マリノスタウン跡地にアンパンマンミュージアム建設 [無断転載禁止]©2ch.net

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2016/03/29(火) 09:29:56.69

新たにマリノスタウン跡地に横浜アンパンマンミュージアムが建設される
ことになった。延床面積10000平方の4階建てで29年8月に着工、31年4月に
オープン予定になっています。国内にあるアンパンマンミュージアムとし
ては最大級の大きさになる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:37:48.49

或はこれも不幸だつたことには彼もいざとなつて見ると、冷かに3と別れることは出来ない心もちに陥つてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:38:04.27

彼は3と逢ひながら、時々彼女のことを思ひ出してゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:38:20.04

彼女も亦4と遠出をする度に耳慣れない谷川の音などを聞き、時々彼のことを思ひ出してゐる。……

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:38:35.80

或殺人犯人の言葉。――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:38:51.55

「わたしはあいつを殺しました。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:39:07.18

あいつが幽霊に出て来るのは尤も過ぎる位尤もです。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:39:22.82

唯わたしが殺した通りの死骸になつて出て来るならば、恐ろしいことも何もありません。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:39:38.57

けれどもあいつが生きてゐる時と少しも変らない姿をして立つてゐたり何かするのが恐しいのです。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:39:54.30

ほんたうにどうせ幽霊に出るならば、死骸になつて出て来やがれば好いのに。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:40:10.09

僕は十一か十二の時、空き箱を積んだ荷車が一台、坂を登らうとしてゐるを見、後ろから押してやらうとした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:40:25.84

するとその車を引いてゐた男は車越しに僕を見返るが早いか、「こら」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:40:41.61

とおほ声に叱りつけた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:40:57.35

僕は勿論この男の誤解を不快に思はずにはゐられなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:41:13.12

それから五六日たつた後、この男は又荷車を引き、前と同じ坂を登らうとしてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:41:28.90

今度は積んであるのは炭俵だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:41:44.65

が、僕は「勝手にしろ」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:42:00.40

と思ひ、唯道ばたに佇んでゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:42:16.18

すると車の揺れる拍子に炭俵が一つ転げ落ちた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:42:31.96

この男はやつと楫棒を下ろし、元のやうに炭俵を積み直した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:42:47.73

それは僕には何ともなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:43:03.49

が、この男は前こごみになり、炭俵を肩へ上げながら、誰か人間にでも話しかけるやうに「こん畜生、いやに気を利かしやがつて。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:43:19.29

車から下りるのはまだ早いや」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:43:34.94

僕はそれ以来この男に、――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:43:50.73

この黒ぐろと日に焼けた車力に或親しみを感ずるやうになつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:44:06.49

或山村の農夫が一人、隣家の牝牛を盗んだ為に三箇月の懲役に服することになつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:44:22.26

獄中の彼は別人のやうに神妙に一々獄則を守り、模範的囚人と呼ばれさへした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:44:37.92

が、免役になつて帰つて来ると、もう一度同じ牝牛を盗み出した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:44:53.70

隣家の主人は立腹し、今度も亦警察権を借りることにした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:45:09.45

彼等の村の駐在所の巡査は早速彼を拘引した上、威丈高に彼を叱りつけた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:45:25.23

「貴様は性も懲りもない奴だな。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:45:41.26

すると彼は仏頂面をしたまま、かう巡査に返事をした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:45:56.91

「わしはあの牛を盗んだから、三箇月も苦役をして来たのでせう。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:46:12.66

して見ればあの牛はわしのものです。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:46:28.43

それが家へ帰つて見ると、やつぱり隣の小屋にゐましたから、(尤も前よりは肥つてゐました。)

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:46:44.07

わしの小屋へ曳いて来ただけですよ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:46:59.71

それがどこが悪いのです?」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:47:15.45

「わたしはずゐぶん嫉妬深いと見えます。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:47:31.23

たとへば宿屋に泊まつた時、そこの番頭や女中たちがわたしに愛想よくお時宜をするでせう。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:47:47.04

それから又外の客が来ると、やはり前と同じやうに愛想よくお時宜をしてゐるでせう。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:48:02.68

わたしはあれを見てゐると何だか後から来た客に反感を持たずにはゐられないのです。」――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:48:18.46

その癖僕にかう言つた人は僕の知つてゐる人々のうちでも一番温厚な好紳士だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:48:34.20

彼は彼女と夫婦になつた後、彼女に今までの彼に起つた、あらゆる情事を打ち明けることにした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:48:49.96

その結果は彼の予想したやうに彼等の幸福を保証することになつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:49:05.73

しかし彼は彼女にもたつた一つの情事だけは打ち明けなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:49:21.48

それは彼が十八の時、或年上の宿屋の女中と接吻したと云ふことだつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:49:37.26

彼は何もこの情事だけは話すまいと思つた訣ではなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:49:52.91

唯ちよつとしたことだつた為に話さずとも善いと思つただけだつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:50:08.57

それから二三年たつた後、彼は何かの話の次手にふと彼女にこの情事を話した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:50:24.33

すると彼女は顔色を変へ、「あなたはあたしを欺ましてゐた」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:50:40.12

それは小さい刺のやうにいつまでも彼等夫婦の間に波瀾を起す種になつてしまつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:50:55.89

彼は彼女と喧嘩をした後、何度もひとりこんなことを考へなければならなかつた。――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:51:11.59

「俺は余り正直だつたのかしら。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:51:27.35

それとも又どこか内心には正直になり切らずにゐたのかしら。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:51:42.99

彼はエデインバラに留学中、電車に飛び乗らうとして転げ落ち、人事不省になつてしまつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:51:58.75

が、病院へかつぎこまれる途中も譫語に英語をしやべつてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:52:14.55

彼の健康が恢復した後、彼の友だちは何げなしに彼にこのことを話して聞かせた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:52:30.32

彼はそれ以来別人のやうに彼の語学力に確信を持ち、とうとう名高い英語学者になつた。――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:52:46.07

これは彼の立志譚である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:53:02.00

しかし僕に面白かつたのは彼の留守宅に住んでゐた彼の母親の言葉だつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:53:17.76

「うちの息子は学問をして日本語はすつかり知り悉してしまひましたから、今度はわざわざ西洋へ行つて『いろは字引』

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:53:33.42

にない言葉を習つてゐます。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:53:49.18

彼は近頃彼の母が芸者だつたことを知るやうになつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:54:05.10

しかも今は彼の母が北京の羊肉胡同に料理屋を出してゐることも知るやうになつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:54:20.86

彼は商売上の用向きの為に二三日北京に滞在するのを幸ひ、久しぶりに彼女に会つて見ることにした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:54:36.64

彼はその料理屋へ尋ねて行き、未だに白粉の厚い彼女と一時間ばかり話をした。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:54:52.39

が、彼女の空々しいお世辞に幻滅を感ぜずにはゐられなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:55:08.17

それは彼女が几帳面な彼に何かケウトイ心もちを感じた為にも違ひなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:55:23.93

しかし又一つには今の檀那に彼女の息子が尋ねて来たことを隠したかつた為にも違ひなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:55:39.57

彼女は彼の帰つた後、肩の凝りの癒つたやうに感じた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:55:55.30

が、翌日になつて見ると、親子の情などと云ふことを考へ、何か彼に素つ気なかつたのをすまないやうにも感じ出した。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:56:10.94

彼がどこに泊まつてゐるかは勿論彼女にはわかつてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:56:26.72

彼女は日暮れにならないうちにと思ひ、薄汚い支那の人力車に乗つて彼のゐる旅館へ尋ねて行つた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:56:42.36

けれどもそれは不幸にも彼が漢口へ向ふ為に旅館を出てしまつたところだつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:56:58.14

彼女は妙に寂しさを覚え、やむを得ず又人力車に乗つて砂埃りの中を帰つて行つた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:57:13.93

いつか彼女も白髪を抜くのに追はれ出したことなどを考へながら。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:57:29.71

彼はその日も暮れかかつた頃、京漢鉄道の客車の窓に白粉臭い母のことを考へてゐた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:57:45.48

すると何か今更のやうに多少の懐しさも感じないではなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:58:01.25

が、彼女の金歯の多いのはどうも彼には愉快ではなかつた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:58:17.07

東海道線の三等客車の中。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:58:32.72

大工らしい印絆纒の男が一人、江尻あたりの海を見ながら、つれの男にかう言つてゐた――

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:58:48.49

浪がチンコロのやうだ。」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:59:04.14

これは君の「随筆流行の事」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:59:19.91

僕は暫く君と共に天下の文芸を論じなかつた為めか、君の文を読んだ時に一撃を加へたい欲望を感じた。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:59:35.67

乃ち一月ばかり遅れたものの、聊か君の論陣へ返し矢を飛ばせる所以である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 05:59:51.41

どうかふだんの君のやうに、怒髪を天に朝せしめると同時に、内心は君の放つた矢は確かに手答へのあつたことを満足に思つてくれ給へ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:00:07.02

君は「凡そ芸術と云ふ芸術で、清閑の所産でないものはない筈だ」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:00:22.77

又「芸術などといふものはその本来の性質からして、清閑の所産であるべきものだとは思ふ」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:00:38.55

僕も亦君の駁した文の中に、「随筆は清閑の所産である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:00:54.38

少くとも僅かに清閑の所産を誇つてゐた文芸の形式である」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:01:10.20

これは勿論随筆以外に清閑は入らんと云つた訣ではない。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:01:25.96

「僅かに清閑の所産を誇つてゐた」

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:01:41.74

と云ふのも事実上の問題に及んだだけである。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:01:57.37

まことに清閑は芸術の鑑賞並びにその創作の上には必要条件の一つに数へられなければならぬ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:02:13.12

少くとも好都合の条件の一つに数へられなければならぬ筈である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:02:28.85

この点は僕も君の説に少しも異議を述べる必要はない。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:02:44.61

同時に又君も僕の説に異議を述べる必要はない筈である。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:03:00.29

次に中村君はかう云つてゐる。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:03:16.06

「芥川氏は清閑は金の所産だと言ふ。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:03:31.75

金のあるなしにかかはらず、現在のやうな社会的環境の中では清閑なんか得られないのである。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:03:47.52

金があればあるで忙しからう。

**名無しさん＠１２０分待ち** · 2018/03/15(木) 06:04:03.28

金がなければないで忙しからう。