新人職人がSSを書いてみる 34ページ目 [無断転載禁止]©2ch.net

1通常の名無しさんの3倍2017/07/11(火) 22:59:05.15ID:2NKWfveH0
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。

分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。

現在当板の常駐荒らし「モリーゾ」の粘着被害に遭っております。
テンプレ無視や偽スレ立て、自演による自賛行為、職人さんのなりすまし、投下作を恣意的に改ざん、
外部作のコピペ、無関係なレスなど、更なる迷惑行為が続いております。

よって職人氏には荒らしのなりすまし回避のため、コテ及びトリップをつけることをお勧めします。
(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。

前スレ
新人職人がSSを書いてみる 33ページ目
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1459687172/

まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
http://arte.wikiwiki.jp/

新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2)

417ミート ◆ylCNb/NVSE 2018/06/25(月) 19:35:03.81ID:fKAbCwxd0
人類の能力を増幅させるパワードスーツから端を発したMSという兵器カテゴリは、遂に究極の領域に一歩踏み出した。
すなわち神の領域に。

「戦争は発明の母って有名な言葉があるよな。同時にさ、戦争って技術を進化させるし、偏在化もさせちまうんだよな。テロ組織との戦いで洗練された新技術は、すぐに戦場の常識になったよ。
ヴァルキュリアを用いた機動兵器達が複数、同一の戦場を闊歩するようになるまでそう時間は掛からなかった」

人類は新境地を目指しながらも、争いを捨てられなかった。
希望と称した理論と技術さえも、人類は争いに組み込んだ。
対話を諦めて暴力を選んだ。
こうしてヴァルキュリアは、特別性を維持しながらも軍事分野に大きく食い込み、普及するまでに至った。
そしてあの時、共振とでも言うべき現象が発生したのはもはや、必然だったのだろうか。

「天津風、お前はどう思う?」
「どう、って・・・・・・」
「俺に話せることはこれで全部だ。どうしてこの技術が生まれたのか、どうして必要となったのか、俺が知る限りはここまでだ」

長々と語ったが、これが今のシンの語れる全てだった。
ユニウス戦役を経て、シンやキラが今ここに存在している理由の発端だ。

「・・・・・・」
「肝心要の、俺達がここに来る直前のことはまだ話せない。キラがストライクに乗ってた理由も、記憶喪失になっちまった理由も、あの小惑星基地のことも、悪いけどアイツが自力で思い出さない限りは駄目だ。
俺はそう決めてる。・・・・・・ここまで聞いてお前は、どう思った?」

言葉に詰まった。
今のシンの説明で、一つの謎が紐解かれたのは確かだ。この世界に厄災を持ち込んだ技術そのものは善意でも悪意でもない、人間社会の混沌そのものであったのだと、天津風は理解した。
以前にシンの言った通りだと。
この現象の元凶は決して、天災でも超常現象でも何でもない、意志ある人の手に依るものなのだと。
これは原始より連綿と続く人類の進化、科学技術の進化、赦されざる業の果てに依るものなのだと。
何が起こったのかは教えてくれないけど、まだ解かねばならない謎は多く残っているけど、想像できるだけのヒントはくれた。それを聞いてどう思ったのかと問われれば、しかし咄嗟に言葉は出てこなかった。

(・・・・・・時空間転移の直接の原因は、闘争だと言うの? それで暴走して、この世界に、沢山の謎を引き連れてやって来た・・・・・・そんなのってないわ。あんまりじゃないの)

ぼんやりと思い浮かんだのは、人類は所詮人類でしかないという、諦観だった。
どんなに高尚なことを言っても、どんなに大層な目標を掲げても、人は争いから逃げられない。そのイデアは揺らがない。人の種の限界を突きつけられている気分で、これではあまりに救いがない。

418通常の名無しさんの3倍2018/06/25(月) 19:35:59.08ID:gg9dRsPm0
回避

419ミート ◆ylCNb/NVSE 2018/06/25(月) 19:36:34.53ID:fKAbCwxd0
以前に己が発した言葉が脳裏を過ぎる。

『都合のいい、優しいだけの世界なんてないもの。どこも政治的な思惑に満ちてて・・・・・・言葉で、状況で、人は簡単に大きな流れに飲み込まれて――』

ああ。

『この世界も、アナタの世界も、ちょっとだけ何かが違っただけでしかないと思うの。だから・・・・・・そう、アナタの世界もそんな悲嘆することばかりじゃないって、人は過ちを繰り返すばかりじゃないって私は信じてるわ』

慰めのつもりの、勇気づける為の言葉だった。
でも、なんてことだろう。今となってはまるで虚しい。世界に絶望して人間の出来そのものが違うと悟った男に掛けてやるには無力に過ぎる。
今の自分に、シンに言うべき言葉はあるのか?
黙りこくってしまった少女を、シンは静かに見守っている。
しかしその妖しい光を湛えた紅い瞳は、こう語りかけてくるかのようだった。

『お前はもう一度、その言葉を言えるか?』

言いたい。言えるだけの経験と信念がある。けど、言える、と言い切れるだけの自信が無かった。
彼の絶望が解ってしまって、解きほぐすにはまだ力が足りないことに気付いて、言葉に詰まった。
それが悔しくて、哀しくて、天津風は言葉を探して視線をずらした。


「――・・・・・・、・・・・・・え?」


そして天津風は、全く別の要因で、言葉を失った。

「? どうした天津風――、・・・・・・なん、だと?」

不審に思って少女の視線を追ったシンも、同様に。
沈黙が場を支配する。スクリーンの静かな動作音だけがブリーフィングルームに響いた。二人は同じモノを見たまま指先一つたりとも動けなくなった。
すると、

「Es ist ein Notfall! 天津風、シンさん、大変だよ!!」

扉を鋭く開け放ち、エプロン姿のプリンツ・オイゲンが姿を現した。

420ミート ◆ylCNb/NVSE 2018/06/25(月) 19:39:13.45ID:fKAbCwxd0
「!? ――な、ぷ、プリンツか。 どうした? お前厨房にいたんじゃ・・・・・・」
「ビックリさせないでよ、もう・・・・・・心臓が飛び出るかと・・・・・・ってか包丁持ってなにやってんの」
「それどころじゃないの!! さっき提督(アトミラール)が言ってたのが聞こえたんだけど・・・・・・衛星が!!」

彼女の言葉と同時に、ブリーフィングルームに変化が訪れた。
ブツリと、佐世保の戦闘模様を映しだしていたスクリーンがブラックアウトしたのだ。一瞬故障したのかと思ったが、隅っこには「信号が入力されていません」と出ていて、つまり。
現実逃避気味に、シンと天津風は嵐によるアンテナの不具合かと思った。
だが違う。プリンツが今まさに言った単語が聞き間違いでなければ、真実は。

「偵察衛星が深海棲艦の攻撃を受けてるって・・・・・・。もう3基も墜とされてるみたいなの・・・・・・」

それっきり三人は何も言えなくなってしまった。
スクリーンが映像を出力することはない。大本を叩かれたのだから、これ以上ここにいる意味がない。
しかしシンと天津風は、縋るようにスクリーンを眺めた。どうしようもないと解っていても、それでも。
プリンツからの報告が大変なことだと理解できていても、それよりずっとショックな光景に心を蝕んでいた。C.E.の昔話に現を抜かしている場合ではなかったのだ。

「そんな、なんで・・・・・・」
「・・・・・・クソ、なんで俺は、こういう時に動けないんだ・・・・・・」

現実はいつだって非情だ。
いつだって祈りは届かない。
今まで大して気にとめていなかったリアルタイムの戦闘映像。
二人が偶然にも、最後にチラリと見たものは。


黒煙を上げて沈んでいく、バラバラになったナスカ級の姿だった。

421ミート ◆ylCNb/NVSE 2018/06/25(月) 19:43:13.77ID:fKAbCwxd0
以上です。
今回は要望に応えてシンのターン。今回はちょっとお堅いというか、意図的に流れをぶっちぎって歴史の勉強的なお話になりました。
これまでちょくちょく出てきていたガンダム系オリジナル用語の回収と解説を主としました。
ここいらでもう一度、過去のお話に目を通されると面白いかもしれません。

422通常の名無しさんの3倍2018/06/25(月) 20:11:12.36ID:PmG/i+ET0
おお、久々に三流F職人さんが来てる
以前投稿されたBFのSS、IGLOOのSS共に好きだったので今回も楽しみにしてます
あとミート氏も乙
今の新人SSスレはさしずめ『天気晴朗ナラズシテ波マタ高シ』な状態ですが、逆風に負けずに頑張ってください

423通常の名無しさんの3倍2018/06/25(月) 23:55:25.28ID:occTo1qi0
>>ミート ◆ylCNb/NVSEさん
乙ですー。頭の弱い私は読んでいると頭から黒煙がw
いいヒキですね、シンの話が深まってきたときに衝撃の映像が!という展開が
次回を待ち遠しくさせます。

>>422さん
嬉しいお言葉ありがとうございますー。三流創作者にとってその一言で
モチベーションがストップ高です。近いうちに第二話書きます。
ただ今回は前作二つと違って、ベースにすべき作品が無いので
クオリティ的にはやや落ちるかもしれませんが・・・

424通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 14:24:23.08ID:qf1IhYV70
それじゃ頭文字繋げてもバルキリジャになってしまうが
頭悪すぎだよ

425通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 15:48:50.22ID:vsfn8LaA0
スレタイ読めますか中卒ガイジちゃん

426通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 15:50:09.98ID:kiO4YuQG0
ん?SSに対してのアドバイスを行なってるんだが
読めてないのはお前だよ

427通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 16:37:33.07ID:nRPRvJ/O0
ワルキューレ(北欧神話)で調べればいいよ


ワルキューレ(ドイツ語: Walküre)は、北欧神話に登場する複数の半神。

戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在である。
彼女たちは王侯や勇士を選り分け、ヴァルハラへ迎え入れて彼らをもてなす役割を担ったが、これは尚武を旨とするヴァイキングの思想を反映したものと考えられる。


名称
日本語として定着した「ワルキューレ」は、ドイツ語の Walküre (ヴァルキューレ、ヴァールキューレ)に由来する。
北欧神話の原語である古ノルド語では、単数形が Valkyrja (ヴァルキュリヤ、ヴァルキュリャ)、複数形は valkyrjur(ヴァルキュリユル、ヴァルキュリュル)で、
語義は valr (戦場の死体)と kjόsa (選ぶ)を合わせたもので、「戦死者を選定する女」を意味する。英語では valkyrie (ヴァルキリー)という。

428通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 17:18:27.92ID:pFlvnwAg0
ワルキューレって書くとアイドルっぽい

ヴァルキリアって書くと凛とした女性っぽい

バルキリーって書くとランチおごらされるっぽい

429通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 21:02:00.32
>>424,426
ID違えば別人とか言ってるくせになんで答えてるの?

430通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 21:21:36.40ID:kiO4YuQG0
まーたミートの自演養護()か

431通常の名無しさんの3倍2018/06/26(火) 21:23:30.02
つまらない言い訳なら他所でどうぞ
埋め荒し無駄に終わっておめでとう

432通常の名無しさんの3倍2018/06/27(水) 07:40:26.79ID:Hsq4OsH90
ひさしぶりに伸びてると見にきたら頭おかしい奴に職人さんが攻撃されてたりしてげんなりする

433通常の名無しさんの3倍2018/06/28(木) 18:57:02.69ID:m5ptYsDU0
たしかに
野球ss書いてる職人様には頑張ってほしい
ミートみたいな頭おかしい奴に負けて欲しくないな

434通常の名無しさんの3倍2018/06/28(木) 18:58:56.36ID:uBQy6q8j0
頭おかしい本人乙

435通常の名無しさんの3倍2018/06/29(金) 18:31:00.55ID:wEFvATkf0
ガンダムの小説のスレで野球()の小説書いてるやつの方が頭おかしいよ

436通常の名無しさんの3倍2018/06/29(金) 21:34:45.26
野球に似た別の何か

437三流(ry2018/07/02(月) 22:14:01.28ID:OMY+LY1O0
1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第1話 「トオル君は今日も憂鬱」

 宇宙世紀0070、8月。ここオーストラリア、シドニーのバルメイン・プライマリースクール(小学校)
5year(5年生)の教室。
休み時間、教室の一角に出来ている人だかりを眺めながら、日系人トオル・ランドウ君は今日も不機嫌だ。
1週間前までは、あの人だかりの中心にいたのは自分だったハズなのに・・・

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移住させて、はや半世紀。地球では世界各都市において「国際化」が
ほぼ円熟期を迎えつつあった。

 かつて人口爆発が起き、難民や移民が急増した時、様々な事件やトラブルはついて回った。
当然である。宗教、常識、文化、風習、貧富、そして倫理観までまるで違う人々が入り乱れては
共存など望むべくもない。
喧嘩、犯罪、テロ、そして組織間の抗争に至るまで、あらゆる問題が政治家たちを悩ませていた。

 しかし、スペースコロニーの技術の確立と、それに伴う移住の開始により、その状況は逆転した。
過密だった地球の都市は、移住によって急にスカスカになってしまったのだ。
人口はもとより、問題となったのが企業や文化の問題だ、新たなフロンティアを求めて宇宙に行ったのは
当然、意欲や才能にたけた、つまりは「時代を作る」野望に燃えた、歴史を動かすような人間たちなのだ。
逆に言えば、地球にとどまる人々はどこか夢のない、無気力で怠惰な人という印象を、なにより
地球に残った人たちがコンプレックスとして感じ取っていたのだ。

 それを振り払うように、地球では海外旅行や留学や移住、国際結婚や国際転勤がブームになっていった。
遠い宇宙に行く人がいるんだから、地球でくらいもっと動こうという感情が、地球に残った人々を
突き動かしていった。

438三流(ry2018/07/02(月) 22:14:45.87ID:OMY+LY1O0
 そして半世紀、今やどの国にも、様々な国籍の人間がいるのが当たり前になっていった。
このバルメインの小学校も、地元オーストラリアの生徒は全体のわずか4割という具合だ。
かつては文化の違い(主に海生哺乳類の扱い)でやや嫌われていた日本人も、今は普通に住んでいる。

 そんな中に、この4月から彼トオル、ランドウ君は地元日本から転校してきた。
家庭環境が良かったのもあり、成績優秀、運動神経抜群、健康で容姿も水準以上、
なにより娯楽文化の高いオオサカと呼ばれた都市の出身であった彼は、人を楽しませること、
喜ばせることに長けていた。転入2週間で彼はすっかりクラスの人気者になっていたのだ。

 しかし、1週間前に転入してきた生徒が、彼の立ち位置をひっくり返してしまった―

「今日は転入生を紹介する」

 その先生の一言に、当然生徒は興味津々となる。いつの時代も転校生は注目の的だ。
しかし先生が続けて言った言葉に、その興味は天井知らずにハネ上がる。

「なんと彼女は、スペースコロニーから来たんだぞ、さぁ、入ってらっしゃい」
教室から歓声が沸く。地球間ならいざ知らず、スペースコロニーからの移住とは本当に珍しい
本来永住が基本のいわゆる「スペースノイド」が、地球に出戻るのは非常にまれである。
この教室にいる生徒全員が初めて見る、宇宙生まれの宇宙育ちの人間に、全員の注目が集まる。

その生徒がドアを開け、その姿を見せた瞬間、全員の息をのむ音が聞こえた・・・気がした。

緑がかった金髪、ゆるくウェーブのかかったその個性豊かな色の髪の毛。白い肌そして琥珀色の瞳
明らかに自分たちとは違う「人種」、それは宇宙人というより、おとぎ話に出てくる森の妖精を
イメージさせた。男子からは驚愕のため息が、女子からは黄色い歓声が沸く。

439通常の名無しさんの3倍2018/07/02(月) 22:17:25.28ID:OMY+LY1O0
規制回避

440三流(ry2018/07/02(月) 22:22:51.48ID:OMY+LY1O0
「セリカ・ナーレッドといいます、サイド2から来ました、よろしくお願いします」
やや宇宙訛りのある、透き通るような声で挨拶する少女、一呼吸遅れて教室に響く拍手。
そんな中、トオル君だけは不機嫌だった。自分が転入してきたときのパフォーマンスを
外見と出身地だけで上回られた。しかも名前もセリカ(天空)と来たもんだ、宇宙人の名前として出来すぎ!

だが、彼にとっての屈辱はここからがスタートラインだった。

 体育の授業、今日は走り高跳びのテスト。高さを生徒自身が決めて飛ぶ形式。
トオルの記録は100cm、平均身長130のクラスにあって、3ケタをクリアできるのはわずか3人
彼以外は全員身長150cmを超える男子生徒だっただけに、トオルも評価はクラス1だった。

「125cmでお願いします」
「「は?」」
生徒と体育教師が固まる。ほとんど自分の身長と同じ高さを申告する転校生少女に全員の注目が集まる。
金緑のウェーブの髪の毛を両端でツインテにまとめ上げた彼女は、そのまま軽やかにバーに駆け寄り
その身を躍らせる、まるでオリンピックを見ているような華麗な背面飛び。
バーのスレスレ上を反り返った彼女の最高点、首筋〜肩甲骨〜背腰〜お尻〜膝〜足先となめるように
クリアしていく、足をバーから抜いて背中から着地すると、そのまま反動を利用して後転して立つ、
歓声と拍手が巻き起こったのは言うまでもない。
「すっごおぉぉい!」
「やっぱ宇宙で過ごしてるから、空中で体を動かすの得意なんじゃない?」
「ホント、まるで宇宙遊泳みたいだよな」

「同じでお願いします!」
対抗意識を燃やしたトオルがバーに突っ込んで、違う意味でウケたのはその1分後であった。

441三流(ry2018/07/02(月) 22:23:23.53ID:OMY+LY1O0
 言語の授業、今日はそれぞれ母国語以外の言葉で役のセリフを朗読する、今回のお題は「赤ずきん」。
「オオカミはランドウ頼む。赤ずきんはそうだな・・・ナーレッドさんにやってもらおうか」
彼女以外は先生の意図をすぐに理解した。ことセリフの演技力においてトオルに張り合える生徒は
このクラスにはいなかった。そのまま声優として使えそうな大仰な喋りもトオルの得意技の一つだ。
彼女がこの朗読の授業において、照れ臭さから棒読みになるのを防ぐための人選である。

「それはね、お前の声をよく聞くためさ」
朗読しながら、トオルは勝ちを確信していた。見てろ、体育では不覚を取ったが、この授業なら・・・
「じゃあ、どうしておばあさんのお口は、そんなに大きいの?」
キタ、ここが勝負だ!さぁ俺の演技を見て驚けっ!
「それはねぇ・・・お前を、食べるためさぁーっ!」
静から動への声の動き、流れ、迫力、声量、どれをとっても文句なし完璧!
さぁ俺の演技にひれ伏せっ!!

「ひ、ひぃやぁあ・・・きゃあぁぁーーーーーーーーーーーっ!」
教室にいた全員がその悲鳴を聞いて引きつる、本当に命の危機に瀕したような、絹を引き裂く乙女の悲鳴。
トオルも皆も、あまりのリアリティに次のアクションが全く起こせなかった。その硬直を破ったのは
隣の教室から何事かと駆け付けた生活指導の先生だった。
「あ、すいません・・・下手でしたか?」
困惑した顔で見まわすセリカ、そのアクションでようやく我に返る生徒たち。
生活指導の先生が呆れ顔で帰ると、ようやく教室に拍手が巻き起こった。

おかげでしばらくの間、トオルは襲い掛かるイメージを植え付けられて、女子から距離を取られる始末だ。

まぁ一事が万事この有様で、1週間ですっかりクラスのスーパーガールの地位を得たセリカの周りには
人だかりが絶えなかったというわけだ、そして現在、トオル君は不機嫌だ。

「(くそ、あの宇宙人め・・・今度こそは)」
そんな対抗心を燃やすトオルに気付いて、セリカはトオルに薄い笑顔を向けて手を振る。
「(うぁ、むかつく!余裕かましやがってぇ〜〜)」

その対抗心が、二人を結びつける「縁」になることを、「トオル」はまだ知らない・・・

442三流(ry2018/07/02(月) 22:25:08.06ID:OMY+LY1O0
1話ですー、難産でした、いやマジで。
大筋が出来上がってる話なのですが、冒頭の「入り」がここまで難しいのも初めてだ。
なんせオリキャラしかいない世界ですからねぇ・・・いいのかこれw

443通常の名無しさんの3倍2018/07/02(月) 23:04:01.13ID:8oFQfGT90
乙です
まさかの甘酸っぱいボーイ・ミーツ・ガールの予感。シャリア・ブルの悪夢との関係が気になりますね

ガンダムの外伝モノなんてオリキャラ作ったもん勝ちみたいなもんですよ

444通常の名無しさんの3倍2018/07/03(火) 18:20:58.35ID:R/ihs9D90
三流(ry氏乙です
前回とはがらりと変わってボーイ・ミーツ・ガール的な展開ですが場所がシドニーというのが気になる…
あとトオル君演技に気合入れ過ぎw

でもこのシリアスとコミカルの絶妙な配分こそが三流(ry氏の持ち味か
続き待ってます

445三流(ry2018/07/06(金) 13:02:04.56ID:5M3D7gNe0
>>443
>>444
感想ありがとうございます。しばらくは「そういうお話」になりますw
一向にガンダムらしい話になりませんが、まぁそれは助走ということで
納得していただければ幸いです。
台風で仕事が休みだったので2話書きました、投下します。

446三流(ry2018/07/06(金) 13:02:43.81ID:5M3D7gNe0
1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第2話 「二人三脚」

 昨日も、今日も、おそらく明日も、トオル君の奮闘は続く。
転校生、セリカ・ナーレッドに勝つための、無駄な努力という名の奮闘が。

 ドッジボールの授業、セーフティエリアにはすでにセリカ一人、しかし四方からの球を
まるで全て予知してるかのような彼女の動きに誰一人命中させられない。
やがてボールを奪われると、やはり相手側で唯一人セーフティにいるトオルに四方から攻撃が来る。
持ち前の運動神経でボールから逃げつつ、カットする機会を伺う・・・が、
セリカの「カットすれば至近距離の私に当てられるよ」とでも言わんばかりの位置取りに
欲を出して無理に捕ろうとしたボールをこぼす、試合終了。

 写生遠足の水彩画、ほとんどの絵が教室の後ろに張り出されているが、トオルの絵は職員室の一角に
数枚の絵とともに掲示されていた。
で、セリカの絵だけは校長室の応接椅子の上にあり、来客者を驚嘆させていた。
ニュージーランド遠足、ほとんどの生徒がナウルホエ山を描いてたのに、セリカだけはキゥイ鳥の絵
躍動感のあるその絵は数ある山の絵を圧倒していた。

 水泳の時間、今度こそ勝つ!と息巻いているトオルだが・・・
水着姿のセリカは、森の妖精から水の妖精に早変わりしたような見事なしなやかな泳ぎを見せ
皆を魅了していた。まぁ元々カナヅチのトオルに勝ち目はなかったわけだが。
結局、雪辱を果たせないまま6year(6年生)に。ご丁寧に今年も同じクラスだ。

 トオルが「それ」に気付いたのはそれから1か月たった頃だった。
休み時間、セリカの周囲には誰もいなかった。あれ、取り巻きどこいった?
相変わらず彼女はスーパーガールっぷりを発揮しているし、それをハナにかけることもなく、愛想もいい。
むろん森の妖精のような美貌も変わることは無い、じゃあ一体なぜ?

447三流(ry2018/07/06(金) 13:03:35.62ID:5M3D7gNe0
「あー、あいつといると、なぁ。」
いつの間にか自分の周囲に戻った取り巻きの一人、チャンはこう語った。
「なんかさぁ、自分が『脇役』みたいな気がしてさぁ、空しいんだよな」
転校以来の友人ジャックが続ける。
「誰にでもひとつくらい得意なもんあるだろ、これなら負けない、ってヤツ。
でも彼女はそれすらあっさり負かしてくれるからなぁ・・・自信無くすんだよな」
クラスの委員長、ミアが付け足す。
「なんかすごい記録とか出しても、全然喜ばないっていうか、あっさりしてるのよね
気取ってるわけでもないし、『特別』な感じがして、近くに居づらいのよね」
最後に全員が声をそろえて言う。
「「というわけで、頑張れよな、お前が頼りだ!」」

 セリカを見る、こちらの視線に気づいて笑顔で手を振る。
取り巻きが離れていったことも、対抗意識を燃やされていることも、今の会話も全部知ってて
平然としているその姿は、確かに特別と言うべきものだろう。寂しくないのかなアイツ・・・

 それからもトオルの挑戦は続いた。しかしそれは以前のような自己顕示欲からくるものでは
次第になくなっていき、むしろ相手のセリカという女の子を知るためのコンタクトになっていく。
無敵の彼女がもし負けたらどういう反応をするのか、勝つたびに孤独になっていく彼女が
何を求めているのか、そんなことを考えながら今日も黒星を重ねていく。

そして一年は駆け足で過ぎ去っていった。

448三流(ry2018/07/06(金) 13:08:32.44ID:5M3D7gNe0
 「二人三脚は、そうだな、ランドウとナーレッドに頼もうか」
 卒業間際のスポーツコンペ(運動会)、種目分けに対する先生の提案にクラスは大賛成だった。
当クラスの名物女子+男子の組み合わせ、教室に冷やかしの口笛が沸く、ヒューヒュー。
照れながら周囲に食って掛かるトオルに、笑顔で「がんばろうね」と答えるセリカ。
そういや彼女とは張り合ってばかりで、一緒に何かするのは初めてな気がする。
ジュニアハイスクール(中学校)に上がると、勉強以外は男女は別々に評価される、
まぁ・・・最後にこういうのもいいか、と思うトオルであった。

 さすがに二人三脚ともなると練習は必須だ。天才と秀才の組み合わせとはいえ、
息が合わなければ凡人&凡人にもぶっちぎられるのがこの種目だから。
しかし真の天才にはそんな心配すら無用だった。イチ、ニ、イチ、ニ・・・
掛け声とともに走る二人は全く乱れない、トオルのペースにぴったり合わせるセリカ
バランスを崩すことすら全くないまま5往復を走り切る。
「本番、頑張ろうね」
笑顔でそう言うセリカに、トオルはこう問うた。
「お前さ・・・面白いか?そんな何でも完璧に出来て。」
「え・・・?」
困惑する表情を見せるセリカに、あわてて否定するトオル。
「い、いや、何でもない、忘れろ!」
慌てて足のヒモをほどき、その場を離れるトオル、まずいこと言っちゃったかな・・・

449三流(ry2018/07/06(金) 13:09:25.57ID:5M3D7gNe0
 コンペ本番、各クラスとも拮抗したスコア、後半の二人三脚も得点的には重要だ。
しかしクラスの期待はそこには無かった、天才少女がまた天才ゆえの強さを見せるのかという
冷たい視線に、天才の大コケを期待する凡人の暗い願望というエッセンスがわずかに混ざった空気。
スタートラインに向かう二人に応援は無い、さすがに鈍いトオルもこの空気に気付く。
「なんだ、アイツら・・・」
カチンときてクラスの集団を睨もうとしたトオル。ふとその腕を掴む隣の女の子。
「だめだよ、怒っちゃ」
「・・・え?」
笑顔でトオルをなだめて続ける。
「私は面白かったよ、この一年半。トオルがずっと対抗心剥き出しで挑んできてくれて。」
その言葉が先日の失言に対する答えだということはすぐわかった。

「今日はどうやってトオルに勝とうか、明日はどんな勝負をするのか、ずっとワクワクしてた。」
「え・・・そんなに対抗心剥き出しだったっけ、俺」
赤くなって返す。まぁ対抗心は否定しないけど、女子相手だし、なるべく気付かれないように挑んだ
つもりだったんだが。
あれで〜?、とクスクス笑うセリカ、こんなかわいい笑顔で笑う彼女を見るのはもちろん初めてだった。
ああ、そうか、張り合う相手が欲しかったんだ、この子も。

スタートラインに立つとトオルは右手を上げ、高らかに宣言する。
「全力疾走!いくぞーーーーっ!」
二人三脚で全力疾走とか無謀の極みでしかない。が、隣にいるセリカがそれに続く。
「おーーーーーーーーーーっ!」
グラウンドに、ええーーーっ!という驚愕の声が湧き上がる、否応なしに注目が高まる。

450三流(ry2018/07/06(金) 13:10:34.25ID:5M3D7gNe0
「レディ・・・GO!」
教師のピストルと共に全クラス一斉にスタート、と同時に弾丸のように飛び出す一つの塊。勿論セリカ・トオル組。
内側の足をお互い結ばれているのもお構いなしに雄叫びを上げ全力疾走するトオルと、
それに重なるように手足をぶん回す、笑顔の金緑の髪の少女。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「あはははははははは・・・」
一年の総決算のように並んで走る二人、まるでルームランナーの横に鏡を置いて走ったら
こういう絵になるかのような見事なシンクロ、しかも両者全力疾走、他の参加者をぶっちぎり、見る者すべてが
声援を送る。そう、声援。天才だろうが何だろうが、全力で頑張るものには誰しもそれを送りたくなるもの。
出走前の空気はどこへやら、場内は純粋な興奮と期待感に満ち溢れていた。

 ゴール直前、そのバランスが崩れる。どちらがミスしたのかはわからない。
ただ、競技の性質上それはありうる事ではあった。問題は二人が全力で走っていることだ。
もつれ合い、転がりながらゴールラインを割るカタマリ、砂ぼこりを上げてようやく止まる、
上にあるのは金緑の髪、その少女の下敷きになっている男子、とっさの事とはいえ、しっかり女の子を
かばって抱き支えている。

「大丈夫か?」
先生が心配そうに駆け寄る。
「あたた・・・何とか」
セリカにのしかかられながら、何とか身を起こすトオル。セリカはというと、トオルの胸に顔を埋めて動かない。
「おい!」
心配そうに語気を強めるトオル、その声にこたえて顔を上げるセリカ。
「・・・大丈夫?」
「それはこっちのセリフだ」
至近距離で見つめ合う二人、やがてセリカがクスクス笑いだす。
「うん!楽しかった。」
花が咲いたような、満面の笑顔で答えるセリカ。その笑顔と、重ねた体から伝わる彼女の体温に
血圧が急激に上がった気がして狼狽するトオル。

451三流(ry2018/07/06(金) 13:22:56.82ID:5M3D7gNe0
その真っ赤な顔を見て、周囲の面々が一気に冷やかしの言葉をかける。
「初めての共同作業お疲れー」
「魅せるねーお二人さん」
「どっちが押し倒したのー?」
「ここに教会を建てよう」
「式はいつ挙げるのー?」
「1着記念にキス!キスしなよっ!!」

「だぁーっ!やかましいぞお前らっ!」
慌ててセリカから離れ、1着の旗に向かうトオル、もちろん耳まで真っ赤だ。
と、その横に並び、腕を組んで微笑むセリカ、焼け石にバーナーとでも言うべきか。
「だから、ひっつくなって!」
照れるトオルを無視してその口元を耳に近づけ、ささやくセリカ。

「(今日はトオルの勝ちだね)」
二人にだけは分かっている。今日、最後にバランスを崩したのはどちらなのか。
そして、その言葉を聞いた瞬間、トオルのある「枷」が外れた。
目の前の女の子は「勝たねばならない相手」から、「近しい可憐な少女」へと代わった。
そしてそれは、ほんの一呼吸おいて「初恋の少女」へと変わる。

 ―そして二人は、プライマリースクールを卒業する―

452三流(ry2018/07/06(金) 13:39:32.25ID:5M3D7gNe0
2話でした。あー尻が痒いw
なんかもう「こんな小学校生活送りたかった」な気分で書きましたorz
3話から少しづつ物語が動く・・・といいなぁw

453通常の名無しさんの3倍2018/07/06(金) 20:44:00.88ID:gKj/1dXd0
乙でした、そして二人とも爆発しろw
でもこの流れだと結婚式の花嫁花婿の正体はこの二人で決まりなのかな?
もしそうなら…

454三流(ry2018/07/08(日) 23:55:10.98ID:OTTs80Ri0
>>453
一行目、その言葉を待っていた!予言乙ですw
連日の豪雨、このスレの皆は大丈夫でしたか?
私は大雨で仕事がはかどらず、執筆がはかどりました(ダメ人間)
3話いきます

455三流(ry2018/07/08(日) 23:55:51.68ID:OTTs80Ri0
1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第3話 「boy leave girl」

「というわけで、ぜひお宅の息子さんをウチに預けてはみませんか?」
ジュニアハイスクールに入学前の休み期間、ランドウ家を訪れた黒服の男は、トオルと両親に語る。
なんでも「能力開発機関」と称する、優秀な生徒を集めて育てようという組織のスカウトとして
ウチに来たらしい。
「専門的なスタッフと完璧な育成システムによって、必ず息子さんをエリートに育ててみせますよ。」
説明は饒舌だが、どこか熱量に欠ける声で語る黒服。セールスマンなら落第点の域だろう。
「しかし、この入学費と学費では・・・」
父親が返す。その費用は明らかにランドウ家のキャパを超えるものであった。

「まぁ、即お返事を頂きたいとはいいません、入学までに結論を出して頂ければいいですよ
その気になったならご連絡はこちらまで。」
そう言って名刺を置いて腰を上げる黒服、そのまま挨拶をしてランドウ家を後にする。

「で、お前はどうなんだ?トオル。」
「んー、興味はないよ、普通にジュニアハイスクール行きたいし。」
一緒にいたい娘もいるし、という本音は心に押し込める。
「まぁ、それがいいわね、なんかちょっと信用できないし、あの人。」
母親が返す、どうやら一家の結論は出たようだ。
それぞれが解散する中、トオルはテーブルに残った名刺を取り、目を通す。

―特殊能力研究開発機関、広報、リビル・イレイズー
TEL×××−×××××−××
名刺をひっくり返す、ウラには小さい文字でこう書かれていた。
―代表者:フラナガン・ロム―

特に何の感慨も沸かず、まぁそれでも自分を評価してくれた人の名刺だと思い、机の引き出しに仕舞う。
そんなことよりいよいよ中学生、もうすぐ新しい生活が始まる。アイツと一緒に。

456三流(ry2018/07/08(日) 23:56:38.39ID:OTTs80Ri0
 入学式。どこにも、セリカ・ナーレッドの姿は、無かった。

 色あせる、景色が、学校が、クラスが、新しいクラスメイトが、級友が、教師が、先輩が・・・
これから始まるジュニアハイスクールの生活が、トオルの目にはモノクロに移った。
文字通り「色」を失った世界に。
 旧友の誰も、彼女の行方は知らなかった。むしろ彼らもてっきりこの学校にセリカも
来るものだと思っていたらしい、委員長だったミアすら彼女が来ないとは思わなかったと言う。
プライマリーの担任教師を訪ねても返事は同じだった。

聞きだした住所、アパートの一室はすでにもぬけの空だった。
まるで雲隠れのように、こつぜんと姿を消した、金緑の髪の少女、トオルの初恋の人。

 それでも時は進む。新たな生活、勉強、運動、部活、イベント。
トオルは相変わらずトップクラスの成績を維持してはいた。しかしこの年齢になると
全てが突出して、とはいかなくなる。それぞれ突出した個性が芽吹くこの時期、
ジャンルのそれぞれにおいてトオルが敵わない生徒も徐々に増えていく。

 もし、俺の近くにアイツがいたらどうだろうな、そんなことを考える。
アイツはそれでもクラスのスーパーガールの地位を維持できるだろうか
俺はアイツに張り合って今より上に行けただろうか、なぁ、セリカ。

「まぁ、アイツに比べたら、敵わない相手じゃないかなって思うんだよ、オレ。」
チェスが得意だったキムは、すでにテーブルゲーム部のチェス部門でトップクラスになっている。
「先輩との差は感じるけど、アイツほど圧倒的に引き離されている、って感じはしないしな。」
フットボール部に入ったジャックは、一年にしてすでにレギュラーポジションを獲得していた。
「彼女と張り合うことを考えたら、まだ上級生と競うほうがマシかな。」
マーチングを始めたミアは、カラーガードの一角を担うほどの腕になっていた。

 アイツがいなくなってもう半年なのに、みんななんだかんだ言って、あの天才を忘れていないんだな。
そして彼女を指標にして、自分を鼓舞することで自己を高めている。
そういった影響をみんなに残すだけでも、やっぱ天才だよ、アイツは。

457三流(ry2018/07/08(日) 23:59:55.34ID:OTTs80Ri0
−天才?−
トオルの脳裏に何かが引っかかる、天才のセリカ、失踪、入学前、スカウト、能力開発機関・・・
「ああーっ!」
立ち上がり、悲鳴に似た声を上げる。そうだ、入学の少し前、ウチにも来たあの男、あの組織。
俺のところに来たんだ、セリカのところに行ってないはずがないじゃないか!
どうして気付かなかった、どうしてあんな胡散臭そうなところに、どうしてあんな高額な学費の・・・
そこまで考えて気付く、奴らの目的はもともと俺じゃなくてセリカなんじゃなかったのか、
俺はあくまで「ついで」、あるいは隠れ蓑でしかない、だから断るのを見越して
あんな高額な学費を提示したんじゃないのか、彼女には学費なんて要求しなかったんじゃないのか。

 終業後、家に飛んで帰る。確か机の引き出しに名刺があったはずだ。
部屋に飛び込んで机の引き出しをひっぺがす。あった!携帯でふるえる指でダイアルする。
『当電話の通話先はスペースコロニー・サイド6方面となっております。通話をご希望なら、料金はー』
電話を切る。愕然とする。嫌な予感はあった、しかしまさかスペースノイドの組織だとは・・・
手が届かない、宇宙はトオルにとって遥かに遠い場所、絶望感がトオルを苛む。

そして確信する、連中の目的はセリカであったこと、おそらく俺と出会う前、彼女が宇宙にいたころから
ヤツラは彼女に目をつけていたこと、そう確信させるほどセリカが天才だったから。
 ふとトオルは、授業で習ったことを思い出していた。サイド3の首相、ジオン・ダイクンが提唱した
新たな人類の進化系、宇宙に適合し、進化した人類。
−ニュータイプ−
もしセリカがそういった人種なら、すべて納得がいく。彼女の天才っぷりも、組織に目をつけられたことも。
そして俺には、文字通りはるか遠い空の上にいる『高嶺の花』だったことも−

458三流(ry2018/07/09(月) 00:01:00.65ID:xoCBmPKV0
 魂が抜けたように肩を落とし、トオルは歩く。日の暮れかかった道を、彼女の思い出を探しながら。
気付くとプライマリースクールに来ていた。ここにもすでに彼女の面影はない。
紅に染まる運動場、そう、何度も彼女と張り合った場所。高跳び、ドッヂボール、そして二人三脚。

−今日はトオルの勝ちだね−

あの日の事を思い出す。初めて聞いた彼女の本音、初めて勝った勝負、そして、初めて抱いた恋心。
トオルの中で「何か」が動いた。そう、もう一度彼女に会いたい、もう一度彼女に勝ちたい。
じゃあどうする?答えは簡単だ。彼女のもとに行けばいい。なんだ、簡単なことじゃないか。
どうして無理だと思っていたのか、宇宙が遠いから?シャトルで行けるじゃないか。
行く期間は?夏休みを使えばいい。どうやって探す?名刺あるじゃん。お金はどうする?―

 次の日、部活(JUDO部)に休部届を提出するトオル、フリーアルバイト雑誌を手に仕事を探す。
「待ってろよセリカ、どうせ俺は宇宙に行けないとか思ってるんだろ、ギャフンと言わせてやるぜ!」
モノクロだった景色が極彩色に戻っていく、凍っていた体に血が通っていく、魂の焔が再び灯る。
トオル・ランドウの物語が、再び動き出す−

3話でした。やれやれ、ようやくガンダム要素が入ってきたw

459通常の名無しさんの3倍2018/07/09(月) 19:26:27.84ID:s8QC4IJH0
乙でした
フラナガン、そしてサイド6
この二つの単語が登場したことで一気にガンダムらしくなってきましたなあ
そしてトオル君、彼女に会いたい一心でサイド6まで行く決断をするとは凄いのか、それとも単に無鉄砲なだけなのか
でも宇宙世紀の若者なのにギャフンという言葉はちょっと…いや、一周回ってありなのか?

>豪雨
直撃した地域ではありませんがあれこれと大変でした
個人的には仕事帰りに土砂崩れで道がふさがれたのを雨の中自力でどかす羽目になったのが修羅場でした
(おかげで体の節々がまだ痛い)
三流(ry氏、そして他の皆さんもご自愛ください

460三流(ry2018/07/14(土) 01:41:08.81ID:XV1w1Mtw0
>>459
感想どうもです。
トオル君の旅はここから少々困難を受けます、まぁまだ13歳ですしw
ギャフンは3周くらい回ってますねwただ、セリカをやり込めたいわけでもなく
ちょっとだけ勝ちたいわけでもない、その絶妙のさじ加減の表現として
ギャフンって丁度いい言葉だと思うんですよ。

4話書いてたらメモ帳がトビましたorz
結構書いてたのに泣きたい・・・

461三流(ry2018/07/14(土) 11:19:13.22ID:XV1w1Mtw0
休みなんで書き直しました。消えるうちにとっとと投下

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第4話 トオルの3年、トオルの旅

 スペースコロニー、サイド6。それはジュニアハイスクール1year(中学一年)のトオルにとって
遥かに遠く、到達は困難を極める場所であった。

 まずは旅費の問題、13歳を雇ってくれるアルバイトなどそうはない。通信が発達した現在
古来よりのお約束であるニューズペーパーの配達は消滅しているし、ストア等の店員も
ハイスクールからでないと募集が無い。
 そして最大の難関、親の説得。この年齢では単身で海外旅行すらありえないのに
よりによって宇宙まで行こうというのだからそりゃ反対される。
ましてその目的が『女の子に会いに行く』なんだから、どう切り出したものか・・・

 結局、嘘偽りを言わず、正直に両親に伝える。プライマリー時代のライバルだった
女の子に会いたくて行くこと、おそらくはあの「機関」の養成学校に入学したこと、
彼女がその価値のある本物の「天才」だということ、なにより自分自身が彼女に
会いたいという気持ちが消えないこと。

「しかし、それは学業をおろそかにしていい理由にはならんぞ」
父親は言う。部活に退部届を出したことはすでに家にも連絡が来ている。
行くために今の生活を犠牲にするなら行かせるわけにはいかん、と言うことだろう。
「宇宙でしょ?遠いのももちろんだけど、危険よ、なによりもまずは。」
母親が語る、母にしてもスペースノイドは親の世代からスペースノイドである。
治安、社会的なモラルの違い等から、スペースノイドからのアースノイドに対する反発心理、
さらにはジオンを称するサイド3と地球連邦との政治的対立による緊張、心配事は挙げればキリがない。

462三流(ry2018/07/14(土) 11:19:44.37ID:XV1w1Mtw0
 トオルは返す。それでも行きたい、アイツに会いたい、隣町だろうが木星だろうが関係ない
自分がそう思うから会いたいんだ、と。
アイツが今どうなってるのか知りたい、あるいは他のエリート達に囲まれて、自分のことなど
ハナにもかけなくなっているかもしれない。他の天才たちに負けて自信喪失し、かつての
輝きを失っているかもしれない。あの怪しい連中の悪い意味での実験台になってるかもしれない。
それを知るためにどうしても行きたい、と。

 トオルの熱意に押されて両親はしぶしぶ妥協する。部活に復帰し、なおかつ学校生活をやり切ること
それらを達成し、ハイスクールの受験に合格したら、卒業後の夏休みに行くことを許可すると。
その際、旅費もできるだけ援助することを約束する。
両親にしてみれば、3年もすれば熱意も冷めるかもしれない、こちらで好きな娘でもできれば
その子を思い出にできるかもしれない、そんな期待も半分はあった。
 しかし残り半分は、我が子にその思いを貫いてほしい気もあった。あの子供だったトオルが恋を、ねぇ。
息子の成長を喜びつつ、その願いをかなえてやりたい、しかしハンパな決意では叶えさせない、
やるならとことんやってみろ、という親からの宿題の意味もあった。

 そしてトオルには、そんな両親の期待に応えるだけの気骨が確かにあった。
JUDO部に復帰すると、1年の終わりには体重別の代表に選ばれるまでになる。
もともと運動は得意なトオルだ、あまり武道に熱心でないスクールにおいて頭角を現すのは
困難なことではなかった。
 勉強の方も優秀だった。いや、優秀にならざるをえなかった、というべきか。
目的があの天才に会うことである以上、自分が落ちぶれるわけにはいかない。
いざ再会した時、学業が落ちこぼれでした、ではカッコつかないにも程がある。

463通常の名無しさんの3倍2018/07/14(土) 11:22:45.04ID:KFnHR/y20
保守

464三流(ry2018/07/14(土) 11:23:35.81ID:XV1w1Mtw0
 もうひとつ、友人に恵まれていたことも大きかった。
キム、チャン、ジャック、ミア。ともに彼女を知るクラスメイトには色々事情を話していた。
「マジか!伝説の戦い再びだな。」
「宇宙まで負けに行くとはご苦労なこった」
男どもの感想にミアは(子供ね)という呆れ顔を見せる。今後、女の子の扱いには私の
アドバイスが不可欠だなこりゃ、と。
ジャックはアルバイトを紹介してくれた。彼の父の経営するエクステリア会社。
会社と呼ぶには小さすぎる個人経営だが、それだけに人手は常に足りないのが現状だ。
ジャックもしょちゅう手伝いに駆り出されるが、そこで出るお駄賃は立派に
アルバイトと呼べる額があった、あくまで名目はお駄賃だから、学校の許可も必要ない。

 こうしてトオルは3年間を勤め上げる。受験に合格し、十分な旅費の貯金もたまった。
JUDOの部活でも州大会でベスト4入りを果たすまでになった、
今も活躍中であろうセリカに負けないようにと、3yearでは生徒会長も務める。
もはやスクールでトオル・ランドウの名を知らないものはいないほどになっていた。
そんなトオルに惹かれる女の子は多かったが、その障害はミアはじめ旧友たちが
やんわりと取り除いていった。ある意味ひどい友人達である。

 そして「その時」が来る。トオルの3年間の総決算、旅立ちの時が。

 宇宙行には両親、友人たちから恩師の先生、果てはトオルに恋し破れた女子たちまで
見送りに詰め掛けてくれていた、まるでちょっとしたVIP扱いである。
しかし横断幕はどう考えてもやりすぎだろう・・・

−サイド2からのシャトルが接岸しました、お出迎えの型は8番ゲートまでお越しください
 なお、このシャトルは、サイド6行きとなります、ご搭乗の方は8番−

465三流(ry2018/07/14(土) 11:24:40.51ID:XV1w1Mtw0
 トオルの乗るシャトルが到着する。ゲートから降りてくる乗客、彼らが降りた後、
自分はあの船で宇宙に行く。アイツがいるあの空へ・・・
「じゃあ、気をつけてな」
「危ない所には近寄らないのよ」
親と別れの挨拶をする。
「しっかりやってこい」
「結果報告、よろしくな」
「彼女の写真、送ってね〜」
友人たちから激励を受ける。
「みんな、ありがとう。必ず目的を達成するよ!」
一人一人と握手をし、最後に右手を挙げてエスカレーターのステップに足をかける。

−3年越しのトオルの旅が、始まる−


「あ、やっぱりトオルだ!久しぶりっ♪」
対面のエスカレーターから降りてくる少女に声をかけられる。あれ?なんか聞いた声・・・
ゆるくウェーブのかかった金緑の髪を揺らし、エスカレーターから飛び降りてトオルの前に来て手を取る。
「忘れちゃった?わたし、ほらほら。」
「い、いや・・・そりゃ覚えてるけど、なぁ。」
絶句しつつ見送りの連中に目をやる。いぶかしげな両親の横で、旧友たちが腹を抱えて笑い転げている。
というかなんで君がここにいるんだよ!
「あれ、トオルこれから宇宙旅行?せっかく会いに来たのに・・・」
見送りの連中を見やり、事情を半分察する。心底残念な表情を見せるセリカ・ナーレッド。

−こうしてトオルの旅は、始まることなく終わった−

4話でした。酷い話ですが今後の伏線の一つでもありますw

466通常の名無しさんの3倍2018/07/15(日) 18:12:26.28ID:UtaReFT70
ワロタ
3年間の努力が完全に無駄骨やんw

あとセリカ、会いに来たって言ってるけど目的は何だろう
何気に気になる

467通常の名無しさんの3倍2018/07/15(日) 23:06:06.59ID:s0xaqCKW0
乙です

しかしまぁ、彼女はもう「ナニカサレタ」可能性もあるわけですよねぇ、現状のところは

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