0001君の名は(地震なし) (7段)
2018/02/25(日) 23:38:46.400山下美月の入輪が無数に散りばめられたラブホテルの一室で、僕は机に腰掛けながら、ベッドに横たわる堀未央奈の肉体を見つめていた。
しりぞけられた布団のあとには、しわくちゃに乱れたシーツが薄いサイドランプの光に照らされて、さきほどまでの激しい情事を、
その仄かな陰影のうちに官能的に醸し出していた。
部屋は静まり返っていた。
時折、雨に濡れたホテル前の狭い道路を、バイクや車が走り、その音がこもって窓越しに聞こえてきたが、
それ以外は静寂が満たし、目の前にはただ、未央奈と僕だけのたった二人だけの世界が広がっていた。
僕は暇を持て余して、机の上のライターを取り上げ煙草を口に加えて火をつけた。
息を大きく吸うと頭の中がすっきりとするのがわかった。
すぐに吸い終わると、またもう一本の煙草を取り出して火を付けて吸った。
三十分ほどして、一箱が無くなりそうになったころ、ベッドの上に横たわる未央奈が、身体を少し捩って、二三度ほど咳をした。
見ると白い煙は、部屋に充満していて、それは天井から徐々に下へとくだり、未央奈の寝ているベッドのところにまで達していた。
急いで僕は窓のほうへ行き、戸を開け、部屋のなかへ空気を換気させた。
時は午前二時であった。ホテルの外には、目下に見える疎らな街灯のほかには、めぼしい明かりは見当たらなかった。
その明かりの周りには、昼間から降り続く小雨の雨粒が、吹く風に乱され、舞っているのが見えた。
空は閉ざされた暗雲である。
降る小雨が頬にパラついた。
なんとなく生ぬるい、ねっとりとした小雨だと思った。ひょっとするとこれは、あしゅの愛液だなと思った。
僕はカバンから水筒を取ってきて、戸の断面の上に置き、フタを外してあしゅの愛液を集めるように放置しておいた。
部屋のなかの空気は、すっかり元の通りに澄み渡っていた。しかし寒くなったのか、未央奈は縮こまったようになって、身体に布団を巻き付けて眠っていた。
部屋中の壁に張り付いた美月の入輪も、寒がって硬くなっていた。
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