敵地、神宮球場で迎えたヤクルト戦
先発ガルシアが7回3失点で試合を作るも、中継ぎ陣が合計9失点。最後はサヨナラ負けを喫した。
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「森と朝倉は早く辞めろ」の声

無言で帰り始める選手達の中、チームの勝ち頭であるガルシアは独りベンチで泣いていた
先発QSで勝利を得る栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の中日で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「ドウスリャイインダ・・・」ガルシアは悔し涙を流し続けた

どれくらい経ったろうか、ガルシアははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「ヤレヤレ、カエッテトレーニングヲシナクチャナ」ガルシアは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ガルシアはふと気付いた

「アレ・・・オキャクサンガイル・・・？」
ベンチから飛び出したガルシアが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにドラゴンズの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするガルシアの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ガルシア、投球練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったガルシアは目を疑った
「タ・・・タニシゲサン？」 　「なんだガルシア、居眠りでもしてたのか？」
「イバタサン、ナゼキョジンノコーチガココニ・・・？」　「なんだガルシア、かってに井端さんを移籍させやがって」
「荒木さん・・・」 　ガルシアは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
１番：荒木 ２番：井端 ３番：福留 ４番:ウッズ５番：森野 ６番：アレックス ７番：井上 ８番：谷繁　９番：ガルシア
暫時、唖然としていたガルシアだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「カテル・・・カテルンダ・・・！」
立浪からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走するガルシア、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっているガルシアが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った