で透かしたような緑。
私はその前に回りこむ。像に鼻と口はなく、代わりに大きく開く瞳が左右縦に3個ずつ並んでいた。
「準備ができたら言ってください。封印はいつでも解けます」「私も大丈夫です。いつでも戦えるように設計されてますから。この体」答えつつ、私は半身の構えを取った。

『彼氏が最近冷たい。私は変わらず恋をしているのに。誰かこの恋の行方、占ってくれないかな』何気なくツイッターで呟いたのが2日前。
宇宙言語をアルファベットで書いたから誰の返事も期待をしていなかった。そもそも解読のしようが無い。
が、返事が来た。日本海の孤島の神社で神主をやっているという男からだった。『お手伝い頂きたい難事があります。成功の暁には、占ってさし上げます』
興味が湧き、詳細を伺う。
……神主の一族は島で男女の御神体を祀ってきた。男は島の南の社、女は北だ。祀り続けた期間はおよそ2万年。男女は半時間停止状態の異星人。反物質刑を受けている。
反物質刑とは宇宙刑罰の一種だ。主に夫婦に対して行われるらしい。体細胞を構成する原子を置換し、お互いが接近すると対消滅をするように変える。
この時原爆200万個分のエネルギーが発生し、本州が吹き飛ぶらしい。神主の一族はその制御のために改造、設置された現地人だそうだ。
宇宙と地球のメンタリティ的な壁にもやもやした物を感じる。

半時間停止の前に男女は致命傷を受けている。ただし封印が解けるとどうなるか分からない。何せこの状態でも、男神は2万年で300mほど女神方向に進んでいる。
恐るべき意志である。しかも神主の一族も血が薄れ、制御の力が弱まっている。だから神々の処分、つまり戦闘を手伝って欲しいという。私は恋に悩む乙女心のために了承した。
 
戦いは1分に満たなかった。だが濃密な時間だった。女神方向に駆けようとする彼を留める為に、かなり高度な打撃戦を展開。この末これを封殺し、男神は塵のように崩壊した。
神主が錐体を抜いた胸から彼が紫の血を大量に出していなければ危なかった。が、勝利は勝利である。
続いて北の社に向かい女神を眼にする。美しいエメラルドと、6つの大きな瞳。
小柄だがしなやかな体つき。喉に錐体が突き刺さっている。
3組の手を組み合わせ、膝まづいている。神主が彼女から錐体を引き抜き時を解放。女神は錐体の刺さった喉笛付近から、大量の紫の血を迸らせ、天を仰いだ。
肩付近の両手を天井に向けて振り回す。血に濡れた胸付近の腕を背に回す。一番下の両腕で空を抱く。
  
それは奇妙な動きというより舞踊だった。この種類の宇宙人の精神構造は分からない。が、確信した事が1つある。彼女の踊りは、彼への愛の叫びだった。
しかしすぐにその舞いの力も失われ、彼女は男神と同じように崩壊した。
「終りましたね」「はい」「伝承によると、2人は……」「?」
「知らされていなかったそうです。反物質処置を受ける前の、お互いの状態を。ただ分かたれて錐体に貫かれ、とても長い時を」「停止させられた」「はい、そういう刑罰ですから」
神主の声には感傷の響きがあった。まあ、そうだろう。2万年はとても長い時間だ。
 
彼は改めて、こちらに向き直った。では、お約束のとおり、貴女の恋を占いましょう」
この時、私の中に少しだけ戸惑いが生まれた。気おされたのだ。それは神々が想い合ってきた永い、とても永い時間に。 
0697第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/16(土) 02:42:46.26ID:Aa5v1PUX
雪は荒れ狂う海面をこするようにして、聳え立つ崖に激しく吹きつけていた。時折断崖の上に斜めにせり出していた積雪が、
凄まじい轟音と共に一気になだれ落ちる。その度にこの島全体が揺れるような錯覚を覚えた。

「ご安心下さい。貴女様の周囲の温度は20度、湿度は50%に保っております」山道の先を歩きながら神主の男は言った。確かに私の半径5mの半球状空間に雪は侵入していなかった。
融けもせず消滅する。組織を抜けてから色々な異能力者と関わってきたが、かなり珍しいタイプだ。
「素敵な能力ですね」「ただの傘代わりですよ。でもまあ、2万年の伝統を誇るお家芸ですね」神主は淡々と答えた。

山道は鳥居に差し掛かった。その先に神社がある。佇まいに日光東照宮を思い出す。
「立派な神社ですね」「建て変えの度に豪華になりまして。先祖がミーハーですと困ります」

私たちは神殿に至った。ご神体は仏像に近い。高さは2m。広げた腕が左右3本ずつの合計6本。こちらに背を向けて、錐体に心臓部を貫かれた上体を前に傾け、
脚を一歩、大きく前に踏み出している。一糸纏わぬその筋骨は隆々としている。肌は夏に繁る葉を陽で透かしたような緑。
私はその前に回りこむ。像に鼻と口はなく、代わりに大きく開く瞳が左右縦に3個ずつ並んでいた。
「準備ができたら言ってください。封印はいつでも解けます」「私も大丈夫です。いつでも戦えるように設計されてますから。この体」答えつつ、私は半身の構えを取った。

『彼氏が最近冷たい。私は変わらず恋をしているのに。誰かこの恋の行方、占ってくれないかな』何気なくツイッターで呟いたのが2日前。
宇宙言語をアルファベットで書いたから誰の返事も期待をしていなかった。そもそも解読のしようが無い。
が、返事が来た。日本海の孤島の神社で神主をやっているという男からだった。『お手伝い頂きたい難事があります。成功の暁には、占ってさし上げます』
興味が湧き、詳細を伺う。
……神主の一族は島で男女の御神体を祀ってきた。男は島の南の社、女は北だ。祀り続けた期間はおよそ2万年。男女は半時間停止状態の異星人。反物質刑を受けている。
反物質刑とは宇宙刑罰の一種だ。主に夫婦に対して行われるらしい。体細胞を構成する原子を置換し、お互いが接近すると対消滅をするように変える。
この時原爆200万個分のエネルギーが発生し、本州が吹き飛ぶらしい。神主の一族はその制御のために改造、設置された現地人だそうだ。
宇宙と地球のメンタリティ的な壁にもやもやした物を感じる。

半時間停止の前に男女は致命傷を受けている。ただし封印が解けるとどうなるか分からない。何せこの状態でも、男神は2万年で300mほど女神方向に進んでいる。
恐るべき意志である。しかも神主の一族も血が薄れ、制御の力が弱まっている。だから神々の処分、つまり戦闘を手伝って欲しいという。私は恋に悩む乙女心のために了承した。
 
戦いは1分に満たなかった。だが濃密な時間だった。女神方向に駆けようとする彼を留める為に、かなり高度な打撃戦を展開。この末これを封殺し、男神は塵のように崩壊した。
神主が錐体を抜いた胸から彼が紫の血を大量に出していなければ危なかった。が、勝利は勝利である。
続いて北の社に向かい女神を眼にする。美しいエメラルドと、6つの大きな瞳。
小柄だがしなやかな体つき。喉に錐体が突き刺さっている。
3組の手を組み合わせ、膝まづいている。神主が彼女から錐体を引き抜き時を解放。女神は錐体の刺さった喉笛付近から、大量の紫の血を迸らせ、天を仰いだ。
肩付近の両手を天井に向けて振り回す。血に濡れた胸付近の腕を背に回す。一番下の両腕で空を抱く。
  
それは奇妙な動きというより舞踊だった。この種類の宇宙人の精神構造は分からない。が、確信した事が1つある。彼女の踊りは、彼への愛の叫びだった。
しかしすぐにその舞いの力も失われ、彼女は男神と同じように崩壊した。
「終りましたね」「はい」「伝承によると、2人は……」「?」
「知らされていなかったそうです。反物質処置を受ける前の、お互いの状態を。ただ分かたれて錐体に貫かれ、とても長い時を」「停止させられた」「はい、そういう刑罰ですから」
神主の声には感傷の響きがあった。まあ、そうだろう。2万年はとても長い時間だ。
 
彼は改めて、こちらに向き直った。
「では、お約束のとおり、貴女の恋を占いましょう」
この時、私の中に少しだけ戸惑いが生まれた。気おされたのだ。それは神々が想い合ってきた永い、とても永い時間に。 
0699第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/16(土) 02:48:12.92ID:Aa5v1PUX
雪は荒れ狂う海面をこするようにして、聳え立つ崖に激しく吹きつけていた。時折断崖の上に斜めにせり出していた積雪が、
凄まじい轟音と共に一気になだれ落ちる。その度にこの島全体が揺れるような錯覚を覚えた。

「ご安心下さい。貴女様の周囲の温度は20度、湿度は50%に保っております」山道の先を歩きながら神主の男は言った。確かに私の半径5mの半球状空間に雪は侵入していなかった。
融けもせず消滅する。組織を抜けてから色々な異能力者と関わってきたが、かなり珍しいタイプだ。
「素敵な能力ですね」「ただの傘代わりですよ。でもまあ、2万年の伝統を誇るお家芸ですね」神主は淡々と答えた。

山道は鳥居に差し掛かった。その先に神社がある。佇まいに日光東照宮を思い出す。
「立派な神社ですね」「建て変えの度に豪華になりまして。先祖がミーハーですと困ります」

私たちは神殿に至った。ご神体は仏像に近い。高さは2m。広げた腕が左右3本ずつの合計6本。こちらに背を向けて、錐体に心臓部を貫かれた上体を前に傾け、
脚を一歩、大きく前に踏み出している。一糸纏わぬその筋骨は隆々としている。肌は夏に繁る葉を陽で透かしたような緑。
私はその前に回りこむ。像に鼻と口はなく、代わりに大きく開く瞳が左右縦に3個ずつ並んでいた。
「準備ができたら言ってください。封印はいつでも解けます」「私も大丈夫です。いつでも戦えるように設計されてますから。この体」答えつつ、私は半身の構えを取った。

『彼氏が最近冷たい。私は変わらず恋をしているのに。誰かこの恋の行方、占ってくれないかな』何気なくツイッターで呟いたのが2日前。
宇宙言語をアルファベットで書いたから誰の返事も期待をしていなかった。そもそも解読のしようが無い。
が、返事が来た。日本海の孤島の神社で神主をやっているという男からだった。『お手伝い頂きたい難事がございます。成功の暁には、占ってさし上げます』
興味が湧き、詳細を伺う。
……神主の一族は島で男女の御神体を祀ってきた。男は島の南の社、女は北だ。祀り続けた期間はおよそ2万年。男女は半時間停止状態の異星人。反物質刑を受けている。
反物質刑とは宇宙刑罰の一種だ。主に夫婦に対して行われるらしい。体細胞を構成する原子を置換し、お互いが接近すると対消滅をするように変える。
この時原爆200万個分のエネルギーが発生し、本州が吹き飛ぶらしい。神主の一族はその制御のために改造、設置された現地人だそうだ。
宇宙と地球のメンタリティ的な壁にもやもやした物を感じる。

半時間停止の前に男女は致命傷を受けている。ただし封印が解けるとどうなるか分からない。何せこの状態でも、男神は2万年で300mほど女神方向に進んでいる。
恐るべき意志である。しかも神主の一族も血が薄れ、制御の力が弱まっている。だから神々の処分、つまり戦闘を手伝って欲しいという。私は恋に悩む乙女心のために了承した。
 
戦いは1分に満たなかった。だが濃密な時間だった。女神方向に駆けようとする彼を留める為に、かなり高度な打撃戦を展開。この末これを封殺し、男神は塵のように崩壊した。
神主が錐体を抜いた胸から彼が紫の血を大量に出していなければ危なかった。が、勝利は勝利である。
続いて北の社に向かい女神を眼にする。美しいエメラルドと、6つの大きな瞳。
小柄だがしなやかな体つき。喉に錐体が突き刺さっている。
3組の手を組み合わせ、膝まづいている。神主が彼女から錐体を引き抜き時を解放。女神は錐体の刺さった喉笛付近から、大量の紫の血を迸らせ、天を仰いだ。
肩付近の両手を天井に向けて振り回す。血に濡れた胸付近の腕を背に回す。一番下の両腕で空を抱く。
  
それは奇妙な動きというより舞踊だった。この種類の宇宙人の精神構造は分からない。が、確信した事が1つある。彼女の踊りは、彼への愛の叫びだった。
しかしすぐにその舞いの力も失われ、彼女は男神と同じように崩壊した。
「終りましたね」「はい」「伝承によると、2人は……」「?」
「知らされていなかったそうです。反物質処置を受ける前の、お互いの状態を。ただ分かたれて錐体に貫かれ、とても長い時を」「停止させられた」「はい、そういう刑罰ですから」
神主の声には感傷の響きがあった。まあ、そうだろう。2万年はとても長い時間だ。
 
彼は改めて、こちらに向き直った。
「では、お約束のとおり、貴女の恋を占いましょう」
この時、私の中に少しだけ戸惑いが生まれた。気おされたのだ。それは神々が想い合ってきた永い、とても永い時間に。 
0701第四十四回ワイスレ杯参加作品
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2017/12/16(土) 05:56:31.80ID:Aa5v1PUX
3歳の頃から私は間違えてきた。

母の目を盗み3歳の私はよく冷蔵庫から練乳のチューブを取り出し、しゃぶった。
のみならず私は赤ちゃんの人形を胸に抱いてはチューブをあてがってミルクを与える真似事をした。
人形の顔は見る間に練乳まみれになった。これを見咎めた母にぶたれながら、私は目の端に妹を探したりした。
この頃の妹は0歳で赤ちゃんベッドの柵の向こうにいた。
乳量が貧しかった母は、哺乳瓶で妹に栄養を与えていた。この時の母の額、頬、口元には女神的な輝きがあった。

頬をぶつ母と全然懲りない私の関係は世の中の出来事に関係なく続いた。
童謡を口ずさむ妹の歌声に母がうっとりとしていたとか、母の打撃部位が頬からお尻、お尻からお腹に変わったとかいう物事と、
世の中の変化は私の中では等しく重要な事だった。
が、その意味が分からない私は何歳になっても赤ちゃんの人形を抱きしめていた。それは母が妹を抱きしめるように。
しかしそんな私に母は不満を覚え人形を奪い妹に与えた。妹はとても喜んだが私は悲しかった。妹は既に3個も人形を母や祖父たちから授けられていた。
とても寂しくなり練乳と交換に返してもらおうとした。母が転寝をしている隙に私は当該缶を探し出し、上手に開いた。

妹の首根を押さえ口に押し付ける。
目を覚ました母は気が違ったように叫んだ。半分開いた缶のふちが妹の頬を傷つけて、そこからしみでた赤がミルクの乳白色に混ざっていたからである。

気がつけば病院の白い天井を見上げていた。

しばらくの病院暮らしの後退院すると何故か祖父母宅に引き取られた。私は赤ちゃんの人形を探し次に妹を探した。
が、見つからず、何か本質的に大切な事が喪われた気がして慟哭した。

そんな私に祖父は読書を進めてくれた。祖父は人形は豊かさだと言った。文字もそうだ。
『人を豊かにする。そして豊かな人は、他の人を豊かにできる。だからたくさん学びなさい』
彼の言葉に方針は決まり、私は活字の世界に飛び込み、熱中した。

中学に上がった月に祖母が脳卒中で他界した。これを機に祖父は認知症を患う。
私は中学卒業と共に大学検定を受け合格通知が届いた月に祖父が倒れた。彼はそのまま亡くなる時に私の手を取って祖母の名をずっと呼んでいた。

私は再び母と妹、そして父と暮らすようになった。妹は可愛らしい女の子に成長していた。母は昔より小さくなっていて、父は相変わらずあまり見かけなかった。

ただ、何かが欠けていた気がする。朗らかな妹から不可視の防衛線を感じていた。

が、季節は移り行く。私は国立大学を受験し、合格。自動車免許も取得した。だがこれが間違いだったのである。
夏の日だった。妹が書店で連れの年上の男と共に万引きしているのを見咎めた。

色々なすったもんだを経て、私は学生街のT字路沿いにあるその男のアパートを突き止め、妹と別れてくれるように頼むべく出向いた先で酷く怒らせてしまった。押し倒され、陵辱を受けた。
その晩の事である。この宇宙的な惨事に夜中まで歯がみをした後、私は父親のワゴン車を勝手に運転して、アパートの前で憤怒と共に待った。

男がでてきた。

私はワゴン車のフロントと電柱で男を見事に潰した。対象が喀血しても私はアクセルペダルを踏み続けた。
しばらくしてから車外にでて復讐を確認する。立ったまま絶命しているその脈を確認する私の手に、男の唇から血と泡が混ざった物が垂れて気持ち悪く伝った。

私はその足で出頭し拘置所に入った。

ある日悪阻が襲った。赤ちゃんが出来たのだ。私は驚愕した。
色々な方からおろす事を進められたがとても産みたくなった。妹をあやす母の姿が脳裏から離れなかったのを覚えている。

命に罪はない。父が強姦魔でも、母が殺人者でも。私は家族の反対を振り切って、産むことにした。驚くべき事に、臨月には拘置が一時解けて、警察の指定病院に入院させてもらえたりした。

壮絶な痛みの末に抱いたわが娘から私は引き離され拘置所に戻された。そうこうしているうちに判決は下った。情状酌量分を差し引いて10年。

もうすぐ刑に服してから9年になる。娘は児童福祉施設に入所しているらしい。
この9年間、私は夢の中で何度も娘に会った。膝にのせ、抱き上げ、高い高いをした。背に手を回し、抱きしめる。
しかし、そうしてからいつも気がつくのだ。私の手は血に濡れている。これはあの時に、娘の父が流した血だ。私は酷く悲しくなる。
気が狂いそうになる。ただ1つ幸いなことは、私が夢で、狂おしいほどに力を込める、私の手を、現実の娘は知らないことだ。
それが間違いだらけの私に与えられた、せめてもの恵みであり、そして……償いなのかもしれない。
0702この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/16(土) 06:02:58.67ID:Aa5v1PUX
徹夜して書いておいてなんですが、妊娠ネタで被っている
>>690
の方が作品として好きです。
0703第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/16(土) 06:25:37.58ID:z+nW8GjE
 冷ややかな沈黙があった。灯りの落ちた部屋へ近くにあるコンビニの光が差し込んでいる。
立ちすくんだ彼女はフード付きのパーカーを着ていて、袖は黒っぽい液体で濡れている。血だろう。息絶えた男は部屋の隅で力なく首を前に垂れている。

「ユウ、あんた何しちゃった」
私の声でユウは跳ね返るようにこちらを振り向き、手を後ろに隠した。
「いやいや。見えてるから、包丁」
ゴトンとそれを取り落す音がしてから、彼女はしゃがみ込んだ。「メーちゃんどうしよう。わたし、やっちゃったよ……」
 女二人のルームシェア生活というものは、いずれだらしのないほうが男を連れ込むようになるものだ。
すぐそこで死んでいる男は、いつもアルマーニの眼鏡をかけて爪を綺麗に手入れしていた。ユウが素っ頓狂なことを言えば蹴りを入れ、えへらえへらと笑えば拳を振り上げ、指にはどこぞの女との結婚指輪を嵌めていた。
殴るときは怒りをみなぎらせた奇声をあげる。そういう男にユウは依存していた。
 彼女は記憶を手繰ってことの顛末を話しはじめる。
昼間から部屋で酒盛りをしていたユウ達は、ビールやワインのミニボトルを何本も開けて泥酔状態になった。
「オレンジを放置すると渋くなってミカンになるんだって」ユウは真剣に言った。酔った男は大笑いしたあと彼女の髪を掴んだ。どうしようもない馬鹿女だ、と言いながら。
深酔いと暴力で記憶のない彼女が目覚めたとき既に日は落ちており、血まみれの手はいつの間にか包丁を握り、男は座り込んで死んでいた。カフェで時間をつぶした私がそこに帰ってきた。

「わたしも死ぬ……」
窓に近寄っていくユウの腰を床へ引きずり倒す。
「ふざけんな」この世には、死んだほうがいい奴とそうじゃない奴がいる。
死にたい、とユウは呟く。馬乗りになって頬をはたいて黙らせると、パーカーの裾で顔を覆って泣き始めた。うで、血まみれだぞ。
「メーちゃん、死なせてよお」
「させると思う」刃物を探す手を押さえつけた私がにこりとしながら凄めば、ユウはたやすく怯む。
「うぐうっ、だってもう生きててもしょうがないもん」
「しょうがなくない」
「だって」
私の口から言葉があふれてくる。「ああイライラする。ユウには本当イライラする。馬鹿でアホで雑魚でグズで、すぐダメ男に引っかかる。でも知ってる? 私はね、そんなあんただからこそ、大事なの」
私の頬から涙が伝って、ユウの顔に落ちた。
「だから生きて貰う」
「……ひぐっ」
「ユウ。償いな。そしたら戻ってきて」「メーちゃん、メーちゃん……うわあああ」
彼女は起き上がって私に抱きついてくる。こんな奴でも生かすためなら涙だって流す。
そう、償ってもらわなければならないのだ。

 男が私との関係は終わりだと言ったとき、ユウと付き合いはじめたのは何故かと食い下がったら、扱いやすいからだと答えた。
「うぐっ、うぐ、わかった。わたし償うよ、罪を償う」
抗ヒスタミン剤の含まれた風邪薬を酒に混ぜ込んで服用すると、強烈な酩酊が引き起こされる。
「わたしが、わたしがムショから出てくるまで待っててねえ、メーちゃん待っててねえ」
私が教えてやった簡易ドラッグは混ぜ物入りの特製ボトルで、男はそれを気に入った。
副作用が起こす強い眠気で二人は熟睡した。あいつに包丁を突き立てて、ユウには凶器の柄を握らせる。頃合いをみて話に脈絡をつけてやればほら、被害者と加害者の出来上がり。
この世には、死んだほうがいい奴とそうじゃない奴がいる。ユウ、扱いやすいほうで得したじゃない。

 ユウが顔を押しつけてくる。その髪に頬ずりをしながら背をさする。覚悟を固めさせてやらねば。
こいつの仕事は、これから警察へしっかり自供することなのだから。私の代わりとして。
「でもメーちゃん、どうしてあのこと知ってたの」「ん」
「確かにわたしは最初包丁をもってた。でも動かないアイツを見てね。どうせ死んでるなら仕返しで沢山殴ってみたいな、と思って酒瓶に持ち替えたんだよ。
そしたらメーちゃんが帰って来て、暗いからわたしの持ったワインの小瓶を見間違えて包丁だって言ったよね。でも今考えるとメーちゃんが包丁のこと知ってるのおかしいと思う」
ユウの背中に回した私の指は彼女の手を押さえたとき血で汚れた。それがいま、鉤爪のようにぎりりと曲がっていった。
0705ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 07:35:13.78ID:sNrPvtFR
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>694
>>699
>>701
>>703

只今、十六作品!(`・ω・´)
0707ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/12/16(土) 08:56:03.82ID:sNrPvtFR
今月の二十日まで!
翌日には寸評と結果が発表される!

今年最後のワイスレ杯、頂点に立つのは挑戦した君かもしれない!m9っ・ω・´)ビシッ!
0708ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 08:57:50.04ID:sNrPvtFR
第四十四回ワイスレ杯のルール!
名無しの書き込みを必須とする!(名乗った場合は通常の評価に移行する!)
設定を活かした内容で一レスに収める!(目安は二千文字程度、六十行以内!) 一人による複数投稿も可!
通常の評価と区別する為に名前欄、もしくは本文に『第四十四回ワイスレ杯参加作品』と明記する!
ワイが参加作品と書き込む前に作者が作品を修正する行為は認める!

今回の設定!
ワイの決めたタイトルに見合う一レスで完結した物語を募集する!
多くは語らない! 柔軟な発想と作品に仕上げる手腕に期待する!

タイトル「背中に回した血塗れの手をあなたは知らない」

応募期間!
今から始まって二十日まで! 上位の発表は投稿数に合わせて考える! 通常は全体の三割前後!
翌二十一日の夕方に全作の寸評をスレッドにて公開! 同日の午後八時頃に順位の発表を行う!

ここにちゃんと書いてある!(`・ω・´)
0709第四十四回ワイスレ杯参加作品
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2017/12/16(土) 14:30:03.16ID:d4hm/Q7L
「神よ。いま御許に参ります……!」
 老いた体をベッドに横たえて、私は一人そう呟いた。
 もう目も見えない。船出の時が来たようだ。
 全身を侵した病の痛みも、今はボンヤリ遠くの事の様だった。
 闇に閉ざされた視界に光が降りそそいで来た。大いなる御手に導きを感じる。
 私の体が、フワリとベッドから浮かび上がった。
 光の方から降りて来た、あどけない顔をした何人もの天使たち。
 彼らに導かれて私が旅立とうとした、だがその時だった。

 ぎゅっ!

 誰かの手が、私の背中を掴んでいた。
「神父様。わたしを置いて行ってしまいますの?」
「わー! きみはシスター・クリス!」
 声の方を振り向いた私は、悲鳴を上げた。
 背中から私の僧服を掴んでいたのは、血塗れのか細い女性の手だった。
 私を呼び止めたのは、尼僧姿で寂しそうな顔をした一人の女。
 若い頃、私と道ならぬ恋に落ちたシスター・クリスだ。
 私との関係に悩み抜いたあげく、カミソリで手首を切って自身の命を絶ってしまった女性だった。
「お願い神父様。わたしと一緒に居て……」
 シスターの青い瞳が、悲し気に私を見つめる。
 私は残りの一生を捧げてシスターの救済を神に祈ってきたのに。
 天国にも行けず、いまだに辺獄を彷徨っているのだろうか?
「どうするの? 行くの? 行かないの?」
 私の周りをパタパタ飛びかいながら、けげんそうな顔の天使たち。
「うぅうぅうぅ……」
 私は声を詰まらせる。ここまで来て神の手の導きを拒むことができるだろうか? だが……
「悪かったシスター!」

 がばっ!

 天使たちをフリ切って、私はシスターの魂を思い切り抱きしめた。
「きみだけを苦しめて殺してしまった。私の手もまた血塗られていたというのに! きみ一人救えないで何が神父だ!」
「神父様。うれしい!」
 シスターもまた、血塗れの手を私の背中に回す。
「あーあ。もう見てらんない。好きにすれば?」「ときどき様子を見に来るからね? 気が変わったら言ってね?」
 天使たちが呆れ声で、私とシスターの元から飛び去って行く。だが後悔などあるものか。
「さあクリス。共に行こう地獄へ。きみとだったら何処へだって……」
「あら、大げさね神父様?」
 クリスが私の背から手を放して、ニッコリと微笑んだ。血塗れだったはずのその手が、いまは清浄そのものだ。
「ん。その手は!?」
「ま、わたしも演出過多でしたけどね。あなたの気を引くための『演出』が……」
 シスターが私を見上げて、悪戯っぽくペロリと舌を出した。

  #

 それからの私たちは、天国にも地獄にも行かなかった。
 生者の主がいなくなった教会に住み込んで、この世を彷徨う魂たちの愚痴を聞いたり、住む家の世話をしたり。
 このごろは道端で凍えそうになっている浮浪者に、犬たちの体を借りて暖かい甘酒缶を配って回ったりしている。
 まだ生まれたばかりで命を落とした子供たちの、迷子の魂を探して天使たちに届ける仕事も始めた。
 いわば幽霊の「ボランティア」みたいなものだ。
 生前よりは不自由だが、お金や形式や格好を気にしなくていいので、けっこう性に合っているかもしれない。
「なるほど、こういう理由だったのか。きみがココに残っていたのは……」
 礼拝堂の木椅子に並んで腰かけて、私はクリスの魂を見つめる。
「ええ神父様。あなたならきっと気に入ると思ったの。天国でノンビリしてるより、よっぽどあなたらしい仕事でしょ?」
 私の方を向いて、クリスはそう答える。
「…………!」
 私は一瞬、声を詰まらせた。
 ニッコリ微笑んだ彼女の頭の上で、ボンヤリ輝く金色の輪っかが見えた気がしたのだ。
0710【訂正】第四十四回ワイスレ杯参加作品
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2017/12/16(土) 14:50:13.96ID:d4hm/Q7L
「神よ。いま御許に参ります……!」
 老いた体をベッドに横たえて、私は一人そう呟いた。
 もう目も見えない。船出の時が来たようだ。
 全身を侵した病の痛みも、今はボンヤリ遠くの事の様だった。
 闇に閉ざされた視界に光が降りそそいで来た。大いなる御手に導きを感じる。
 私の体が、フワリとベッドから浮かび上がった。
 光の方から降りて来た、あどけない顔をした何人もの天使たち。
 彼らに導かれて私が旅立とうとした、だがその時だった。

 ぎゅっ!

 誰かの手が、私の背中を掴んでいた。
「神父様。わたしを置いて行ってしまいますの?」
「わー! きみはシスター・クリス!」
 声の方を振り向いた私は、悲鳴を上げた。
 背中から私の僧服を掴んでいたのは、血塗れのか細い女性の手だった。
 私を呼び止めたのは、尼僧姿で寂しそうな顔をした一人の女。
 若い頃、私と道ならぬ恋に落ちたシスター・クリスだ。
 私との関係に悩み抜いたあげく、カミソリで手首を切って自身の命を絶ってしまった女性だった。
「お願い神父様。わたしと一緒に居て……」
 シスターの青い瞳が、悲し気に私を見つめる。
 私は残りの一生を捧げてシスターの救済を神に祈ってきたのに。
 天国にも行けず、いまだに辺獄を彷徨っているのだろうか?
「どうするの? 行くの? 行かないの?」
 私の周りをパタパタ飛びかいながら、けげんそうな顔の天使たち。
「うぅうぅうぅ……」
 私は声を詰まらせる。ここまで来て神の手の導きを拒むことができるだろうか? だが……
「悪かったシスター!」

 がばっ!

 天使たちをフリ切って、私はシスターの魂を思い切り抱きしめた。
「きみだけを苦しめて殺してしまった。私の手もまた血塗られていたというのに! きみ一人救えないで何が神父だ!」
「神父様。うれしい!」
 シスターもまた、血塗れの手を私の背中に回す。
「あーあ。もう見てらんない。好きにすれば?」「ときどき様子を見に来るからね? 気が変わったら言ってね?」
 天使たちが呆れ声で、私とシスターの元から飛び去って行く。だが後悔などあるものか。
「さあクリス。共に行こう地獄へ。きみとだったら何処へだって……」
「あら、大げさね神父様?」
 クリスが私の背から手を放して、ニッコリと微笑んだ。血塗れだったはずの彼女の手が、いまは清浄そのものだ。
「ん。その手は!?」
「ま、わたしも演出過多でしたけどね。あなたの気を引くための『演出』が……」
 シスターが私を見上げて、悪戯っぽくペロリと舌を出した。

  #

 それからの私たちは、天国にも地獄にも行かなかった。
 生者の主がいなくなった教会に住み込んで、この世を彷徨う魂たちの愚痴を聞いたり、住む家の世話をしたり。
 このごろは道端で凍えそうになっている浮浪者に、犬たちの体を借りて暖かい甘酒缶を配って回ったりしている。
 まだ生まれたばかりで命を落とした子供たちの、迷子の魂を探して天使たちに届ける仕事も始めた。
 いわば幽霊の「ボランティア」みたいなものだ。
 生前よりは不自由だが、お金や形式や格好を気にしなくていいので、けっこう性に合っているかもしれない。
「なるほど、こういう理由だったのか。きみがココに残っていたのは……」
 礼拝堂の木椅子に並んで腰かけて、私はクリスの魂を見つめる。
「ええ神父様。あなたならきっと気に入ると思ったの。天国でノンビリしてるより、よっぽどあなたらしい仕事でしょ?」
 私の方を向いて、クリスはそう答える。
「…………!」
 私は一瞬、声を詰まらせた。
 ニッコリ微笑んだ彼女の頭の上で、ボンヤリ輝く金色の輪っかが見えた気がしたのだ。
0711この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 15:04:31.75ID:g4DEQ6f7
今回、訂正多すぎない?
一応コンテストなんだから推敲はしっかりしようよ。
0712ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 15:18:15.66ID:sNrPvtFR
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>694
>>699
>>701
>>703
>>710

只今、十七作品!(`・ω・´)
0713相模の国の人
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2017/12/16(土) 15:52:30.34ID:6BIsx82w
出張が多い。川越方面、所沢方面と車で頻繁に行きまする。運転しながら、作品を考えたりするのが、
楽しみです。今の時期は環八はかなり混む。
0714ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 17:30:47.67ID:sNrPvtFR
環八と云う字面で間八を思い出した!
しかも、今日は熱燗で刺身の盛り合わせを食べる予定になっている!

それにしても寒い!(`・ω・´)
0715第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/16(土) 18:10:26.01ID:rRp3YLUL
子供は子供なりに色々あるんだよ――
と、父とおじさんが話すのを聞いて、悠人は子供なりに思うところがあった。心の中の、密かな反抗。
悠人は五歳になるが、今まで反抗期らしい態度を見せることはなかった。子供らしくない子供だったと言ってもいい。
子供らしく遊んだりもするが、大人びているというか、我慢した方が得なこともあると分かっている背伸びをした子供。
そんな悠人が何に反感を覚えたのかと言えばおそらく、父のわかった風な態度。分からない癖に分かったふりをする大人。
決まって、子供のことを理解せずに都合よく子供を扱う態度の裏返しで、子供が振り回されることになるのは経験的に分かっている。ただ、どうにもできない。それもまた子供だからだった。

近所には、大きな公園があった。悠人は逃げるように遊びにでた。奥が見通せないほどの森が中にあり、遊ぶには十分な空間。
その中で、自分だけの空間や秘密を探すのが最近のお気に入りの遊び方だった。
世界には知らないものばかりで、発見は尽きない。
この日も、不思議な色をしたキノコを見つけた。それと。
「それ、どうするの?」
キノコと、その先でキノコを持つ悠人に、丸い目が向けられていた。小さな。おそらく悠人と同じくらいの歳の、女の子が目の前にいた。
「ねえ。食べるの? それとも飾るの?」
「え? いや……」
男子と女子の違いについて意識し出した頃合いだった。
ましてや、戸惑う悠人を相手にぐいぐい迫る女子を相手に、上手くあしらうような能力は、まだなかった。
しかしこれがこの日の、一番の発見だった。

「また公園に行くのか?」
出かけ間際に父に呼び止められて、悠人は頷いた。
「なんだか最近、公園に行くことが多いな。一人で大丈夫か?」
「うん」
「そうか。大人になったな」
父の言葉を後ろに、悠人は家を出た。女の子と知り合ってから一週間後のことである。
一人で大丈夫に決まっている。父が何を心配しているのかは、よくわからなかった。

「この花の、根元が甘いんだ」
もぎり取って、手渡す。前に出会った女の子にだ。
「へえ……あ、ホントだ! あまーい!」
名前は、葵というようだった。賑やかな女子だ、と悠人は思う。
「でも、気をつけた方がいい」
「何を?」
「前、蜂が出てきたから」
「蜂さんも、甘いの吸いたかったんだね!」
「……きっと、そうだね」
ふと悠人は、大人になったな、という父の言葉を思い出す。
そういうのではない。とか、そういうのってどんなだ? とか、よくわからないものが頭に浮かんで、困る。
最近、たくさん考えることができるけれど、逆にわからないことが増えていくのが不思議でならなかった。一つ一つ確かめていくのも、楽しくももどかしい。
「私、ここ好きだな」
と葵が言う。ここというのは、大きめの穴を枯れた枝葉が隠すようにして覆っている、悠人の秘密基地のことだった。
「いいとこだろ?」
わからないことはたくさんあるけれど、とにかく今は楽しかった。
この楽しい時間が続くようにも思っていた。
でもそう簡単にはいかない。これも、まだ知らなかったことの一つなのだろう。
「確かに、いいところだな」
その声が何をもたらすのかは、瞬時に悠人はわからなかった。
が、秘密基地に入ってくる、一回りは大きい小学生くらいの男子の姿を見て、なんとなく良くないことが起きそうなことだけはわかった。
それからは、わーっ! と、叫びだしたくなるような時間が続いた。
でも、叫ばない。けど、体中が痛くはなった。
ボクシングというやつをお父さんと見たのが良かったのかな、と悠人は思った。
大事だと思えるものを守りたくて、刃向かって、痛い思いをして、それでもそれでも堪えて堪えて、わずかな隙に思いっきり拳を顔面に叩きつけた。小学生は悪態をついて帰っていった。
それから葵と一緒にわんわん泣いて、戻りを心配した父に抱かれて帰ることになった。
もう秘密基地にも行けないな、と思い悠人はまた涙がこみ上げた。
父には転んだと、それも坂の上から茂みの方へ盛大にと、嘘をついた。葵には傷一つなかったから、父はそれを信じた。
悠人が背中に手を回しても後ろまで届かなくて、広い背中だと思い知った。殴られた傷より殴った手の方が痛い。初めて知ることばかりだった。
多分こうして、楽しいことや辛いことを知って、本当の意味で大人になっていくのだ。
強がって絆創膏も貼らなかった悠人の右拳に、やがて一枚だけやたら可愛い絆創膏が一枚だけ貼られるようにになったこと、それを恥ずかしがって隠していることを、父は知らない。
0716ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/16(土) 18:43:38.56ID:sNrPvtFR
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>694
>>699
>>701
>>703
>>710
>>715

只今、十八作品!(`・ω・´)
0717この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 18:53:45.09ID:l4Cq5sVc
>>710
あ、人がシリアスに優勝狙いに行ってるのに
ほんわかコメディで優勝さらっていく人だ
0718この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 20:42:34.82ID:AJ2uQl8R
>>695
ホラーがつくと、スプラッタもホラーになるんですか?
というかスプラッタとホラーのダブルマッチなんて恐怖の極みじゃないですか。
それなら、極対極を取るジャンルの組み合わせも作れるということですね。
考えたら既にありますが……
恋愛ホラー(ゴースト〜ニューヨークの奇跡〜)、時代SF(戦国自衛隊)
ホラーコメディ(貞子のパロディ)、ファンタジーすぷら……いや、それは無いですね。
意外な組み合わせで最強のジャンルが出来るとしたらどんなものか興味があります。
0719この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 21:37:15.46ID:hT6Wo7o2
>>718
横からですが
要は料理と同じですよ
料理には足し算の料理と引き算の料理があります
組み合わせで味を高めるのが足し算の料理、大半の料理はこれですね
引き算の料理とは、余計な雑味を排除して素材の味を極限まで引き出そうとするものです。刺身や甘栗剥いちゃいましたがこれに当たります
ジャンルの組み合わせは足し算。ホラーや純愛もの、18禁エロなどは引き算ではないでしょうか
何が最強だなんてないと思います。発想と腕次第ですよ
>>718さんもぜひ、生ハムメロン的な作品を書き上げてここに晒して下さい。楽しみに待ってます
0720この名無しがすごい!
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2017/12/16(土) 21:53:33.30ID:j7LQkq15
足し算の料理 すき焼き
引き算の料理 湯葉の出汁に浮かべたやつ(料理名知らん)
0721第四十四回ワイスレ杯参加作品
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2017/12/16(土) 23:34:33.82ID:Kmvnkq5z
ある若い夫婦について書こうと思う。
名前はデラとジム。
偶然にも『賢者の贈り物』に登場する夫婦と同じ名前であるが、深い意味はない。
貧しい二人は、ニューヨークの片隅で、20世紀最初のクリスマスを迎えようとしていた。



1ドル87セント。デラが夫ジムへのクリスマスプレゼントのために用意できるのは、これが精一杯です。
それでも、八百屋や肉屋で店主に嫌な顔をされながら、なんとかまけさせたりして、やっとの思いで貯めたお金でした。
三度、デラは数え直しましたが、お金は増えも減りもしません。たったの1ドル87セント。明日はクリスマスだと言うのに。

夫へ贈るプレゼントに、デラには心づもりがありました。それはジムの持っている金時計にぴったりの金の鎖です。
その時計は、ジムの父親がその父親から受け継いだ立派なものです。ところがそれを留めているのが、古い皮の紐なのでした。
一週間前、デラはある時計屋で金の鎖を見つけ、クリスマスの贈り物にこれ以上のものはないと考えていたのです。
問題は、それが20ドルもすることです。

ところでジムが金時計という宝物を持っているように、デラにも宝物がありました。それは、長く美しい髪です。
「もし君の髪が短かったら、僕らは結婚していないかもしれないよ」とジムは戯れに言うことがありました。
そんなふうに、デラの髪はジムにとっても宝物でした。そしてデラは、この髪がお金になることを知っていました。
鎖を見つけて以来、デラは悩みに悩みました。しかし、もはや悩んでいる猶予はありません。
デラはいよいよ決心すると、さっと支度を整え、帽子をかぶって「ヘア用品とカツラ」と看板の出ている店へと向かいました。

「それをとって、見せてみろ」
禿げ上がった店主の言われるままに帽子をとり、デラは髪の縛めを解きました。
まるでシルクのドレスのように艶やかな光を放って、長い髪が柔らかな腰を超えて膝のあたりまで、滝のように流れ落ちます。
夫の前でさえめったに解くことはないのに、見知らぬ男の前で髪を解いてみせるのは、デラにとってひどく屈辱でした。
「あんた、そのきれいな長い髪を切っちまおうってのかい」
「お金が必要なんです。どうしても」
「それならもっとうまい話がある。しばらく俺の言う通りにしてくれたら髪は切らないで40ドル払おう。髪だけなら10ドルだ。
なにも一晩付き合えなんて言ってるわけじゃねえ。ほんのいっとき、からだを預けてくれりゃあいいんだ」

今やスカートのポケットには、綺麗な小箱に収まった金の鎖が入っています。しかしデラはそれに触る気が起きませんでした。
キッチンの小さなテーブルで、デラが後悔とも罪悪感ともつかぬ気持ちで沈んでいるところに、ジムが帰ってきました。
ジムは妻の顔を見て微笑むと、擦り切れたコートのポケットから小さな包みを取り出しました。
それは、ふたりでブロードウェイに出かけた時に、ある店のショーウィンドウで見かけたべっ甲の櫛でした。
その気品のある光沢によって、しばらくのあいだデラの心を魅きつけて離さなかった、あの櫛です。
ジムがデラの髪に恭しく櫛を挿すと、二人は優しく抱き合いました。

そのとき、ジムの背中に回した自分の手が、まるで穢れた血に塗れているようにデラは感じました。
デラはそのことを努めて考えるまいとして、自分の髪を飾っている美しい櫛の、その輝くようなべっ甲の光沢を想いました。
自分の犯した過ちは、この幸福な結婚を永遠たらしめるための些細な出来事に過ぎないのだと、無理矢理に納得するほかありませんでした。

一方、ジムは温かな妻の背中に手を回しながら、昨日の自分の行為は、この妻の喜びと感謝で許されるはずだと考えていました。
それは不運な巡り合わせでした。
人けのない裏通りで声をかけてきた売春婦の、褪せた髪に挿された不相応な櫛は、まさにデラの心を奪ったあのべっ甲の櫛だったのです。
気づいた時には、ジムの足元に売春婦が崩れ落ちていました。ジムはその髪から櫛をもぎ取ると、後も見ずに駆け出しました。
それが昨日の出来事です。
そして今、その櫛が、クリスマスの贈り物として、デラの艶やかな髪を美しく彩るのでした。
0722第四十四回ワイスレ杯参加作品
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2017/12/17(日) 00:14:14.69ID:gBGyIpsb
「愛してるよ」
 キスする時、彼は決まってそう囁く。
「私も、愛してる」
 私もいつも通り、彼の首に手を回しながらそう答える。
 目を瞑ると、彼が優しく唇を重ねてきた。
 微かに漂う煙草の匂い。私はこの匂いが大好きだった。
 彼が味わうように唇を揺らす度に、僅かに伸びてきた髭が私の肌を刺激する。私は体を震わせ、大きく息を吸って彼の匂いを堪能した。
 そしてゆっくりと差し入れられる彼の舌を迎え入れながら、自分からも舌を差し出し、彼と絡め合った。
 『キスはセックスと同じ』。昔、何かの本で読んだ記憶がある。本当にその通りだと思う。

 彼の体が重みを増し、私をベッドに誘う。後ろに倒される不安は、逞しい腕が掻き消してくれた。
 彼は私をベッドの上に横たえると、首筋に唇を這わせながら、全身を愛撫するようにして服を脱がせた。
 ボタンが外れる度に。ホックが弾ける度に。その僅かな刺激にも私の体は敏感に反応し、鞭で打ち据えられるように震えた。
 彼の右手が私の胸を包み、その先端を唇が覆う。既に勃起しているそれを舌先で転がすように弄ばれると、その堪えがたい刺激に私は身をのけ反らせた。
 気が付くと、いつの間にか彼も全裸になっていた。抱きしめられ、肌と肌が触れ合う快感で、私は喉から声が漏れるのを抑えることができなかった。
 瞼を固く閉じ、ハッ、ハッ、と荒い息を吐きながら、私は時の経つのを忘れる。時間も、世界も、全ては彼の腕の中。
 何もいらない。何も欲しくない。ただこの時だけがあればいい。

 夢中で脚を絡めると、私のお腹に彼の逞しいそれが押し付けられるのを感じた。
 欲しい…。止め処なく自分が溢れ出す。私は大きく脚を開き、彼を迎え入れようとした。
 そして彼もそれに答えてくれた。
 彼が私の中に入ってきた時、私は喜びに全身を打ち震わせながらも、口元からは泣き叫ぶような声を上げていた。
 彼がゆっくりと動きながら、唇を求めてくる。ああ…私は今、彼に求められているんだ。幸せ…、幸せ…。
 私は彼の頭を掻き抱き、自分から顔を寄せて彼を迎え入れた。
 彼が唇を離した後も、私は彼を求めた。
 頬に添えられた左手を口元に導き、その指を唇に含む。一本ずつ…、舌を絡め、味わうように…。
 うっすらと瞼を開くと、薬指の根元にリングの跡が付いているのが目に入った。
 優しいあなた…。私と会う時はいつも外してくれている。
 安心して、私はあなたを奥さんから奪おうなんて思っていないから。私にはこの時だけで充分、他に何も欲しくなんかないわ。
 今だけでいい。明日もいらない。

 彼の動きが激しさを増す。私は大きな声を上げながら、ベッドの端をまさぐった。
 そして布団の下に隠したそれを掴み取ると、彼を抱きしめるように両手を掲げ、その背中の上でカッターの刃を伸ばした。
 彼の腕が私を抱きしめる。彼の荒い吐息が耳元にかかる。彼が私の中を満たしてくれている…。ああ、愛してる!
 愛してる! 愛してる! 愛してる!
 私は繰り返し叫びながら、自分の手首に刃を走らせた。
0723ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2017/12/17(日) 00:20:25.72ID:ipi4pY5V
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>694
>>699
>>701
>>703
>>710
>>715
>>721

只今、十九作品!(`・ω・´)
0724ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/12/17(日) 00:21:41.58ID:ipi4pY5V
第四十四回ワイスレ杯参加作品

>>723
>>722

只今、二十品!(`・ω・´)
0725ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/12/17(日) 00:23:09.84ID:ipi4pY5V
「作」が抜けた! 意味はわかるのでいいとするか!(・`ω・´;)
0726この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 00:24:03.14ID:P61PuH93
後1作、物凄い馬鹿なスプラッタコメディを書く予定だけど、絶対オカルト部の方が上なんだよなあ。
でも頑張ろうと思う。せっかく今年最後のワイ杯だし。
月曜日には投稿したい。
0728この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 00:24:12.85ID:O7/tjWdH
今日は日曜ですか
締め切りまでに100作品くらい行って
ワイさんが苦しみますように(^ω^)
0730この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 00:44:54.74ID:0KKM2Cff
>>719
ハードルをお上げさなる。興味があるので試作品を作ってみようと思います。
ただ筆歴25年にして未だ文の基本、プロットの書き方すら分からないのでどうなるかは不明です。
一つ、引き算の例でホラーと純愛、エロスと引用された意味が分かりかねました。もともと何かと組んでいたのでしょうか。

>>720
足し算の料理で好きなのはガーリック醤油風味唐揚げです、チョコチャンクピザも。きっと隠し味もこの手合いですね。
引き算の料理で好きなのは生チョコケーキです。
0731この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 01:29:28.30ID:cJn3KA+9
思うに、料理は引き算である。これは和の考え方ではなかろうか。
和食は、引き算で塩梅なのである。
対して、西洋の料理は端的に言って、マリアージュであり錬金術なのではないか。塩梅ではなく、レシピが、重要ななのだと。
例えば「鯛」という食材を使って料理を組み立てるとき、和食はいかにしてこの鯛の美味さを伝えるかを考える。
フレンチなどに代表される西洋の料理は、鯛を使ってどんな美味しい一皿を作るかを考える。
アプローチの仕方が違う。
0733この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 02:20:10.97ID:BSNwB664
>>732
名前のとこ、消し忘れてるよ
エントリーされちゃうよ
0734この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 02:21:56.26ID:+QK28NdE
>>732
短文で勝負してきましたか!
負けてられないな。
0735この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 03:22:24.42ID:0KKM2Cff
>>733-734
失礼しました。
高等の短歌めいて囁いてしまいました。
いや、嘯いて凡ミスです。
>>732 ミスです。
全部書いたのですが投稿するには趣向がどうも違ってエントリーを取りやめました。しかし他を投稿するつもりです。間に合うかは不明です。

>>731
お話しを伺って、女でいうメイクで捉えたら分かりやすいと思いました。
日本人の場合は引き算で、ファンデーションとアイブロー、リップ、マスカラぐらいでOKです。
しかしヨーロッパの、特にゴシックメイクと来たら全て黒のアイシャドー、アイライナー、リップ、付け睫毛、時に牙までつけて、中世では付けホクロまで。
日本料理は本当に味を引き出すために調味料を極限まで抑える考えで、たとえば潮汁。西洋はスープは塩加減で素材の味が引き立つ考えでコンソメスープ。
これは日本人と西洋人の旨み成分が、日本人は昆布などの海洋性アミノ酸から、西洋人はトマトの植物性アミノ酸(グルタミン)から摂られるので、
もとから塩分がある昆布系は塩を引き算、塩で逆に甘みが引き立つトマトは塩を足し算。という仕組みだった気がします。
塩梅の場合は、梅干作りでは塩の加減で本当に味の仕上がりが変わることからその言葉があるわけですが。
それを小説で生かすとなると、料理やメイクが似て非なるもの、どちらも芸術になり得る共通点を生かして、
いかに物語を芸術分野にまで仕上げられるかは、下手な表現は省いて、重要な場面をさらに細かく紐解いて足し算する、ということで良いんですよね?
この前投稿したときも同じような質問はして推敲に生かしたばかりでしたが、その時はキャラクター描写を足し算しました。引き算はまだ課題として難しくて出来ていません。
極限まで広げてから、無駄をがっつりそぎ落とす方法もあると昔どこかで教えていただいたことがあったのを思い出しました。
0736この名無しがすごい!
垢版 |
2017/12/17(日) 03:44:08.66ID:t40kwk3A
>>722
ちょっと感動したのでひとこと。
セックスシーンでこれ程までにひとのこころを切なく描けるものとは思いませんでした。
むしろ、セックス描写を使わなければ暴けないひとのこころがあると知りました。
この作品のコンテストにおける結果云々は分かりませんが、私にとって衝撃を受けた名文であったので思わずレスしました。
0737第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/17(日) 06:18:52.51ID:P61PuH93
「ぬふああああ!」「ほれ、もっと気合をいれんか!」「ぬふおおおおお!」「まだじゃ。まだまだじゃ!」
10月。都内のとある公園。風はなく空は高く晴れ渡っていた。
ロマンスグレーの老人が少年にはっぱをかけている。坊主頭の少年は両手を天にかざし、そのこめかみには太い筋が走る。
公園をぐるりと囲むように植えられた木々の葉がわっさわっさと揺れた。
「お師匠様、無理っす」「気合が足りんのじゃ気合が」
坊主頭は地面に崩れ大の字になる。その額に葉っぱが落ちた。「無っすー」
「情けないのう……て、お主はスマホなんぞ見よって!」
老人が別の少年に目を向ける。ぶち眼鏡の彼はベンチで足を組んでいる。視線は上げない。
「来週テストなんで学習サイト見てます。後、軌道予測と政府の動向を」
「地球の危機にテストもサイトもあるかい!! で、軌道はどうなんじゃ? 隕石は」
「今晩落ちます。政府はまだ発表してませんが」「むう。やはり我らが地球を救うしかないのか」
眼鏡は眉をひそめた。
「そもそも蕎麦打ち教室の先生と生徒で何で地球を救えるんですか? 軌道予測だって僕がたまたまできるだけですし、
超能力だってこいつがたまた……」
「たまたまたまたま煩いのう! 玉がついている男子たるものたまには地球くらい救っても良いじゃろう!」
「そうっす……」坊主頭がゆらりと立ち上がった。「俺、地球を救ったら、あの子に告白するんす」
「それは死亡フラグじゃ! 縁起が悪い! じゃが心意気や良し! さあ、続きをやるぞい。眼鏡、お主の能力は遠隔視じゃ。
隕石に注意を払い続けるのじゃぞ。坊主、お前の能力は物体移動じゃ。もっと力を高めて、ワームホールを隕石に伸ばし、わしの能力、大破壊ぱわあを隕石にぶつけられるようにするんじゃ! 時間はないぞい!」
「はい! 分かりました! 頑張ります!」
「うむ! では引き続き気合を入れるのじゃ!」
「はい! ぬおおおおおおおおおおお!!」

両手を天にかざしてふんばる坊主頭。はっぱをかけるロマンスグレー。スマホを注視する眼鏡。
……を、少し離れた所から、幼児が眺めていた。その母を見上げる。
「ママー、あの人たち何してるの?」「しっ、見ちゃいけません」


富士テレビ放送局。第3収録室。
「政府発表です。今夜大隕石が東京都に落下します。皆さん落ち着いて行動してください……奈津美、愛している……ぶっ!!」
「愛しているの奈津美じゃなくてあたしだって言ったじゃない! この浮気野郎!!」
男性キャスターに、隣の女子アナの鉄拳が炸裂する、同時刻。

「はあはあ……やっと空間がつながりました!今です! お師匠様! フルパワーをこのワームホールにぶつけてください!」
坊主頭の掲げた手のひら。その上空は蜃気楼のように歪んでいる。
「でかしたぞ坊主頭! いくぞ! ふおおおおおお! 超必殺ううううう隕石くだ……」
両手を前に構えるロマンスグレーを中心に大気が渦をまいた。落ち葉が、通行人女性のスカートが舞い上がる。
「あ、パンツ見えた」
「「え」」
眼鏡の言葉に2人の視線はそれる。ロマンスグレーが出した衝撃波はワームホールではなく、坊主頭を直撃した。彼は後方に吹き飛び、背を打ち、首を仰け反り、また背を打ち、後ろの木に鼻っ柱をぶつけて両手で押さえる。押さえた手は鼻血に塗れた。


「奥さんいるってけど奈津美とできてたけどあたしが一番だって言ってたのにいいいいいい!!!」
「ぐは、げほ、ぐは! す、すまなか・・・」
スタッフの制止を振り切って男性キャスターに馬乗りになりぼこぼこにする女子アナ。彼らに一通のメモが届けられる。と、その場の全員が顔を見合わせる。アナウンサー達は、おもむろにカメラ目線となった。
「速報です。隕石は消滅しました。大変見苦しい所をお見せいたしました。申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした」男性キャスターに合わせて、女子アナも上体を屈めた。


翌日。通学路。坊主頭と少女は肩を並べて歩いていた。少女はぽつりと呟く。
「昨日大変だったの」「ああ、隕石? なんとか壊せてよかっ…」「パパ、キャスターで、浮気してて、ママが怒って凄い事になっちゃって」「そうか、色々あるよな。元気だせよ」
坊主頭は、俯く少女をじっと見た。彼女の背中に手をおそるおそる回そうとした時−。
「俺と付き合ってくれ。昨日決めたんだ。今日生きてたら、お前に告白するって」
「あ、はい。こちらこそお願いします」
突如割り込んだイケメンに少女は頷いた。2人は石と化した坊主頭を置いて、歩き出す。坊主頭の肩を眼鏡がぽん、と叩いた。
「超能力もイケメンには形無しだな」「うう……」
「帰ったら蕎麦打とう。何とか地球を救えたお祝いだ」

こうして地球は救われたのだった。
0738訂正:第四十四回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2017/12/17(日) 06:31:28.06ID:P61PuH93
「ぬふああ!」「ほれ、もっと気合をいれんか!」「ぬふおお!」「まだじゃ。まだまだじゃ!」
10月。都内のとある公園。風はなく空は高く晴れ渡っていた。
ロマンスグレーの老人が少年にはっぱをかけている。坊主頭の少年は両手を天にかざし、そのこめかみには太い筋が走る。
公園に植えられた木々の葉がわっさわっさと揺れた。
「お師匠様、無理っす」「気合が足りんのじゃ気合が」
坊主頭は地面に崩れ大の字になる。その額に葉っぱが落ちた。「無理っすー」
「情けないのう……て、お主はスマホなんぞ見よって!」
老人が別の少年に目を向ける。ぶち眼鏡の彼はベンチで足を組んでいる。視線は上げない。
「来週テストなんで学習サイト見てます。後、軌道予測と政府の動向を」
「地球の危機にテストもサイトもあるかい!! で、軌道はどうなんじゃ? 隕石は」
「今晩落ちます。政府はまだ発表してませんが」「むう。やはり我らが地球を救うしかないのか」
眼鏡は眉をひそめた。
「そもそも蕎麦打ち教室の先生と生徒で何で地球を救えるんですか? 軌道予測だって僕がたまたまできるだけですし、
超能力だってこいつがたまた……」
「たまたまたまたま煩いのう! 玉がついている男子たるものたまには地球くらい救っても良いじゃろう!」
「そうっす……」坊主頭がゆらりと立ち上がった。「俺、地球を救ったら、あの子に告白するんす」
「それは死亡フラグじゃ! 縁起が悪い! じゃが心意気や良し! さあ、続きをやるぞい。眼鏡、お主の能力は遠隔視じゃ。
隕石に注意を払い続けるのじゃぞ。坊主、お前の能力は物体移動じゃ。もっと力を高めて、ワームホールを隕石に伸ばし、わしの能力、大破壊ぱわあを隕石にぶつけられるようにするんじゃ! 時間はないぞい!」
「はい! 分かりました! 頑張ります!」
「うむ! では引き続き気合を入れるのじゃ!」
「はい! ぬおおおおお!!」

両手を天にかざしてふんばる坊主頭。はっぱをかけるロマンスグレー。スマホを注視する眼鏡。
……を、少し離れた所から、幼児が眺めていた。その母を見上げる。
「ママー、あの人たち何してるの?」「しっ、見ちゃいけません」


富士テレビ放送局。第3収録室。
「政府発表です。今夜大隕石が東京都に落下します。皆さん落ち着いて行動してください……奈津美、愛している……ぶっ!!」
「愛しているの奈津美じゃなくてあたしだって言ったじゃない! この浮気野郎!!」
男性キャスターに、隣の女子アナの鉄拳が炸裂する、同時刻。

「はあはあ……やっと空間がつながりました!今です! お師匠様! フルパワーをこのワームホールにぶつけてください!」
坊主頭の掲げた手のひら。その上空は蜃気楼のように歪んでいる。
「でかしたぞ坊主頭! いくぞ! ふおおおおおお! 超必殺ううううう隕石くだ……」
両手を前に構えるロマンスグレーを中心に大気が渦をまいた。落ち葉が、通行人女性のスカートが舞い上がる。
「あ、パンツ見えた」
「「え」」
眼鏡の言葉に2人の視線はそれる。ロマンスグレーが思わずちょっとだけ出した衝撃波は、坊主頭を直撃した。
彼は後方に吹き飛び、背を打ち、首を仰け反り、また背を打ち、後ろの木に鼻っ柱をぶつけて両手で押さえる。押さえた手は鼻血に塗れた。


「奥さんいるってけど奈津美とできてたけどあたしが一番だって言ってたのにいいい!!!」
「ぐは、げほ、ぐは! す、すまなか・・・」
スタッフの制止を振り切って男性キャスターに馬乗りになりぼこぼこにする女子アナ。彼らに一通のメモが届けられる。と、その場の全員が顔を見合わせる。アナウンサー達は、おもむろにカメラ目線となった。
「速報です。隕石は消滅しました。大変見苦しい所をお見せいたしました。申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした」男性キャスターに合わせて、女子アナも上体を屈めた。


翌日。通学路。坊主頭と少女は肩を並べて歩いていた。少女はぽつりと呟く。
「昨日大変だったの」「ああ、隕石? なんとか壊せてよかっ…」「パパ、キャスターで、浮気してて、ママが怒って凄い事になっちゃって」「そうか、色々あるよな。元気だせよ」
坊主頭は、俯く少女をじっと見た。彼女の背中に手をおそるおそる回そうとした時−。
「俺と付き合ってくれ。昨日決めたんだ。今日生きてたら、お前に告白するって」
「あ、はい。こちらこそお願いします」
突如割り込んだイケメンに少女は頷いた。2人は石と化した坊主頭を置いて、歩き出す。坊主頭の肩を眼鏡がぽん、と叩いた。
「超能力もイケメンには形無しだな」「うう……」
「帰ったら蕎麦打とう。何とか地球を救えたお祝いだ」

こうして地球は救われたのだった。
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