私は川濱市立戦摺中学校の教師、相模三郎である。
 教師になって二十年になる。
 周りの教師や生徒からは真面目な教師と思われている。
 私が受け持っているのは三年生の社会科である。
 受験勉強に向けて生徒たちは一生懸命に授業を聞いているが、中には不真面目な輩も居る。
 特に森高茂樹は質が悪い。
 授業中に隠れて弁当を食べたり、読書をしたりする。
 夏目漱石や森鴎外の作品でも読むのであれば、可愛いものだが、
 エロ本である。
「おい! 森高! 何を読んでいるんだ! 全く!」
 私は森高の席に赴きエロ本を取り上げた。
「先生! 勘弁してよ!」
 森高は泣きそうな表情を浮かべ懇願しているが、ここで容赦してはいけない。
「ダメだ! これは先生が没収する!」
 クラスの視線が森高と私に向き、クスクスと笑う声が聞こえる。
 さらに机の上を見ると、コンドームの箱を見つけた。
「森高! お前! こんなものを学校に持ってくるとは!」
 中学生の分際でコンドームとは……。
 私は鋭い目つきで森高を睨め付ける。
「……」
 森高は目を伏せ、視線を反らした。
「これも、没収だ!」
 コンドームも取り上げた。
 授業後、職員室の席に座りコンドームの箱を見ると、『箱に写真を貼って装着すると、その人に挿入できます。生です』
 だが説明書きの一部が擦れて見えなくなっていた。
 面白いことが書いてあるなと、思った。
 きっと商品の誇大広告だと思って心の中で馬鹿にした。
 けど、気になり、夜、こっそりトイレでゴムの先端に写真を貼って装着してみた。
 そっと、ベッドに戻ると妻が悶えて私を待っていた。
 もう十年位、セックスレスであった筈なのに。
 中年の私は体力を蝋燭の如く磨耗させながらも、久しぶりのセックスに満足感を得た。
 これは使える! 
 残りは一個である。
 どう使うか!?
 私の好きなタレント笹島希の写真を貼ってみるか!
 秋田県出身で色白でエキゾチックな顔が特徴的な女性である。
 私は数日後、笹島希の写真を貼って、例のコンドームを装着した。
 そして、あり得ないことが起きた。
 夜、横浜の街を歩いていると、後ろから誰かが私の肩を叩いた。
 振り返ると、笹島希である。
「アタシを抱いてくれますか?」
 彼女は顔を上気させ、私の耳元でささやいた。
 これを食べない手はない。
 早速、ラブホテルで彼女を抱いた。
 今まで経験した事のないない絶頂を感じた。
 もう、天国に居るような気分である。
 深夜、家に帰った。
「どうしたの? こんなに遅くなって」
 妻はパジャマ姿で玄関に出てきた心配そうに言った。
 同僚の教師と飲んできたと妻に嘘をついた。
 私は風呂に入り、眠る様にして寝た。
 翌朝、何だか身体が重い。
 まるで老人にでもなったようだ。
 顔を洗おうと洗面台に行き鏡を見ると、皺だらけで白髪の男が映っていた。