一.
 綾瀬さんは決まって3階の高い窓から校庭を、幾何学の話を好む同級生から離れて、ただじっと見ている―
学校から出るとグロテスクがいっぱい。雑誌からビルディングの形からなにもかもが。
私の足を憂鬱の国・トルストイ文学を渉猟させることでみずから背骨の形を変えるしかなかったの。
この危険なふるまいではお友達とおしゃべりできない…。鳥の足のような腕に防衛法を取り付けることで社会化は開かれたの。
たとえば空手道のチョップのまねごと(Angle)をするとき決まってお父様のインテリジェンスに敬意を払っているということ。
「あなた、ちょっと、背ぃが高すぎるじゃないの」
瞬間的な脆さで文子の右に出る者はいないわ。
「さっきのゴジュウシホを見たかい。文子は男の僕より上手だ」
あらゆる行為を目的地に送り届ける行為の行為は継続だ。
「言われるまで気づきませんでした」綾瀬さんはなんて温和なんだろう。
交換日記を綴るときのイニシャルはきまって「綾瀬さんはこの曲はお好みでない」。感動したときは決まってK−POPを聴くようにしています。「Genie」

***
趣味がその人となりをつくる。文子の ”意外な趣味” とはなんであろうか。
「チップ、デール、ベルリッツ、わたしだけのお人形。」
「ゴシック・ロリータが私を鳥にしてくれたの」
あの世に連れて行けるのは肉体以外になにが選べるだろう。私は服だと思う。
「そう、赤ちゃんが生まれたの…。おめでたですね。お祝い申し上げます」
仏教に尋ねると、極楽浄土に上るときに衣服を回収する3人組のおばあちゃんが待っているらしい。
「仏教の知識はほとんど綾瀬さんから学びました」………