伏見 それは今の性格に影響してますか?
斎藤 貧乏女装を始めたのも、影響してるかもしれませんね。それで、そのころにパパがシャブ中になっちゃうんですよ(笑)。
夜中に目をさますと、玄関に父親がずっといるんですよ。のぞき窓を見てて、「靖紀、人が立ってるんだよ」と言うからのぞいても、誰もいないんです。
最初、パパは霊能者なのかなと思ってたんですね(笑)。ある日、ハゲたおっさんと一緒に注射を打ち合ってる現場を目撃しちゃって。パパは「病気で栄養剤を打ってもらってるんだ」って言い訳したりして(笑)。
日曜日に父親に連れて行かれるところは、遊園地ではなくて競馬場。パパの友達は、背中に龍を飼ってたり小指がなかったりする人たちで(笑)。
子どもだから「おじちゃん、どうして指がないの?」って訊くと「坊主、犬に噛まれちまったんだよ」。あとで考えると自分のへまだろみたいな(笑)。
伏見 周りの同年代の友達とのギャップって、すごくあったんじゃないの。
斎藤 すごくズレたところに存在してたと思うんです。当時は自分の中のオトコオンナを隠すことよりも、貧乏やパパの犯罪を隠すとか、そっちのほうが大事だったんだと思いますね。
小4のとき、ある日家に帰ると、部屋の真ん中でママが肩を落として座ってるんです。「パパが…警察に連れてかれちゃったわ…」って(笑)。
伏見 なんだかだんだん会場の笑いに憐れみが(笑)。
斎藤 自分はそれを聞いてちょっと良かったって思った。だって困るじゃないですか、そんな人がずっと家にいると。
実際、暴れることもあって、ママはDVやられていたので、ちょっとかわいそうでしたよね。意外と自分はそれを助けるタイプじゃなかったのですが。
伏見 全然意外じゃないけど(笑)。
伏見 パパが捕まって、そのあとどうなったの?
斎藤 「岡田君のパパいないけどどうしたの?」って聞かれると、「パパは海外で仕事」とかウソついて。
ママもけっこう強い人なので、さっさと地元の会社の社長の愛人になった。ママは本当にカッコいい女で、すごくいろいろと教わりましたね。
社長とママと3人で食事に行くと、会うたびに千円をくれるのですごく好きだったんですね(笑)。
自分はそのオヤジとママのセックスを薄い壁ごしに聞いてドキドキすることもあって。そういうのって普通汚いと思うみたいなんですけど、自分はただのオカズでしかなくて興奮してました。
伏見 え、ママでもイケたの?
斎藤 いや、そのオヤジのほうに……。愛人囲ってヤるオヤジって、基本的にエロい感じがするじゃないですか。