東京「ブラックホール」
http://rigakuken.main.jp/akirayamada/report/pdf/20160719.pdf

写真は増田寛也編著『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』中公新書、2014年。

「896の市町村が消える前に何をすべきか」と、厳しく問いかけ、多くの地方自治体にショックをあたえた。「中央公論」掲載の論文や対談をとりまとめたものだ。「増田レポート」といわれるもので、その後の安倍政権の「地方創生」戦略に大きな影響をあたえた。

編著者の増田寛也氏が、東京都知事選に立候補して、熱い選挙戦が繰り広がられている。「東京一極集中」にどう対処しようとしているのか。いまのところ、彼の政策から明確な方向が示されていないようだ。

選挙前の朝日新聞7月7日「天声人語」に次のように書かれていた。興味深いので紹介しておきたい。

それは、きわめて歯切れのいい東京一極集中批判dあった。東京が地方から、進学や就職で若者を吸い上げることが、日本の人口減少に拍車をかけているというのだ。
元総務相で岩手県知事も務めた増田寛也さんたちによる論文と対談が、2013年の「中央公論」に載った▼

「本来、田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子どもを産ませず、結果的に国全体の人口をひたすら減少させていく」と、出産や育児のしづらい東京の問題を指摘した。
「人口のブラックホール現象」と名付けて、耳目を集めた▼

その増田さんが東京都知事選の候補に浮上していると聞いて驚いた。ブラックホールとまで批判した東京のトップになるかもしれないのだ▼

意外に感じた方がやはりいたようだ。秋田県の佐竹敬久知事は4日の記者会見で首をひねった。「東京をいかに小さくするかという人が(都知事になるのは)矛盾する。政策をどう出すのかな」▼

ここは思い切って提案したい。もし立候補するのであれば、「東京縮小計画」を打ち出してはどうか。UターンやIターンなどで東京から飛び出す人を支援し、全国の自治体と手を組んで各地の魅力を都民に宣伝する。
吸収ではなく、若者をどこまで放出したかの数値目標を設けてもいい▼

増田さんは立候補に必要な覚悟を「スカイツリーから飛び降りるような感じ」と語っていた。果たして、東京も全国も驚くようなアイデアは聞けるだろうか。
(2016年7月19日)