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新サクラ大戦続編のストーリーを考えた
0001こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:27:59.95ID:s2kZOMWj
新サクラ大戦で語られた華撃団消滅に対して新サクラ大戦の中で何も解決されてなく、続編制作のニュースも何年も待ったが無い。
愛聴しているサクラ大戦の曲達を聴く度に旧華撃団達は幻都に封印されてしまったままなんだ…。と前向きな気持ちで聴けないのが苦痛で
新サクラ大戦で描かれた様々なモヤモヤを解消する為に新サクラ大戦の続編のあらすじのストーリーを文章など書いた経験も無いのに勝手に書いた。
書いていたら結構な量になってしまったのと、続編が制作されることを願って、勝手ながらここに書かせて貰います。申し訳無い。
0002こいこい ◆MMc3OnxZso
垢版 |
2022/12/26(月) 20:29:25.19ID:s2kZOMWj
新サクラ大戦までのあらすじ

蒸気革命によって飛躍的な発展を遂げた帝都東京。
しかしその発展の陰には必ず魔があり、帝都を霊的脅威から守る為に結成された秘密部隊帝国華撃団は
その正体を隠しながら霊力で起動する兵器、霊子甲冑を駆り日夜帝都の平和を守っていた。
帝国華撃団には表の顔があり、帝国歌劇団として帝都の魔を鎮める為、帝国劇場を本拠地として舞台活動を行うことだった。
華撃団の隊員は霊力を持った少女達が世界から集められ、例外的に男性ながら強い霊力を持つ海軍出身の大神一郎隊長の下、
幾度も帝都を危機から救った。(サクラ大戦1、2、4)

その成果を受け世界の都市にも新たに華撃団が設立され、大神の派遣された巴里(サクラ大戦3)や、
その親戚大河が派遣された紐育(サクラ大戦5)においても、華撃団により霊的脅威から平和は守られた。

しかし、降魔皇なる脅威が現れ、降魔皇を封印する為に帝国華撃団、巴里華撃団、紐育華撃団は
神器帝鍵を用い降魔皇を幻の都に封印した。
その際、三つの華撃団も幻の都、幻都に封印され三つの華撃団は消滅してしまったのだった。

それから十年以上もの時が流れ、霊力枯渇により帝都に残っていた元帝国華撃団 神崎すみれを司令として新生帝国華撃団が設立される。
かつて秘密部隊として活動していた華撃団は世界華撃団連盟により公の存在となっていた。

世界華撃団連盟の上層部には降魔皇の配下、幻庵葬徹が正体を隠し潜伏しており、世界華撃団連盟が執り行う華撃団競技会を利用し降魔皇復活を目論んだ。
新生帝国華撃団隊長の神山に率いられた華撃団は自身の華撃団存続と世界の平和の為に戦い、幻庵の野望を阻止したのだった。(新サクラ大戦)

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ここからの書き込みは創作ですので、原作とは関係がありません。
0003こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:30:48.26ID:s2kZOMWj
幻庵葬徹の陰謀を阻止したことにより、世界華撃団連盟の人事に巣喰っていた降魔皇のシンパに対する追求が行われた。
また、世界華撃団連盟だけではなく、そのシンパは各国の政治団体などにも及んでおり、
世界的に注目を浴びている華撃団競技会の中でその陰謀が明るみになったことから世界中で制度や人事の見直しが行われた。
霊子戦闘機の開発などを手掛けていた神崎重工、日本の政治や企業にも妨害工作が行われていたことが明るみになり、組織の健全化が図られた。
組織が健全化に向け改革を行なっている最中に莫斯科華撃団の騒乱もあり、より一層の強行的な改革が進んでいった。

健全化が図られた後は今後の方針を決めるべく、二つの騒動解決の第一人者である帝国華撃団花組隊長神山と帝国華撃団司令の神崎すみれは
世界華撃団連盟の新しい方針、都市防衛構想の再構築の参考人として世界中を飛び回っていた。
また、その道程の中で神崎重工の総責任者に返り咲いた神崎すみれの父とも同行し、
各国の霊子甲冑および霊子戦闘機のメーカーとの意見交換を行なったり、各国華撃団への降魔対策のノウハウの共有などを現地の華撃団に伝えるなど、
多忙な日々を過ごしていた。

騒動の中で判明したかつて勃発した降魔大戦において出現した幻都の封印に綻びがあること、
二都作戦において消滅したと思われていた帝都・巴里・紐育の三華撃団のうち、帝都華撃団員である真宮寺さくらの意思に、
花組の隊員である天宮さくらが接触したことも世間に公になり、世論はかつて世界を救った三華撃団の救出と、
第二の降魔大戦の発生を阻止する行動を求める声が高まった。

華撃団競技会も各国の国民、華撃団同士の軋轢を生む恐れのある武を競うだけの競技会では無く、
従来の方針でもあった世界平和の祭典としての意味合いを強調し、武ではなく舞、の歌劇や演劇といった要素もこれまで以上に重視し、
世界中の文化や民族、風習への理解を促進し、世界の相互理解による平和を目指して大会が見直されるようになっていく。
また、莫斯科華撃団と帝国華撃団での新入隊員を巡っての競技会が結果として華撃団同士の軋轢を生む結果を見て、訓練以外の華撃団同士の戦いは禁止された。
0004こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:32:39.82ID:s2kZOMWj
そんな中、世界中を飛び回っていた花組隊長 神山が帰国するところから物語は始まる。

神山「お手をどうぞ、すみれさん」

飛行機のタラップを降りながら後ろにいる帝国劇場支配人、帝国華撃団司令官の神崎すみれに手を差し出す。

すみれ「あら、神山くんもスムーズに女性をエスコート出来るようになりましたのね。欧州への出向と世界中を回った甲斐があったのかしら」 

神山「はは、茶化さないで下さいよ」

少しいたずらな笑みを浮かべて神山の手を取りタラップを2人で降りていく、久しぶりの母国だ。
花組のみんなは元気だろうか。迎えが来るまで待合室の椅子に腰をかける。

すみれ「それで、如何でした?世界を回った感想は」

神山「そうですね…」

幻庵葬徹が起こした騒動によって各国の都市防衛の要である華撃団に対する注目がこれまで以上に集まっていることは身を持って感じた。
また、悪感情を無人機械に流し込み悪意ある者が操った光景を全世界の人間が華撃団競技会を通して目撃している。
それにより、かつて起きたダグラス社製の無人機械の暴走事件であるヤフキエル事件のような事が各国で起きないかとそれぞれのメーカーは危惧しているようだ。
今回のメーカーとの集まりには神崎財閥のトップに返り咲いたすみれさんのお父上も同行していた。
機械に対する外部からの思念防御の技術協力を今後は進めていくようだ。
多忙を極めるスケジュールの中で、久々にお父上と過ごせたすみれさんは言葉には出さないが嬉しそうだった。
0005こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:33:26.58ID:s2kZOMWj
神山「お父様と会って嬉しそうなすみれさんが印象に残ってますね」

すみれ「ふふ、さっきの仕返しかしら?でも、確かにそうね。久しぶりにゆっくりお父様とお話出来たわ。
それと、わたくしが華撃団の運営に困窮している時に十分な助けをしてやれなくてすまなかったと仰っていたわ。
ご自分だって幻庵葬徹の息がかかった者を相手に、財閥の派閥争いで精一杯だったでしょうに…」

神山「実績の少なかった花組が普通は買えない兵器である霊子戦闘機無限や周辺装備を資金を出せば購入出来たのも、
補充品のルートが途切れていなかったのも、お父様が人脈を使って確保していて下さっていたからだ、と騒動が終わってから聞きました」

騒動が終わった後、司馬からその話を聞いた時は頭の下がる思いだった。
すみれさんとお父上は昔色々とあったとは聞くが、そこには確かに親子の愛を感じさせられた。

神山「それと、そうですね。各国の華撃団を訪問した時にその都市も少し見て回れたのですが、
どこも発展が凄まじいですね。軍学校時代に海洋研修で色々な港に寄りましたが、同じ街かと驚きました」

それは隊長就任時に東京に着いた時にも同じ感想を覚えていた。

すみれ「ええ、そうね。ここ何年かの世界の発展は昔では考えられなかった程、急激に発展しているわ。
空には飛行便が飛び交い、どんなに距離が離れていてもあっという間に連絡が取れてしまう。
神山くん、神山くんならもちろんお分かりでしょうけど、華撃団が何故世界を代表する都市に配備されているかはご存知でしょう?」
0006こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:34:14.70ID:s2kZOMWj
神山「人が集まる所には魔が集まるからですね」

すみれ「ええ。人の営みが多い所にはその分、人の悪い感情も集まりやすいわ。
そういった感情が集まって、魔が呼び寄せられたり生まれたりする。
その魔を鎮める為に、霊力を持った少女達が歌と踊りや劇を行っている…。
ねぇ神山くん?わたくしはたまにこう思うの。
世界中が発展していったり、便利になることはもちろん素晴らしいことだわ。
でもこのまま世界が急激に、人の心が伴わないまま発展していってしまうと
そこには多くの無秩序な魔を呼び寄せてしまうのではないかしら、と」

神山「はい。その通りだと思います。
世界華撃団連盟も近年、発生が増えてきている降魔災害が近距離で、
多発的に起こるという状態を危惧しているようでした。
幸い、各華撃団に配備されている霊子甲冑および霊子戦闘機、空中戦艦の性能でカバー出来ているとのことでしたが…」

すみれ「ええ。わたくしたちも備えなければならないわね。
さ、真面目なお話はここまでにしましょうか。迎えが来たみたいよ。
このままわたくし達は世界中を回った任務を終えて熱海で休暇よ。
華撃団のみんなにも声をかけてあるから現地でみんなと合流ね。
ああ、休暇中の防衛は上海華撃団にお願いしてあるから大丈夫よ」

神山「え?このままですか?てっきり帝劇に帰るものかと」
0007こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:35:07.35ID:s2kZOMWj
日本に帰り着いたのも束の間、神山はすみれと2人車に乗り熱海へと向かう。
そこで待っていたのはかつて自分が隊長として成長し合い、共に力を合わせて騒動を解決した仲間達だった。
久しぶりの再開を喜ぶ花組、風組、月組一同。思い出話は尽きないまま時間は過ぎていった。

心尽くしの宿の夕飯を食べ終わり、他のみんなは温泉に入りにいった。
司馬と旅館の食事所でゆっくり酒を交わしていると宿の主人からつまみや酒をサービスで出されながら話しかけられる。

主人「お食事がお口合ったようで何よりでございます。東京から華撃団の皆様がいらっしゃると聞いて心待ちにしておりました。
この宿は以前の帝国華撃団の方々も来ていただいたことがあると以前の宿の主人から聞いたことがございます。
その時はまだ帝国歌劇団と華撃団が同じものだとは知らなかったものですから、
後にあのお嬢様方は平和を守っていて下さった方だったのかと大層驚いておりました。
私自身は東京の降魔大戦で焼け出されてしまい親戚を頼り、この宿を営ませていただいております」

主人「それにしても東京はあの焼け様でしたから、きっと再建して、街も様変わりしているのでしょうな。
多くの人は親戚や国の支援を頼り、地方に移り住んだと聞きます。
人と棲家は移り変わっていくものですが、それでも自分の生まれ育った場所に住む人が、
その場所の昔の風景を知らないことは少し寂しいものでございます」

神山「確かに、帝劇にいらっしゃるお客様も以前の歌劇団をご存知の方は少なかったように思えます」

主人「ええ。昔の歌劇団や東京を知っている人はきっと少ないのでしょうね。
帝劇で劇を観終わった後におのぼりの観光客を捕まえて帝国歌劇団を見なきゃ、帝都東京に来たとは言えないよ。
と得意気に語ったり、悪友の家の屋根に登って肩を組み合い酒を飲みながら、雷門から翔鯨丸が飛び立って行くのを眺めていた日が懐かしいです。
おっと、すいません。お寛ぎのところ長話をしてしまって。
ですからね、今の帝国華撃団の方々のご活躍がニュースで流れてくるたびになんだか、焼けた東京の前に帰れたみたいで、私は嬉しいんですよ。
どうか、これからのご活躍もお祈りしております」
0008こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:35:45.44ID:s2kZOMWj
俺の知らない東京か…。きっと人それぞれに故郷があってその場所はその風景のまま心に残り続けるんだろうな。
俺にとっては今の帝劇が第二の故郷となっている。帝劇を思い描いたとき浮かんでくる人物と言えば…。

ーーーーーーーー
さくら
初穂
クラリス
アナスタシア
あざみ
すみれ
こまち
カオル
いつき
ひろみ
クラーラ
ーーーーーーーー

温泉に入りにいった女性陣が帰ってきたのを見て、神山も風呂に向かう。司馬はもう少し寛いでから向かうようだ。
服を脱ぎ温泉に入ろうとした瞬間先ほど思い浮かべた人物の鼻歌が中から聞こえてくる。しまった。1人だけ残っているようだ。
何故だ、風呂の入り口にかかっている看板は空きになっていたぞ。きっと風呂から上がる女性陣を見て宿の主人が間違えて看板を戻したのだろう。

ーーーlipsーーー
→か、身体が勝手に・・・!!
いやいや、ここは出て看板を使用中に戻しておこう。
ーーーーーーーー

こうして熱海での休暇を終えた。
0009こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:36:29.16ID:s2kZOMWj
熱海での休暇から東京に戻った神山はかつてのライバル上海華撃団のヤンとホワンと再開する。
久々の再開を喜ぶと同時に帝都防衛の任務を引き継ぎ、世界を回って得た情報を共有する。
ヤンとホワンも世界各地で降魔災害が増えていることに気を引き締め直し、立派な危機意識をもつ神山に対して
かつて新帝国華撃団を認めていなかった事と、暴力を振るってしまったことを改めて理由を述べつつ謝罪をした。
近いうちにヤンとホワンの中華料理店に食べに行く約束をして解散した。


久しぶりに帝劇に戻ってきた神山。聞けばもうすぐ公演がある時期だという。
神山に上達した演技を見せるのだと張り切る花組一同。その光景を嬉しく思いながら眺める神山にすみれから一着の服と物が手渡される。
それは着慣れたモギリの服とゲキゾウ君変身ボタンだった。


公演も大成功に終わり、いくつかの降魔の襲来もあったが、
問題なく対処していく華撃団の成長に頼もしさを覚えながら神山は懐かしの帝都の日々に戻っていった。

すっかり帝都に馴染んできた神山の元にすみれから呼び出しがかかる。
待ち受けていたものは世界華撃団連盟、日本政府、帝国海軍、帝国陸軍からの連名命令書だった。
内容は先の騒動で世界中に存在が知られることになった幻都に封じられている降魔皇の討伐、
先の大戦時に二都作戦により同時に消滅、もしくは一緒に封印されていると思われている帝都、巴里、紐育華撃団の三華撃団の救出。
詳細は機密保持の為にまだ明かせないという内容だった。
先の騒動での功績を考え辞退する選択肢も与えられたが、すみれは自分の意見を堪えて神山に判断を託す。

神山は仲間を今まで以上の危険に晒す事になることに悩みを抱えながら過ごす。
しかし苦楽を共にした仲間には直ぐに悩みを見抜かれ、命令を行うことで仲間が危険になることを恐れていることを打ち明ける。
悩みを聞いた仲間達は神山が1人で悩みを抱えていたことに怒り、神山を叱責する。
仲間に励まされた神山は命令を受けることを決めたのだった。


世界華撃団連盟、日本政府、帝国海軍、帝国陸軍の幹部達が揃う作戦室に出頭する神山と仲間達。
そこで先の降魔大戦の時に取られた作戦の真実を政府の者から説明を受ける。
0010こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:37:29.34ID:s2kZOMWj
当時はまだ存在していた秘密結社、賢人機関。その中でも花小路頼恒は華撃団に対し友好的であったが、
彼の派閥とは違い、華撃団を良く思わない者達が、降魔大戦時の混乱に乗じて、花小路派閥に抗争を開始。
それにより花小路と連絡が取れなくなっている際を狙い、
天宮さくらの母を帝鍵(帝剣)とし、幻都を出現させて華撃団および華撃団関係者を乗せた超弩級空中戦艦大和と共に幻都に突入させて
降魔皇を討てるならばそれで良し、そうでなくても華撃団諸共、幻都に封印を行い華撃団の排除を目論んだ。

一般人である天宮さくらの母の命を利用する部分については、霊的防衛に関する重大な秘匿事項として秘されたまま政府に提出。
亡国の危機、世界の危機に際して一刻も早い対策を求めていた政府は詳細を確認しないまま承認。
陰謀を企んだ者によって描かれた計画のまま、各華撃団、帝国陸軍、帝国海軍に命令が下されることになったのだった。

目論見は成功し、元総司令官、米田一基、司令官である大神一郎、グランマの愛称で知られるイザベル・ライラック、マイケル・サニーサイド、
それに加えて各華撃団の戦闘部隊である花組、星組の他にも支援や諜報を担当していた風組、月組、薔薇組、
戦いの長期化に備えて有志で集った各華撃団の使用する装備の技術者、大和の運用要員として軍から派遣された軍人達を乗せた大和は幻都に消えた。

超弩級空中戦艦大和は秘密結社賢人組織の華撃団の活動に協力的だった花小路達によって
世界的規模の重大な霊的脅威に対し単艦で対峙、撃破を目的として神崎重工を始めとする世界の軍事産業の総力を結集して建造された空中戦艦であり、
高い戦闘能力に加え、巴里華撃団の装備しているものと同じリボルバーカノンの搭載、
戦いの超長期化にも耐えられるよう乗組員の必要な物資を完全に自給出来る設備や、装備の生産工場、
十分な居住スペースを備えた戦艦であった。その全長は莫斯科華撃団が運用していた空中要塞よりも大きく、
小さな町であればすっぽりと覆える程の巨体であり、建造費用は小国の国家予算にも匹敵した。
0011こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:38:05.14ID:s2kZOMWj
大和の命名は賢人機関によるものでかつて帝都を脅威に晒した葵左丹が復活させた聖魔城。幻の都市、大和から取られている。
その強大な力以上の存在を人の手で作り出し、脅威を払う事を祈願してわざと同じ名前を用いたらしい。

賢人機関の切り札であった大和も花小路派閥の発言力を削ぐ為の陰謀に利用され、花小路派に連絡が取れないままに強奪じみた接収を受け作戦に利用された。
降魔大戦が幻都の封印によって結末を見た後、クーデターから一命を取り止め、全てを知った花小路は激怒。

一般人の命をも利用して計画された陰謀に対する反撃として、自らの地位、権力、派閥を全て捨てることと同義の賢人機関の解散を強行。
世界の霊的防衛の役割は世界華撃団連盟に託し、世界華撃団連盟にノウハウや秘匿情報を伝えた後に賢人機関は消滅を迎えた。
陰謀を企てた者もその過程で粛清され、陰謀の報いを自らの命を持って償うこととなった。
世界華撃団連盟の設立を見届けた花小路はそのまま隠遁した。
0012こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:39:46.82ID:s2kZOMWj
過去の二都作戦の背景の説明を受けて驚愕する神山、すみれ、天宮さくら、華撃団の一同。
幹部達は立ち上がり、政治的な理由により天宮さくらの母の命と、旧華撃団を使い捨てる方法を取ってしまったことを詫びる。
うまく返答を出来ずに口ごもる一同。
神山の催促により世界華撃団連盟の長による、降魔皇討伐と旧華撃団救出の作戦の詳細を説明を始まった。

降魔皇の脅威が再び世界中で注目を集めている現在、
人々の不安や恐れといった悪感情は増え続け、発展を続ける世界中の都市、情報化によってタイムラグ無く全世界に不安と恐れは広がり、
世界中の都市で降魔災害が頻出しているのが現状であり、この流れを止めるには食い止めるには降魔皇討伐しかあり得ないと世界華撃団連盟は結論付けた。

また、幻都に乗り込む作戦を成功させるのに必要不可欠である封印を解く鍵の帝剣が絶界の能力の血筋である天宮さくらの手の中にあり、
前回の起動時よりも帝剣の発動に必要な霊力が少ないと予想されること。
世界中の要請と支援を受け、作戦の準備に莫大な資金を投入出来る事。現時点で各地の降魔災害が頻発していること。
以上の理由により今のタイミングを逃すことは出来ないとの見解だった。

幻都に乗り込む為の空中戦艦は大和と同時期に建造が開始されていたが、
資金難によって建造が中止されていた超弩級空中戦艦大和級の二番艦 武蔵が用いられる事となった。
これは隠遁する前の花小路が第二の降魔大戦の脅威に備え建造再開を指示していたものだった。
この命名もかつての脅威から取られたものだ。
0013こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:40:23.08ID:s2kZOMWj
作戦の第一段階として、帝都防衛を担っている帝国華撃団が幻都に派遣される穴埋めとして
世界華撃団連盟から指示を受けて派遣される伯林、上海、新生巴里華撃団の選抜メンバーへの帝都防衛任務の引き継ぎ。

二段階として、世界中に広がる降魔災害急増と降魔皇の恐怖の緩和を目的とした
全世界同時中継の帝国華撃団花組による演劇と歌謡の披露。

三段階として、帝剣起動の霊力を突入組である花組に負担させることは突入後の作戦に支障を来たす為、
全世界から華撃団および霊力保持者であり霊力の扱いに長けたものを守備要員を残して帝都東京に集結。
手薄になる各国の防衛の補助として、かねてより神崎重工が中心になって進められていた
外部からの霊力侵入に対するプロテクトを強化された無人機械の配備、降魔対策処理が施されている携帯小火器の配備。
また作戦の二段階にて行われる全世界の悪感情抑制と降魔皇に対する恐怖への緩和は、緩和による降魔災害の減少が、手薄になる防衛の支援になることも期待されている。

四段階として帝都に集結した全世界の華撃団員による帝剣の発動。同時に帝国華撃団を乗せた空中戦艦武蔵での幻都への突入。

五段階として、幻都内での降魔皇の討伐、帝都、巴里、紐育華撃団の救出。
作戦の遂行後は武蔵の動力源でもある霊力の結晶を全解放して再度帝剣を発動。
武蔵に取り付けられているリボルバーカノンによる全人員の幻都からの脱出をもって作戦を完了とする。

世界中の総力を結集したかつてない規模の作戦内容に驚きを隠せない一同。
しかし世界の今後の治安と華撃団の救出が自分達の双肩に掛かっている事に対し使命感を滾らせ、
作戦の準備に邁進する日々を送ることとなる。
0014こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:41:20.82ID:s2kZOMWj
作戦の第一段階である引き継ぎの日を迎えた帝国華撃団花組。
神山は演習場で伯林華撃団の隊長エリス、マルガレーテと華撃団の視察ぶりに再開する。
上海華撃団のヤンとホワン、欧州出向と華撃団視察の際に友好を深めた巴里華撃団の3人も集合していた。

エリス「神山、壮健そうで何よりだ」

神山「ああ、そちらも元気そうで安心したよ。
それにしても中核戦闘員のエリスとマルガレーテが来てくれるのは嬉しいけど、伯林の方は大丈夫なのかい?」

エリス「ふ。前回は遅れをとったが世界華撃団大戦の連覇経験がある我が伯林華撃団を舐めるなよ。それよりも神山…」

エリスは神山に近寄り耳打ちをする。

エリス「今回の作戦が発令されるに当たって前回の二都作戦の詳細も各華撃団に展開された。
前回のような陰謀が絡んでないか、伯林華撃団の諜報部に調査して貰ったが、結果はシロだった。
今後も諜報を怠らないつもりだが、安心して降魔皇討伐と華撃団救出に取り組んでくれ」

これについては帝国華撃団側でもあざみと月組に頼んで調査をしてもらっていた。
結果は伯林華撃団と同じく不審な点はないとのことだった。思わぬ裏付けが取れて神山は驚く。

神山「心配してくれていたんだな。ありがとう」

エリス「勘違いをするな。伯林華撃団設立に大恩のある紐育華撃団のラチェットさんと
同郷の華撃団員である帝国華撃団のレニさんの事を思えば、いくらでも協力を惜しまない」

神山「ああ。必ず救出してみせるよ」

エリス「ふふ、頼もしくなったものだ」
0015こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:42:08.44ID:s2kZOMWj
エリスとの会話が終わると巴里華撃団の3人組が神山を取り囲むように挨拶してきた。

巴里1「華撃団の視察ぶりデスね、神山さん!会いたかったデス!」

巴里2「この任務を聞いた時から早くトーキョーに来たくてソワソワしていたんですよ!」

巴里3「なにせ巴里華撃団の先輩達とも深ーい関係がある帝国華撃団!
今回の派遣依頼を受けて誰が来るか巴里華撃団の中で喧嘩になったんですから!」

巴里1「それで!巴里華撃団の中で決闘を行って勝ち残ったのが私達3人なのデス!」

巴里2「早く来たくてリボルバーカノンでトーキョーに行こうって主張したら
凱旋門が壊れるからダメだって二代目オーナーに怒られました!」

巴里3「私達がしっかり帝国を守ってあげますから安心して下さいね!神山さん!」

かしましく巴里華撃団の隊員に纏わりつかれるがまんざらでもない神山。
その様子を帝国華撃団花組天宮さくらは頬を膨らませて眺めていた。

その後の模擬戦は並々ならぬ気迫を見せたさくらの活躍もあり帝国華撃団が勝利し、
派遣組の課題は急造チーム故のお互いの理解の浅さと連携不足ということになった。
さっそく帝都の観光案内役をエリスとヤン達に取り付ける巴里華撃団の強かさを見て
自分達の故郷である帝都を任せる事が出来ると安心する帝国華撃団一行だった。
0016こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:42:52.33ID:s2kZOMWj
帝都防衛の引き継ぎが終わり、慌ただしくも作戦の第二段階に移る帝国華撃団。
三段階の前準備である無人機械や対降魔兵器の配備が完了する僅かな期間を全て劇と歌謡の練習に充てた。
演目は神山が世界を回って見てきた経験と、すみれが危惧していた人の心が伴わない世界の急激な発展による悪感情の発生の危険性をクラリスに伝え、
他人の幸せが憎くて自分の幸せに気付けない主人公が、様々な困難を色々な出会いに助けられて、
今一度自分が立っている故郷や、自分だけではなく家族や仲間を大切に思えるようになる。という内容の台本をクラリスが作成した。
全世界に向けて発信される舞台の責任の重さに押し潰されそうになりながらもそれでも人々に感動を与えたいという想いに支えられて猛特訓を続けた。

本番の日を迎え、全世界同時中継のステージを舞台袖から眺める神山とすみれ。
空中に所狭しと映し出された各国の観客達の反応。
それは全て好意的であり、演者の熱が、全世界の観客に宿り、観客の中で増加された熱が、これから世界を救わんと出撃する華撃団への応援として返ってくる。
演者と観客の間での理想的な熱交換が行われていた。その様子を舞台袖で見ていたすみれは神山に呟く。

すみれ「…世界華撃団連盟が設立された時、わたくしは華撃団が実は歌劇団でもあった、
と世界華撃団連盟が世界に向けて発表したことに不満を覚えました。
影ながら帝都の平和も守ったわたくし達の帝国華撃団。
その平和への挺身は、決して表立って賞賛を受ける為の行為などでは無く、
純粋な平和を愛する心が行ったことなのだと固く信じていたからです。
…その考えは今でも変わっていません。
ですが今、平和を守る者達の心が舞台を通して守られる者達に届けられ、守られる者達がそれに応えて気持ちを返す???。
守る者の矜持で一方的に守るのではなく、守られる者達と想いを共有することが、
これからの世界平和に必要なことなのかも知れないと、そう、思いましたわ」

これからもずっと続いていくであろう世界の魔との戦い。人の心が生み出す闇。
時代が変わっていけば必然的に人の生活も変わっていくだろう。
その事に考えを巡らせながらも、心から信頼する仲間達のステージを見つめていた。
0017こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:43:33.82ID:s2kZOMWj
全世界同時中継の舞台は大成功に終わった。会場にはまだステージの熱が残っている。
舞台袖から見たステージの余韻に浸りながら会場を去ろうとする時、神山は1人の記者から話しかけられた。

記者「帝国華撃団隊長、神山誠十郎さんでいらっしゃいますな?」

神山「はい、そうですが、何か…」

記者「いえ、本当に素晴らしいステージでした。と是非お伝えしたくて。
私は以前の帝国華撃団がご活躍されていた時にも帝都で記者をしておりまして。
その時は秘密に包まれた華撃団の正体を解き明かそうとコソコソ嗅ぎ回ったものです。
結局、世界華撃団連盟の発表があるまで正体は解き明かすことは出来ませんでしたが、
その時にはすでに華撃団の方々は降魔大戦で行方不明となってしまっていました。
今思えば、正体を解き明かそうと躍起になったのは平和を守って下さっている方がどのような方達だったのかを知って、
感謝を捧げたかったのかもしれません。今はこうしてお礼を言えるようになった変化に感謝しなくてはと思っております。
今まで帝都の平和を守って下さりありがとうございました。どうか無事に帰ってきて下さい。
そして、これからも帝都の平和を守っていって下さい」

神山「はい、ありがとうございます。必ず、みんなで戻ってきます。
幻都でどのようなことがあったかお話しできるのを楽しみにしております」
0018こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:44:08.54ID:s2kZOMWj
作戦の第三段階である帝剣発動の為の霊力保持者の集結と各国への防衛兵器の手配が完了し、ついに帝剣を発動させる時が来た。

東京湾上空に浮かぶ超弩級空中戦艦武蔵は帝剣を発動させるまで待機。
一つの大きな山が空中に浮かんでいるような様は神奈川や千葉の海沿いからもはっきりと見えた。
今回も前回の二都作戦の時と同様華撃団各組や、技術部、あざみの祖父が乗り込んでいた。

幻都突入前の武蔵に乗り込む前に東京の港で華撃団関係者から激励と見送りが実施されていた。
幻都で消息を絶った前華撃団関係者、例えばグリシーヌ家や北大路家などといった華撃団の血縁からも激励のメッセージが届き、
今回の作戦が全世界の期待を背負った作戦であることが否応にも感じられた。
送られてきたメッセージは全て武蔵にも送られ、彼らの気持ちと共に武蔵は旅立つことになる。
また、全世界からの応援物資、装備、予備の霊子戦闘機なども莫大な支援で十分に用意出来ている。

発動の準備が完了し、集まった皆に見送られ武蔵に移乗する花組一同。程なくして天宮さくらが帝剣を発動させた。
0019こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:45:14.94ID:s2kZOMWj
天宮さくら「誠十郎さん」

帝剣に手をかけ神山を見るさくら。神山は頷きを返した。

神山「ああ、行こう、さくら」

さくらの持つ帝剣が発動の光を放つ。
東京の港に作られた会場に揃った世界中の華撃団員から凄まじい量の霊力が帝剣に吸われていく。

アーサー「くっ、凄まじい勢いだ」

ランスロット「へ、へへーんだ。まだまだ私はへっちゃらだよ」

倫敦華撃団の顔に冷や汗が流れ落ちる。

マルガレーテ「ぜ、前回の発動時はたった三つの華撃団だけの霊力で帝剣を発動させたと聞きますが、
正当な帝剣の持ち主の天宮さくら、前の発動時の何倍もの華撃団員を揃えてもこれですか…!」

エリス「現代の霊子戦闘機は以前の華撃団員に必要とされた霊力よりも遥かに少ない霊力で起動する。
必然、前の華撃団員は霊力が強大な者でしか勤める事が出来なかった。
それにしても…莫大な霊力を必要とする帝剣発動を少ない人数で成し遂げた旧華撃団員は、化け物だな…!!」

伯林華撃団の面々も必死の形相で帝剣に霊力を送り続ける。

永遠に続くかと思われた霊力供給は青空をも白く染め上げる帝剣の眩い光が発せられた後ピタリと止んだ。
空を見上げると東京湾の上空には幻都への入口が時空を歪め広がっていた。
0020こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:45:39.82ID:s2kZOMWj
神山「これが、幻都の入口…」

カオル「入口から異常なまでの霊力の揺らぎを感知!長くは持ちません!」

神山「ここまで来たらもう行くしかない!すみれさん!」

すみれ「ええ、超弩級空中戦艦武蔵、発進!目標、幻都!!」

さくら「みなさん!行ってきます!」

そうして武蔵は幻都の入口へと飲み込まれていった。
0021こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:46:06.97ID:s2kZOMWj
武蔵による幻都侵入を果たした一同。そこに広がるのは過去に二都作戦によって作りだされた帝都 東京の幻のはずだった。
しかし武蔵の観測機器を用いた結果を見ても明らかに東京以上の空間が広がっている。
武蔵から見下ろす地上には街並みは確認出来ず、広大な山野が広がっている。
ただ現実の世界と違うのは今いる空間に現実の世界では考えられない濃度の霊力が充満していることだった。
その影響か空を見上げると青空の所々に透かしガラスに光を当てたようなプリズムが輝いており、
その煌めきが今いる場所が現実の世界ではないことを強調していた。

予想を超えた状況に狼狽する一同。原因を探しながら前華撃団と降魔皇の捜索を目標に定め武蔵で移動を開始した。
当ての無い捜索を続け数日が経った頃、武蔵に異常が発生する。
空間を満たす過剰な霊力が武蔵の大出力の霊子機関に悪影響を与え、出力を多く使う高高度飛行が出来なくなってしまった。
艦橋に備え付けられている霊子水晶から表示されるデータからは低空飛行であれば機関への負担が少ないことが分かり
比較的安全な高高度からの捜索は断念せざるを得なくなった。

低空飛行での捜索に切り替えた武蔵だが、降魔に捕捉され襲撃を受ける。
帝国華撃団花組の霊子戦闘機と武蔵の重厚な対空砲火により降魔を撃退した一同だが、
戦闘後にすみれが体調を崩し倒れてしまう。
0022こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:47:01.34ID:s2kZOMWj
神山「すみれさん!大丈夫ですか!!」

カオル「は、早く医務室へ!!」

カオルの切羽詰まった声に促されるようにすみれを抱き抱えようとする神山。

???「触ってはいけません!」

所在の分からない声に静止される神山。
声は艦橋に備え付けられている霊子結晶から発せられていた。
結晶の表面を覆っていた光が揺らぐように光り、少女の姿を形取って行く。

神谷「何だ?!」

少女「今のすみれさんを霊力を多く持つ者が触るのは危険です!霊力の無い者が医務室への運搬を!」
0023こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:47:34.27ID:s2kZOMWj
神山の誰何に答えずに指示を飛ばす少女の幻影。
少女を注意深く警戒しながらもすみれをそのままにする訳にはいかず、少女の言う通り霊力の無い者に運搬を指示する神山。
運搬されていくすみれを横目に見ながら、霊子水晶に映し出される少女を花組が警戒心露わに取り囲む中、
天宮さくらだけが驚いた表情で硬直していた。

さくら「お、お母さん…?」

少女とさくらの目が合う。
映し出された少女はその幼い姿に似つかわしくない慈愛に満ちた表情を浮かべて微笑んだ。

幼い姿のひなた「大きくなりましたね。さくら」
0024こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:48:14.35ID:s2kZOMWj
天宮さくらの母、ひなたは二都作戦の際に身命を帝剣作成の為に捧げ、既に故人となっている。
驚く一同に対してひなたは説明を始めた。
こうして姿を現せたのはまず第一に今いる幻都という場所が夢とも現とも取れぬ空間であり、霊力が現実では有り得ぬほど満ちた空間であること。
第二に超弩級空中戦艦をも動かせる霊力を発生させる巨大な霊子水晶があること。
そして何より自身の身命を持って生み出した帝剣を、自分の娘である天宮さくらが持ち行動していたこと。
それら理由により帝剣に宿る天宮ひなたの意識が霊子水晶に転写され、発現するに至ったと説明された。
その為、帝剣に宿るひなたの意識が乗り移ったのではなく、分身のようなものらしい。
また、少女の姿をしている理由はひなた自身は特別な血筋で霊力を多少は持つ身だったものの、霊力を行使する機会は生前無かった。
その為、生前一番霊力を持っていた年齢の姿が形を保ちやすいのだという。

すみれを霊力を持った人間が運搬することに静止した理由は、この空中戦艦武蔵はかつての賢人機関が建造を開始したもので、
医務設備などのデータベースに、前帝国華撃団設立よりも以前に欧州で実験的に組織されていた欧州星組の実験データも登録されており、
それによると霊力を酷使しすぎて霊力が枯渇した人間を強大な霊力下に置くと身体が失った筈の霊力をまだあるものと誤認して体調不良を起こした、というデータがあるらしい。
それをひなたは霊子水晶に転写された際に武蔵から情報を同期し、知り得たという。
0025こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:48:49.50ID:s2kZOMWj
すみれの今後の体調の変化が気が気ではないカオルが、今のすみれを強大な霊力下に置き続けた場合はどうなるのかと食ってかかるようにひなたに尋ねる。
以前の実験は被験者が重大な体調不良を起こした時点で中止され、長期間の実験データはないとのことだった。
しかし、今の幻都は当時の実験環境よりも強い霊力下にある為、最悪の場合死に至る可能性も否定出来ないと
過去の実験結果と今の現状を霊子結晶で演算させた結果をひなたは伝えた。

最悪の場合すみれに死の危険性があると知り取り乱す一同。カオルは焦燥を隠さずに作戦の中止を提案する。
そこに医務室に運ばれたはずのすみれが姿を現し、自分が原因の作戦の中止など有り得ない、夢にまで見た前華撃団の救出が目の前に来ているというのだから、
それまでこの症状に耐えてみせると堂々と言い放った。
その振る舞いにそれ以上何も言えなくなったカオルと一同は一刻も早い作戦完了を目指すと誓い合う。

すみれの体調不良により指揮所要員は不足し、その穴を武蔵とリンクしたひなたが火器管制の一部を担うこととなったが、戦力の低下は免れなかった。

数日後、先の降魔襲撃よりもさらに大規模な襲撃を受ける武蔵。
降魔皇配下の上級降魔に陣頭指揮された降魔達に追い詰められていく花組。
武蔵の重厚な対空砲火も乱戦となっている霊子戦闘機がいる場所には放てず、劣勢となっていく。
0026こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:49:32.94ID:s2kZOMWj
神山「武蔵!敵の左翼に集中砲火をお願いします!!花組!集中砲火後に出来た空間に展開!上級降魔に二方向から攻撃を仕掛ける!」

武蔵から放たれる圧倒的な火力が敵左翼に投射される。一瞬のうちに消滅する敵左翼。
すかさず神山の指揮により上級降魔を討とうと陣形を展開させようとするも敵の物量によりたちまち塞がれてしまう。

神山「くっ!」

物量に押され逆にこちらが包囲されそうになるのを防ごうとして敵包囲の突端に攻撃を仕掛ける神山。
しかし敵上級降魔の指揮により攻撃をいなされ、局所的な包囲を受けてしまう。
1人突出してしまった神山に対して機を逃さず襲いかかる上級降魔と配下達。

上級降魔「貰ったぞ!そこの隊長機ぃぃい!」

神山「しまったっ」

他の花組の隊員が援護に駆け付けようとするが降魔に阻まれ、思うように援護に向かえない。

さくら「誠十郎さんっ!!!」

天宮さくらの悲痛な声が響く。上級降魔とその配下の刃が神山機目掛けて一斉に振り下ろされた。
こんな所で、倒れる訳には。
しかしスローモーションで迫る刃には回避出来る余地がない事を神山は感じていた。



「神崎風塵流・・・」



視界一杯に振り下ろされる刃達の影に炎が見えた気がした。
0027こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:50:09.04ID:s2kZOMWj
「胡蝶のッ舞ッ!!」

突如、神山機の周囲一体が炎に包まれる。
神山を囲んでいた降魔は一瞬で灰と化し、上級降魔も突然現れた炎に包まれた。
気付けば神山機の横には一機の霊子戦闘機無限が地面に薙刀を突き刺した体制で立っていた。

上級降魔「ぐああっ?!?!」

思いもよらない攻撃に怯む上級降魔。

「今ですわ!!」

神山「!!…でやぁああ!!」

声に我に返り目の前の上級降魔に全力で斬りつける神山。

上級降魔「ぐおおおおおっ」

響き渡る上級降魔の叫び声。

上級降魔「ま、まさか、このギリギリまで伏兵を温存していたとは…。先の襲撃では余力を隠していたというのか…。
私が策で上回れようとは…。こ、降魔皇様…!」

その言葉を最後に上級降魔は崩壊していき、上級降魔を討ち取ったことにより他の降魔は撤退していった。

「怪我はないかしら?神山くん」

神山「その声は…すみれさん?!医務室で伏せっていたはずじゃ…。それに何故無限を…?」

すみれ「貴方達のピンチに、司令官であるわたくしだけが、おちおち寝てはいられませんもの」
0028こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:50:35.57ID:s2kZOMWj
霊力の影響を受けて伏せっていたはずのすみれ。
すみれは自分が霊力の影響によって倒れてからの振る舞い以上の悪影響を受けていたことを語る。
自分の身体の中を焼きながら暴れ回る霊力を精神力で耐えていくにつれ、
ほんの僅かではあるがその霊力を操れることを自覚したすみれは霊力の暴走に耐えながらも少しずつ霊力を従えていった。
生死の境を彷徨いながら霊力を自分の物に変換していくすみれ。
長い暴走する霊力との戦いの後、かつてのように自分の身体が霊力を扱えるようになっていることに気が付いたという。
これは幼少時から霊子甲冑の開発に携わり、成長したその後も帝国華撃団として霊力を操作し、霊力の扱いに卓越したすみれだからこそ出来た事であった。
おそらく並の霊力保持者であればそのまま霊力に身体や脳の内部を焼き尽くされ、命はなかっただろうと自身の体験を振り返る。

すみれ「ともあれ、わたくしはもう大丈夫ですわ。皆さん、心配をおかけしましたわね」

かつての伝説の英雄の帰還に、花組達の士気は一段と増すのだった。

すみれ「勝利のポーズ、決めっ!」
0029こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:51:25.14ID:s2kZOMWj
時を少し遡り、上級降魔との戦いの最中の時。

戦場を見渡せる小高い丘の上に一機の機体がどこからともなく出現した。

???「謎の戦闘の反応があるから来てみたけど、あれは、霊子甲冑…?それにあの空中戦艦は…」

機体は注意深く戦場を見渡す、ちょうど空中戦艦の集中砲火によって敵の一陣が消滅したところだ。
しかし物量差の為、徐々に霊子甲冑達が追い詰められていく。
対応を決めかねながら推移を見守っていると突出した隊長機らしき機体に上級降魔達の攻撃が繰り出されようとしていた。

???「ど、どうしよう!助けなきゃ!」

謎の機体は降魔からの攻撃を受けようとしている機体を助けようと飛び出そうとした。

それとタイミングを同じくして追い詰められている機体と同じ形の霊子甲冑が凄まじい速さで空中戦艦から飛び出し、
危機に瀕している機体に迫った。

「神崎風塵流・・・」
「胡蝶のッ舞ッ!!」

飛び込んだ機体から発せられた炎はあっという間に周囲の降魔を焼き払い、その隙を逃さず助けられた機体が上級降魔を斬り払った。

撤退する降魔達。その場に残された霊子甲冑達をまじまじと見つめる謎の機体。

???「い、今の技…。見間違える筈がない…!でもどうして?いや、そんなことより、み、みんなに知らせなきゃ!!」

謎の機体は最初からそこにいなかったかの様に忽然と姿を消した。
0030こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:52:04.84ID:s2kZOMWj
奇跡の霊力復活を果たしたすみれという頼もしい戦力を得た花組は捜索を続行する。
しかし霊子戦闘機を操れるようになったとはいえ、他の花組との連携訓練はもちろんした事がない。
現状訓練をする余裕などない事と、武蔵の指揮および戦場全体を俯瞰出来る役割の重要性から
戦場で後一押しが欲しい場面に参加する、重要な後詰めの戦力として運用していくこととなった。

すみれの復活。思いがけない天宮さくらとひなたの再会。先行きを見通せない旅路だが重苦しくない雰囲気のまま幻都の捜索は続く。
司馬は霊子戦闘機無限をすみれ専用に仕上げてみせるとやる気に満ち溢れ、
どうやら艦橋以外の霊子水晶の手持ちの霊子水晶にも顕現できるらしいひなたに対して、これまでの時間を埋めるようにさくらが今までの出来事を楽しそうに語っている。
神山も隊長として隊員達とコミュニケーションを取り、慣れぬ環境に対するケアをしていくのだった。

すみれ機の改修が終わった頃、降魔の軍勢から襲撃を受けた。
以前の襲撃よりも数が多いが、敵の上級降魔は見当たない。
武蔵の援護を受けながら花組が敵陣に攻撃を仕掛け、機を見た後詰めのすみれが出撃する。
0031こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:52:45.28ID:s2kZOMWj
カオル「神山さん!すみれ様が出撃します!歩調を合わせて敵陣への対応をお願いします!」

すみれ「敵陣の突端にそのまま攻撃をかけますわ。そこを突破口にしてくださいませ」

神山「了解!」

カオル「すみれ様、発進!」

武蔵のカタパルトから紫色の霊子戦闘機が射出される。

すみれ「神崎風塵流…、不死鳥の舞ッ!」

滑空しながら攻撃を開始し、敵陣の突端に大爆発が起きる。周囲の降魔達が一瞬で灰と化した。

すみれ「さすが司馬くん、よく調整してくれていますわ」

すみれは満足そうに一つ頷き、一閃、二閃と敵を薙ぎ払う。

陣形の崩れた降魔達を神山指揮の下、敵を追いやっていく。
討ち取られていく降魔達、しばらくすると不利を悟った降魔達は撤退していった。

神山「今回の襲撃もなんとかなりましたね」

すみれ「ええ、ですが各員の装備の消耗もあります。手早く帰投して次に備えましょう」

神山「はい、では各員…」

カオル「大変です!敵降魔集団来襲!第二波です!」

神山「何?!」

すみれ「部隊の消耗が気になりますが、やるしかないですわね…」
0032こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:53:31.90ID:s2kZOMWj
休む間もなく敵集団の第二波が襲来する。第一波に比べ敵の数も増大しているようだ。
敵の中には指揮官らしき上級降魔の姿も見える。どうやらこちらの攻撃が敵の本命のようだ。

消耗した状態での第二戦目に加え、上級降魔の戦力も加わった敵に花組は装備を失っていき、完全に囲まれてしまった。

上級降魔「ここ最近降魔皇様に仇なす不埒な輩がうろちょろしていたが、それもここで終わりのようだな!
降魔皇様の野望を邪魔するものはここで果てるがいい!」

その時、神山にすみれから秘匿回線が届く。

すみれ「神山くん、ここで一網打尽にされる訳には参りませんわ。
わたくしがなんとか時間を稼ぎます。その間に武蔵に辿り着いて予備機に乗り換えて再出撃してください」

神山「そんな!それだとすみれさんが危険過ぎます!!」

すみれ「単騎で集団を相手するにはわたくしが一番向いているのです!ここまで来たのです!こんな所で全滅なんて、持っての他ですわ!!」

すみれの顔には強い決意が表れていた。すみれは少し表情を緩めて神山に聞こえないように呟く。

すみれ「…後の事を心置きなく託せる人がいる、というのはこんなにも心強いものなのですね。
あの方も、帝都に残るわたくしに少しでもそう思ってくれていたかしら…。」

キッと顔を上げると戦闘体制を取るすみれ。

すみれ「さぁ、お行きなさい神山くん!」

神山「すみれさん!!」

その時、武蔵のレーダーが高速で飛来する物体を5つ捉えた。

カオル「レーダーに感あり!降魔集団の後方から高速で飛来する物体5つ!!」
0033こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:54:31.49ID:s2kZOMWj
神山「敵の新手か?!」

ひなた「この速度…大きさ…。武蔵に搭載されているのと同じ…?」

武蔵の装備と同期され、武蔵の装備の事を知り尽くしているひなたが呟く。
ひなたが回線に割り込み叫ぶ。

ひなた「神山くん!すみれさん!飛来物は、リボルバーカノンから撃ち出されたものです!!!」

すみれ「リボルバーカノンですって?!」

凄まじい速さで飛んでくる弾丸のような物体。

上級降魔「なんだ?!」

上空を見上げる上級降魔。

敵陣上空に到達した弾丸は二つに割れ、中から何かが飛び出した。
分かれた弾丸の破片はさらに細かく分かれ、敵陣に降り注ぐ。破片の一つ一つが爆薬になっているようで、辺り一面に爆発が起きた。

上級降魔「ぐおおお?!」

神山達も爆煙に包まれ、身を固めあう花組。
爆煙が晴れた時、神山達の前には5機の霊子甲冑が立っていた。

すみれ「こ、光武F2…?」
0034こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:55:13.63ID:s2kZOMWj
すみれはその機体の事を知っていた。
育った国、所属する華撃団は違えど、かつての戦いで共に戦場を駆け、背中を預けあった仲間達の機体だ。
見間違える筈も無かった。

5機の霊子甲冑は一目こちらが無事なのを確認すると戦闘態勢をとり、高らかに宣言した。

「「「「「巴里華撃団、参上!!!!!」」」」」

すみれの耳にかつての仲間達の声が届く。
何年も、何年も、聞きたくて聞きたくて仕方無かった仲間達の声。
何度も何度も夢に見た。
花組みんなで巴里に押しかけたこと、花組の危機に巴里から東京に文字通り飛んできてくれたこと。
迷宮を一緒に探索したこと。
そして、自分だけが帝都に残りみんなを見送った日のこと。

何度も何度も夢に見てはあれはもう何年も前の出来事だと夢から醒めた時に思う。
それからも夢に見続けては何年、が十年以上も昔の出来事になってしまった。

まるで、夢みたいだ。すみれはそう思った。

目の前ではかつての仲間達が上級降魔相手に戦いを繰り広げている。
洗練された連携に神山達は言葉を失って戦いを眺めている。

神山「すごい…」

すみれ「ええ、わたくしの、仲間達ですもの…」

すみれは仲間達の戦う姿を目で捉えようとするが、拭っても拭っても溢れてくる涙で視界はいつまでもぼやけていた。
0035こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:56:06.70ID:s2kZOMWj
上級降魔を討ち取った巴里華撃団。
戦いが終わり巴里華撃団の操る霊子甲冑がすみれの霊子戦闘機の前に集まる。
音声のみの回線がすみれと神山達と繋がる。

エリカ「その機体の色…。すみれさん、ですよね…?」

懐かしい声がすみれを呼ぶ。
その声色には期待と不安が入り混じっていた。

すみれ「…ええ。わたくしですわ。エリカさん…」

エリカ「やっぱり!」

エリカは喜色全開の声で答えるがすぐに声を詰まらせた。

エリカ「本当に、本当にすみれさんなんですね…。ううっ、夢みたいです。もうずっと会えないかもって思っていました…。
本当の本当の、本当に、すみれさんなんですよね…?」

すみれ「ええ、ええ。そうですわよエリカさん…」

すみれも声を詰まらせながら答える。
0036こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:56:49.00ID:s2kZOMWj
エリカ「それにしてもどうしてここに?どうやって来たんですか?向こうの世界は今どうなっているんですか?
それになんですみれさんが霊子甲冑に…?」

グリシーヌ「待てエリカ。そんなに一度に聞いても答えられないだろう」

青い霊子甲冑がエリカの乗る赤い霊子甲冑を制止する。

グリシーヌ「すみれ…。本当に会えて良かった…」

すみれ「ええ、グリシーヌさん…」

グリシーヌ「積もる話は山程あるが、いつまた襲来があるかわからん。
機体の霊力装置のオーバーフローが近い。そちらの空中戦艦に機体を収容させて貰っても良いだろうか?話も、そこでしよう」

すみれ「ええ。分かりましたわ」

花組と巴里華撃団を収容する空中戦艦武蔵。
すみれと巴里華撃団は格納庫で対面での再会を果たす。

巴里華撃団の光武F2のハッチが開く。機体の前にはすみれと花組の一同が揃っていた。
ハッチから巴里華撃団の団員が降りてくる。

神山達は彼女達の姿を見て驚きの表情を浮かべた。
その姿は自分達と同様か、もしかしたら年下にも見える女性達だったからだ。
0037こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:57:36.35ID:s2kZOMWj
すみれ「貴方達、その姿…」

呼びかけられた巴里華撃団もまた、すみれを見て目を丸くしている。

グリシーヌ「すみれ…?ああ…。そうか。そちらでは十年以上経っているのだものな…。どこからどう話したものか…。
どうやらここ、幻都は向こうの世界とは時間の流れや成長の速度までおかしくするらしい。
私達の空中戦艦大和の計器でも、私達が幻都に突入してから十年以上経っているのは知っている。
だが、体感時間では数年…それでも十分過ぎるほど長い時間だが…程しか経っていないと皆が感じているのだ」

すみれ「そんなことって…」

グリシーヌ「それにここ幻都の影響は私達人間だけではなく、霊子甲冑や空中戦艦の核とも言える霊子水晶にまで影響を与えている。
そちらの空中戦艦も低空飛行をしている所を見るに、影響を受けているのではないか?」

すみれ「ええ、確かに。幻都に突入してから高濃度の霊力に当てられて空中戦艦武蔵は高出力で稼働することが出来なくなりましたわ。ですが、…霊子甲冑も?」

グリシーヌ「ああ、連続稼働させると空中からの霊力の過給によって動かせなくなる。
出撃の一回くらいは大丈夫なのだが、間髪入れずに二回、三回となるとダメだな。…そちらの霊子甲冑は大丈夫なのか?」

すみれ「ええ…。ここまで複数回の戦いを経て来ていますが、そのような不調には見舞われてませんわ」

グリシーヌ「なるほど…。私達が幻都に突入して十年以上。技術の進歩ももちろんあっただろう。その辺りも関係しているのだろうな…」

すみれ「そうですわね…こちらのメカニックにもその点を調べて貰いますわ。それで、その…。他の華撃団の皆さんは…?」
0038こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 20:58:14.50ID:s2kZOMWj
金髪碧眼の貴族然としたその人物は自信に満ちた表情で頷いた。

グリシーヌ「ああ!帝国華撃団、巴里華撃団、紐育華撃団。米田さん、グランマ司令、サニー司令以下関係各所全員を含め、
数年の、いや、十年以上の戦いを経てなお、誰一人欠ける事なく、全員無事だ!」

その言葉を聞いてすみれの目が潤む。今日は一体何度泣くのだろう。元帝劇のトップスターも形無しだ。とすみれは思った。

グリシーヌ「偵察に出ていたアイリスからの報せを聞いてな。
我々巴里華撃団が大和の座標を知らせる為にリボルバーカノンで駆け付けた。あれは何度乗っても慣れぬものだな」

すみれ「そう、アイリスが…」

すみれは花組の仲間、天真爛漫の少女の姿を思い浮かべる。巴里華撃団の面々を見ても、その思い浮かべた姿は変わっていないのだろう。

グリシーヌ「時に、すみれは何故霊子甲冑に?霊力を失っていたはずでは?」

すみれ「ええ。最初はこの帝国華撃団、新生花組の司令官として同行したのですけれど、この幻都を覆う霊力に当てられながらも霊力が回復したのですわ」

グリシーヌ「なるほど。やはりか…、それは、大変だったのだろう?
紐育華撃団のラチェットにも最初同じ症状が出てな。奇跡的に回復したのだ」

すみれ「まぁ、ラチェットさんも…」

グリシーヌ「ああ、今は頼れる仲間として共に戦っている。それにしてもすみれが帝国華撃団の司令官か。
新生華撃団を育て上げ、ここまで来てくれたのだな」

すみれ「いえ、わたくしは何もしていませんわ。タイミングや、仲間に恵まれてやっとここまで来れただけですもの」

すみれは同じ場にいる新生花組達の面々を見渡す。
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2022/12/26(月) 20:58:39.25ID:s2kZOMWj
グリシーヌ「それでも、だ。長く、先がまったく見えない戦いの中でこうして会えた事。
本当に心強く、嬉しいよ。新生花組のみんなも、ここまで来てくれてありがとう」

グリシーヌは新生花組を見渡しながら礼を言う。
グリシーヌはすみれに向き直りながら言葉を続けた。

グリシーヌ「共に戦った時から時間は随分流れたが、立ち向かうすみれのその姿勢、時が流れてもなお、そなたは頼もしいな」

かつての仲間から投げかけられる言葉にすみれは胸が熱くなる思いがした。
二都作戦に向かう仲間を見送る時、何故自分には霊力が残っていないのか。
取り残される自分を見て、もう自分は仲間の役に立てないのだと自分を責めた事もあった。
霊力と才気に溢れ、新生花組で成長し活躍していく隊員を見るにつけ、自分の役割は彼らが思う存分振る舞える環境を整えることだと自分に言い聞かせて行動していたが、
それでも仲間と共に行けなかった自責の念はトゲとしてすみれの心に残り続けていた。
そのトゲが今、やっと取れた気がした。

すみれ「ええ…ありがとう、グリシーヌさん。そして巴里華撃団のみんな」
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2022/12/26(月) 20:59:41.84ID:s2kZOMWj
再会を果たした巴里華撃団を武蔵の艦橋に案内し、大和の座標の指示を受ける。
艦橋の霊子水晶に普段映っているひなたは巴里華撃団に自責の念を与えない為に姿を消している。
折角の再会に水を差さないよう、神山とさくらから移動する最中、花組の隊員にも話があったようで、姿が見えない事を指摘する隊員はいなかった。
かつての作戦に天宮さくらの母、ひなたの命が捧げられたことはいつかは言わねばならない事だとは神山もすみれも思っていたが、今だけは言えないでいた。

すみれ「ではこの方角に進路を取ればよいのですね?」

グリシーヌ「ああ。大和と同型艦ならば、早くて翌日か、翌々日といったところだ。
我々がいないことで手薄になっている大和の為にも一刻も早い合流をしたい所だ」

すみれ「そうですわね。霊子甲冑のオーバーフローの問題もあります。急がせましょう。
では、巴里華撃団の皆さんは光武の補給をしている間、少しでも休憩を。部屋の用意はありますわ」

グリシーヌ「ふむ。そうだな。お言葉に甘えよう。すみれも戦闘と指揮の両方で疲れているだろう。少しでも休めよ」

すみれ「ええ。そうさせて頂きますわ。頼りになる隊長さんもいることですし、ね?」

神山の方を見て、少しいたずらそうに問いかけるすみれ。

神山「はは、分かりました」

グリシーヌ「頼むぞ、新生花組の隊長」

すみれと神山のやり取りを見てグリシーヌは微笑みながらそう神山に言葉をかけると休息に向かう。
艦橋を出る直前すみれの方を振り返り言った。

グリシーヌ「すみれ。帝国華撃団も紐育華撃団も、みんながすみれに会えることを心待ちにしている。
無事合流出来て落ち着いたら、うんと豪勢な宴を開こう」

すみれ「ええ。本当に、楽しみにしていますわ」

その後、神山はすみれから指揮と今後の進行の引き継ぎを受け、すみれが休息を取っている間、神山が待機することになった。巴里華撃団と合流した花組の戦力を警戒してか、降魔の襲来は無かった。
0041こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:00:21.15ID:s2kZOMWj
すみれとの交代時間が近付く頃、船内を回る神山は前方から巴里華撃団の隊員エリカが歩いてくるのを見つけた。

エリカ「あっ!新生花組の神山さん!おはようございます!」

こちらから挨拶する前にエリカから元気一杯の挨拶を受けた。何故か両手にはマラカスが握りしめられている。
挨拶する時にマラカスの小気味よい音がシャンと響いた。

神山「おはようございます。よく休めましたか?」

エリカ「ええ!もうバッチシです!起きた時に昨日すみれさんと再会出来たのが夢だったんじゃないかと思って、
ほっぺたをつねったんですけど、ちゃんと痛かったんですよ!」シャン

神山「それは、寝起きにやっても意味がないんじゃ…?」

エリカ「それで、艦橋に行ったらすみれさんがもうすぐ起きる時間ですって聞いて、
今からすみれさんを起こしに行くんです!」シャンシャン

話す度に動作を加えるのでその度にマラカスの音が通路に響く。

神山「そうだったんですね。きっとすみれさんも大事な仲間に起こして貰ったら喜びますよ」

エリカ「ええ!それでは、すみれさんを起こしに行って来ますね!それでは神山さん!また後でー!」シャンシャンシャン

エリカはそう言うとマラカスの音を響かせながら行ってしまった。

神山「何故マラカスを持っていたのだろう…」

疑問はさておき、神山は巴里華撃団の人達を思い浮かべる。
先程のエリカもそうだが、外見は自分達の花組の隊員とそう変わらないくらいに見えた。
伝説として語り継がれる世界華撃団連盟設立前の華撃団。
資料では知っていたが、実際に会ってみると自分達と変わらないうら若き乙女達に平和は守られていたことに改めて驚くのだった。
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2022/12/26(月) 21:00:55.54ID:s2kZOMWj
大和に進路を取り、合流予定まで半日といった距離まで移動した武蔵。
艦橋にはグリシーヌとすみれが襲来に備えて待機していた。

すみれ「しかし、幻都に突入してからというもの、一回一回の襲来の規模が向こうの世界とは大違いですわ。
武蔵の支援や十分な物資があるからなんとか今の所凌げてはいますけれど…。皆さんはいつもこの規模を相手に戦いを?」

グリシーヌ「ああ。大和と合流してから再度詳細な説明があるだろうが、
降魔皇は現実世界から流れ込んだ魔を呼ぶ感情を増幅し、降魔を生み出しているようだ。ハッキリ言えばキリがないよ。
霊子甲冑のオーバーフローの問題もあって今は三華撃団を遊撃、防衛、整備とローテーションして対応をしているが…。
この世界に魔が溢れ過ぎて内側から封印が破られないように降魔達を減らすので手一杯だ。
最終的な目標としている降魔皇討伐までは遠いな…」

すみれ「そんな過酷な戦いを十年以上も…」

グリシーヌ「だから、この膠着して降魔皇に対して攻め手を失っている現状で、突如現れたすみれ達は私達の希望の光なのだ。
共に降魔皇を倒す仲間として、頼りにしている」

すみれ「ええ。必ず降魔皇を倒し、一緒に帰りましょう」

グリシーヌ「帰る、か…。希望溢れるいい言葉だ」

すみれ「しかし、昨日から襲撃を受けないというのも妙ですわね。合流を阻止しようと猛攻を受けると予想しておりましたのに」

グリシーヌ「確かにな。ここまで来る途中にそちらで撃破してくれた降魔達の戦力補充に向こうも手間取っているのかも知れぬ。まぁ、そう上手くは行かないだろうが」

カオル「レーダーに反応!降魔襲来です!」

グリシーヌの予想通り降魔が襲来した。
グリシーヌとすみれはお互いの顔を見て苦笑する。
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2022/12/26(月) 21:01:45.37ID:s2kZOMWj
すみれ「霊子甲冑のオーバーフローを考えると連続稼働が可能な花組で対応した方が良いですわね」

グリシーヌ「そうだな。二の矢、三の矢があるかも分からん。巴里華撃団はそれに備えよう。新生花組の戦い、しっかり見させてもらおう」

すみれは一つ頷くと神山に向き合う。

すみれ「神山くん。お願い出来るかしら?わたくしもいつでも出れるように待機します」

神山「了解!帝国華撃団花組、出撃だ!」

神山の号令の下、花組が出撃し、降魔達との戦いが始まった。戦闘は順調に推移し、一波を退ける事に成功する。
しかし危惧したように敵の一波を退けると敵の第二波の来襲があった。

グリシーヌ「さて、我々の出番のようだな」

すみれ「ええ、お願いしますわ」

今回は後詰めの必要もなく艦橋に待機していたすみれ。

すみれ「しかし、敵は波状攻撃を基本戦法としているようですが、何か意図があるのかしら…?」

グリシーヌ「奴らの戦法は基本それだな。向こうも霊子甲冑が連続稼働出来ないことを知っている。
こちらの消耗を待って、一気に潰せるタイミングで大攻勢をかけたいのだろう。今までは、司令達の巧みな用兵でそのチャンスは与えなかったが…」

すみれ「ではこの幻都でも連続稼働出来るわたくしたちの霊子戦闘機は相手の思惑の裏をかけますわね」

グリシーヌ「ああ、だが、今回の襲撃はいつもより少数だ。向こうも連続稼働出来る可能性に気付いて、探りを入れてきているのかも知れん。
それを向こうに教えてやる必要もあるまい。巴里華撃団、出撃だ!」

グリシーヌの号令の下、霊子甲冑に乗り込もうとする巴里華撃団達。
そこにレーダーを監視していたカオルから新たな報告が飛ぶ。
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2022/12/26(月) 21:02:27.39ID:s2kZOMWj
カオル「降魔集団に対して高速で向かう機体があります!数は7機!…え?ひなたさん…?…はい!
武蔵のデータベースと照合!機体は霊子甲冑スター!紐育華撃団が運用する機体です!」

姿を現さないようにひなたが照合結果をカオルに伝えたらしい。
その報告を聞いたグリシーヌが苦笑する。

グリシーヌ「紐育華撃団の面々もすみれ達を待ち切れなかったようだな…。
ここは紐育華撃団に任せておけばよかろう。巴里華撃団出撃取り止め!敵の奇襲に備える!」

その時武蔵のモニターに通信が入る。
大和で使われている回線の認証も巴里華撃団から共有されている為、音声通信だけではなく、紐育華撃団の面々がモニターに映し出される。

大河「こちら紐育華撃団です!すみれさん!グリシーヌさん!ご無事ですか?」

懐かしの顔ぶれがモニター一杯に映っている。彼らも当時の姿のままだ。

すみれ「ええ。お久しぶりですわね。大河隊長…」

すみれの記憶に彼らとの交流が蘇る。
共に霊子甲冑で戦闘する機会はなかったが、それでも世界の都市が迷宮化した時には共に戦い、二都作戦に送り出す時は世界の平和を託して送り出した。
巴里華撃団との再会から、ずっと夢のようだ。流れ去った時間の溝を飛び越えて、共に戦った夢のようだった時間の続きを見ているようだ。
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2022/12/26(月) 21:03:08.82ID:s2kZOMWj
グリシーヌ「巴里華撃団も余力を残し、今から出撃するところだったが、どうやら待ちきれなかったようだな?」

その言葉を聞いて大河が苦笑する。

大河「どうやら要らぬ心配だったようですね。紐育華撃団のみんなも、一郎叔父…、大神総司令も待ち切れない様子で、お迎えに上りました」

大神の名前を聞いてすみれの心臓がドクンと鳴った。

すみれ「いえ、頼りになる援軍、感謝致しますわ。折角前後で挟撃出来る形ですもの、このままお願い出来るかしら?」

動揺を顔に出さないように花組司令として作戦を共有するすみれ。

大河「了解!」

そのやり取りを聞いていた神山からすみれに連絡が入る。

神山「では花組はこのまま戦闘を続けて紐育華撃団との共同作戦に移行します。
第一波が少数だったこともあって、連続稼働出来ることを敵に露見することもないと思いますが」

すみれ「そうですわね。グリシーヌさん、どう思います?」

グリシーヌ「そうだな…、通常我々が稼働限界になる時間よりも短い時間で一波を退けているし、その心配はないだろう」

すみれ「では神山くん、ご苦労ですけど、そのままお願いしますわ」

神山「了解!」
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2022/12/26(月) 21:03:41.44ID:s2kZOMWj
作戦行動に移る神山達を見てグリシーヌがすみれに言う。

グリシーヌ「頼りになる隊員達に恵まれたようだな。すみれ」

すみれ「ええ。わたくし自慢の仲間達ですわ」

後方より接近した紐育華撃団が接敵する。

大河「みんな!機動力を活かして敵集団に攻撃をかけよう!」

紐育華撃団「了解!紐育華撃団 レディー・ゴー!」

その攻撃を皮切りに新生帝国華撃団と紐育華撃団の共同作戦は順調に推移していった。
紐育華撃団の高い機動力を活かした攻撃に連携を崩した敵集団を帝国華撃団が各個撃破していく。
高い機動力を隊全体で保ちつつ、戦場を俯瞰し、花組が敵を撃破しやすいように敵を分断していく紐育華撃団の隊長の指揮に神山は舌を巻く。

神山「すごいな…。隊が一つの生き物みたいだ…」

大河「帝国華撃団隊長の方!もう一度敵集団を目の前に誘い出します!お願い出来ますか!」

神山「了解しました!お願いします!」

鮮やかな機動で敵集団を分断していく紐育華撃団。それを各個撃破する帝国華撃団。
紐育華撃団自体も敵の分断だけではなく敵集団を撃破していく。その中にはナイフを主武装とする霊子甲冑もいた。
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2022/12/26(月) 21:04:14.28ID:s2kZOMWj
戦いは終始こちらに優勢なまま終わった。

戦いが終わった後、敵の再度の襲来に備えて空中を舞う霊子甲冑スター達を見上げる神山。

神山「変形も出来る霊子甲冑か…。司馬に見せたらさぞ喜ぶだろうな」

大河「帝国華撃団隊長の方。聞こえますか」

神山の霊子戦闘機のモニターに紐育華撃団の隊長、大河進次郎が映る。
神山とそう変わらない年齢と思われる中性的な外見だ。単身日本を離れ、頼る者のない新天地で隊長を勤め上げ、紐育の平和を守り抜いた歴戦の隊長。
資料では知っていたが、自分とそう変わらない姿に巴里華撃団と会った時と同じ軽い衝撃を覚えた。

神山「はい」

大河「申し遅れました、紐育華撃団、星組隊長の大河進次郎です。
いきなりの共同作戦でしたが上手く合わせて下さってありがとうございました。おかげで被害なく敵を撃退出来ました」

神山「帝国華撃団花組、隊長の神山誠十郎です。
いえ、紐育華撃団の皆さんが上手く敵軍団を分断して下さったおかげです。凄まじい練度でした」

大河「いえ、そちらも素晴らしい動きでした。安心して敵集団をお任せすることが出来ました。
ぼく達はまだ稼働限界まで余裕がありますのでこのまま大和に帰投しますが、そちらとしても問題ないですか?」

神山「はい、巴里華撃団のみなさんも待機して下さっているので大丈夫です」

大河「分かりました。では大和でお待ちしていますね。それではすみれさん、帝国華撃団、巴里華撃団のみなさんもまた後で!」

そう言い残すと紐育華撃団は一糸乱れぬ編隊を組み大和のいる方向へ去っていった。

巴里華撃団と紐育華撃団の戦い振りを間近に見たがどちらも凄まじい練度だった。
何度も世界の危機から平和を守り、十年以上も損害なく戦い続けてきた戦士達の凄みを感じた神山だった。
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2022/12/26(月) 21:04:55.52ID:s2kZOMWj
紐育華撃団との共同戦線を経て大和に進路を取る武蔵。
段々と遠くに自分達の搭乗する武蔵と同じ型の空中戦艦大和が見えてきた。
その巨体故にまだ距離はあるものの把握が可能だ。

大和見ゆとの報に沸き返る帝国華撃団の面々。すみれもモニターに映る大和の姿を感極まった表情で見つめている。
前方に鎮座する大和から回線が開く。
そこには旧・帝国華撃団総司令、花組隊長、帝都、巴里の両方で平和を守り抜いた伝説の中の伝説の隊長、大神一郎の姿があった。

大神「…前方の空中戦艦の方、聞こえますか。こちらは貴艦の進行方向にある空中戦艦大和、総司令官の大神一郎です」

神山(この人が、旧花組の隊長で、すみれさんと共に何度も戦った大神一郎隊長…。)

神山はすみれの方を見る。すみれはいつもの様に凛とした姿で立ち、返答する。

すみれ「こちらは空中戦艦武蔵、帝国華撃団司令の神崎すみれです。聞こえていますわ。…大神隊長」

すみれの返答を受けた大神が表情を崩す。

大神「すみれくん…。本当に、すみれくんなんだね…」

すみれ「ええ…、やっと会えましたわね、大神隊長…」

大神「すまなかった…。すみれくん一人に辛い思いをさせるような事になってしまって…」

すみれ「いえ、いいんですわ。やっと、やっとこうして会えたのですもの…」

大神「すみれくん…」

すみれ「大神隊長…」

二人の間に沈黙が降りる。モニター越しに見つめ合う二人。
その時、モニターに映る大神の後ろの扉から大きな声が聞こえてきた。
0049こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:05:41.50ID:s2kZOMWj
???「すみれと連絡が取れているだってぇ?!本当かよ?!」

???「わー!あきまへんてカンナはん!隊長が今向こうさんと色々通信中やで!」

???「そうよカンナ、もうすぐ合流出来るっていうし、邪魔になるわ」

???「うるせぃ!これが大人しくしていられるかってんだ!」

バン!と大神の背後にある扉が開け放たれる。
現れたのは旧帝国華撃団隊員の桐島カンナを始めとする、旧花組の隊員達だった。

現れた隊員達に目を丸くするすみれ。

すみれ「カンナさん…。それにみんな…」
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2022/12/26(月) 21:06:17.15ID:s2kZOMWj
カンナと呼ばれた大柄な女性がずんずんとモニターに近付いてくる。
武蔵のモニターにはカンナの顔が所狭しとアップになっている。

カンナ「すみれぇ!本当にすみれじゃねぇか!!ん?ちっと老けたか?!」

その言葉を聞いたすみれがこめかみをヒクつかせながら答える。

すみれ「カンナさん…?十年以上振りの再会にその言葉はあんまりなんじゃありませんこと…?」

カンナ「なんだよ!見たままを言っただけじゃねぇかよ!」

すみれ「あなたねぇ!カンナさんこそ十年以上も経っているのにその言い方!振る舞い!
山猿みたいな所がちーっとも変わってらっしゃらないじゃないの!!」

カンナ「あんだとー!おめぇだってそのサボテンみたいな言い方!ちっとも変わってねぇじゃねぇかこのサボテン女!!」

すみれ「そうさせているのはカンナさんじゃありませんの!」

カンナ「なんだとー!」

すみれ「なによ!」

突然始まった二人の口喧嘩に唖然とする武蔵の面々。
モニター越しでは旧帝国華撃団の人達が頭を抱えている。
0051こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:06:57.43ID:s2kZOMWj
しばらくの言い合いの後、言い合いがピタリと止まり沈黙が訪れた。

カンナ「ははは…」

すみれ「ふふっ…」

急に二人の口から笑いが溢れだす。

カンナ「はーはっはっは!変わってねぇなぁすみれ!」

すみれ「ふふ、カンナさんこそ」

カンナ「元気そうで良かったよ。安心した」

すみれ「わたくしもですわ。それにみんなも…」

カンナの後ろにいる花組の仲間達に視線を移すすみれ。
花組のみんなが変わるがわるすみれの名を呼ぶ。

マリア「すみれ、本当に元気そうで…」

すみれ「ええ、マリアさんも…」

紅蘭「すみれはん、ホンマに会いたかったで…」

すみれ「わたくしもですわ。紅蘭さん…」

アイリス「すみれが戦ってるところを見てあたし、すぐにすみれだって分かったよ!やっと会えたね!」

すみれ「アイリスがみんなに知らせてくれたって聞きましたわ。ありがとうアイリス」
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2022/12/26(月) 21:07:20.41ID:s2kZOMWj
織姫「すみれサン、元気そうで何よりデース!」

すみれ「ええ、織姫さんも…」

レニ「すみれのことを聞いてからみんな、すみれのことを待っていたんだ。もちろん、ボクも」

すみれ「レニさん…」

最後に、着物姿の女性が前に出る。その姿をみて天宮さくら、新生帝国華撃団花組の面々がハッとする。

さくら「すみれさん、こうしてまたお会いすることが出来て、本当に、嬉しいです…」

真宮寺さくらの目から大粒の涙が溢れる。その涙を皮切りに後ろにいた旧花組達の目にも涙が浮かぶ。
すみれも先程からずっと潤んでいた目から堪え切れず涙が流れた。

すみれ「ええ、わたくしもですわ。さくらさん…」
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2022/12/26(月) 21:07:57.82ID:s2kZOMWj
モニター越しでの再会を果たしたすみれと旧帝国華撃団。
大神からの指示で武蔵を大和の真横に停泊させ、二つの艦を連絡通路で接続した。

武蔵から大和に移動する帝国華撃団花組と巴里華撃団。
大和に辿り着くと、待ち構えていた旧帝国華撃団に囲まれるすみれ。

紅蘭「ホンマのホンマに、すみれはんやー!」

アイリス「会いたかったよ、すみれー!」

他の旧花組の面々もすみれをぐるりと取り囲む。

すみれ「みなさん…。わたくしも本当に、会いたかったですわ…」

すみれの目から再度涙が流れる。

カンナ「なんでぃ、また泣いていやがる」

すみれ「そういうカンナさんだってさっきも今も、泣きっぱなしじゃありませんの」

カンナ「しょーがねぇだろ。出ちまうもんは出ちまうんだ」

そう言いながら二人は抱擁を交わす。
抱き合いながらながら二人は会話を続ける。
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2022/12/26(月) 21:08:30.78ID:s2kZOMWj
すみれ「カンナさん、わたくしが皆さんを送り出した日の事を覚えていますか?カンナさんはわたくしにこう言って下さいました。
『お前がいなくったってあたいがお前の穴はきっちり埋めるぞ。お前がいなくなっても帝国華撃団はびくともしないぞ。だからすぐ帰ってくるからそれまで帝都で待っていろ』って…。
でもそれから時間は流れて…。待ち切れなくなってしまって、わたくし、ここまで来てしまいましたわ…」

カンナ「…もちろん、覚えてるよ、すみれ。すまなかったよ…」

すみれ「いえ、わたくしもこの幻都に来て、ここが過酷な世界だというのは十分知りましたもの。
皆さん、本当に、本当に大変だったでしょう…。今のは、ただのわたくしのイジワルですわ…」

カンナ「ああ…」

しばらく無言で抱き合った後に二人は離れた。

「すみれくん」

今まで隊員達の後ろで再会を見守っていた大神がすみれの前に来た。

すみれ「大神隊長…」

大神「本当に、ここまで来てくれてありがとう…。それと帝都の平和を、みんなの帰る場所を守っていてくれて、ありがとう」

すみれ「いえ、当然の事ですわ…」

またすみれの目にじわりと涙が浮かぶ。

大神「こんなことを幻都で言うのも、おかしなことかも知れないけど、おかえり、すみれくん」

すみれ「大神隊長…っ」

大神の胸に飛び込むすみれを優しく包み込む大神。
しばらくすみれのすすり泣く音だけがこだました。
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2022/12/26(月) 21:08:55.20ID:s2kZOMWj
真宮寺さくら「…あの、すみれさん?長くないですか?」

十年以上の年月を経た再会の抱擁に最初は感動的な表情を浮かべていたさくらだが、
時間が経つにつれて、頬が膨らんでいき、ついに堪え切れなくなったのか指摘した。
すみれはさくらの方を向き、意地悪そうな表情を浮かべた。

すみれ「いいえ、十年以上ですもの、これでも足りないくらいですわ。…と冗談はこれくらいにして、と」

すっと大神から離れるといつもの帝国華撃団司令の顔に戻るすみれ。

すみれ「これまでのことと、これからのことを話し合いましょう」
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2022/12/26(月) 21:09:22.75ID:s2kZOMWj
大和の大会議室に移動する全華撃団と司令達。
すみれは米田に真っ先に挨拶した後、他の司令達にも再会の挨拶をしていくのだった。
帝国華撃団、藤枝かえでとも再会を喜んだ。
米田は目を潤ませながら再会したすみれの無事を喜んだ後、これまでの事をすみれに尋ねた。

すみれ「これまでの事を語るのはわたくしではなく、こちらの新生帝国華撃団花組隊長の神山誠十郎からお話させて頂きますわ。
わたくしはただ、根回しや調整をしていただけで、一番現場の近くにいたのは彼ですもの」

すみれの紹介を受けて神山はこれまでの事を話しだす。
二都作戦によって前華撃団が幻都に消えてからどのようなことが起こったか。


世界華撃団連盟の設立。世界中の都市の急速な発展、それに伴う新設の華撃団の増加。
降魔皇配下の幻庵葬撤が実は生き残っており、世界華撃団連盟に潜伏し、降魔皇復活を目論んだこと。
世界中に発信されながら発覚したその事件は騒動を呼び、世界華撃団連盟の見直し、その隙を付いた莫斯科華撃団の反乱などを経て
今回の降魔皇討伐および旧華撃団の救出作戦が立案、実行に移されたこと。

また、前華撃団消滅のきっかけになった降魔大戦の裏で、どのような暗躍があり天宮さくらの母、ひなたの命を代償に二都作戦の鍵となる帝剣が作られたか、
そして三つの華撃団とそれに連なる関係者達をその思惑の中で幻都に葬ろうとされたことも包み隠さず話した。

全てを話し終えた会議室には只々重い沈黙だけが広がっていた。
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2022/12/26(月) 21:10:05.79ID:s2kZOMWj
米田「冗談じゃねぇぞ…」

陸軍の軍服に身を包んだ老境の男性が怒りに震えながら口を開く。
米田は、すみれ、大神一郎の前の帝国華撃団支配人で現在の華撃団の基になった構想を作った大人物だ。
また、かつての日清、日露戦争でも活躍し、その勇名は神山の所属する海軍まで轟いている。

米田「じゃあなんだ?俺たちゃその賢人機関の大馬鹿野郎の思惑にまんまと乗って、
守るべき一般人の命を利用してここまで来たって事かよ…!」

米田の怒りは誰しもが同じようで、横にいる総司令の大神も怒りを隠せない様子だ。各華撃団の面々も怒りや沈痛な表情を浮かべている。

米田「俺達軍人は別にいい。守るべき者の為に命を賭けて戦うのが仕事だ。
しかし、その戦いをするのに守るべき者の命を利用するような事は許されねぇんだよ…!!!」

米田が拳を机に叩きつける。沈黙が支配する会議室に机を叩いた音が響く。

米田「…いや、すまねぇ。怒るのが先じゃ無かったな。…天宮さくらさん」

立ち上がりながら母の命を帝剣に捧げた天宮さくらを呼ぶ米田。大神も米田と同じく立ち上がっている。

天宮さくら「は、はいっ!」

急に名前を呼ばれて跳ねるように返事をするさくら。

米田「申し訳ない。俺達は貴方の母親の命を使ってここに来ちまった。許される事じゃない。本当に申し訳ない…」

そう言って米田は深々と天宮さくらに頭を下げた。
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2022/12/26(月) 21:10:43.64ID:s2kZOMWj
大神「米田さんの言う通り、許される事では無い。これは総司令である自分の責任だ。
責任が取れるならどんな事でもする。本当に申し訳ない…」

大神も深々と頭を下げる。
それと同じく旧華撃団の面々からも謝罪の意が表明された。

天宮さくら「ちょっ、そんなに皆さん謝らないで下さい!それに母も平和の為を思っての事だと私は十分に理解していますから!」

大神「いや、しかしそれでも…」

天宮さくら「そっ、そんな尊敬する皆さんからそうされると恐縮しちゃいますから!あわわわ。お、お母さん!なんとか言ってー!」

あわあわと懐から小型霊子水晶を取り出すさくら。その小型の霊子水晶から一人の少女の姿が映し出された。

天宮ひなた「あ、どうも。娘がお世話になっております。天宮さくらの母、ひなたです」
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2022/12/26(月) 21:12:05.38ID:s2kZOMWj
騒然とする会議室。
映し出された少女ひなたは霊子水晶に顕現するようになった経緯を説明した上で、謝罪は受け取った事。
しかし、絶界の力を持つ一族としての定めとして納得、覚悟の上だった事。
自分の力が娘の生きる世界を守ることに繋がるのならば本望とまで言い、それは軍人や世界を守る使命を持った華撃団の人々ならば分かってくれるはずだと、
周りを納得させたのだった。

これ以上、場が沈痛な雰囲気にならないようひなたも映し出された状態で話し合いは続けられた。

ひなた「今までのお話を拝聴していました。幻都の中で十年以上も内側から封印が破られないように頑張っていらした華撃団の皆様には頭が下がります。
賢人機関の一派の思惑に乗せられてしまったとは言え、結果を見ればそれが平和を守る行為になった訳なのですね。
しかし、当時の降魔大戦時の降魔皇は皆さんのお力を持ってしても倒せない敵だったのですか?」

大神「はい…。降魔皇に攻撃をかけるも攻撃をした側から周りから魔となる感情を吸収し、修復されてしまいました…。
我々としても、現実世界で降魔皇を討伐するのは不可能、出来たとしてもそれまでに被害が拡大しすぎる事を考えて、
賢人機関、および政府関係から命令された二都作戦を実行したのです。それが…」

天宮ひなたの命を代償とする作戦だったとは、と大神が続ける前にひなたが遮る。

ひなた「大神さん、それはもうよいのです。その降魔皇が吸収、復元してしまうという状況は幻都に来ても変わっていないのでしょうか?」

ひなたは何か確信があるように話を続ける。
0060こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:12:40.33ID:s2kZOMWj
大神「はい。おそらく降魔皇のその性質は変わっていません。
ですが、お気付きのように降魔皇がこの幻都に封印されてから、現実世界との繋がりは薄れ、魔を生み出す元となる世界で暮らす人々の悪感情も降魔皇の所まで届きにくいようです。
長い戦いの中で降魔皇自身が我々に攻撃を加えてきていないことを考えると、
降魔皇は魔を呼ぶ感情を増幅させ、配下である降魔達を生み出す事に専念しているように思えます。
その考えに至った経緯として、さくらくん…。いや、真宮寺さくら隊員から説明してもらった方がよいでしょう」

大神は旧帝国華撃団花組の真宮寺さくらを見ると一つ頷いた。さくらも大神に頷き返すと説明を始める。

さくら「はい…。幻都での戦いを長く続けていた私達ですが、その戦いの中で何度も危機に陥りました。
その時、私は降魔皇の意思の干渉を受けた事があります。その時は皆さんの救援ですぐに助けられたのですが、
干渉を受けた時に降魔皇の存在、というよりも存在の在り方を感じたのです。
以前帝都、巴里、紐育などを危機に陥れた災害は過去の人物の怨念が具現化し、災厄をもたらしたものでした。
ですが、降魔皇の存在は特定の過去の人物ではなく、ただ純粋な人の持つ悪感情の概念が固まり、具現化しているように感じられました。
それに降魔皇に吸い寄せられる悪感情…。それが降魔皇の核と思われる器のようなもので何倍もの規模に増幅され降魔皇の血肉になり、降魔を生み出していたのです」

真宮寺さくらは新生花組達に視線を向け、話を続ける。

さくら「降魔皇に取り込まれそうになっている時、自分の中の悪い心が際限無く増えていって恐怖を覚えたことをよく覚えています…。
また、自分の中に魔が入り込もうとしていることも。新生帝国華撃団の皆さんが戦ったという私に良く似た夜叉…。
それはきっと降魔皇の干渉を受けた際に私から読み取った情報が降魔皇や幻庵葬撤に利用されて、夜叉という脅威を生み出したのではないかと思っています…。
そして皆さんの助けになったという私の意思…。
取り込まれそうになる中で必死に抗った私の霊力や意思がどこかに残り、それが天宮さくらさんの心に反応した結果だったのかも知れません」

語り終えたさくらは大神の方に視線を向けた。
0061こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:13:06.12ID:s2kZOMWj
大神「さくらくんが体験した出来事を基に推測すると、幻都という環境の中で降魔皇は現実の世界のように無尽蔵に悪感情を利用する事が出来ず、
増幅させる事に注力しているらしい。
そして、その降魔皇の核と思われる増幅させる器。
それを踏まえて、悪感情の概念が具現化した降魔皇の核を打ち砕く事が出来れば降魔皇は倒せるのではないかと我々は考えている」

大神の横に控えていた藤枝かえでが話を引き継ぐ。

藤枝かえで「具体的な方法については私から…。
降魔皇の核を砕くと言っても、砕いた所で悪感情が渦巻く環境ではまた新しい核が出来て、復活してしまうのではないかという危惧から、
まず降魔皇に吸い寄せられる悪感情を全て降魔皇に凝縮させる結界を張り、その中に降魔皇を形作っているものを全て押し込めます。
そして、中心で固まりきった降魔皇を直接攻撃し、打ち砕くことで降魔皇を消滅させることが出来ると考えています」

米田「柔らかくて霧散しちまうなら、押し固めてからぶっ叩いちまおうって話だ」

かえで「はい。結界陣についてはすでに研究済みです。
しかし、結界を張るには三方向から同時に陣を展開しなければならないのと、
霊子甲冑の活動限界の制約もあって結界の作成、降魔皇を直接攻撃する戦力がどうしても捻出出来ませんでした。
そして何より、降魔皇本体を結界によって押し固めるということはそれだけ降魔皇本体も強化されてしまう事が予想されます。
この作戦が失敗してしまうと封印の内側から結界を破ろうとしている降魔皇を止める者がいなくなってしまう。
作戦が失敗した時の事と戦力の確保の困難さから実行が不可能でした」

大神「しかし、今は状況が違う。新生帝国華撃団が来てくれた事により力関係はこちらが有利になっている」

大神が真っ直ぐに新生帝国華撃団を見つめながら言う。

大神「君達はまさに俺達の希望の光なんだ。力を貸してくれないだろうか」

大神のその言葉に新生帝国華撃団の面々は力強く頷くのだった。
0062こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:13:58.15ID:s2kZOMWj
その後も話し合いは続けられる。

霊子甲冑の活動限界に対して、新生帝国華撃団の運用する霊子戦闘機が活動限界の制限を受けないことについて、
新生華撃団の技術部の司馬から、霊子甲冑に比べ霊子戦闘機は少ない霊力でも動かせる設計になっており、
可動に霊力を大量消費しない分、空中から霊力の過給も受けず活動限界を迎えないのではないかという見解が伝えられた。

武蔵がこれまでの道中で見てきた帝都を移したはずの幻都が広大な世界になっていることが話題に上がると、
大神達が幻都に突入した時は確かに帝都程の広さしかなかったという。
おそらく現実世界の都市の発展に伴い、そこから吸い上げられる悪感情に呼応して幻都の世界が広がっていったのだろうという結論に至った。
事実、幻都に存在する街並みには帝都とは似つかない文明、建築物も見られ、その様式は神山とすみれが見て回ってきた都市と酷似していた。

濃密な情報交換の時間が過ぎて行き、肝心な降魔皇を包囲し結界を張り降魔皇を打ち倒す段取りについて話し合っていく。
ここまで広大になってしまった幻都の世界。
現れた複数の都市から特に魔を生む感情が多く漏れ出ていることから、降魔皇が居城を構えていると思われる幻都最初の都市、幻の帝都までにある複数の都市を攻略して行き、
帝国華撃団のもう一つの顔である歌劇団として都市の浄化をしながら敵戦力の増大を防ぎ、幻の帝都への侵攻をしていくという段取りが組まれた。

段取りが決まった後は作戦の行動の開始時期について意見が出されていく。
新生華撃団が大和へ合流する道のりの中で、多くの降魔の軍勢および数体の上級降魔を倒している事を考えると降魔達が弱体化している事が考えられ、
今すぐにでも侵攻を開始するべきという意見と、新生華撃団の霊子戦闘機が連続稼働の制限を受けない設計を既存の戦力にも流用し、戦力の充実を待ってから侵攻を開始すべきという案、
どちらの案も取り入れて並行して作業を行う、というの三つが検討された。

どれも一理ある意見である為、それぞれが頭を悩ませる。
その時、大和のレーダーを監視していた旧帝国歌劇団風組榊原由里から緊急放送で降魔の襲来が告げられる。
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2022/12/26(月) 21:14:46.02ID:s2kZOMWj
その規模は大神達ですら経験したことの無い大軍勢であり、
合流前の戦闘で紐育華撃団と、新生帝国華撃団の出撃を見ていた降魔達が4つの華撃団のうち2つは稼働限界で動けないと考え、
攻撃をかけてきたのではないかと予想された。

大神総司令の指示の下、大和、武蔵の全周を覆う大軍勢に全華撃団を持って防衛にあたる。
霊子戦闘機が連続稼働出来る事も露見してしまうだろうが、出し惜しみをしている状況ではなかった。

経験したことの無い大規模の戦いを前に天宮さくらが神山に全華撃団への連絡を取りたいと申し出があった。
全華撃団に対して、自分は世界の平和を守る為と華撃団の救出の為に幻都まで来た事。
自分の事を母を犠牲にされた娘としてではなく、志を同じくする華撃団として今ここに立っている事。
正義を信じる華撃団隊員としてみんなと共に行く事を迷いの無い表情で告げた。

天宮さくらの発言に士気を上げる全華撃団の隊員達。戦いは熾烈を極めたが、防衛は成功に終わり、複数の上級降魔も討ち取る事が出来た。
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2022/12/26(月) 21:15:16.78ID:s2kZOMWj
その後、敵の撃退により降魔の戦力低下を見た大神は敵地への侵攻を決断。
大和と武蔵はその設計段階からドッキング出来る設計になっており、双胴船のような形状となり一つの戦艦となって空を飛んだ。

各華撃団の活躍によって敵の勢力化にある都市を攻略していく。
攻略した都市では都市の浄化の為の演劇、歌劇がそれぞれの華撃団によって行われ、
それまで息抜き程度でしか行われていなかった久しぶりの大掛かりな劇に隊員達は大いに盛り上がる。
紐育華撃団の舞台では見慣れぬ女優プチミントが実は紐育華撃団隊長の大河進次郎が扮した姿である事に新生帝国華撃団の全員が驚く事もあった。

侵攻に並行して、全ての華撃団の技術部が集結。既存の機体が稼働限界を迎えないよう改修作業を行っていく。
旧帝国華撃団花組の李紅蘭など目を輝かせて霊子戦闘機のフレームワークを作った人は天才だと目を輝かせていた。
改修作業により試製桜武、天神も使用可能となった。

次々と都市を攻略し、その度に都市を浄化していく華撃団。
旧帝国華撃団花組の出撃に霊力の復活した神崎すみれが同時に出撃し、
空いた年月を感じさせないチームワークを披露し、新生帝国華撃団の面々を驚かせる一幕もあった。

共に死線を潜り抜けていく中で新生華撃団と以前の華撃団達の間に確かな信頼関係が構築されていく。
艦内の至る所で新旧の区別なく交流が行われ、天宮さくらも憧れだった真宮寺さくらと交友する仲になっていった。

交友していく中でハプニングも少なからず起きた。
男同士の親睦を深めようと大神、大河、神山で風呂に入って語り合う時、女性陣達に対して三人とも何故か身体が勝手に動いてしまったり、
司馬が帝国華撃団薔薇組の丘菊之丞に対し、恋に落ちてしまったかもしれないと相談しにきて、神山も恋の応援をしていたら実は丘菊之丞が男性だったと発覚したり、
紅蘭と司馬の珍妙な発明品合戦が行われ、そのどれもが爆発したり、と過酷なはずの旅路にも笑いがあった。

武蔵が現実世界から幻都に向かう時に託された華撃団へのメッセージも配られ、故郷へ無事帰る気持ちを一層強める事もあった。
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2022/12/26(月) 21:15:39.95ID:s2kZOMWj
そしてついに降魔皇の居城である幻の帝都まで辿り着いた華撃団。強固な絆で結ばれた全ての華撃団により追い詰められていく降魔皇。

そして降魔皇を打ち砕く為の結界が張られた。高濃度で凝縮された悪感情が渦巻く結界の中に仲間との絆を信じて飛び込む全華撃団の隊員達。
次々と間近で生み出される強力な降魔を打ち払いつつ降魔皇に辿り着く。
そしてついに降魔皇との決戦に挑む華撃団達。

降魔皇「我を形作っているこの感情も、お前達が生み出したものではないか!自分達に都合のいい感情だけを信じ、
都合の悪い事を直視出来ぬお前ら人間に未来など不要だ!」

大神「確かに憎悪も、憎しみも、人の心から出たものだ!しかしそれを乗り越えることで人は強くなれる!」

大河「悪感情を増幅し、乗り越えられない障害にしているあなたは間違っている!」

降魔皇「増幅された悪感情を乗り越えられないのならば人はそれまでの存在だったということ!
これからも貴様達人間は自らが自らを呪い、醜い感情の中で過ごし死んでいくだろう!」

神山「そんな事は俺達華撃団がさせない!人は自分の心の闇とも希望さえあれば共存出来る事をクラーラの件で俺達は知っている!
ここでお前を倒し、世界中の人達に希望を届けてみせる!」

降魔皇の断末魔が幻都の世界の隅々まで響いた。

大神、大河、神山隊長達の攻撃により、降魔皇を打ち倒すことに成功した華撃団。
戦いが終わった戦場で、それぞれの無事と作戦の成功を喜び合う。

十数年にも渡る旧華撃団達の戦いと、長い道のりを経て旅をしてきた新生華撃団の戦いはこうして終わった。
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2022/12/26(月) 21:16:22.04ID:s2kZOMWj
戦いの終わった後の幻都。
幻都からの脱出の準備の為、各所でリボルバーカノンの弾丸の中に物資、人員を収容していく大和と武蔵。
武蔵の艦橋で霊子水晶を前に天宮さくらと天宮ひなたの別れの会話が行われていた。それを見守る神山。

さくら「降魔皇も倒す事が出来て、後は幻都から現実世界に帰るだけになっちゃった…。
現実世界に帰ったらお母さんとこうして話す事も出来なくなるの…?」

ひなた「そうよ、さくら。私がこの姿を取っていられるのもこの幻都という特殊な環境がそうさせているからだもの。
でもね、私は貴方の持つ帝剣にずっと宿っていたわ。
今まで、貴方が苦しんだり悩んだりしてた時も、楽しかった時や嬉しかった時も、ずうっと、側で見守っていたのよ。
だから心配しないで、私はずっと貴方と共にいるから。そして、降魔皇の脅威の無い世界でいろんな事をして、生きていきなさい。
私は貴方の側にずっといるからね…」

さくら「お母さん…」

さくらの頬に大粒の涙が伝う。
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2022/12/26(月) 21:16:53.03ID:s2kZOMWj
ひなた「神山くん」

さくらに向けていた慈愛の表情のまま神山に向き合うひなた。

神山「はい」

ひなた「小さい頃も、そして今も、さくらの隣に居てくれてありがとう。
これは私の勝手なお願いだけど…これからもずっとさくらの側に居てくれるかしら?」

そんなお願いをされなくてもさくらは立派に帝国華撃団の仲間だ。華撃団の仲間は家族とさえ思っている。
神山は戸惑う事なくひなたの質問に首肯した。

神山「はい、安心してください。
これからもさくらの側には、俺がいます」

さくら「せ、誠十郎さん…」

何故か頬を赤く染めるさくら。

ひなた「その言葉を聞いて安心したわ。さくらをどうかよろしくね。…さ、もう行きなさい。貴方達の帰るべき場所へ」

後ろ髪を引かれながらもリボルバーカノンの元へ向かうさくらと神山。
そこでは華撃団の隊員達が順番を待ちながら談笑していた。
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2022/12/26(月) 21:17:33.50ID:s2kZOMWj
さくら「あの時から十年以上たった帝都、きっと様変わりしているんでしょうね…」

マリア「まるで浦島太郎みたいね」

レニ「浦島太郎といえば玉手箱…」

織姫「そうデース!箱を開けたらドロロン!浦島太郎はお爺さんになってしまいマシタ!」

エリカ「ってことは私達もお爺さんになってしまうんですかー?!」

グリシーヌ「いや、お爺さんにはならないだろう。なるとしたらお婆さんだ」

アイリス「えー!やだー!この姿から一気にお婆さんなんて!綺麗な大人のおねーさんになりたいー!」

コクリコ「ボクもやだよー!」

リカ「リカはご飯が食べられれば何でもいいぞ!」

カンナ「みんな心配すんなって、外の時間を考えりゃそんなに年を取ることはねぇって、
ちーっとばかりすみれみたいに目尻にシワが出来るくらいだよ」

すみれ「あのねぇカンナさん…?」

紅蘭「大丈夫やで!すみれはん!すみれはんの目尻には、シワなんてあらへん!!」

グランマ「みんなまだまだだねぇ。一流のレディってもんは年を経るごとに美しくなるもんなのさ。
それが分からないうちはまだまだお子様だよ」

米田「俺なんか一気に十年以上老けたらポックリ逝っちまうんじゃねぇかな」
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2022/12/26(月) 21:18:12.82ID:s2kZOMWj
大神「米田さんまで…。あ、神山くん、天宮くん、もうお別れは済んだのかい…?」

大神が戻ってきた神山と天宮を見つけて気遣わしげに声をかけた。

神山「はい。後はさくらが帝剣を発動して幻都に再び境目を作り出し、そこからリボルバーカノンで脱出すればこの作戦は完了です」

大神「そうか。君達には本当に助けられたよ。ありがとう」

神山「いえ、華撃団に所属する者として、当たり前の事をしただけです」

大神「…この幻都に十年以上いたけど、それも最後だと思うと何だか変な気持ちだよ。
…この幻都は作戦の後はどうなるんだろう」

神山「この世界に来てからずっと幻都を観測していたひなたさんによると、脱出の時に開けた穴から現実世界に流れるように溶け出て、
最後は完全に混じり合って消えてしまうだろうとのことでした。…その名前の通り、最初から幻だったように」

大神「そうか。この大和、武蔵ともここでお別れだな…」

神山「はい…」

大神も神山も海軍所属だ。
自分の命を預けた船に対する愛着は言葉に出さずとも共有出来ていた。
0070こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:18:35.58ID:s2kZOMWj
全員の収容を確認し、天宮さくらが大和、武蔵の霊子水晶から霊力を吸い上げ帝剣を発動する。
幻都に来た時と同様の光が煌めき、幻都の上空に現実世界との境界が出現した。

大和、武蔵のリボルバーカノンから現実世界に向かう弾丸が発射されていく。
当初の予定では自動発射装置を用いる予定だったが、今は両戦艦とも天宮ひなたが管制して戦いを終えた戦士達をその手で送り出していた。

絶え間無く続くリボルバーカノンの砲声は、長く苦しい戦いが終わったことを祝う、祝砲のようだった。
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2022/12/26(月) 21:19:06.32ID:s2kZOMWj
幻都の境界を突破し現実世界に帰還した新旧華撃団達。
幻都を抜けた先は幻都に突入した時と同じ場所の東京湾だった。
英雄達の帰還を知り回収船が華撃団の乗るリボルバーカノンの弾丸に幾隻も向かって来ている。

海に浮かぶリボルバーカノンの弾丸から現実世界の空を見上げると幻都との境目から霊力が漏れ出し、空と干渉してオーロラの様な現象を生み出していた。
オーロラは世界中に広がり、全世界の空を三日三晩覆った。
世界中がその光を目撃し、含まれる霊力の作用か、難病が治る人々も続出した。
人々はそれを奇跡の光と呼んだ。

降魔皇討伐、旧華撃団生還の報は世界中を駆け巡り、英雄達の帰還に世界中が沸いた。

旧華撃団の姿は幻都にいた時と変わらず、急激に歳を取るということはなかった。
降魔大戦の時から姿が変わらない事を旧華撃団の姿を知る者達には驚きを持って迎えられた。
姿が変わらない事や幻都に長く居た影響が身体に悪影響を与えていないかを調べる為に、
旧華撃団の全員が世界最高の設備で検査したが問題は見つからなかった。

世界と旧華撃団を救った新生帝国華撃団は世界中の注目を浴び、各国の取材陣の対応にすみれと神山は追われていた。
取材陣の中には幻都に出発する前に神山と話した記者もいた。

旧華撃団の検査が終わった報せを受け、旧華撃団の隊員達を迎えに行く神山。
これから華撃団隊員だけで無事帰って来れた祝いを帝国劇場を使って行う予定だ。
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2022/12/26(月) 21:19:34.49ID:s2kZOMWj
帝国劇場に着いた旧華撃団達。旧帝国華撃団にとっては十年以上の久し振りの故郷だ。

帝国劇場を眺める旧帝国華撃団の隊員達。

紅蘭「ほんまに、帰って来たんやな…」

マリア「ええ、そうね…」

感慨深く劇場を見上げる旧帝国華撃団の隊員達。
帝国劇場の扉をくぐりロビーを見渡す。

レニ「帝国劇場の、匂いがする…」

レニは傍らに座る犬を撫でながら言った。幻都にも一緒について行っていた犬で名前はフントというらしい。

フント「わん!」

織姫「本当に、懐かしいデース…」

アイリス「うん…」

さくら「ええ、本当に…」

カンナ「このロビーの景色だけで何だか胸がいっぱいになっちまうな」

大神「ああ、本当に帰ってきたんだな…」

そう口々に言う旧帝国華撃団の目は潤んでいた。旧帝国華撃団の風組達などはすでに涙を流しながらお互いを慰めている。
久しぶりの帰郷に感動する帝国華撃団を優しく見守る神山と巴里、紐育華撃団の隊員達。
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2022/12/26(月) 21:20:01.55ID:s2kZOMWj
神山「では、食堂で宴会の準備が出来ておりますので皆さんこちらにどうぞ」

神山はそういって食堂に旧華撃団達を案内する。
そこには一足先に新生帝国華撃団や幻都にいる間帝都を守っていた伯林、上海、巴里華撃団隊員達もいた。
また幻都から帰還の方を受けた倫敦華撃団の2人も駆けつけていた。食堂のテーブルには所狭しと料理が並べられている。

食堂に入ってきた旧華撃団の隊員達を見て天宮さくらが周りを見渡して言う。

天宮さくら「じゃあ、いくよ?せーのっ」

華撃団隊員達「「「おかえりなさい」」」

そうして宴会は始まった。
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2022/12/26(月) 21:20:30.37ID:s2kZOMWj
カンナ「うんめぇうんめぇ!久しぶりの帝劇の味だぜぇ!」

カンナはそう言いながら勢いよくご飯を平らげていく。カンナの周りにはすでに空になった器が山となっている。
横のテーブルでは紐育華撃団のリカリッタもすごい勢いでご飯を食べていた。

すみれ「まぁ、カンナさん。久しぶりだというのならもう少しゆっくり味わって召し上がったらいかが?うちの隊員達がびっくりしていますわ」

カンナ「うるせい!こちとら十数年ぶりの帝劇の味なんだ!がっつきたくもならぁ!」

また口喧嘩が始まるかと思いきや、すみれの表情は柔らかく、食堂の椅子に座るカンナを懐かしむように目を細めた。

すみれ「ええ、本当にね…。よく十数年も幻都で無事でいてくれましたわ…。ありがとう、カンナさん」

カンナ「すみれ…。こっちこそ、お前が来てくれて助かったよ。ありがとな、すみれ」

他の場所でも隊員同士の交流が続いている。

幻都の旅路で気が合ったマリアとアナスタシアは同じテーブルで食事をしているし、伯林華撃団創立に関わっていた紐育華撃団のラチェットは伯林華撃団の2人と話している。
巴里華撃団を見ると新生巴里華撃団の隊員達が伝説の先輩達に会えて華やいだ声をあげていた。

楽しんでいる会場で神山もみんなと話していく。

そして最後に大神と大河のテーブルに付き今回の旅路を振り返った後にこれからの事を尋ねた。

神山「華撃団の皆さんはこれからどうされるのですか?」

大神「そうだね…。長い戦いだったから帰る場所のある隊員は家族や故郷に一旦帰ってもらう予定だよ」

大河「そうですね、紐育華撃団も同じです」
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2022/12/26(月) 21:20:57.73ID:s2kZOMWj
神山「大神さんや大河さんもですか?」

大神「ああ。でもそれが終わったら世界を見て回りたいと思っているよ。降魔皇の脅威が無くなったとは言え、降魔の脅威は無くならないからね。
世界の都市を見てその発展と陰の部分も見て回れたらと思っているよ。
それに、神山くんが言っていた、降魔人間との共存の可能性も探していきたい」

大河「僕もついていきますよ。一郎叔父。神山さんはこれからも帝国華撃団花組隊長として帝都を守ってくれるのでしょう?」

神山「はい。そのつもりです。
それと歌劇団としてもこれまで以上にしっかりと活動をして、人の心に希望を届けられる活動をしていきたいと思っています」

大神「そういってくれると心強いよ。…ん?何やら劇場の外が騒がしいな」

カオル「神山さん…!」

カオルが神山を見つけて小走りで駆け寄ってくる。

神山「どうしたんですかカオルさん」

カオル「劇場の外が、すごい人だかりです…!
どうやら帝国華撃団の皆さんが劇場に入られるところを見た方から話が広まっていったらしくて、
一目かつての帝国華撃団を見たいと人が集まっています!現在は事故が起きないよう警察が交通整理している状態です!」

大河「バルコニーから顔を出してあげたらどうです?一郎叔父」

神山「ええ、そうでもしないと騒ぎは収まらないでしょうし、お願い出来ますか?」

大神「そういうなら…。…新生帝国華撃団のみんなも一緒にどうかな?」
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2022/12/26(月) 21:21:23.71ID:s2kZOMWj
帝国劇場のバルコニーに出ると劇場前の歩道と道路を埋め尽くしている群衆から歓声が上がった。

大神「凄い人だな…。すみれくんの引退セレモニーのときみたいだ」

すみれ「懐かしいですわね…」

旧帝国華撃団花組と帝国華撃団花組が揃ってバルコニーから群衆に手を振る。
群衆から一層の歓声が上がる。

群衆「おかえりなさーい!!」

群衆「昔も今も、平和を守ってくれてありがとー!!」

群衆「あのオーロラ凄かったぞー!」

群衆「降魔皇討伐ありがとー!!」

群衆が口々に叫ぶ。
きっと、旧帝国歌劇団の活動を実際に見た事がある人はここにはほぼいないだろう。
それでも、世界を駆け巡った奇跡の光と、幻都での活動のニュースが世間の人に知られここまでの人が集まることになった。

バルコニーから手を振る新旧の帝国華撃団。
それはまさに平和の象徴だった。
0077こいこい ◆MMc3OnxZso
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2022/12/26(月) 21:21:57.23ID:s2kZOMWj
時が流れ、旧華撃団の隊員達も里帰りを果たした後の事。
そのまま華撃団を離れ、故郷で暮らす選択肢もあったが全ての隊員が再び隊長の元に集まっていた。
これから旧帝国華撃団、旧巴里華撃団、旧紐育華撃団は大神の言っていた世界の都市をその目で見て回る旅に出る。
一隻の空中戦艦も用意され、今まさに帝都から旅立とうとしていた。

見送りにきていた帝国華撃団花組とすみれ。

大神とすみれは出発前の会話をする。

大神「それじゃあ、行ってくるよ。すみれくん…」

すみれ「ええ。お気をつけて、大神隊長」

別れの挨拶をした大神だが何か迷っているようにその場を立ち去らない大神。
ややあってすみれを真っ直ぐに見つめ大神は口を開いた。

大神「すみれくん、急にこんなことを言うのも何だが…。俺たちと一緒に来ないか?
折角こうしてまた同じ時間を過ごせるようになったんだ。
…君と一緒に世界を見てまわりたい」
0078こいこい ◆MMc3OnxZso
垢版 |
2022/12/26(月) 21:22:23.05ID:s2kZOMWj
大神の突然のすみれへの誘いにどよめく帝国華撃団。

すみれは誘われた嬉しさに表情を緩めながらもすぐに首を横に振った。

すみれ「いいえ、大神隊長。わたくしは帝国華撃団司令、神崎すみれですもの。
華撃団のみんなを置いてわたくしだけ行くことなど出来ませんわ」

すみれの返答が分かっていたかのように大神はひとつ頷いた。

大神「そうか。急にこんなことを言ってしまってすまない」

すみれ「それでも、嬉しかったですわ。ありがとう大神隊長…。
それに、今回はちゃんと帰ってきて下さるのでしょう?」

大神「ああ。約束するよ。必ず帰ってくる」

すみれ「それまで、帝都の平和はわたくし達が守ってみせますわ。
だから、安心して世界を見て回ってきてください」

大神「ありがとう、すみれくん。それじゃあ、行ってくるよ」

すみれ「ええ。いってらっしゃい。大神隊長」

凛とした姿で大神達を乗せた空中戦艦の旅立ちを見送るすみれ。
空の向こうに旅立っていった空中戦艦が見えなくなるとすみれは帝国華撃団の方に振り返り言った。

すみれ「さあ、帰りましょうか。わたくし達の帝国劇場へ」


終わり
0079こいこい ◆MMc3OnxZso
垢版 |
2022/12/26(月) 21:35:45.73ID:s2kZOMWj
これで終わりです。
皆様の場所を借りてしまってすいませんでした。

長い文章を書くのも、掲示板に書き込むのも初めてで、至らぬところが多々あると思います。
それでも、初めに書いたように旧シリーズをプレイしたり、毎日のように聞いているサクラ大戦の曲を聞いている時に
過去の登場人物が封印されたまま解決せずにシリーズが放っておかれている現状に我慢ならなく、
拙い文章を投稿してしまいました。

自分なりに掲示板の利用方法も調べたのですが、そもそも書き込む場所が間違っていたりなどしていたら
深くお詫び申し上げます。

もしテキストで欲しいと思ってくださる奇特な方がいらっしゃったら今回の投稿のためにツイッターの新規アカウント@koikoisakurawarを作成しましたのでご連絡ください。

どうかセガさんには長くファンに愛されてきたサクラ大戦シリーズをこのまま終わらせてほしくないと心から願っております。
0080名無しくん、、、好きです。。。
垢版 |
2023/01/01(日) 23:53:26.25ID:UGDja24Z
 令和の仙台を舞台に真宮寺さくらの子孫の女子高生主人公でキムタクが如くみたいのやればいいよ。
 霊剣荒鷹振り回してヒートアクションで北辰一刀流繰り出して

おまけで太正時代でサクラ大戦の歴代ラスボスラッシュ
0087名無しくん、、、好きです。。。
垢版 |
2024/02/23(金) 12:49:09.37ID:u9cvzmD2
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