だったら現金しかない。
映画ダークナイトでマフィアの資金源を断つためにゴッサムシティ警察が放射線で印をつけた紙幣を用意したのと同じだ。
マネーロンダリングかなんのつもりかは不明だが、危ないものを押し付けようということか?

男は言う「そのようなことはない。現金はクリーンで一般に流通している紙幣と同一。先程も言ったが、使用もしくは所持であなたが罪に問われることはない」

その答えを聞いて佐藤は思う。
世の中誰もが他人のために生きられるわけじゃない。
政治家は国民のことなど考えてないし、自分が勤める会社はブラックで、パワハラ上司は殺したいほど憎い相手だ。
所詮優しい人である俺に仕事を押し付けようとする同僚や後輩の顔も思い浮かぶ。どいつも気に入らない。

好き勝手に暴れられるならどれほど気持ちいいことか。
道徳や善性というものは社会性のためにあるものだと佐藤は考えている。
社会で生きるために理性で欲を浄化し、己の居場所を作る。

男は言う「答えは決まったかね」

様々な感情を込めて佐藤はボタンに手をかける。続く