よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ4

1名無し物書き@推敲中?2012/01/29(日) 16:13:19.51
お約束
・前の投稿者が決めたお題で文章を書き、最後の行に次の投稿者のためにお題を示す。
・お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
・感想・批評・雑談は感想スレでどうぞ。

前スレ
よくわからんお題で次の人がSSを書くスレ3
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1284209458/

関連スレ
よくわからんお題で次の人がSS書くスレ 感想メモ
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/bun/1284739688/

301名無し物書き@推敲中?2013/07/27(土) NY:AN:NY.AN
書き忘れー
次は猫に擬態でお願いします

302猫に擬態2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN
「猫に擬態」

 目の前で寝ている猫は、賢い。

 どのくらい賢いか?と言うと、今が危機的状況である事を理解しているくらいだ。
 猫の向こうでは、花瓶が割れている。花が活けてあって、インテリアとして飾ってあったモノだ。
 花が散乱し、水は散らばって辺りを濡らしている。猫を飼う前は気にもしていなかった事を、
今は気にせねばならないと。解っていても、今まで通りと言うのは甘美な響きだったかもしれない。
 うっかりはしていたのだ、ともかく目の前の猫は、寝ている。

 本人は、そのつもりはないだろう。自分がちょっとドジを踏んだ事を理解しているくらいだ。
 ここは、ノラだったこの猫を飼い始めた酔狂な奴の部屋の中で、部屋のインテリアはそいつの私物であり、
それが壊れたとしたら、それは猫にしても、自分が捕ったネズミを横取りされた位には許し難い事だ、
そのくらいの理解はしているのかもしれない。
じゃなければ。目の前の光景を説明はし難い。

 何だか、腹を出して。ぐったりしている様にも見える。口を半開きにして、薄目を開けて、じっとしている。
もしかしたら、これで助かった事が有ったのかもしれない。ともかく近づいて、少し揺すってやる。
最初は強情だったが、やがて眼を開いて起き上がり、一度自分の顔を見てから、餌場の方へ歩いて行った。

 相手が人間なら、何か事件でもあったのかと疑って良いシーンだ。花瓶が壊れ、散乱し、
その前で寝ている奴は、動かない。殺人事件か何かが発生したのか、そう考えても良いシーンだが、
寝ている犠牲者?それは猫だった。あの猫が何を考えてぐったりと寝ていたのか、想像するに怖くなるが滑稽でもある。
ともかくあの猫は。賢いかもしれないが少しドジで、うっかり部屋主の花瓶を倒して壊してしまった。
その気まずさを何とか、回避しようとしたのだ。

 ともかく、不思議な猫かもしれない。”擬態”の技を持ってる。
 あまり意味も無さそうだが、飼っておいて、損も無いだろう。


次「PCの中に住んでいる」

303PCの中に住んでいる2013/11/10(日) 09:45:52.03
まあタイトルの通りだ。

俺は
パソコンの中に住んでいる。
この中に入るのは苦労した。
だが痛みは最初だけ。
この画面に入るときに皮膚が剥がされたような痛みが走る。
その痛みを乗り越えられたのは、パソコンの中からエロい、キラキラした美少女が俺を誘っていたからだ。
それからというもの俺の人生は一変した。
毎日毎晩キラキラ美少女とやりたい放題。
働かなくても食い物が出てくる。
美少女の他にも女の子がいて、たまにはその子と遊ぶこともできる。

で、そちらの世界はどうなの?
戦争が起きた? 本当か。相手はやはり。うん、俺がそっちにいたときから怪しかったもんな。
で。なんだって。非戦闘員の家の電気は止まるのか?
そうか。それは仕方ないか。
待ってくれ。頼みがある。
あと二時間、いや一時間でいい。
俺の部屋に美少女たちを集めて楽しみたいんだ。
いいだろうそれくらい。
そしたらいいよ。
このパソコンの電源を切ってくれても。

次「その眼鏡には名前があった」

304その眼鏡には名前があった2013/11/23(土) 18:18:03.83
 古い記憶に、祖父の老眼鏡に関する一場面がある。ある冬の夕方、
洗面所に入ったおれは、隣の浴室で湯に浸かっている祖父の眼鏡が洗
面台の上のタオルに乗っているのを見た。まだ幼かったおれは、眼鏡
というものの名称も用途をも知らず、ただ寝るときと風呂に入るとき
を除いて常に祖父の顔面にくっついているものと思いなしていた。目
の前にあるのは、黒く厳つい枠に透明なガラスがはめられた、まるで
小さな”お面”――そのとき、おれはかすかな好奇心に唆され、祖父
を真似てその老眼鏡を自分の顔にかけてみた。
「うわぁ」というおれの声に反応したのか、浴室の戸を開けて顔を覗
かせた祖父が、「こら、不動丸に触るな」と一喝した。そのときから
しばらくの間、おれが眼鏡一般を「不動丸」と呼ぶようになったのだ
と、だいぶ後に祖父がにやにやしながら語ったことがある。不動丸と
は、祖父がその眼鏡に与えた名であった。目黒不動近くの眼鏡屋であ
つらえたとして。

305その眼鏡には名前があった2013/11/23(土) 18:19:03.07
 高校一年生になっておれは駅前のコンビニでバイトを始めた。バイ
トに向かおうと仕度をしていると、自室からおれを呼ぶ祖父の声がし
た。行ってみると、「隆、ノブトモが壊れた。駅前に眼鏡屋があるだ
ろう。あそこへ修理に持って行ってくれ。」と言われた。差し出され
た祖父の手には、右の鼻あてが根元から折れた老眼鏡が座っていた。
「ノブトモ?」と尋ねると、祖父はよくぞ聞いてくれたと言わんばか
りの笑みをして、「もう数えで十五だからな。めでたく元服したんだ。」
と言った。
 ノブは信と書くのだろう。おれの父も祖父も、知る限り遡って曽祖
父の代から名前に信の字を継いでいる。なぜだかおれは隆になってし
まったが。あいにくノブトモの字までは尋ねなかったので、トモは何
と書くか今となっては分からない。それでも、何となくその意味する
ところの察しはつくけれど。

306その眼鏡には名前があった2013/11/23(土) 18:20:19.90
 三年前、祖父は他界した。車に跳ねられ、頭部を強打したという。
祖父の老眼鏡もガラスが砕け、縁はひしゃげ、耳あては片方失われて
いた。警察から引き取ったノブトモは、葬儀の際祖父の棺に納められ、
己を愛用した主とともに葬られた。祖父は、初めてあつらえた老眼鏡
を大いに気に入り、一度も買い替えなかったのだと父から聞いた。
 今や空室となった祖父の部屋には遺影がある。さっぱりと笑う故人
の顔に、清景院伴生正澄居士と、おれが勝手に戒名をおくった故ノブ
トモがかかっている。ずいぶん安直な名かもしれないが、きっと祖父
も喜んでくれるだろう。この単純さは祖父譲りだ。 

次のお題は「さみしく見えてさみしくない」 

307さみしく見えてさみしくない2013/11/27(水) 17:58:40.11
 待ち合わせ場所に現れるなり、コートからポケットティッシュを出し、突きつけられる。
 ピンサロの広告だった――これが求人広告なら彼女もヘソを曲げなかったろうに……。

「多少混み合っててもさあ、ちゃんと顔見てくれりゃ判るハズだよ?」
「俺、チラシのバイトなら経験ある。……ピアスでも付けてみりゃどうだ?」

 ――そんなもん男でもする……なのに俺、なぜピアスって言葉が出たんだ?

「……ピアス?」
「一瞬で判断しなきゃいけないんだ。アクセサリーが女性的なら女性と見做してた」

 女らしい髪型、服装。そんなものを彼女は避けている。理由は『似合わないから』
 男になりたいワケじゃない。だから、たまに間違われると機嫌を損ねてしまう。

 ショーウィンドウに目をやり、しばし自分らの姿を眺める。
 学校は違えど一緒に上京し、何時の間にやらこんな季節――変わり映えしないな。
 でもないか?彼女は……髪を更に切り、スカートの呪縛から開放されたと今でも満喫中。
 俺は……人付き合いが苦手な分、少々彼女に依存気味――欠点が増長しただけ?

 ――ふらりと傍から彼女が離れ、吸われるように証明写真のボックスへ……。
 後を追い、カーテンを引く――備え付けの鏡を睨んでるが……機嫌が直ってる?

「突然『ピアスしろ』って言うから――そういうの、嫌いなのかと思ってたけどな」
「え?いや、別に、積極的に薦めてないぞ?」
「初めてだよ、さみしく見えたの……何も付けてない耳が」

 ――だったら少しは寂しそうな顔してみろよ?


次のお題は「逆立ちして手を叩こう」

308逆立ちして手を叩こう2013/11/30(土) 01:02:01.20
 出産予定日より三週間早く、土曜日の午後妻が自宅で破水した。妻に付き添って救急車に乗り込んだとき、ストレッチャーに横たわる友達を救急車の中で見守った遠い記憶が呼び起こされた。
 「お前、逆立ちして手を叩けるか?」と義男が唐突に口にした。
 義雄は、当時近所に住んでいた同級生で、おれとは幼稚園のから友達であった。小学校に上がり、容顔が優れていたのを鼻にかけるようになった義雄は、三四年生になるその頃には随分とおれに優越心を示すようになっていた。
 気に障ったが、「カバ」とあだ名された自分の風貌と見比べると気後れして、何かと付き従う日々だった。
 ある土曜日の午後、義男と二人きり公園で遊んでいたとき、義男の侮るようなさきの言葉にむっとして「できるさ。」と答えた。
「そんならやるか?」
 義雄は公園のコンクリート塀に駆け寄り、手を突いて蹴り上がり、逆立ちして塀に足をもたせた。おれも義男の左で逆立ちになった。
 義雄は「こうだ。」と言って両肘を深く曲げたかと思うと、一気に飛び上がり、宙で両手をぱんと一つ合わせた。そして、すぐさま両手を地に着いて、少し息を荒げながら傍らのおれを見やった。逆さに見た義男のあの憎々しい表情。
 一方のおれは、ただ逆立ちしているだけで苦しくてならなかった。飛び上がるために腕を畳むことすらできない。額の汗が髪の毛の根元を伝って垂れる。
「お前、できるって言ったよな。」
義男の言葉に責められて顔が膨らんでいくように思えた。義雄は逆立ちのままもう一度手を叩いてみせる。方や、おれの腕は動かない。
 義男が「カバが逆立ちしてるから馬鹿だな。」と言ってケラケラ笑い出した瞬間、おれは、地面についた義男の手を払うように叩いた。
次のお題は「うっかり食べる」

309うっかり食べるべる2013/12/01(日) 19:09:01.36
 偉い雨脚だ。牛丼屋の軒下で足止めを食う。さすがにもう一杯というワケにいかないし、そうしたところで時間稼ぎには知れている。ハンバーガーにするべきだった。「あの、宜しければ――」恐縮がちな声に振り向くと女性店員。片手にはビニル傘。

「――この傘を駅向こうのハンバーガーショップまで届けて頂けますか?」

 前もって駅の売店で傘を買い、預った傘を整えてから目的の店に入る。要件を店員に話すと奥へ通された。

「これはお礼です。ただし、うっかり食べないで下さいね」

 片手で紙袋を受け取り、駅へ向かう。――うっかり食べないで下さい?それなら、いつ食べりゃいい?ゴミ箱への投棄も考えたが、投入口が塞がっていた。
特別警戒って、こんな駅に要人やテロもないだろうに。コレも別に危険物ってワケじゃあ、……紙袋を開いて覗く。マフィンが3つ?朝の残りにしては温かい。……更に包装紙も解くと、姿を現したのは今川焼?我に返ると俺の手は、ソレを口へと運ぶ途中――

「「うっかり食べないでください!!」」

 南口には牛丼屋、北口からはバーガー屋、共鳴する店員らの叫びに被さるサイレン音。今川焼を放り投げ、一目散に改札へ。

 ――雲が切れ、電車の窓に陽射が映る。運良く扉が閉まる直前だった。何やら階段の下から歓声が沸き立つが、……関わりたくない。発車と同時にアナウンス。――特別警戒態勢の解除を告げるのを聞き、紙袋を握る手を緩めた。中には2つ残っているが、
……うっかり食べてはいけない、うっかり食べてはいけない、うっかり食べてはいけない、うっかり食べてはいけない……


次のお題、「社会の窓には意味がある」

310社会の窓には意味がある2013/12/13(金) 12:21:24.19
「僕がこの言葉を知ったのは小学生のときなんだ。ずっと『世間と自分の狭間』という意味だと勘違いしてたけど、実際は、昭和のラジオ番組のタイトルが語源。社会の内情を暴くような内容だったそうだ」
「わたし、別に知識ひけらせなんて言ってないわよ?」
「その番組名が、大事な箇所を隠すジッパーを指すよう転用されたらしい」
「あなたの言うことはいつも回りくどいの!大声で聞き返して恥かいたわ」
「知らないとは思わなかったんだよ。どう指摘すれば分かりやすかったんだ?」
「えっと……『たかじんの窓』かな?」

次のお題は「野球に興味はありません」

311野球に興味はありません2013/12/26(木) 11:28:42.91
 グラウンドを駆け回る学び舎の同胞たち、それを視界の下半分に。やや赤みがかった空に浮かぶ白い綿雲、それを視界の上半分に。
 何をするでもなくただただボーっと、焦点は二つの景色を絶え間なく往来する白球。

「何してるんだ?」

 と、声をかけ背後に立つのは我が恩師。

「特に、何も―」

 端的に、あるがままの事実を述べる。

「混ざらないのか? 内は緩いから部員でなくとも大丈夫だぞ?」

 何を察したのか心を砕きくださる我が恩師、有難く思うもやや困る。そうではないのだ。

「いえ、構いません」

 対してコチラは気の利く物言い等できず。

「ただ…綺麗だな、と――」

 やはり在りのままを述べる言葉しか見つからなかった。



次の題は「最終確認は3回までで」

312「最終確認は3回までで」2014/02/10(月) 22:02:02.78
俺はヒーロー。たぶんそうだ。そんな気がする。
俺はどう見ても悪の組織のものとしか思えないおどろおどろしいコンピュータ室にいた。
ここのプログラマはよほど無能なのだろう、壁に大きく「デバッグは慎重に!」という
張り紙が貼られている。やれやれ、そんな標語でどうにかなるもんでもないだろうに。
俺の目の前の、液晶輝くコンソールがこういっていた。
「あなたの記憶を消去します。よろしいですか?変更は元に戻せません。(Y/N)」
当然Nだ。俺はNを押す。

俺はヒーロー。たぶんそうだ。そんな気がする。
(中略)
「あなたの記憶を消去します。よろしいですか?変更は元に戻せません。(Y/N)」
当然Nだ。俺はNを押す。

俺はヒーロー。たぶんそうだ。そんな気がする。
(中略)
「あなたの記憶を消去します。よろしいですか?変更は元に戻せません。(Y/N)」
当然Nだ。俺はNを押す。

俺はヒーロー。たぶんそうだ。そんな気がする。
ここのプログラマはよほど無能なのだろう、壁に大きく「デバッグは慎重に!」という
張り紙が貼られている。やれやれ、そんな標語でどうにかなるもんでもないだろうに。
俺の目の前の、液晶輝くコンソールがこういっていた。

「健康のため、記憶消去は1日3回までです」
なんのこっちゃ。悪徳プログラマのやることは本当にわけがわからない。
俺は何かを思い出そうとするが、うまく行かない。と、背後から声がかかった。
「そろそろ年貢の納め時だな、怪人PGフジソフトン」
なんのこっちゃ…・・・・。肩をすくめて振り返ろうとした俺の背中を、強烈なキックが襲った。
遠のく意識の中で、なぜか錦糸町のネオンが踊った。

次「ふくらみかけのフルーツは」

313名無し物書き@推敲中?2014/03/12(水) 21:03:29.39
大分から愛知への飛行機が謎の無人島の浜辺に墜落した。
ただ一人の生存者であるヨシオはなぜかそこが無人島であることをすでに知っていた。
迷わず森に分け入り食料を探しに出かけた。
ヨシオは毒キノコっぽいキノコを片っ端から食らい尽くすと、トランス状態になり、
ふくらみかけのフルーツを地面に突き刺して、一通り射精して死んでしまった。
ヨシオは14年前小学校の卒業文集に「俺の夢は地球とセックスすることなんだ」と記していた。

314名無し物書き@推敲中?2014/03/12(水) 21:13:58.39
次は?

315名無し物書き@推敲中?2014/03/12(水) 21:15:44.47
継続

316名無し物書き@推敲中?2014/03/16(日) 03:10:44.15
ふくらみかけのフルーツは、ぶらぶらしなから考えていた。
俺はなんになるんだろう?
枝先の視界は良好だ。眼下には民家の窓があり、住人が見える。
いまはテレビを見ていて、尻をかきながら寝そべっている。
俺の寄宿する木の根本は、その民家の庭に埋まっている。

地上は、しかし俺には遠い。いつか地に落ちるとしても
まだ先の話のはずだ。
俺の横には、電線が走っている。こちらの方が、俺には近い。
よく、カラスが止まっている。この民家のある通りの
せいぜい6軒分の小さな縄張りを持つ。
まだ、俺は食べられやしないさ。
まだ。まだ。まだ。
俺はなんになるんだろう?と、またふくらみかけたフルーツは
ぶらぶらと思索にふけるのだった。

次は
バカラオ

317バカラオ2014/04/04(金) 02:01:18.37
バカラオバカラオーOH

次のお題は「桜霞の夢より覚めりし」

318名無し物書き@推敲中?2014/04/04(金) 19:30:02.84
弁天池の浮島には、まるで羽衣でも身に付けた様な美しい姿の唯さんが、歌を謳っていた。
それは伸びやかで透明感のある声だったのだけれど、そこ儚げで哀しさをもはらむ様に感じさせた。
僕はその畔に咲く満開の桜の下で、口を大きく開けたまま眺めていた。まるで阿呆のように。
満開の桜から花びらがひとひらふたひら舞落ちたかと思うと、やがて一陣の風と伴に一斉に散り始めた。
それはまるで春霞、いや桜霞とでも表現するのが正しいのかも知れない。
僕はそんな桜霞の中で謳う唯さんをいつも以上にいとおしく感じてじっと見つめていた。

どれくらいの時間が経ったのだろう?酷い寒さに気づくと、僕は薄暗い池の前で1人立ち尽くしていた。
そして僕は、去年の春にこの弁天池の桜を見に来たのを最後に唯さんは手の届かない遠くへ行ってしまっていたことを思い出した。
夢でもうつつでも良いから逢いたいと、毎日願っていたのだ。ふと、顔を上げると空にはぼんやりとした弓張月が浮かんでいた。
まるで僕にそろそろ現実に戻りなさいと、優しく声を掛けてくれているようだった。唯さんのように。


次は「勾玉と古びた鑑」で

319勾玉と古びた鑑2014/04/12(土) 22:35:12.30
机の引き出しに、勾玉が入っていた。
翡翠でできているのであろうか、淡い緑色をした、ところどころ欠けたところのある
手のひらにすっぽりと収まるおおきさの古びた勾玉だ。
自分で入れた覚えはない。
鍵を掛けていたので他人が入れる事はできない。
夕方の、オレンジ色の日差しが窓から差し込む自分の部屋で、俺はなぜこんな物が
机に入っているのか考えている。

考えているところに玄関のチャイムが鳴った。
「お届け物です」
宅配便の業者は、小さな白い包みを俺に手渡し、帰って行った。
貼ってあった送り札には差出人の名前はない。
包みをあけると、古びた鑑が入っていた。
鑑といっても、ガラスのそれではなく、金属の表面を磨いて顔が映るやつ。
ちょうど俺の顔くらいの大きさで、裏になにやら彫刻が施されている。
リビングに移動しながら考える。これは、誰かのイタズラなのではないだろうか?
リビングの掃き出し窓から庭をみると、石製の棺が見えた。
イタズラにしてもこんなに重さそうな物を運び込むとは。
クレーンかなにかでないと動かせないだろうに。

キッチンから音がした。
侵入者か? 俺はおそるおそるキッチンに向かう。
干涸びた人間の形をしたなにかが、エプロンをして包丁を握っていた。
俺は、逃げた方がいいのだろうか?

次のお題は「春風と制服の短いスカート」でよろしく

320春風と制服の短いスカート2014/05/25(日) 11:42:27.19
春風とは恐ろしいもので、埃、葉桜、時には瓦と、なんでも飛ばしてしまう事が割にある。
そして畢竟春になれば服は薄くなり肌は露出する。
丈の短いなにそれが現れるのも、ごく自然ななりゆきである。
そうくればなりゆきとしては紙ぺらの如く薄い防御など春風殿にとって見れば
子錦を前にした大横綱のように鎧袖一触、片付けてしまえそうなものだが、
そこが世の不思議なところ。そう簡単には運ばない。
あれまた針金でも詰まっているのですかと聞きたくなるほどに
動かない、動かない。
むむと念じてみるものの、春風は参ったとばかりに吹くのをやめてしまう。
えい、この根性無しめ。役立たず。盆暗かぜ。
怒った春風が目に砂を飛ばしてきた。
なに、その程度で参る私ではない。とはいえ痛い。これでは見えないではないか。
やっとのことで目から砂粒を取り払う。
どうやら針金を折り曲げるのは首尾よくいったが、何分勢いが強すぎた。
女生は手で尻を押さえてしまっている。
まったく春風殿、融通の利かん男である。

あら、あすこにおわす主婦が何やらこちらを指差している。
何ぞ用件でもおありかしらん?

おまわりさん、あの人です。

おやいけない。
春風よ、私を遠くへ吹き散らしておくれ。

次のお題「腹黒人形は踊りが苦手」で

321名無し物書き@推敲中?2014/06/01(日) 17:06:40.48
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322腹黒人形は踊りが苦手2014/06/30(月) 16:35:03.54
生意気そうな若い顔立ちだ。俺の膝頭に届かない背丈で、小さく痩せた体つき。
素晴らしいシルクの背広を着て、俺の足元で、じっと俺を見上げている。にやにや笑っている。
俺はこの生き物に、ぞっとするものを感じて、不快な気分に苛立ちながら、口をモゴモゴと動かし、乾いた唇をぺろっと舐めた。
そして、俺は、彼に抱く動揺を悟られないようにふいと目を彼から反らし、目の前のステージを指さした。足元の人形と同じくらいの背丈の人形が美しい衣装をみにつけて、ステージの上でくるくると回り、踊っている。
「早く君もあそこに登って踊りなさい。みんなが踊る様に君を踊るんだよ」
 髭の下から強めの口調で、そういうと、その人形は、あいかわらずにやにや下品に笑って、ちっとも動く気配がない。
「逆らうつもりなら、昨日の人形の様にお前も燃やすぞ」
 俺は目をぎらりと見開き、そう脅してやると、人形は激しく笑いながらステージに駆け上がって言った。
 俺は人形の動きを黙って目で追っていた。
 人形はステージの上によじ登ると、すぐにくるくると回り出した。それはいったい踊りと呼べるものだったか。わかりはしない。
その踊りと言ったらめちゃくちゃで、俺は太股の横で握った自分の拳が震えているのを感じ、腹の底からむしむしとする怒りが込み上げてきた。頭に血が上る。見ていられない。馬鹿げている。
俺はキチガイみたいに笑いだした。そして、懐から拳銃を取り出し、ステージの人形を全て撃ち殺した。だけど、奴だけ俺の弾から逃れていたのだ。後で死んだ人形の数を数えていて気がついた事だった。

 次のお題「足の裏の穴」

323名無し物書き@推敲中?2014/06/30(月) 20:50:55.52
私の足の裏に穴があいていた。
いつからだろう。
違和感がなくて、全然気づかなかった。
お風呂からあがって、足のむくみをとるマッサージをしていて見つけた。
胡座をかくと1円玉ぐらいの真っ黒い穴がこちらを向くのに、足の甲には何もない。

気味が悪くなって、手の親指で揉もうとしたらすっぽりハマった。
足の裏にめり込んでしまった手の親指。
その瞬間、背筋をゾクゾクゾクっと撫でられたような感覚に襲われた。
驚いて抜こうとしたら、また襲ってきた。
走り抜ける得体の知れない感覚。それは、うっとりするような快感だった。

私はゆっくり引き抜き、ゆっくり押し入れる。たまらない。
何度も、何度も、引き抜き、押し入れる。
いつの間にか下着が湿って、絨毯も汚してしまった。
あいつ、喜ぶかなぁ。
私の彼は変態で、私があいつの股間を踏むとすごく喜ぶ。これなら、私も気持ちいいかも。

次は「青色のない信号機」で

324名無し物書き@推敲中?2014/07/01(火) 09:51:05.70
イラストレーターで収入が少ないからと30代後半で漫画家になろうとする、ひきこもりのバカ発見。
足立区に住んでいるそうだ
http://inumenken.blog.jp/archives/6609090.html

325青色のない信号機2014/07/06(日) 19:45:00.61
とある田舎の村のはずれから高速道路へと向かう山道に、赤信号と黄色信号は点灯するのに、青信号だけが点灯しない信号機があった。
日本の高度経済成長期に、成長戦略の一環として設置はされたものの、赤字を垂れ流し続ける地方鉄道の様に、その信号機もまた
誰にも利用されず、誰に見られる事もないままに放置されていた。
勿論何度か整備を試みられたが、ライトを交換しても不調が収まらなかったし、年に数百回程度しか車両が往復しない辺鄙な場所でもあった訳で、ないのは青色だけなのだから。
そんな形で、信号を調整する人々にも青色のない信号機の噂が伝わっていった。

いつの頃からか、その場所で不可解な出来事が起きたのだった。いや、厳密にいえば単なる事故だった。
しかし分かる者には分かってしまう。
年間数百しか通らないその山道での事故が、その年その県で、堂々の二位を飾ったのだ。
まるで目立つのを拒みつつ、しかし数は稼ぐ、そんな狡猾さが滲んでいた。
青色のない信号機沿いのガードレールで、トラックを大破させたものの、山道に身を投げて一命を取り留めたトラック運転手はこう語った。
「あの時には確かに青信号を確認したはずだった」…………と。
そんな新聞の三面記事に興味を持った僕は、その信号機のある場所を調べて早速向かってみた。

ついてみたら、なんてことない。僕の様な馬鹿な若造の考えを見越していて、ガードレールは既に修復された後があった。
信号機もこうして、ちゃんと青が点灯しているじゃないか、僕は少々の落胆を土産にして、停めていた車にキーをかけて、帰りの支度を始めると、アクセルを踏んでその信号を通りすぎようとした。

「ブレーキを押しているはずなのに……」
アクセルメーターは0kmので動かない。それが確かな証拠だった。
しかし、一度アクセルを踏んで信号機に向かうと、それから車が止まる事はなかった。
いや……。それは違った。しかし、まさか。
僕がようやく気が付いた頃には、もう僕の車はガードレールを透過して、空を舞って飛び立っていた。

次は「夢見る少女と悪夢」で

これ、お題もセンスが問われますね。

326夢見る少女と悪夢2014/07/07(月) 01:38:54.98
最悪の宵闇が今夜もおとずれる。
人々をまとめて締め上げるような狂気の奈落が口を開け、正気の者すらむしばむ太古の悪夢が、敵意と悪意の澱が溜まる小さな街へにじみ出す。
それはまるで異界の魔物たちが囁くがごとく不吉で、惑わすように逆なでるように、静かにゆき渡っては人々を震えあがらせ、一睡も許すことはない。
かつて、この街にいた夢見がちな少女が、太古の悪魔にその身を捧げ、肉も魂も捕らえられたのだ。
敵意と悪意に満ちた小さな街にあって、唯一穢れのない心を持っていた少女は、異質な存在として忌み嫌われ、それがもとで迫害を受けた。
蔑まれ嘲られ、石を投げられ、蹴り倒され、それでも少女は自分と街の者たちが救われると信じ、毎夜毎夜、神に祈り続け、聖なる人がいつか舞い降りることを願い続けた。
しかし街の者たちの醜悪な害意も、底なしの深淵のごとく深く暗く激しく燃えさかり、嘲るかわりにかどわかし、石を投げるかわりに花で誘い、蹴り倒すかわりに己の欲望を少女の体内へねじ込んだ。
囃し立てる声は高く低く、野卑で下劣で、男どころか女も、子供や老人までも、少女を取り囲み黄ばんだ唾と罵声を浴びせ、中には絞り出した膿を少女の体に塗りつけ、投げつけられる糞尿にまみれ、街の男のほぼ全てはその欲望を少女の体に刻んだ。
邪悪な宵闇は、その夜から街を多い尽くし、人々を苛むのだ。
少女は立つこともできず、うめいては咽び泣き、折られた手足のまま地を這い、苦痛の叫びと呪いの言葉を吐き続けながら、手と足と腹と胸の皮膚が破れきっても、太古に閉ざされた深い深い炭鉱に降り、そして帰ってこなかった。
邪悪で醜怪な人々は、今も狂気を孕む夜気の中でうずくまる。
明かりを灯すための蝋燭や油などとうの昔に底をつき、ただ闇夜が過ぎ去るのをじっと耐え続け、睡魔に撫でられては絶叫し、あちこちの家々から響く呪われた叫び声に震え上がりながら一夜を過ごす。
それでも街の者たちは誰も少女を思い出さない、思い出せない、気づく者もいなければ、懺悔など存在すらも知らず、ただただ絶叫と呪いがこだまする街の中に身を沈めてゆく。

次は「踊り狂う歯ブラシ」で

327踊り狂う歯ブラシ2014/07/12(土) 17:45:53.06
「電動歯ブラシには幾つかのジレンマがある」
 博士は助手である僕に向かって蘊蓄を垂れている。いつものことだし、ある意味そのために
しか僕は存在しないので、相づちを打つだけだ。
「はあ」
「つまりな、コードレスが当然だ。だと電池がいるな。他方で、動きの複雑さはあった方がいい。
それにはモータ以外の要素を介入させるべきだ。ここに対立が生じる訳だ」
「はあ」
「そこで、これが解決策だ」
 要するに、電池を無くしたのだそうだ。電力は電磁誘導で無線送信できる。だから
そのスペースにモーター複数を組み込み、極めて複雑な運動を可能にしたのだそうだ。
「速度、振り幅の調節はもちろん、プログラムすれば連続的に様々な運動が可能にな
るんだ。これは凄いぞ!」
「はあ」
 この辺りで、僕は不安を抱え始める。だが、博士は自信満々だ。
「でだ、これから最大限複雑な動きをするようにして、実働実験をするんだ」
「博士、最初はごく簡単な動きだけにした方が……」
「何を言う! それでは実験にならんだろう。行くぞ」
 そして博士は気絶した。電動歯ブラシは博士の手の中で跳ねると、まず彼の顎に命中
したからだ。僕は慌てて博士を引きずって部屋から逃げ出した。ドアを閉めると、ぱちん
ぱちんと音がする。
 窓から覗くと、歯ブラシは一人勝手に床の上をはね回り、時には天井に当たり、あるい
は壁に反射し、勝手に踊り狂っていた。
「あーあ。この部屋も『開かずの間』だな」
 この研究所には、こんな部屋が既に五つもあるのだ。次の成功まで、あと幾つこんな
部屋が出来ることか。

次、『世界で初めての失敗』

328名無し物書き@推敲中?2014/07/31(木) 05:31:39.41
タンニは固まっていた。額から汗がしたたり落ちそうになって、素早くのけ反った。タンニは恐る恐る紙に視線をやった。そして叫んだ。
「やってしまったー!」
そしてそのまま気を失って床に倒れこんだ。

「どうするのかね、メラン君」
場はみな厳粛を極めた顔をしている。その中でも立派な髭を蓄えた老人が鋭い視線を一人の男に投げかけた。
メランは答えた。
「この度は私の息子がとんだ粗相をいたしました。崇高なる創造を紙とインクなどという不完全なものでやろうとした。到底許される行為ではございません、タンニを抹消しましょう」
老人はしばし目を閉じていたが、地面に杖を打ち付け、思い切ったように高々と声を発した。
「抹消、そうするしかなかろう」
この世界で抹消とは死を意味する。しかし血も流れなければ亡骸も残らない。抹消は抹消であり、きれいさっぱり跡形もなく消えるのだ。
査問委員会はもう2000年も開かれていなかった。
それが、タンニが父親にそのことを報告して、たった20分の間にすべての神々が集められたのだからよほどの事件だったと言える。

タンニは立ち上がって言った。
「お、お待ちください」
私の犯した過ちは取り返しのつくものではございません。しかしこちらをご覧ください。そういってタンニは壁に一つの映像を映し出した。
「チャームポイントはホクロです」
女性は笑いながら、頬にあるその黒い点を指さした。


今日ではホクロなど珍しいものではない。だが本来は誰の顔にもホクロなどなかった。人間はみな完璧であった。こ

329続き2014/07/31(木) 05:34:01.64
のタンニの失敗以来急きょホクロが書き足された。その時に紙とインクが見直され、神々の創造に愛用されるようになった。当然ミスが増え、不完全な人間が量産された。

次「教頭先生は辞める日に笑ったよ」です。

330名無し物書き@推敲中?2014/11/17(月) 00:17:59.68
教頭先生が辞める日、6年生のみんなで花束を渡したよ。
「先生、ながいあいだありがとうございました。ぼくらはみんな、先生によくしていただきました」
そしたら先生、すこし涙ぐみながらちょっとお話をしてくれたんだ。
「Aくん、君は1年生のとき、6組だったね。でもクラスメイトの中で、ちょっと輝いていたよ。
あの時私は、よし、この子が6年生になるまでずっと気にかけていよう、そう思ったんだ」
「ありがとうございます、教頭先生」
「さいきんの子供は、態度がわるい。君みたいな子ばかりだったらどんなにいいか」
「ありがとうございます、教頭先生」
「でも君は2年生のとき5組だったね。正直、あぶなかったよ」
「申し訳ありませんでした、教頭先生」
「3年のとき4組、4年のとき3組、5年のとき2組だった」
「ご迷惑をおかけしました、教頭先生」
「いいんだ、ここまで来てくれたからにはみんなと一緒だ。まったく、最近の子供は、
いって聞かせても道理のわからない子ばかりだからね。そういう子は必要ないね」
「はい、ぼくたちもそう思います」
「そうだろうとも。君たち6年1組はいい子ばかりだね」
教頭先生がにっこり笑うと、波止場からおまわりさんが来て、教頭先生をつれて行ったんだ。
そのあと島にはテレビの人とかが来て、しばらくたいへんなことになったよ。

次「100日あくとモノを忘れる」で。

331名無し物書き@推敲中?2015/06/01(月) 13:46:25.39
モノヒデオ

332モノヒデオ2015/06/10(水) 22:11:24.74
「ピッチャー 江草に代わりまして モノ」
投手交代を告げるアナウンスに球場はざわついた。
「モノだって そんな投手いたか?」「シラネ」
はたしてモノ投手が登場してマウンドに立った。
しかしモノ投手は動かない。
動くはずがないのだ。だって彼はモノ。物体。
オブジェクトなのだから。
モノ投手は動かない。

そして永遠ともいえる時間が流れた。
モノ投手は動かない。
打者も 走者も 審判も動かない。
お客さんも動くのをやめたまま。
そうしてそれがきっかけになって
世界全体すら止まってしまうのですが
かれらは止まっているので
とまっていることを自覚することは
永遠にないのでした……

「わかったわかった
俺がいつまでたっても動かないからって
そんなイヤミな話を聞かせることないだろ。
わかったよ やるよ
今からやろうと思ってたのに ぶつぶつ」

END

333名無し物書き@推敲中?2015/06/10(水) 22:13:05.64
失礼しました

次のお題は「人違い」で

334人違い2015/11/01(日) 19:40:29.08
『電磁コンシールメント破損。パーティカル型光学迷彩濃度ダウン。
遠隔視点誘導デバイス全滅。インプリクションバースト残量ゼロ』
骨伝導で戦術統合AIの忌々しい状況確認を聞きながら、俺はクソッタレな戦場をひた走っていた。
戦場と言っても、俺が持ち込んだ武器らしい武器は、工具を兼ねたちっぽけなレーザーカッターだけ。
完全隠密型の潜入工作だったために、装備は全て「隠れる」事に特化した物になっていた。
それが仇になった。
内通者の手引きで職員に変装し、悠々とターゲットのコアシステムに
遅効性のエゲツない電脳ウイルスを注入し、後は誰に咎められる事もなく帰還。
などというスマートで理想的なプランは、内通者が敵の手に落ちていた事で何もかもおじゃん。
何とか敵の初撃を察知し、トップエージェントとしての意地を見せるべく
敵から奪った銃火器で混戦を潜り抜けたはいいものの、その代償として
最先端工学の産物である隠密型装備はどれも使い物にならなくなっていた。
「クソッ、何とかサイバー系の検問ラインは越えたが、
どうやったって一つは警備員のいる詰所を通るしかねぇ。
この装備じゃ、殺されに行くようなもんだぞ」
だが、他にルートは無かった。
装備には頼れない、救援を待っている余裕も無い。
……やるしかないか。
俺は、腹の中で覚悟を決めた。

「あ、検問でーす。IDカードと所属部署の提示をお願いしまーす」
「…………これで」
「ありやーす。……あれ?なんか顔写真とちょっと違くありません?
 ていうかあなた、どっかで見たような」
「人違いです」
「あれ、多分緊急警報連絡とかそんな感じのアレで」
「人違いです」
「……あー、人違いっすね。失礼しました」

何事も無かったかのように組織が手配していた車に乗り込み、
俺は寿命五年分ほどの溜め息を吐き出した。
やはりどんな時代になっても、隠密工作からこの最終奥義が消える事はなさそうだった。

335名無し物書き@推敲中?2015/11/01(日) 19:41:24.81
次のお題は「都会の夜」でどうぞ

336名無し物書き@推敲中?2015/11/01(日) 19:41:50.22
一応age

337都会の夜2015/11/02(月) 23:46:14.25
「ナイトフィーバーだか?」
「んだ、ナイトフィーバーだ」
こんなやりとりが一週間前にあった。
彼はポーカーフェースを気取っていたが、内心ではかなり興奮していた。
地元のファンシーショップ谷本で買ったスパッツが破けるくらいに勃起していたがなんとかバレずにすんだ。
そして今、いたたまれなくなった彼は、一人で都会の夜に足を踏み入れた。
地図であらかじめ歓楽街を調べていたので、比較的スムーズに都会の心臓、歌舞伎町へとたどり着いた。
「こ、これが都会というものだか、もう23時だで、なしてこげに明るい、なしてこげに人が歩いとるんじゃ」
彼は社会人になったばかりで遠出をするのはこれが初めてだった。初任給の全てを財布に詰めてバスを乗り継ぎ、野宿も交え、2日がかりでここまできた。
彼は街ゆく人の洗練されたファッションを見て、自分が浮いているのを感じた。
中綿が完全にくたびれ、ぺたんこになった灰色のダウンと地元ファンシーショップ谷本のスパッツという姿が裸を晒しているように恥ずかしく感じた。
しかしそんな考えも目の前にあったピンク色の看板を見たとたんに吹き飛んだ。
「専属ナース…」
そこに書かれた文字を口内に読み上げた瞬間、彼のモノは勃起した。地元のファンシーショップ谷本のスパッツが激しく盛り上がり、その薄い
生地から中のブリーフが透けていた。
「お兄さんこっちよ」
「いい子がいますよー」
彼には店を選ぶ余裕などなかった。男の誘うママに路地から続く地下の店内へと入っていった。
「専属ナース…」
期待にスパッツをふくらましながら店内に入ると、とたん野太い男の声が響いた。
「そこまで!全員動くな!逮捕状が出ている!」
彼は逮捕された。どうやらその店では、プレイ後にナースが違法なお薬を出していたらしい。
もちろん彼は薬物などしてなかったが、ジャケットにスパッツという姿でラリっていると判断され検査もそこそこ、うやむやのうちに刑務所に収容された。

次「少林寺のボンボン」

338名無し物書き@推敲中?2015/11/15(日) 08:31:51.27

339少林寺のボンボン2016/07/13(水) 23:26:20.99
「ご主人様、お紅茶などいかがですか」
「いいわね。シーラ、ではあれも一緒に」
「はい」
シーラと呼ばれたアラサーのメイド長は、屋敷で唯一自分から女主人に話しかけることを許された
ベテランだ。なんでも、女主人が上海にいた大昔からのご奉仕らしい。
「メイド長、お茶菓子は新しいビスケットの封を切りましょうか」
台所で部下の小娘が手にしたアメリカ製の缶を一瞥すると、シーラはにこりとして首を振った。
「今日は、懐かしい飴をお出しするわ。……東洋で手に入れた、すごく元気の出るものなの」
シーラはそういうと、抽斗の奥から古いガラス瓶を取り出した。中は透明な液体で満たされている。
「アチョーッ!」
シーラは突然叫ぶと、瓶の蓋を一瞬で回転させた。
「アチョチョーッ!」
気合を入れながらスプーンで中身をかき混ぜる。液体は粘度の高い水飴で、しかし古いものとは
思えないほどの滑らかさをもっている。
「ハーッ!」
メイド長がスプーンを回転させると、気合の塊が水飴にくるみこまれて、あっという間に球系の飴玉になった。
「これはね、フランスの技術と中国の武術をかけあわせた、魔法のお菓子なのよ」
シーラはそういうと、入れたばかりの紅茶とボンボン・ア・ラ・少林寺をトレイに乗せて、女主人にサーブした。
一時間後、小娘メイドは女主人とメイド長の死体を発見した。二人とも紅茶のカップを頭に乗せ、
鶴の構えで直立したままこと切れていた。そして、ボンボンはなくなっていた。
「くっ、なんてことだ!」
若いジャッキーはメイド服を脱ぎ捨てると、巨悪と戦うために山へと消えていったのだった。−劇終−

次「無自覚な太陽」

340名無し物書き@推敲中?2016/08/19(金) 23:25:50.54
身体中の水分を引きずりながら走り回って、ようやく倒れたら、魔法のヤカンで目を覚ます。
夏のラグビー部にとって日曜日の練習試合は、飯塚コーチの指導に一層の熱を込めるに仕方のないものだった。


無自覚な太陽は燦々と光って山内を殺した

次「椅子にかかったタオル」

341名無し物書き@推敲中?2016/08/19(金) 23:57:21.21
椅子にかかったタオル。
全裸のアケミがキッチンをウロウロしているのが目に入る。
俺がテレビを見ているというのに気が散ってしょうがない。
アケミは意外と毛深くて、目のやり場に困るというものだ。
まあ、家には俺だけだからいいようなものの、
一言いってやりたい衝動に駆られるが、相手が相手だけに言っても無駄か、とあきらめる。
しばらくして全裸のアケミが俺のところまでやってきた。
風呂上がりのまんまの姿でアケミはこう言って俺の前に皿を出した。
「はい、晩ご飯よ、タマ」

次「その紙じゃない」

342名無し物書き@推敲中?2016/08/20(土) 21:37:54.13
日曜日の昼下がり、僕は昨日駅で買った短編集を読んでいる。
自分のペースで読めるこの長さが、僕は一番好きだ
この話は主人公は視点が猫だったのか、なるほどなるほど。
でも、猫に裸の概念があるのかな。恥ずかしいからすばしっこいのかな。
本を置いて、そんなことを考えていたら、彼女の朱美がうちにくる音がした
そういえば今日は何枚か書類に判子を押さなきゃいけないんだっけ
「早速やっちゃいましょ」
「まずはこれね」
僕は経理、経営の事はよくわからないので、ぼんやりと判子を押す
「これも、これもお願い」
押す…押す…押す……
「はいこれでおしまい」
「結構あったね。少し腕が疲れちゃったよ」
「じゃあ、ありがとね」
「うん。こちらこそ」
僕たちの関係が仕事だけになって2ヶ月
ようやくスムーズにやり取りできるようになった
あの浮気はもう許してくれたみたいだ

ーーーーーーーーーー

僕は押しちゃいけない紙にも判子押してたみたい
僕のぜーーんぶがなくなっちゃった
朱美。朱美。


次「まさか、ジャックが私を…」

343名無し物書き@推敲中?2016/08/24(水) 21:45:30.53
怠け者のジャックがまさかりをタワシで磨いている。
ジャックの父は訊いた。その斧を何かに使うのかい?
ジャックは答えた。ああ、近いうちにね。

次の日、タワシでジャックがまさかりを磨いていた。
父は不安げに訊いた。近いうちに何が起こるんだい?
ジャックは答えた。金と自由が手に入るのさ、と。

次の日、まさかりをジャックがタワシで磨いていた。
父はいよいよ何かが起こりつつあるのを感じた。
ジャックはひとりごちていた。あいつの小言ももう終わりだ、と。

父は消え入るような声で呟いた。
「・・・、・・・が・・・を・・・?」
何と言ったかは定かでない。

次「ホームランは橋の向こう」

344名無し物書き@推敲中?2016/09/15(木) 16:20:36.62
あの日、ホームランボールは橋の向こうへと消えていった。
野球を誰と、何人でやっていたのかも忘れてしまったけれど、
夕焼けの空へ消えていくボールの残像だけは、十年経っても鮮明なままだ。

マウンドに立つ、息を吐く。
相方のキャッチャーメットに目配せをして、小さく頷く。

球場を埋める大観衆は、もう誰一人として彼の敗北を疑っていないだろう。
扱いは既に敗軍の将だ。敵陣のファンは決まりきった栄光に舌なめずりをし、こちらのファンは項垂れている。
通路ではマスコミがあちらの監督とMVPに貰うコメントを書き出している。

それでいい、上等だ。
希望が無く、敗色で世界が色褪せるほど、あの日の残像が輝いていく。
消えていったボールは、今も見つからないままだ。
誰にも掴まれないホームランの感触を、僕はまだ覚えている。

グリップを強く握る。バットを立てる。
対岸に立つ投手の瞳をただ見据える。

大きく振りかぶって、ボールが……。


大歓声が、響いた。

次「地獄の釜の湯加減はいかが?」

345名無し物書き@推敲中?2016/09/22(木) 14:39:10.08
「ただいま」
僕はスーツを脱ぐと妻に預けた。
まずは風呂に入りたい。当然、妻はわかっているから、既にお湯は張られていた。
もうすぐ十年にもなるルーチンワークだ。
吹き出した空気が泡となる。ぶくぶくという音は下品だと分かっていても、癖は抜けない。
肩よりさらに深く、顔の下半分を埋めないことには、どうしても風呂に入った気分にならないのだ。
ただ、今日は少しばかり湯が熱い。全自動だから、温度が変わることなどないはずなんだが……。
不意に、数ヵ月前の「過ち」が、僕のなかで思い起こされた。
あれは、飲み会の帰りだった。部下の女子と……。
ぶくぶく、とまた音が鳴る。一度きりだ。もう忘れなければ。あの子だってもう、忘れてる。
「今日はちょっと湯が熱かったね」
キッチンに立つ彼女に声をかけた。やかんを電子コンロにかけてこちらに背を向けている。
しばらく間が空いて、おや、聞こえなかったかなと僕が思い始めたとき
「……そう? 設定間違えて触っちゃったかな」
と、徐に言った。
不思議なことは続くものだ。夕食はカップラーメンだった。
料理好きな彼女に限ってこんなこと。あまりの珍しさに聞くことすら忘れ、
「……いただきます」
と、手を合わせてしまった。
「ごめんね、買い物忘れちゃって」
嘘だ。普段こんなものを買いためておく性格ではない。なかった。なかったはずだ。
「普段作りなれないと、カップラーメンでも難しいのね。湯加減とか」
汗が出てくる。
「そういえば、お風呂の湯加減どうだった?」
さっき、言ったはずだろ。どうして聞くんだ、君は。
「……熱かったよ。いつもより」
「そう。よかった」
その夜は地獄だった。

次のお題「窓のある夜」

346名無し物書き@推敲中?2017/02/06(月) 22:00:33.17

347名無し物書き@推敲中?2017/05/15(月) 03:51:30.98
生存確認age

348名無し物書き@推敲中?2017/09/01(金) 23:27:08.42
ピリリ、ピリリリ。ポーン。
安っぽい電子音が暗闇のどこかで鳴り響いた。半日のあいだ何の擾乱もうけずに冷えきった空気が、
そのわずかな振動にわずかな熱を受けたように動揺した。
「20時ニナリマシタ。オハヨウゴザイマス、ミナサン」
がらがらした合成音声が響き、闇の中に2つの黄色い明かりがともった。濁ったガラス越しに希ガスによる
不安定な光源がはなつ、前々々々々々々……時代の頼りなげな光だ。
光は空間を薙いであたりの様子を確認した。コンクリートの壁がある。金属シャッターの天井がある。
そして広く反対側まで光の届かない空間の中には、壁際のわずかなスペースを除いて、
色の薄い何かの植物が無数に植わさっていた。
ウィーン。ジジジ。
どこか調子の悪そうなモーター音が響き、光の主は、壁のある一点に向かって移動した。
光束の中に、機械的なスイッチが浮かび上がる。おもむろに、蛇腹の先に金属球をつけたような手が、
そのスイッチを押した。
ゴゴゴ……。
巨大な機械音とともにゆっくりと天井が割れて、部屋の中に黄白色の光が降り注いだ。
部屋の植物はヒマワリだった。注ぐ光の日食時のような薄さにふさわしく、色に乏しい、どれも華奢な株だ。
それが巨大な部屋のほとんどを占めて、すべて天を向いている。
青い空を背景に浮かぶ、バターのような濃い黄色をした、月を向いているのだった。
「ヨルデス……。ミナサン、ヒカリヲ、タクサンアビマショウ……」
ロボットは天を見上げて腕を広げた。八百年もの間、続けてきた日課だ。地球が太陽に向かって落下し、
気温が上がりはじめると、人類は遠くの宇宙へと旅立った。いまでは昼の光はあらゆる生命にとって強すぎた。
かわりに、月の反射があたかも昼のように地上を照らすのだ。月齢により、月光は時に過去の太陽よりも強く、
あるいはかつての月のように弱く、この従順な子供らを恵んだ。
天井に空いた夜の窓は、これからも毎晩開くことだろう。ロボットが壊れるか、シャッターが動かなくなるか
あるいは夜の光がさらに強くなって、ヒマワリを容赦なく燃やしてしまうまで。
それまで毎晩、みんなは、光に、破滅に向かって、顔を上げ続けるのだ。
アゲ、ツヅケルノデショウ、ネ。

次「長雨の後で一献」

349名無し物書き@推敲中?2017/09/23(土) 09:33:03.49
 盆を過ぎた頃というものは、おおよそ雨が降るものだ。毎年のこととはいえ秋雨は長い。今年も行脚しようにもなかなか外に出れない日が続いていた。

 ーーそして、今日になってようやく太陽が顔を出してくれた。天岩戸が開く、というほどのものではないが、ようやく下界を照らす日影はなるほど人が拝みたくなるのもよくわかる美しい輝きであった。
 彼女が照らす街の姿は照り映え、意気揚々と遊びに行く子供たちがまるで妖精たちのようにすら見え、この辺境の街がひとつの舞台のようにすら感じさせた。

「今日はお休みだ。昼から飲んでしまおうか」

 せっかくの休日で、やけにキレイに見える街がすぐそこから見渡させるのだ。飲まずにはいられない。私は起き抜けに一杯やろうと、冷蔵庫の中を漁る。塩ゆでの豆、酒盗……今回は塩辛いモノでいくとしよう。
 テーブルの上に広げたオツマミを見ながら、私は微笑んで窓の外を見た。眼下に広がる森は、きっと涙を流しているようにしっとりとした艶姿を見せているのだろう。安っぽいアパートの窓からでもそれが伺えた。
 行きつけの酒蔵から買ってきた日本酒に、キレイな風景。そして塩ゆでの豆とくれば酒の肴には困らない。さあ、一献やろうか。

「うめえ……なんで塩振って茹でただけなのにこんなウマいのかね?」

 たしかにしょっぱいのだが、しょっぱ過ぎるということはなくいくらでも食べられる。手軽につまみ、それを酒でグッとやる。なんと甘美なひとときか。
 次は酒盗をひとすくい。イカの内臓を使っているのでその臭みを消すためか、非常に塩辛い。ご飯にかけたらこれだけでいっぱいいけそうだ。されど、やはり酒。とにかく酒。美味い。
 しっとりとした町並みを見下ろしながら、一人きりの酒宴はまだまだ続く。趣味の少ない独り身としてはこういう日に昼酒やるのはやめられないお楽しみだ。

「ごちそうさまでした。」

 私はそう呟くと、ささやかな酒宴の幕を閉じる。しばらくしたら街を出歩いてみよう……そう、思いながらごろりと寝そべって微睡みに身を任せるのであった。

次『戦闘部族の日常風景』

350名無し物書き@推敲中?2018/02/08(木) 15:59:21.80
僕の知り合いの知り合いができたネットで稼げる情報とか
念のためにのせておきます
グーグル検索⇒『金持ちになりたい 鎌野介メソッド』

9TZEW

351戦闘部族の日常風景2018/05/31(木) 17:44:09.93
我々にとって「生きる」とは「殺す」と同義だった。

次「謎の哲学者集団ブレインドッヂボール」

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