なーちゃん、24歳になるね。本当にアッという間だよね。もう社会人として働いてる歳だよね。
・・・普通だったら、ね。普通の生活をしていたら、ね・・・。
俺、時々考えることがあるんだ。なーちゃんは芸能界には合わないんじゃないか?って。
みんなと一緒の、普通の生活の方が良かったんじゃないか?って。
会社に行って、真面目に仕事して・・・休憩時間に同僚と夢中でお喋りして・・・仕事中に手が空いた時は大好きな漫画をメモ用紙に描いたり・・・
会社帰りにご飯にいって・・・恋もして・・・
芸能界で頑張るよりも、そんなありきたりな生活をしてた方が、なーちゃんは楽しく過ごせるような気がするんだ。
芸能界やバラエティ番組にまだ慣れていないなーちゃんの頭の中に、いつも大阪の景色や友達がいる様な気がしてくるんだ。
本当はね、・・・芸能界に馴染んでいくなーちゃんを見たくないだけなんだ。俺の想像もつかない世界に、どんどんなーちゃんが行ってしまうのが嫌なんだ。
俺がなーちゃんを知ることができたのは、なーちゃんがデビュー出来たから。
俺がなーちゃんを好きになったのは、テレビの中でなーちゃんが歌っていたから。
それはちゃんと解ってるよ。解ってるんだけど・・・
俺はなーちゃんの生活を知らない。普段のなーちゃんを知らない。俺はテレビに出ているなーちゃんしか知らないんだ。
なーちゃんのことなんて、本当のなーちゃんのことなんて、俺はなんにも知らないんだ。
俺、こんな形でなーちゃんに会いたくはなかったな。
学校の教室で会いたかった。同じ会社で会いたかった。大阪の街で会いたかった。
芸能界の事なんてひとつも知らない、「本当のなーちゃん」に会いたかったよ。
そしたら俺、なーちゃんのこと、今よりももっと好きになれてた気がするんだ・・・
テレビで笑ったりテンパったりするなーちゃんを見る度に、俺は心の中で聞くんだ。答えてくれないのが解ってても、つい聞いてしまうんだ。
番組で喋るなーちゃんに、雑誌に写ってるなーちゃんの笑顔に、俺は何度も聞くんだ。
・・・ねえなーちゃん、いま、幸せ?いまの仕事、本当にやって良かった?
東京暮らしは嫌だよね?大阪が恋しいんだよね?芸能界の汚い大人ばかりの世界に、慣れてしまわないよね?
なーちゃんの心の中、いつまでもきれいなままだよね?その笑顔、ずっと忘れないよね?・・・ねえ!なーちゃんってば!!!!