【第零章:星の守護者】

 マグネトロンを応用した強烈なマイクロ波によって人の頭を錯乱させる電磁波兵器は各国の秘密裏の協定によって“核”の暗号で呼ばれ、製造・使用・研究を禁じられた。
 が、中東の紛争地域でその使用の形跡が認められ、不可解な事件が多発していることから流出が疑われ、CIAのエージェントとして活動していた彼は、同じく軍事訓練を受けていた数名の部下とともに調査部隊として現地に送り込まれる。
 上司の命令によって軍事訓練の傍ら医学書に埋もれMITで量子物理学を修めたエリートである彼は、空爆を避けモスクに避難している女子供、老人たちが突然錯乱し互いにナイフや銃を向ける現場に何度も遭遇してきた。
 そして兵器の射程範囲に入り、攻撃を受け、同士討ちを始める部下……いつ自分の受け取っている情報が、世界が狂って錯乱するかわからない、そんな状況でも常に部下を励まし闘いつづけた。
 しかしいくら密輸ルートを叩いても事件は収束の気配を見せない。

「俺は誰だろうと一瞬で苦しませずに殺せる。ジム、アームチェアでのうのうとしているお前が想像もできないような汚いこともやってきた。下らない能書きはいいんだ、正確な情報と指示をくれ」