新人職人がSSを書いてみる 34ページ目 [無断転載禁止]©2ch.net

1通常の名無しさんの3倍2017/07/11(火) 22:59:05.15ID:2NKWfveH0
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。

分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。

現在当板の常駐荒らし「モリーゾ」の粘着被害に遭っております。
テンプレ無視や偽スレ立て、自演による自賛行為、職人さんのなりすまし、投下作を恣意的に改ざん、
外部作のコピペ、無関係なレスなど、更なる迷惑行為が続いております。

よって職人氏には荒らしのなりすまし回避のため、コテ及びトリップをつけることをお勧めします。
(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。

前スレ
新人職人がSSを書いてみる 33ページ目
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1459687172/

まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
http://arte.wikiwiki.jp/

新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2)

153通常の名無しさんの3倍2017/11/11(土) 23:26:20.02ID:RJKBLHsH0
回避

154ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:26:45.66ID:zDocJJyd0
だから。
だから、誰か他の人が。彼女が気取らなくていい相手が気付いてくれているなら。
響が信頼しているこの青年が、そのままの彼女を受け入れてくれるというのなら。
あるいは、彼女の問題を解決できるキッカケになるのではと、瑞鳳は考えたのだ。
故に、「彼が響をどう思ってるか」が核心だった。
故に、少女のこれからの行動指針は決定された。


「そんな娘がね、あなたといるようになって、また前向きになれてるって思うの」


瑞鳳は、彼ら二人が食堂にやって来た時のことを、その時に受けた衝撃と直感を思い出しながら言った。

「あの娘、変わったわ。もちろん良い方向に・・・・・・そう、一皮剥けたみたいな。そのキッカケってやっぱりあなただと思うの。随分と懐かれてるみたいだしね」
「・・・・・・懐かれてる、のかな。そうだといいけど」
「なによぅ、あなたも自覚ないの? あの娘、私達と打ち解けるのにだってけっこーかかったのに。そのお相手が男ってのはまぁ、びっくりしちゃったけど」

ともすれば見逃してしまいそうな小さな変化だった。その雰囲気はほんの少しだけで、けど確実に以前のものとは違っていて。
まだありえないと思っていた、まだ遠いと思っていた様が、そこにあった。
自分なら断言できる。アレは本心からの笑みだった。

「それは・・・・・・」
「悔しいけど、あの娘のあんな顔、初めて見たんだもん」

資料室でなにをやっていたのかは響本人から直接訊いた。その時なにを想っていたのかも。
なんとも甲斐甲斐しいことだ。前はここまで積極的に他人の為に動くような娘じゃなく、裏のほうでコッソリ支える――戦闘の時とはまるで真逆なタイプだった。それが例え、名簿を書いてあげるなんてささやかなことでも。
そして、美味しいものを他の人に勧めるなんてことも、今までじゃ考えられなかった。
どんな時でも無感情でも無感動でもないけど無表情なあの娘は、その本心の表情を他人に晒すことなく。
五年前から、ずっと。
今になって、やっと。転機が訪れたのか、彼女は少し変わることができた。
経緯はどうあれ、他人と手を繋げるようになるぐらいには。美味しいものを他の人に勧められるぐらいには。

「そりゃね? ただあなたと手を繋いで、ちょっと笑ってただけって、たったそれだけよ。資料室でのことも些細な善意だってあなたは思ってるのかもしれない。
・・・・・・でもそれって、あの娘は姉妹達だけにしか見せなかったものだから」
「・・・・・・」
「それにキラさんの事ね、よくわかんないけど一緒といるとなんでか少し安心するって言ったの。いつもの無表情だったけど。それだけの変化が、今の響にはあったって思う。それで懐かれてないわけないじゃない」

155ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:30:05.39ID:zDocJJyd0
昨夜、まだ響の艤装は旧型のままだと。過去に一度挑戦したものの断念して以来ずっと埃を被っている新型艤装は、まだ使う気がないらしいと明石から聞いた時には「まだ決心つかないのかな」と心配になったけど。
あの白銀色のロシア製の新型――ロールアウトから数年が経って、もう旧式になりつつあるけど――が、再び日の目を見る時も近いかもしれない。かつて自分だけに教えてくれた「記憶」と向き合う準備が、
できつつあると見える。
それは仲間として、榛名達や木曾達が佐世保に配属される前から共にいた同期として、なにより姉貴分として素直に喜ばしいことだった。

「そうか・・・・・・僕にお願いしたいことってのはつまり、そういうこと」
「これからもっともっと、変わってってほしいの。キラさんといれば、きっとあの娘だって・・・・・・」
「買い被りすぎだよ瑞鳳さん。誰かを救うなんて、僕には・・・・・・」

訊いてみたいことと、お願いしたいこと。この人にお願いしたいこと。
共に響の力になること。
なるだけ彼女の氷を溶かすこと。この難題に真っ正面から踏み込んで、挑戦すること。
それがきっと彼女にとってのスタートラインになるから。

「ね、お願い! こんなチャンスもうないと思うの。私も全力でサポートするから!」

話したいことは全部話した。
あとはお願いを聞いてくれるか否か。
瑞鳳はパン! っと両手を合わせて拝み倒すことにした。
こんなこと、よっぽどのお節介焼きじゃなければやりたがらない依頼だろう。現状維持ではなく、更に踏み込むことを要求しているのだ。下手を打てば、彼と響の関係が悪くなる可能性だってある。
一方的に身勝手に、覚悟を要求している自覚はある。
それも相手は彼女と仲がいいとはいえ異世界人。今後どういう扱いになるかも不明で、いつここからいなくなるのかもわからないイレギュラー。この申し出が彼の負担になることは火を見るよりも明らかだ。
でもどうしても、これは譲れない願いだった。彼はきっと引き受けてくれるだろうという打算があることは否定しないが、仮に彼が対価を要求するのであれば最大限応える覚悟も持ち合わせている。
それだけ瑞鳳は本気だった。

「――・・・・・・、・・・・・・わかった・・・・・・引き受けるよ。でも最初に言っとくけど、本当に自信ないよ僕は。昔からそういうの苦手なんだ」
「そうなの? ・・・・・・訊いていいかわかんないけど、もしかして手痛い経験があったり?」
「まぁ、そんなとこ。でも、支えたいって言ったのは自分だしね・・・・・・うん、やれるだけやってみるよ」
「やったぁ! よろしくお願いしますね、キラさん!」

何かを思い出していたのか、少し固く険しい顔をしていたキラだったがしかし、やるしかないなぁっといたニュアンスの溜息一つで了承してくれた。
多少の不安要素もあるが、それでも協力者を得られたのは大きい。瑞鳳は喜びのあまりにキラの手をとって、ブンブンと上下に振った。

156ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:32:06.90ID:zDocJJyd0
『でもさぁ実際ありえるかもじゃん? つーかみんな気にしなさすぎだけど、いつの間にか溶け込んじゃってるけど、鎮守府に出入りする男なんて提督以外初なんだよ? 
面白いことが起こらないはずがないよ状況的にお約束的に』

ふいに鈴谷の冗談が脳裏を過ぎる。
面白いこと――かどうかは分からないけど、彼が現れて状況は動いた。いや、これだけじゃない。一つが動き出すと、連鎖するように、呼び合うように、響き合うように、あらゆるものは絡み合って動き出す。
ならば、できるだけ面白く明るい未来をつかみ取りたいと切に願う。
状況的にお約束的にそうなってくれるのなら、どんなことだってやってやろう。


かくしてここに、瑞鳳とキラの協力体制が築かれたのだった。


直後。

<えーそれでは、突然ですがここで! キラさんに着任の挨拶をしていただこーと思いますっ!! キラさーん、壇上へどーぞ!!」

再びスピーカーから白露の声が大きく響いた。
いきなりのことでビクッと飛び上がる二人。
シリアスモードが解除されて、俄然騒がしい食堂の空気が戻ってきた。意識して排除していた周囲の音が、あたかも洪水のようになだれ込んできて軽くクラクラしてしまう。
見れば、特設ステージの白露はくりくりとした大きな瞳で不器用なウインクをかましつつ、端っこにいるキラに向かって「はよ来い」とジェスチャーしていた。
そういえば、そんなイベントもあると前もって告げられていたと思い出す。なにせ彼が流れ着いてからこっち、ずっと忙しい日々を送っていた佐世保鎮守府。自己紹介は艤装総点検の際に個人的に済ませたものの、
キラはまだ正式には皆に挨拶をしていなかった。
共同生活に加わる新人にとって、皆の前での挨拶は避けては通れない通過儀礼、お約束のようなものだ。
それを今からやろうというのだろう。最近は新参者がいなかったから、こういうのは久しぶりだ。
いつの間にか握っていた手を慌てて離した瑞鳳は、この人は一体どんなことを言うのかなと、今どんな顔してるのかなと気になって、その顔を伺ってみることにした。
すると見えたのは、

「・・・・・・しまった。そういえば提督にちゃんと挨拶してくれって言われてたんだ。どうしよう、何も考えてない」

なんてことを宣いながら冷や汗を流す、期末試験を目前に控えていながらも知らず遊びほうけていた男の子のような表情で。
それがなんだかすごく可笑しくて、ついつい少女は吹き出してしまった。これがさっきまで真剣な顔をしていた男と同一人物だと思うと、余計に可笑しくなる。なんともギャップの激しい人だ。

157通常の名無しさんの3倍2017/11/11(土) 23:34:46.09ID:RJKBLHsH0
回避

158ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:35:12.65ID:zDocJJyd0
「え、ちょっと、そんなとぼけた学生みたいな。偉い立場だったんでしょ? 聞いたわよ、新地球統合政府直属宇宙軍第一機動部隊隊長って、自己紹介とか挨拶とか日常茶飯事みたいな肩書きじゃない」
「うわ、よく覚えてるねそれ・・・・・・。でもそういうのホント苦手で。内容とかいっつも他の人に任せてたんだよ」

とは言っても状況は待ってはくれず。
白露は腕をぐるぐる回し始めて、皆の視線は青年に集まって。内容を考える時間はなく、もう観念してさっさと壇上しか彼の選択肢はなかった。それでもキラは何か方法があるはずだと往生際悪く後ずさり、
小声で「どうしよう助けてシン!」と呟いていて。
もうこうなると本当、ただのそんじょそこらの普通の人間のようだ。
ここは早速、協力関係者となった瑞鳳の出番であろう。
幸先の良いスタートを切る為には、まず今を頑張らなければ。彼の助けにならなければ。そうでなければ協力者の名が泣くというものだ。
これが最初の一歩と、少女は動く。動揺するキラの背にスルリと回り込む。二人にとってのスタートラインを超えるべく。
そして、深呼吸して。

「どーん!」
「うわぁっ!?」

意外にも大きかったその背中を思いっきり突き飛ばしてやったのだった。特設ステージ方面に向かって、真っ直ぐに。




159通常の名無しさんの3倍2017/11/11(土) 23:40:24.04ID:RJKBLHsH0
回避

160ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:40:47.04ID:zDocJJyd0
その頃。
台湾近海にて。
嵐が去り、雲一つない満点の星空に覆われた、煌めく海にて。


そこには余りにも夥しい数の深海棲艦が、静かに蠢いていた。


百を超える駆逐級と軽巡級、それらを束ねる重巡級と戦艦級と空母級、そして十を超える巨人【Titan】。彼女らは、先の大規模戦闘の生き残りだ。
偶発的に壊滅的被害を被った敵の本拠地の一つ――佐世保鎮守府を潰す為に仕掛けた、損害を無視した強行一点突破作戦は失敗に終わり、どころか敵の増援によって一網打尽にされてしまった彼女らであったが、
その全てが駆逐されたわけではなく。残存戦力はこの海域にて、南洋諸島海域から集結した仲間をも取り込んで、静かに再起の時を待っていた。
敵は、人類側は強い。あの偶発的に手に入れた【力】の一端を行使しても、完全には攻めきれず、であれば半端な数と質で挑んでも返り討ちに遭うのみ。
本格的な戦闘行動を起こすにはもう暫くの時間が必要不可欠と、その一心で彼女らはただ待機しているのだ。
戦争で最も大事なものは準備であると、深海棲艦は理解していた。いつか人類を根絶やしにする為には、今は待つしかないと理解していた。

「・・・・・・」

その一端も一端。人類には十把一絡げに戦艦ル級と類別されているその個体は、群れから少し離れた場所で、とある作業を見守っていた。
準備。
そう、準備だ。
戦争で最も大事なものは準備。斥候からの報告によると、彼の地の防備は完全に復旧してしまったらしいのだから、今までと同じような準備では足りない。もっと力がいる。
もっともっと強い力が、なければならない。
その為の作業を、このル級は見守っていた。何を想うでもなく、淡々と。非武装状態で、潜水級と重巡級が頑張っている様を、怖気が走るほどに真っ黒な長髪を持つ女性型は、棒立ちで眺めていた。
ちなみに、見守ると言えば聞こえは良いが、実質的にはサボっているようなものだった。人類には知られていないことだが、深海棲艦にもうっすらとだが個体毎の性格がある。他の戦艦級や空母級は見回りに出たり、
力を蓄えたりとそれなりに役割を全うしているのだが、この個体はなにかにつけてボーッとするのが好きだった。
故に、こういう時の監督役を買って出るのがこのル級で、基本的に無感情で無感動で無表情で他人に興味を示さない深海棲艦の中でも、固有種でない癖に変わり者として認知されていたりする。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

そんな彼女の隣に音も無く、もう一体の深海棲艦が並んだ。

161ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:44:12.82ID:zDocJJyd0
ソイツも人型だった。真っ白な肌に真っ黒な装束という上位種に共通する特徴を持っているがしかし、今まで確認されてきた深海棲艦とは明確に異なる特徴も持っている、いわばイレギュラーな存在だった。
未だ人類に姿を見せていないソイツには、まだ名はない。勿論、深海棲艦にとっては名など必要ないものだから、そんなことはどうでもいいのだが。
ル級はソイツを一瞥した後、電磁波を交わした意思疎通も何もなく、また作業を注視する作業(サボタージュ)に戻った。隣のソイツもまったく同じように、まったくの無言で作業を見る。
滅多に海上に姿を現さない引きこもりのコイツが何故隣に並んだのか、その疑問も意味も、興味はない。どうでもいい。
二人は隣に並んでいながら、その存在をいない者として扱って、ただ眺める。

「・・・・・・!」
「・・・・・・!」

その視線の先で、動きがあった。
どうやら「当たり」を引いたらしい。
密集していた重巡級達が俄に散り散りになり、それぞれが手にしているワイヤーを力一杯に牽引する。人類の艦艇を再利用して製造したそのワイヤーは、遙か海底へと潜っている潜水級と繋がっており、
その様は正しくサルベージそのものだ。
つまりは、潜水級達が海底で発見したモノを引き上げるということ。
ここ数週間ずっと繰り返してきた作業だ。一切の言葉も交わさず、皆が己の役割に没頭する。全ては、いつかの為にと。
そして約5分が経過した頃。


ソレは、ついに海上に姿を現した。
それも、同時に二つも。所謂「大当たり」というヤツだった。


ソレは、巨大な機械人形だ。
一つは全体的に直線で構成された、約18mの鋼鉄の巨人。スラッとしたホワイトの四肢に、複雑な面構成のブルーのボディ、アンテナとゴーグル付きの頭部と、
今まで発見されたものの中でも特に人間のシルエットに近いタイプ。このタイプはこれで五体目だが、通しで見てもこれほど状態が良いものは初めてだった。
もう一つは、全体的に曲線で構成された、約20mの鋼鉄の巨人。此方は初めてみるタイプだが、オフホワイトで彩られた非人型な流線型のフォルムは、まるでイカのような愛嬌がある。
これもまた状態が良く、すぐにでも戦力として使えるだろう。


釣果は上々。


あの日。

162ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:47:13.51ID:zDocJJyd0
多数の深海棲艦を死に追いやった、あの大量の岩石と共にやって来た機械人形達。
その殆ど半壊状態であったが、それらと深海棲艦の死体を利用して製造した実験体【Titan】の性能は絶大だった。しかもパーツさえ揃えられれば、簡単に【姫】や【鬼】に匹敵する個体を量産できるのだから、
これは天からの恵みに他ならない。
この【力】があれば、人類などもう敵ではない・・・・・・その筈だった。しかし結果は自分達の惨敗だった。もう一度その性能を見直し、スタートラインを仕切り直す必要がある。
もっと効率良く、もっと強く、もっと多く。もっと、準備をしなければ。
もっと、この偶発的に手に入れた【力】を掻き集めて、研究しなければ。
だからこそのサルベージだった。海底に沈んだお宝を我が物にする為の。
いつか人類を根絶やしにする為に。

「・・・・・・」

重巡級達も潜水級達も良い働きをしてくれた。今日の作業は、これにて終了としても問題はないだろう。
そう判断したル級は、ふと隣にいた筈のイレギュラーがいつの間にかいなくなっていることに気付いた。
しかし気付いて、放置した。
アイツはそういうヤツだ。興味を持つ必要がない。どうでもいい。
さあ、明日もまた作業をしなければ。
その思考を最後に、ル級はねぐらを目指してゆらりと移送を開始した。作業していた他の深海棲艦達もそれに倣い、一人また一人と移動する。彼女達もまた休息が必要だった。

「・・・・・・、・・・・・・ギギッ」

状況は動いた。
いや、これだけじゃない。一つが動き出すと、連鎖するように、呼び合うように、響き合うように、あらゆるものは絡み合って動き出す。あらゆる事象は響応する。
深海棲艦達の戦準備は、着々と進んでいた。

163通常の名無しさんの3倍2017/11/11(土) 23:48:36.29ID:FGt2HrO90
C

164ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/11(土) 23:54:33.94ID:zDocJJyd0
以上です。
ヒーロー1人につきヒロイン2人は自分の中では王道です。これでレギュラーメンバーは全員紹介できました。

一応ですが、以降は以下のメンバーをレギュラーとしてそれなりの描写をしていく予定です。
・響 ・瑞鳳 ・榛名 ・木曾 ・鈴谷 ・明石 ・天津風
中でも響、瑞鳳、天津風はキーマンとして主軸になっていきます。

165通常の名無しさんの3倍2017/11/14(火) 09:00:45.31ID:G4WPIQPy0
乙でした。
美少女動物園内での会食とは羨ましいやつめw
キャラの立ち位置も固定されて、話のベクトルが決まりつつありますね。

個人的に期待したいのは深海棲艦側の描写ですね、古今東西戦争モノの良し悪しは
敵側の設定がやはり重要ですし。
絶対悪なのか、別の思想を持っているのか、キャラとしての魅力はどう出すのか
楽しみなところです、原作(艦これ)ではどうなんでしょう?

166ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/14(火) 15:17:37.83ID:6w2pOGZF0
>>165
感想ありがとうございます。
原作ゲームにおける敵の目的についてですが、そもそも艦これってそういう設定らしい設定がまったく存在しないのです。
味方も敵も明確になってるのはキャラの名前と容姿と台詞とパラメータだけで、艦娘だって史実を下地にした申し訳程度の性格づけしかないガバガバっぷりです。ユーザー側に開示されてる設定がそれしかありません。(他のブラウザゲーも似たようなものですが)
「深海棲艦から海域を開放する」という大目標以外の、それぞれの目的も世界観も完全に不明というのがアンサーです。
逆にいうと、世界観を一から考える楽しさがあります。

自分のSS内ではこれからちょっとずつ敵側の描写もしていく予定です。ほんとうに時々になってしまいますが

167ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/18(土) 18:06:04.49ID:mXkEJK9k0
すいません、勝手ながらちょっと聞きたいのですが、
ここの住民的には「本筋とは関係ないキャラの絡みだけの非シリアスな短編的なもの(大体5レス程度)」に需要はありますか?
(そもそも本編の需要がないというのは自分のガラスのハートが壊れるので勘弁を)

というのも、もう自分の中では最終回までのプロットはできていますが、時々脇道に逸れたお話を書きたくなる時があるのです。
今までは、そういうものは本編内に突っ込んでみたり、それとなく匂わせるだけの描写に留めたりして消化していました。

ただ短編を書こうとすると当然本編の進行は遅れますし、艦これを知らない人達の中でそれってどうなのって考えてしまいます。
でもせっかくのクロスオーバー作品ですから事件も心の問題も世界観説明も関係ない、ヤマなしオチなしイミなしの完全ほのぼのモードもいいなぁとも思っているのです。
つまり迷ってます。

厳しい意見でもリクエストでもなんでもいいので、出来ればどなたか教えてください。よろしくお願いしますm(_ _)m

168通常の名無しさんの3倍2017/11/18(土) 23:19:36.12ID:vAGY4q+P0
この過疎スレで話を投下してくれるのに抵抗ある人なんかいるもんかい
どんどんやっとくれ。

169通常の名無しさんの3倍2017/11/18(土) 23:31:41.77ID:jV5oNOjI0
待ってますよ

170通常の名無しさんの3倍2017/11/18(土) 23:59:10.15ID:vGhS5I0o0
ええんやない
リクエストありならシン視点とか見たい

171通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 03:00:25.89ID:jnC+6KRF0
てか新シャアのss系もすっかり人いなくなったな
そりゃここは新人スレだから慣れた人は別のとこに移っていくのかもしれんが、この板にはそれっぽい動きもないし
まぁ新シャア自体が過疎なんだけどな
仕方のないことだけど、なんとかならんもんかねっていう愚痴

172通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 03:19:29.63ID:vaWyFx+g0
ユーラシア氏更新待ってる

173通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 16:42:30.16ID:5PFIrzNL0
よし、俺が投稿してやる

174通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 16:43:06.19ID:5PFIrzNL0
【製品概要】
名称:マンゲマン
ジャンル:キミと君島と岩田が紡ぐ絆のアクションRPG
対象年齢:全年齢対象
価格:15,000円
発売日:2017年7月27日

 【物語】
「何だ、この不良品は!!」

 任地堂の元社長・岩田“マンゲマン”恥(ガンダ・マンゲマン・チー)は激怒した。
彼は去年、エイナスオナニー中にケツの中でデカビタCが炸裂して憤死していた。
今際の際にケツから流れ出た鮮血で、チーク材の机に君島(クントー)を後任とする旨を書き残し、絶命したのである。
しかし、そのクントーは社運をかけた新ハードをオナニーしながら開発し、
購入者たちの顔面に思いっきり濃い種をぶちまけたのである。

「俺がやるしかない。任地堂の未来は俺にかかっている!!」

 ガンダは決意した。
彼はチンポ急げとばかりに大天使・ゲイブリエルの元へ向かい、堕天を請願した。

「よいでしょう。そなたはマンゲマンとなり、今こそ悪徳家電屋ゾニーに無慈悲な鉄槌を下すのです!!」

 ガンダの身が輝きだした。
これならば、ゾニーを殺せる!!
マンゲマン、羽田に堕つ。

175通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 16:43:51.05ID:5PFIrzNL0
「ほう……、ここが悪しきゾニーに尾を振るソフトメーカー・ゼガか……」

 岩田マンゲマンは右腕を縦に大きく振り始めた。

「この新しいチカラ、試してくれよう!!カァ───ッ!!」

 山崎邦生(現・月亭方正)の様な甲高い咆哮と共に、マンゲマンの眼が見開かれた。
と、同時に。マンゲマンのケツ穴からウンコが吹き出し、マンゲマンの身体は驚くべき速度でゼガの本社に突進した!!

────……

「ムゥ!?」

 外回りをサボるため、ゼガ本社に立ち寄ろうとした水川は呆気にとられていた。
昨日まで立派に存在していた自身の古巣が、跡形もないのである。
……朦々と昇る土煙から、人影が浮かび上がってきた。

「貴様……、岩田!?確かに殺したはず……!」

 水川は産まれて初めて恐怖した、藤岡弘、いや、それ以上の何かに。

「水川、貴様は我が任地堂を愚弄してきたな?」

 額に汗しながらも、既に水川の心は落ち着いていた。

「スペック・スパイラルから逃げ、自社の殻に閉じこもったお前ら任地堂に食わせるソフトは無え!!食らえ岩田!!いや、マンゲマン!!」

 水川はスーツの胸ポケットから長方形の何かを取り出した。
グロカードだ。

176通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 16:44:24.30ID:5PFIrzNL0
「ソニック・グッロカードォ!!」

 水川の右手が振り上がった直後、カービィを足で踏み潰したかの様な炸裂音が二回続けて辺りに響いた。
その右手とカードが音速の壁を切り裂いたのである。

「ゲッ!キューブ!」

 突如、岩田マンゲマンの雄々しい肉体は宙を舞い、羽田空港第二滑走路まで吹き飛ばされた。

「ゲーム会社ってのは一人じゃ生きられねえ。あばよ、ゲームボウイ……」

 水川は三つに裂けた右腕をかばいつつ、ゼガ本社跡地に背を向けた。
岩田と同じく強烈な想い・絆を込めた水川のグロカードは、岩田マンゲマンの肉体にとってただただ有効であった。

「雨が降るか……、ゾニーに知らせねば……」

177通常の名無しさんの3倍2017/11/19(日) 16:44:42.91ID:5PFIrzNL0
以上だ

178ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/19(日) 23:04:07.63ID:axt6ybWs0
意見ありがとうございます。ちょっと短編にも挑戦してみます

>>170
シン視点了解です

179ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:03:41.32ID:MZE1pmDj0
シン視点とはちょっと言いづらいですけど、シンSideの短編です。
宣言通り、ヤマなしオチなしイミなしの完全ほのぼのモードです。よければどうぞ

180ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:07:29.25ID:MZE1pmDj0
事実は小説よりも奇なりという、諺がある。
現実の世界で実際に起こる出来事は、空想によって書かれた小説よりもかえって不思議であるという意味だ。しかし、既に現実がファンタジーに侵食された昨今で、より鮮烈な奇があるとするならば。
それはきっと、人が創り出すものに他ならないと、そう思う。




181ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:09:20.18ID:MZE1pmDj0
「――ぅあ、しまった・・・・・・」

工廠にて、研究に没頭していた天津風は、霞む視界のなかで時計を見つけるなりそう唸った。
午前3時25分。深夜とも早朝ともつかない微妙な時間帯。直前の記憶が正しければ、約10時間ぶっ通しで作業していたことになる。急ぎでもなんでもないのに、まーたやってしまったと少女は小さく溜息をついた。
プリンツに夕食に誘われたものの、もうちょっとでキリが良いからと、そう思って結局夕食を食べ損ねてしまったとはなんたる不覚。愛用の眼鏡を外して眉間をマッサージしつつデスク脇を見れば、
そこには期待に違わず可愛らしいメモと一緒にラップされた軽食が置いてあった。
佐世保の瑞鳳にも劣らぬこの気配り、持つべきは世話好きで料理上手な友人だ。ありがとう我が友プリンツ・オイゲン、この埋め合わせは今度の休日に必ず。

「シーン! 今日はもう終いにしましょ! お風呂入らなきゃ!!」
「おう分かったー! って、こんな時間なのかよ。気付かなかったな・・・・・・」

バイエルン仕込みのボリューム満点レバーケーゼのサンドイッチが二人分。これはあとで食べさせてもらうとして、そろそろお風呂に入らねば。
デスティニーのエンジンを弄りながらうんうん唸っていたシンに声をかけつつ、天津風は私室から持ち込んだタンスから替えの服やら下着やらを引っ張り出す。
シンも作業を中断してタラップから飛び降り、隣の一回り小さいタンスを漁り始めた。
すっかり工廠が自分達の居場所になっていた。ここにシャワールームが増設されればなぁと思わずにはいられない。でもそうなると次はベッドを持ち込みたくなるだろうし、
すると自室が本当にただの物置になってしまいそうだから、思うだけに留めておく。だいたい、そうなると作業効率重視のシンも真似してここに住み込むようになるだろうから、嫌だ。分別はしっかりしたい。
着替えをバッチリ用意して工廠入口に集った二人は、互いの煤だらけの顔を見てげんなりしつつ、揃って大浴場へと足を向けた。

「・・・・・・いつもながら、お互い酷い有様ね」
「これでもうちょっと進展がありゃ気も楽なんだけどな・・・・・・。あー、機材も知識もなにもかも足りねーってのに毎日こう油塗れになるって、どうなんだ」
「油塗れになってるから、進展皆無なんてことにはなってないんじゃない」

汚れに汚れた作業着姿のまま研究に没頭して一夜を明かすのは初めてではないが、気分がいいものではない。だというのにその頻度が最近、加速的に増加しているのは乙女として如何なものだろう。
呉の支援部隊に所属する身として、明石の弟子2号として、機関や武装の試作検証に一日の殆どを費やす日々を送っている彼女。
それでも今まではちゃんと食事も睡眠も入浴もキッカリ時間通りにとっていたのだが、シンの愛機たるデスティニーの修理に取りかかってからというものの、生活リズムは乱れる一方だ。
別に不満はない。
修理の進展は殆どないけど面白いものを弄らせてもらってるし自覚はあるし、興味本位とはいえ手伝ってくれる仲間も多くいる。シンとああだこうだ言い合いながら作業するのも、まぁ、悪くない。
ちょっと忙しくなってちょっと出不精になってるだけで、リズムなんかは後々に調整していけばいいだけの話だ。

182ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:12:13.26ID:MZE1pmDj0
そう思えるだけの魅力があの機動兵器には詰まっている。たしか正式名称は【GRMF-EX13F ライオット・デスティニー】といったか、正直具体的な技術どころか概要すら理解不能の塊だが、だからこそ興味深いのだ。
超小型の核融合エンジンに特殊電磁場によって半結晶状の荷電粒子ビームを出力するエネルギー兵器、電圧によって硬度と色が変化するうえにナノサイズの空洞を有するが故に超軽量な特殊金属を用いた装甲、
形状記憶金属をふんだんに取り入れた関節駆動装置、更には光圧と斥力を複合させた大型推進装置にと、どれ一つとっても超未来的オーバーテクノロジー。
むしろ、これに夢中にならないなんて人類としてどうかしてるとさえ思う。
佐世保にいる明石も、ストライクとかいうデスティニーより数世代前の機体を四六時中弄くり回しているらしい。
そんなわけで、現状に不満はないのだ。好きでやらせてもらってるのだから、自分の身のことなど二の次で。
けど、それにしたって。
やっぱりお風呂は毎日入りたいものなのだ。乙女としては。

「ところで、アラームをセットしてたはずなんだけど。聞こえた?」
「全然」
「そうよね。聞こえててスルーしたなんて言ったらぶん殴ってやるつもりだったわ」
「お前な・・・・・・。俺だって好きでこんな時間までやってたわけじゃねーっての。単にセットし忘れただけだろ」

男湯も女湯も、毎朝の浴場清掃時間まであと少し。今を逃せば数時間も待ちぼうけになってしまう。
朝になってしまえば、デスティニー修理部隊のみんなが工廠にやってくる。つまり、みんなと会うということで、汗と油に塗れたままじゃいられない。それは実にいただけない。
シンも昔はシャワー派だったらしいが、ここに来てからはお風呂に入るのがお気に入りらしく、毎日欠かさず入浴するうえ長風呂になりがちだという。
正直意外だが、けど綺麗好きなのはいいことだと毎日隣にいる者として切実にそう思う。
天津風達は文句を言い合いながら、ただお風呂に入りたい一心のみで重く気怠い躰に逆らって、鎮守府に一つだけしかない大浴場へと早足で歩いた。

(そーいえば、この時間にお風呂入るの久しぶりね。あの時以来か・・・・・・)

午前3時である。
当然、よっぽどの例外がない限りは、天津風達が今夜最後の利用者ということになる。ということは広い浴槽をのびのび独り占めできるということで、ちょっぴり得した気分だ。
島風の頭を洗ってやる必要もないし、今回は誰かさんに乱入される心配もないし。

(いやいや思い出すな忘れるのよ私。あれはただの不幸な事故だったんだから)

余談だが、ここ呉鎮守府は廃棄された温泉施設を再利用・増築して建設されたという経緯がある。宿舎や入浴施設はその旧温泉施設のものをそのまま利用し、後付けで工廠やら司令部やらを隣に設営していったのだ。その為、
入浴設備はどの鎮守府よりも充実していて、密かに自慢の種にもなっている。
そう思いながら角を曲がること数回、大きな『ゆ』の字が書かれた二つの暖簾が見えてきた。向かって右手には艦娘御用達の女湯が、左手には提督とシンが使う男湯がある。
ちなみに、男湯は完全な男性専用というわけではなく、利用者の殆どが女性だったりする。そもそも男が極端に少ないのだから専用にする意味がないのだ。

183ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:15:01.88ID:MZE1pmDj0
男性が利用する際には、誰も入ってないことを確認した上で、立看板を設置するという決まりがある。
あんまり思い出したくない記憶だが、天津風とシンが最初に顔合わせしたのは、この男湯でのことだった。
あんなハプニングは二度と御免だ。

「・・・・・・ん? あいつら、何やってんだ?」

と、何か見つけたのか、突然シンが目を眇めて呟いた。
その視線の先を追った天津風も、それを見つけて思わず首を傾げた。

「・・・・・・なんでコソコソしてるのかしらね?」

風呂上がりだったのだろう、タオルを首にかけた北上と阿武隈が、まさしく抜き足差し足忍び足といった具合で浴場から離れていく姿があった。
あからさまに怪しい。
違和感。
なんだろう、なにか嫌な予感がすると、天津風は感じた。
けど、声をかける暇はなかった。北上と阿武隈はすぐさま角を曲がって、二人の視界から消えた。同時に予感も、スルリと両手からすり抜けていって。
なんだったのだろう?

「追うか?」
「明日訊けばいいでしょ。・・・・・・じゃ、また後で」
「おう」

まぁ、気にすることはないと思う。大方、ちょっとした事故やイタズラがあった程度のことだろう、あの二人なら。追求はせずに置いとくことにする。
さておき。
挙動不審な彼女らと入れ替わるように浴場に到着した二人は別れ、それぞれの暖簾をくぐった。
シンは左に。
天津風は右に。
くぐって、脱衣所へと進む。


後になって思う。あの時、北上と阿武隈を追っていればよかったと。
違和感とは、嫌な予感とは往々にして、その正体がわかった時には既に手遅れなのだから。


そんな少し先の未来など露とも知らない少女。
天津風は脱衣所につくや否や真っ先に、作業着のチャックを豪快に下げて、インナーともども纏めて脱ぎ捨てた。そんでもってノールックで乱雑に、作業着専用洗濯機へと放り込んでスイッチオン。

184通常の名無しさんの3倍2017/11/26(日) 23:15:30.79ID:6qGq8CZI0
回避

185ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:16:11.55ID:MZE1pmDj0
続けて最近新調した黒のブラとショーツを脱いで、こちらは共用洗濯機に入れて、天津風は生まれたままの――艦娘は服と艤装を身につけてこの世に生まれいずるのだから、
この表現は適切じゃないかもしれない――姿になった。
起伏に乏しい、流麗で白磁のような肢体――美女揃いの艦娘の中でも指折りな脚線美を惜しげもなく晒したその姿は、いっそ一つの芸術品のようにも思える。
そうして最後に、象牙色のツーサイドアップを解いて。
少女は振り返り、浴場に続く最後の扉を視界に収めて。

(・・・・・・そうね、今日は露天風呂でゆったりしましょうか)

幾つもある素敵なお風呂のなかでも、特にお気に入りの露天風呂に入ろうと決めて、意気揚々に扉を開けた。
時間があればもっと色々楽しめるのだが、生憎と清掃時間まであと少ししかない。一つに絞る必要があった。

「〜〜♪」

鼻歌を唄いながら、温かな湯気に支配された空間を突っ切って、まずかけ湯をする。温感が全身を行き渡り、消えて、頭から足の先までがブルリと震えた。
ああ、この瞬間は何度経験しても堪らない。けど、本番はこれからなのだ。お風呂は偉大なのだ。
手早く躰と髪を洗って、一日の汚れを排水溝に流す。しっかりバッチリ躰を磨くのはまた時間がある時に。

「・・・・・・よし」

さあ次は、いざ、いよいよ外へ。
アツアツのお湯という名の、人類の英知で満たされた杯へ、師走直前の冷え切った大気に満ちた世界へ今、大きな一歩を。
踏み出す。
外界へ繋がる扉を開ける。


そして。


「――・・・・・・は?」

天津風は、嫌な予感の正体を知った。




186ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:19:23.47ID:MZE1pmDj0
「――・・・・・・は?」

露天風呂に入ろうとして外にでたシンの瞳に映ったものは、見事に大破したヒノキの仕切り板だった。
さて、ここの露天風呂は一つの囲いに二つの浴槽があり、それを中央の仕切りで女湯と男湯に区分けしているレイアウトである。つまり俗物的に考えれば、覗こうと思えば覗ける構図なのだ。
もっとも、覗こうとした瞬間、次に見るものは死の淵のみだと提督は言った。経験者は語るというものかと呆れながら、ぼんやり聞いていたのを覚えている。
提督は言った。
なんでも仕切り板付近には幾重ものセンサーが張り巡らされており、絶対防衛ラインを超えようとした者には漏れなく十数機配備されたセントリーガンの掃射がプレゼントされるとか。
せめてもの情けか弾丸はゴム弾だったらしいが。そんでもって仕切りには超高張力合金が埋め込まれていて、更には付近一帯にはバネ仕掛けの地雷やらなんやらが設置されているとか。なんという周到っぷり。
それだけの防備が女湯を守護しているのだと、あの男は大真面目に語ったものだ。きっと覗きたい女湯があったのだろう、彼には。
あんなんが責任者で大丈夫か?
話を戻そう。
シンは、そんな防衛設備をまだその目で見たことはなかった。つまりは今まで覗きを敢行したことはなかった。決して枯れてるわけではないが、喧嘩別れしたっきりの彼女たるルナマリア・ホークに操を立てているのだ。
若干二名の文化遺産的巨乳を目に焼き付けている青年は、そんじょそこらの女に靡かない硬派だった。
そんな彼の前に、仕込まれた鉄板もろともに粉々なった仕切り板があるのだ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

本当なら、あー話半分に聞いてたけど本当のことだったんだー、とか。一体誰がこんなことをー、とか。ていうかあの二人の仕業かこんちくしょー、とか。そんな感じの感想を抱くところだった。
しかし。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

しかして、現実は非情である。小説よりも奇である。
シンの視線の先には、もはやなんの役にも立たない仕切りの向こうには。

「・・・・・・きゃああああああああああああ!?」
「・・・・・・なぁ、これは俺が悪いのか・・・・・・?」

最近仲良くやれている少女、天津風の裸体だった。
凄まじい悲鳴が夜天に響き、露天風呂の水面がさざめく。
光が瞬き、重い金属音。腹を震わせる、エンジンの躍動。この音はよく知っているとも。艤装の駆動音だ。
シンはぼやく。
なんでこんなことに。どうしてこんなことに。

187ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:21:49.55ID:MZE1pmDj0
言っても思っても詮無きことだ。わかってる。けど、それでも。

「なんで俺、こんなとこにいるんだろう」

言わなきゃやってられないことって、あるだろ?
シンが最後に見たものは、此方に向かって12.7cm連装砲B型改二を構える全裸の天津風の姿だった。言い訳もなにも、する余裕がない。まったくない。もうこうなったら、運命にただ流されるだけだった。
願わくば、装填されたのがゴム弾でありますように。
その後の記憶はない。
彼の意識は、そこで途切れた。


それは、11月26日の深夜の出来事。全国的に「いい風呂の日」の、ちょっとした事件だった。




188ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:24:01.56ID:MZE1pmDj0
その後。
仕切り板破損事件は、北上と阿武隈がじゃれあった結果の不慮の事故だったことが発覚した。彼女らは自ら板の修繕を申し出て、それで手打ちとなった。
シンは無事、五体満足だった。流石は元祖ラッキースケベの名を冠する者といったところか、こういう修羅場には恐ろしく強かった。ただ、腹部に直撃した数十のゴム弾のせいで、
彼の立派に割れたシックスパックしばらく真っ赤であったとか。
そして、天津風はというと。

「・・・・・・次、やったら殺すから」

二度も裸を見られたショックにも負けず、今日も元気にデスティニーの整備に明け暮れていた。
もう二度と彼と一緒に浴場には行かないと、心に決めて。


しかし、彼女は知らない。


この世には二度あることは三度あるという諺があることを。
そしてそれは、案外近い未来にあるということを。
彼女は知らない。
まこと、人の世とは何が起こるか分からないものなのである。

189ミート ◆ylCNb/NVSE 2017/11/26(日) 23:27:34.33ID:MZE1pmDj0
以上です。
シンといえばラッキースケベという偏見があります。
たまにこんな頭ゆるい感じのを書こうかと思ってる次第であります。

190通常の名無しさんの3倍2017/11/27(月) 05:42:14.99ID:SPoE6iWO0


たまにゃこういうギャグ調の短編もええやね

191通常の名無しさんの3倍2017/11/27(月) 11:19:22.56ID:tjklJ2wG0
乙です
なんかさらりと新型デスティニーが紹介されてるのね

192通常の名無しさんの3倍2017/11/28(火) 23:20:23.51ID:UDSgodpR0
乙〜
全裸で失神したシンを運び介抱した人は誰なのやらw

193彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:46:12.19ID:idAKcaRr0
お久しぶりです。
もうすぐ書けると言ったのにまた忙しくなって時間が空いてしまいました。
本当にごめんなさい。

皇女の戦い 第7話

ロンドンでのガンダムファイトの大会...マリナが辛くも勝利を収めた第一戦。
彼女はホテル内に滞在しているアザディスタンの女性医療スタッフから軽めの健康診断を受けていた。
デスタンに殴られた腹部にはアザがあるものの、日頃の鍛錬のお陰で痕は薄い色に留まった。
念の為体内もCTRで診てもらったが問題はなかった。

「よし、これなら大丈夫でしょう。流石我が国の代表ですね。皇女様。」
「いえ、ありがとうございます。私も皆さんの期待に応えなければいけませんからここで負ける訳には。」

診察時専用の服から白いチュニックと青いロングスカートに着替えると、一礼して部屋を去るマリナ。
外にはシーリンがいつもと変わらぬ落ち着いた、それでいてどこか厳し気な表情で待っていた。

「どうやら何もなかったみたいね。」
「ええ、今負けたら申し訳が立たないもの。」
「今回は良かったけど、もしまた挑発するファイターが現れても耳を貸してはだめよ?」
「わかっているわ。少しの隙が命取りになるから...」

194彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:48:16.08ID:idAKcaRr0
ホテルで借りている個室で休むと気晴らしに出掛けるマリナ。
ロンドンの街は快晴で、人通りも多く活気に溢れている。
公園でゆっくりしたり、ブティックを軽く回ったりして余暇を過ごしていく。
時計が3時を回る頃に行き着いた石の橋。通路を兼ねたそこは補修を重ねており品のある灰色をしていて、同時に多くの人々が行き交った趣深さを感じさせてくれる。
下に流れる澄んだ河には何隻も船が渡り、この国が豊かであることの象徴のように思えてくる。
(私の国ももっと栄えればこんな風に...)
そんな思いを馳せながら青い空を見上げていると...


突然ボールが目の前に飛んでくるが、咄嗟に躱すマリナ。
サバイバルイレブンで培った敵のパンチや砲撃を回避する能力が自然に働いたのだろう。
ボールはそのまま道路を転がりそうになるが、すぐに拾うマリナ。
前方から、10歳程だろうか金髪の少年が慌てて走ってくる。

「いけね!姉ちゃん、大丈夫?ごめんね、驚いたでしょう?」

人懐っこそうな表情に焦りを浮かべて近づく。
彼にボールをそっと渡すとニッコリ笑みを見せるマリナ。

「大丈夫よ。気にすることないわ。でもここで遊ぶと危ないわよ?」
「ああ、気を付けるよ......あれ?お姉ちゃんどこかで見たような...
 マリナさんでしょ!アザディスタンの。さっきのファイト見たよ。凄かったね。」
「ええ、そうよ。凄くなんてないわ。」

口にされるとどこか恥ずかしいのかはにかんで首を横に振る。

195彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:50:36.07ID:idAKcaRr0
「でも、俺の兄ちゃんはもっとすごいぜ。実はファイターなんだ。イタリアのね。」
「あなたのお兄さんが?......っそうなの。それでどんな人?」
「サッカー選手だよ。レオナルド・バレージって言う。」
「そういえば、他の種目からファイターに転向した人も何人かいるわね。」
「そうそう。マジで凄いんだ。俺の兄ちゃん。元エースストライカーでさ、前いたチームの中でも人気高いんだぜ。」
「そんな凄い人がお兄さんなんて、嬉しいでしょ。」
「ああ、俺もいつか兄貴みたいな凄いサッカー選手になるんだ。
ああ、言い忘れたね。俺はダリオ。」

目を輝かせて喋る少年に何だかマリナも微笑ましくなっていく。

水面を見下ろしながら語り合う二人。
皇女でありながらたまにシーリンにサラッと注意されることも自然と話せてしまう。

「ええ、お姉ちゃん。そういう注意されることあるんだ?何か意外...」
「そうなのよ、まだ未熟だからね。」

苦笑いしながら話すマリナ。
楽しくて時間を忘れてしまう。

「でもさ、皇女様って言うからもうちょいとっつきにくい人かと思ったけど何かイメージと違う。」
「私、そんなに近づきづらかったかしら...」

外交中にできるだけ好印象を与える為、フランクな笑顔や話し方を心掛けてきたが今の会話で少し首を傾げる。

196彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:51:35.80ID:idAKcaRr0
「うん。もっと無口で堅い人だと思ったからさ。」
「あはは、ちょっとそれって。」
「でも一緒に喋ってて思ったより普通っていうか、近づきやすいっていうか。」
「良かった。それを聞いて安心......っていけない、もうこんな時間...」

気づけば辺りはすっかり夕闇色になっていた。
「ダリオ、私門限近いからもう帰らなきゃいけないけど、あなたは一人で大丈夫?
 泊ってる場所同じだけど送ろうか?」
「子ども扱いすんなって、大丈夫。心配いらないよ。
...それに他の国のファイターと一緒にいるともしかしたら兄ちゃん気まずくなるかもだし。」

それを聞いた瞬間皇女の口は自然とキュッと結ぶ形になり。

「...そうね。ダリオとお兄さんの気持ちも大事だし、今日はここで別れましょ。
 一緒に話せて楽しかったわ、ありがとう。ダリオ。」
「こっちこそ。これからの試合頑張ってね、皇女様。」
ボール片手に元気よく帰るダリオに手を振って見送るマリナ。
ファイトの疲れも完全に忘れて悠々と滞在先のホテルに帰っていく。

197彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:52:42.66ID:idAKcaRr0
翌日の朝、愛機・ユディータに乗り込むマリナ。
一糸纏わぬ姿で祈るように両手を握りしめ、片膝を着く。
スーツを纏い力一杯立ち上がる。
しなやかな胴体は爽やかな水色、肩と股は薄い水色、手足と臀部は純白というカラーリングだった。

機体は他国の者に比べやや小さく華奢だった。
白をメインとして、前腕と脛は落ち着いた紺色。
背中には鋭い矢を収めたケース。右手にはシャープなラインを描いた弓を携えている。


会場は昨日と変わらぬ熱狂ぶりを見せていた。司会者は声を上げる。
「みなさんお待ちかねー!今日も激しいファイトの行く末を見守ろうではありませんか!!」
「今日最初のカードは先日逆転勝ちしたアザディスタンの皇女、マリナ・イスマイール!
対するはイタリア代表、元サッカー界の英雄レオナルド・バレージ!
どのような戦いを見せてくれるのでしょうか!」

「絶対に負けられない......」

強い意志を見せるマリナの瞳は、森林のように鮮やかな緑色をした機体を見据えていた...

198彰悟 ◆9uHsbl4eHU 2017/12/07(木) 21:59:45.67ID:idAKcaRr0
今日は以上です。
さっき読み返したら、意図せずともおねショタもの?と思われるかもと少し考えてましたw
決しておねショタを嫌ってるわけではないのですが念のため。

まだ至らない部分がありますがよろしくお願いします。

あと、上手く言えないのですがビジュアル的?な部分でここをアレンジしてくれ、というご意見があったら教えてくださいね。
自分の力量でできる限り取り入れさせて頂きますので。
例えば、マリナの機体やファイティングスーツの色彩設定、マリナのスーツ装着シーンetc......

それでは今日はこれで。
みなさんお休みなさい。

199通常の名無しさんの3倍2017/12/09(土) 21:56:23.03ID:d+SYvNE00
更新乙です。
参加選手の兄弟と対戦前に出会うのはGガンでもありましたねー。サイサイシー・・・
別に少年とマリナが出会っただけで即おねショタにはならんでしょー、気にしない。
まぁおねショタも大好b(ry

さてさて、サッカー選手、という前提が出てきましたね。
そうなるとサッカーをどうガンダムファイトに生かしてくるか、作者さんの腕の見せ所ですよ。
弓道や合気道との相性、絡み、スポーツ選手としてのメンタルや国を挙げてのイベントとしての共通点
そしてサッカー選手の乗るガンダムのビジュアルやスタイルをどうするか。

敷居を上げつつ楽しみにしてますよ(鬼

200通常の名無しさんの3倍2017/12/11(月) 00:12:34.61ID:ZSIRpSZg0
乙です
そも本編からしてマリナはおねショタっぽい感じだったのだから、むしろマリナの本領なのでは?
本編といえばCBの連中は出てこないのかな?

しかし>>199さんや。敷居は上げちゃいかんて真面目に

201ミート ◆ylCNb/NVSE 2018/01/17(水) 20:55:25.76ID:9t1u7nN20
遅ればせながら明けましておめでとうございます。少しというか一ヶ月以上更新が空いてしまったので、とりあえず中間報告をばと。
年末に職場の転属がありまして、未だてんやわんやしてて執筆があまり進められておりません。なので、次回投下までまだまだ掛かってしまうと思います。
一月末には投下できるかもなので、待っててくれる人がいるならそれまでお待ちくださると幸いです。
今回は以上です。すいません

202通常の名無しさんの3倍2018/01/18(木) 12:17:45.16ID:7rZ2fe/c0
>>201
あけましておめでとうございます

リアルの生活もいろいろあるでしょうから、支障のない範囲でぼちぼちやってください
続きお待ちしてます

203通常の名無しさんの3倍2018/01/20(土) 10:11:28.54ID:xT/eWXPV0
シンはそういや金髪欲情症という病気にかかっているという話を聞いた気がする。

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