新人職人がSSを書いてみる 34ページ目 [無断転載禁止]©2ch.net

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1通常の名無しさんの3倍2017/07/11(火) 22:59:05.15ID:2NKWfveH0
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。

分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。

現在当板の常駐荒らし「モリーゾ」の粘着被害に遭っております。
テンプレ無視や偽スレ立て、自演による自賛行為、職人さんのなりすまし、投下作を恣意的に改ざん、
外部作のコピペ、無関係なレスなど、更なる迷惑行為が続いております。

よって職人氏には荒らしのなりすまし回避のため、コテ及びトリップをつけることをお勧めします。
(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。

前スレ
新人職人がSSを書いてみる 33ページ目
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まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
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新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2)

448三流(ry2018/07/06(金) 13:08:32.44ID:5M3D7gNe0
 「二人三脚は、そうだな、ランドウとナーレッドに頼もうか」
 卒業間際のスポーツコンペ(運動会)、種目分けに対する先生の提案にクラスは大賛成だった。
当クラスの名物女子+男子の組み合わせ、教室に冷やかしの口笛が沸く、ヒューヒュー。
照れながら周囲に食って掛かるトオルに、笑顔で「がんばろうね」と答えるセリカ。
そういや彼女とは張り合ってばかりで、一緒に何かするのは初めてな気がする。
ジュニアハイスクール(中学校)に上がると、勉強以外は男女は別々に評価される、
まぁ・・・最後にこういうのもいいか、と思うトオルであった。

 さすがに二人三脚ともなると練習は必須だ。天才と秀才の組み合わせとはいえ、
息が合わなければ凡人&凡人にもぶっちぎられるのがこの種目だから。
しかし真の天才にはそんな心配すら無用だった。イチ、ニ、イチ、ニ・・・
掛け声とともに走る二人は全く乱れない、トオルのペースにぴったり合わせるセリカ
バランスを崩すことすら全くないまま5往復を走り切る。
「本番、頑張ろうね」
笑顔でそう言うセリカに、トオルはこう問うた。
「お前さ・・・面白いか?そんな何でも完璧に出来て。」
「え・・・?」
困惑する表情を見せるセリカに、あわてて否定するトオル。
「い、いや、何でもない、忘れろ!」
慌てて足のヒモをほどき、その場を離れるトオル、まずいこと言っちゃったかな・・・

449三流(ry2018/07/06(金) 13:09:25.57ID:5M3D7gNe0
 コンペ本番、各クラスとも拮抗したスコア、後半の二人三脚も得点的には重要だ。
しかしクラスの期待はそこには無かった、天才少女がまた天才ゆえの強さを見せるのかという
冷たい視線に、天才の大コケを期待する凡人の暗い願望というエッセンスがわずかに混ざった空気。
スタートラインに向かう二人に応援は無い、さすがに鈍いトオルもこの空気に気付く。
「なんだ、アイツら・・・」
カチンときてクラスの集団を睨もうとしたトオル。ふとその腕を掴む隣の女の子。
「だめだよ、怒っちゃ」
「・・・え?」
笑顔でトオルをなだめて続ける。
「私は面白かったよ、この一年半。トオルがずっと対抗心剥き出しで挑んできてくれて。」
その言葉が先日の失言に対する答えだということはすぐわかった。

「今日はどうやってトオルに勝とうか、明日はどんな勝負をするのか、ずっとワクワクしてた。」
「え・・・そんなに対抗心剥き出しだったっけ、俺」
赤くなって返す。まぁ対抗心は否定しないけど、女子相手だし、なるべく気付かれないように挑んだ
つもりだったんだが。
あれで〜?、とクスクス笑うセリカ、こんなかわいい笑顔で笑う彼女を見るのはもちろん初めてだった。
ああ、そうか、張り合う相手が欲しかったんだ、この子も。

スタートラインに立つとトオルは右手を上げ、高らかに宣言する。
「全力疾走!いくぞーーーーっ!」
二人三脚で全力疾走とか無謀の極みでしかない。が、隣にいるセリカがそれに続く。
「おーーーーーーーーーーっ!」
グラウンドに、ええーーーっ!という驚愕の声が湧き上がる、否応なしに注目が高まる。

450三流(ry2018/07/06(金) 13:10:34.25ID:5M3D7gNe0
「レディ・・・GO!」
教師のピストルと共に全クラス一斉にスタート、と同時に弾丸のように飛び出す一つの塊。勿論セリカ・トオル組。
内側の足をお互い結ばれているのもお構いなしに雄叫びを上げ全力疾走するトオルと、
それに重なるように手足をぶん回す、笑顔の金緑の髪の少女。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「あはははははははは・・・」
一年の総決算のように並んで走る二人、まるでルームランナーの横に鏡を置いて走ったら
こういう絵になるかのような見事なシンクロ、しかも両者全力疾走、他の参加者をぶっちぎり、見る者すべてが
声援を送る。そう、声援。天才だろうが何だろうが、全力で頑張るものには誰しもそれを送りたくなるもの。
出走前の空気はどこへやら、場内は純粋な興奮と期待感に満ち溢れていた。

 ゴール直前、そのバランスが崩れる。どちらがミスしたのかはわからない。
ただ、競技の性質上それはありうる事ではあった。問題は二人が全力で走っていることだ。
もつれ合い、転がりながらゴールラインを割るカタマリ、砂ぼこりを上げてようやく止まる、
上にあるのは金緑の髪、その少女の下敷きになっている男子、とっさの事とはいえ、しっかり女の子を
かばって抱き支えている。

「大丈夫か?」
先生が心配そうに駆け寄る。
「あたた・・・何とか」
セリカにのしかかられながら、何とか身を起こすトオル。セリカはというと、トオルの胸に顔を埋めて動かない。
「おい!」
心配そうに語気を強めるトオル、その声にこたえて顔を上げるセリカ。
「・・・大丈夫?」
「それはこっちのセリフだ」
至近距離で見つめ合う二人、やがてセリカがクスクス笑いだす。
「うん!楽しかった。」
花が咲いたような、満面の笑顔で答えるセリカ。その笑顔と、重ねた体から伝わる彼女の体温に
血圧が急激に上がった気がして狼狽するトオル。

451三流(ry2018/07/06(金) 13:22:56.82ID:5M3D7gNe0
その真っ赤な顔を見て、周囲の面々が一気に冷やかしの言葉をかける。
「初めての共同作業お疲れー」
「魅せるねーお二人さん」
「どっちが押し倒したのー?」
「ここに教会を建てよう」
「式はいつ挙げるのー?」
「1着記念にキス!キスしなよっ!!」

「だぁーっ!やかましいぞお前らっ!」
慌ててセリカから離れ、1着の旗に向かうトオル、もちろん耳まで真っ赤だ。
と、その横に並び、腕を組んで微笑むセリカ、焼け石にバーナーとでも言うべきか。
「だから、ひっつくなって!」
照れるトオルを無視してその口元を耳に近づけ、ささやくセリカ。

「(今日はトオルの勝ちだね)」
二人にだけは分かっている。今日、最後にバランスを崩したのはどちらなのか。
そして、その言葉を聞いた瞬間、トオルのある「枷」が外れた。
目の前の女の子は「勝たねばならない相手」から、「近しい可憐な少女」へと代わった。
そしてそれは、ほんの一呼吸おいて「初恋の少女」へと変わる。

 ―そして二人は、プライマリースクールを卒業する―

452三流(ry2018/07/06(金) 13:39:32.25ID:5M3D7gNe0
2話でした。あー尻が痒いw
なんかもう「こんな小学校生活送りたかった」な気分で書きましたorz
3話から少しづつ物語が動く・・・といいなぁw

453通常の名無しさんの3倍2018/07/06(金) 20:44:00.88ID:gKj/1dXd0
乙でした、そして二人とも爆発しろw
でもこの流れだと結婚式の花嫁花婿の正体はこの二人で決まりなのかな?
もしそうなら…

454三流(ry2018/07/08(日) 23:55:10.98ID:OTTs80Ri0
>>453
一行目、その言葉を待っていた!予言乙ですw
連日の豪雨、このスレの皆は大丈夫でしたか?
私は大雨で仕事がはかどらず、執筆がはかどりました(ダメ人間)
3話いきます

455三流(ry2018/07/08(日) 23:55:51.68ID:OTTs80Ri0
1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第3話 「boy leave girl」

「というわけで、ぜひお宅の息子さんをウチに預けてはみませんか?」
ジュニアハイスクールに入学前の休み期間、ランドウ家を訪れた黒服の男は、トオルと両親に語る。
なんでも「能力開発機関」と称する、優秀な生徒を集めて育てようという組織のスカウトとして
ウチに来たらしい。
「専門的なスタッフと完璧な育成システムによって、必ず息子さんをエリートに育ててみせますよ。」
説明は饒舌だが、どこか熱量に欠ける声で語る黒服。セールスマンなら落第点の域だろう。
「しかし、この入学費と学費では・・・」
父親が返す。その費用は明らかにランドウ家のキャパを超えるものであった。

「まぁ、即お返事を頂きたいとはいいません、入学までに結論を出して頂ければいいですよ
その気になったならご連絡はこちらまで。」
そう言って名刺を置いて腰を上げる黒服、そのまま挨拶をしてランドウ家を後にする。

「で、お前はどうなんだ?トオル。」
「んー、興味はないよ、普通にジュニアハイスクール行きたいし。」
一緒にいたい娘もいるし、という本音は心に押し込める。
「まぁ、それがいいわね、なんかちょっと信用できないし、あの人。」
母親が返す、どうやら一家の結論は出たようだ。
それぞれが解散する中、トオルはテーブルに残った名刺を取り、目を通す。

―特殊能力研究開発機関、広報、リビル・イレイズー
TEL×××−×××××−××
名刺をひっくり返す、ウラには小さい文字でこう書かれていた。
―代表者:フラナガン・ロム―

特に何の感慨も沸かず、まぁそれでも自分を評価してくれた人の名刺だと思い、机の引き出しに仕舞う。
そんなことよりいよいよ中学生、もうすぐ新しい生活が始まる。アイツと一緒に。

456三流(ry2018/07/08(日) 23:56:38.39ID:OTTs80Ri0
 入学式。どこにも、セリカ・ナーレッドの姿は、無かった。

 色あせる、景色が、学校が、クラスが、新しいクラスメイトが、級友が、教師が、先輩が・・・
これから始まるジュニアハイスクールの生活が、トオルの目にはモノクロに移った。
文字通り「色」を失った世界に。
 旧友の誰も、彼女の行方は知らなかった。むしろ彼らもてっきりこの学校にセリカも
来るものだと思っていたらしい、委員長だったミアすら彼女が来ないとは思わなかったと言う。
プライマリーの担任教師を訪ねても返事は同じだった。

聞きだした住所、アパートの一室はすでにもぬけの空だった。
まるで雲隠れのように、こつぜんと姿を消した、金緑の髪の少女、トオルの初恋の人。

 それでも時は進む。新たな生活、勉強、運動、部活、イベント。
トオルは相変わらずトップクラスの成績を維持してはいた。しかしこの年齢になると
全てが突出して、とはいかなくなる。それぞれ突出した個性が芽吹くこの時期、
ジャンルのそれぞれにおいてトオルが敵わない生徒も徐々に増えていく。

 もし、俺の近くにアイツがいたらどうだろうな、そんなことを考える。
アイツはそれでもクラスのスーパーガールの地位を維持できるだろうか
俺はアイツに張り合って今より上に行けただろうか、なぁ、セリカ。

「まぁ、アイツに比べたら、敵わない相手じゃないかなって思うんだよ、オレ。」
チェスが得意だったキムは、すでにテーブルゲーム部のチェス部門でトップクラスになっている。
「先輩との差は感じるけど、アイツほど圧倒的に引き離されている、って感じはしないしな。」
フットボール部に入ったジャックは、一年にしてすでにレギュラーポジションを獲得していた。
「彼女と張り合うことを考えたら、まだ上級生と競うほうがマシかな。」
マーチングを始めたミアは、カラーガードの一角を担うほどの腕になっていた。

 アイツがいなくなってもう半年なのに、みんななんだかんだ言って、あの天才を忘れていないんだな。
そして彼女を指標にして、自分を鼓舞することで自己を高めている。
そういった影響をみんなに残すだけでも、やっぱ天才だよ、アイツは。

457三流(ry2018/07/08(日) 23:59:55.34ID:OTTs80Ri0
−天才?−
トオルの脳裏に何かが引っかかる、天才のセリカ、失踪、入学前、スカウト、能力開発機関・・・
「ああーっ!」
立ち上がり、悲鳴に似た声を上げる。そうだ、入学の少し前、ウチにも来たあの男、あの組織。
俺のところに来たんだ、セリカのところに行ってないはずがないじゃないか!
どうして気付かなかった、どうしてあんな胡散臭そうなところに、どうしてあんな高額な学費の・・・
そこまで考えて気付く、奴らの目的はもともと俺じゃなくてセリカなんじゃなかったのか、
俺はあくまで「ついで」、あるいは隠れ蓑でしかない、だから断るのを見越して
あんな高額な学費を提示したんじゃないのか、彼女には学費なんて要求しなかったんじゃないのか。

 終業後、家に飛んで帰る。確か机の引き出しに名刺があったはずだ。
部屋に飛び込んで机の引き出しをひっぺがす。あった!携帯でふるえる指でダイアルする。
『当電話の通話先はスペースコロニー・サイド6方面となっております。通話をご希望なら、料金はー』
電話を切る。愕然とする。嫌な予感はあった、しかしまさかスペースノイドの組織だとは・・・
手が届かない、宇宙はトオルにとって遥かに遠い場所、絶望感がトオルを苛む。

そして確信する、連中の目的はセリカであったこと、おそらく俺と出会う前、彼女が宇宙にいたころから
ヤツラは彼女に目をつけていたこと、そう確信させるほどセリカが天才だったから。
 ふとトオルは、授業で習ったことを思い出していた。サイド3の首相、ジオン・ダイクンが提唱した
新たな人類の進化系、宇宙に適合し、進化した人類。
−ニュータイプ−
もしセリカがそういった人種なら、すべて納得がいく。彼女の天才っぷりも、組織に目をつけられたことも。
そして俺には、文字通りはるか遠い空の上にいる『高嶺の花』だったことも−

458三流(ry2018/07/09(月) 00:01:00.65ID:xoCBmPKV0
 魂が抜けたように肩を落とし、トオルは歩く。日の暮れかかった道を、彼女の思い出を探しながら。
気付くとプライマリースクールに来ていた。ここにもすでに彼女の面影はない。
紅に染まる運動場、そう、何度も彼女と張り合った場所。高跳び、ドッヂボール、そして二人三脚。

−今日はトオルの勝ちだね−

あの日の事を思い出す。初めて聞いた彼女の本音、初めて勝った勝負、そして、初めて抱いた恋心。
トオルの中で「何か」が動いた。そう、もう一度彼女に会いたい、もう一度彼女に勝ちたい。
じゃあどうする?答えは簡単だ。彼女のもとに行けばいい。なんだ、簡単なことじゃないか。
どうして無理だと思っていたのか、宇宙が遠いから?シャトルで行けるじゃないか。
行く期間は?夏休みを使えばいい。どうやって探す?名刺あるじゃん。お金はどうする?―

 次の日、部活(JUDO部)に休部届を提出するトオル、フリーアルバイト雑誌を手に仕事を探す。
「待ってろよセリカ、どうせ俺は宇宙に行けないとか思ってるんだろ、ギャフンと言わせてやるぜ!」
モノクロだった景色が極彩色に戻っていく、凍っていた体に血が通っていく、魂の焔が再び灯る。
トオル・ランドウの物語が、再び動き出す−

3話でした。やれやれ、ようやくガンダム要素が入ってきたw

459通常の名無しさんの3倍2018/07/09(月) 19:26:27.84ID:s8QC4IJH0
乙でした
フラナガン、そしてサイド6
この二つの単語が登場したことで一気にガンダムらしくなってきましたなあ
そしてトオル君、彼女に会いたい一心でサイド6まで行く決断をするとは凄いのか、それとも単に無鉄砲なだけなのか
でも宇宙世紀の若者なのにギャフンという言葉はちょっと…いや、一周回ってありなのか?

>豪雨
直撃した地域ではありませんがあれこれと大変でした
個人的には仕事帰りに土砂崩れで道がふさがれたのを雨の中自力でどかす羽目になったのが修羅場でした
(おかげで体の節々がまだ痛い)
三流(ry氏、そして他の皆さんもご自愛ください

460三流(ry2018/07/14(土) 01:41:08.81ID:XV1w1Mtw0
>>459
感想どうもです。
トオル君の旅はここから少々困難を受けます、まぁまだ13歳ですしw
ギャフンは3周くらい回ってますねwただ、セリカをやり込めたいわけでもなく
ちょっとだけ勝ちたいわけでもない、その絶妙のさじ加減の表現として
ギャフンって丁度いい言葉だと思うんですよ。

4話書いてたらメモ帳がトビましたorz
結構書いてたのに泣きたい・・・

461三流(ry2018/07/14(土) 11:19:13.22ID:XV1w1Mtw0
休みなんで書き直しました。消えるうちにとっとと投下

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第4話 トオルの3年、トオルの旅

 スペースコロニー、サイド6。それはジュニアハイスクール1year(中学一年)のトオルにとって
遥かに遠く、到達は困難を極める場所であった。

 まずは旅費の問題、13歳を雇ってくれるアルバイトなどそうはない。通信が発達した現在
古来よりのお約束であるニューズペーパーの配達は消滅しているし、ストア等の店員も
ハイスクールからでないと募集が無い。
 そして最大の難関、親の説得。この年齢では単身で海外旅行すらありえないのに
よりによって宇宙まで行こうというのだからそりゃ反対される。
ましてその目的が『女の子に会いに行く』なんだから、どう切り出したものか・・・

 結局、嘘偽りを言わず、正直に両親に伝える。プライマリー時代のライバルだった
女の子に会いたくて行くこと、おそらくはあの「機関」の養成学校に入学したこと、
彼女がその価値のある本物の「天才」だということ、なにより自分自身が彼女に
会いたいという気持ちが消えないこと。

「しかし、それは学業をおろそかにしていい理由にはならんぞ」
父親は言う。部活に退部届を出したことはすでに家にも連絡が来ている。
行くために今の生活を犠牲にするなら行かせるわけにはいかん、と言うことだろう。
「宇宙でしょ?遠いのももちろんだけど、危険よ、なによりもまずは。」
母親が語る、母にしてもスペースノイドは親の世代からスペースノイドである。
治安、社会的なモラルの違い等から、スペースノイドからのアースノイドに対する反発心理、
さらにはジオンを称するサイド3と地球連邦との政治的対立による緊張、心配事は挙げればキリがない。

462三流(ry2018/07/14(土) 11:19:44.37ID:XV1w1Mtw0
 トオルは返す。それでも行きたい、アイツに会いたい、隣町だろうが木星だろうが関係ない
自分がそう思うから会いたいんだ、と。
アイツが今どうなってるのか知りたい、あるいは他のエリート達に囲まれて、自分のことなど
ハナにもかけなくなっているかもしれない。他の天才たちに負けて自信喪失し、かつての
輝きを失っているかもしれない。あの怪しい連中の悪い意味での実験台になってるかもしれない。
それを知るためにどうしても行きたい、と。

 トオルの熱意に押されて両親はしぶしぶ妥協する。部活に復帰し、なおかつ学校生活をやり切ること
それらを達成し、ハイスクールの受験に合格したら、卒業後の夏休みに行くことを許可すると。
その際、旅費もできるだけ援助することを約束する。
両親にしてみれば、3年もすれば熱意も冷めるかもしれない、こちらで好きな娘でもできれば
その子を思い出にできるかもしれない、そんな期待も半分はあった。
 しかし残り半分は、我が子にその思いを貫いてほしい気もあった。あの子供だったトオルが恋を、ねぇ。
息子の成長を喜びつつ、その願いをかなえてやりたい、しかしハンパな決意では叶えさせない、
やるならとことんやってみろ、という親からの宿題の意味もあった。

 そしてトオルには、そんな両親の期待に応えるだけの気骨が確かにあった。
JUDO部に復帰すると、1年の終わりには体重別の代表に選ばれるまでになる。
もともと運動は得意なトオルだ、あまり武道に熱心でないスクールにおいて頭角を現すのは
困難なことではなかった。
 勉強の方も優秀だった。いや、優秀にならざるをえなかった、というべきか。
目的があの天才に会うことである以上、自分が落ちぶれるわけにはいかない。
いざ再会した時、学業が落ちこぼれでした、ではカッコつかないにも程がある。

463通常の名無しさんの3倍2018/07/14(土) 11:22:45.04ID:KFnHR/y20
保守

464三流(ry2018/07/14(土) 11:23:35.81ID:XV1w1Mtw0
 もうひとつ、友人に恵まれていたことも大きかった。
キム、チャン、ジャック、ミア。ともに彼女を知るクラスメイトには色々事情を話していた。
「マジか!伝説の戦い再びだな。」
「宇宙まで負けに行くとはご苦労なこった」
男どもの感想にミアは(子供ね)という呆れ顔を見せる。今後、女の子の扱いには私の
アドバイスが不可欠だなこりゃ、と。
ジャックはアルバイトを紹介してくれた。彼の父の経営するエクステリア会社。
会社と呼ぶには小さすぎる個人経営だが、それだけに人手は常に足りないのが現状だ。
ジャックもしょちゅう手伝いに駆り出されるが、そこで出るお駄賃は立派に
アルバイトと呼べる額があった、あくまで名目はお駄賃だから、学校の許可も必要ない。

 こうしてトオルは3年間を勤め上げる。受験に合格し、十分な旅費の貯金もたまった。
JUDOの部活でも州大会でベスト4入りを果たすまでになった、
今も活躍中であろうセリカに負けないようにと、3yearでは生徒会長も務める。
もはやスクールでトオル・ランドウの名を知らないものはいないほどになっていた。
そんなトオルに惹かれる女の子は多かったが、その障害はミアはじめ旧友たちが
やんわりと取り除いていった。ある意味ひどい友人達である。

 そして「その時」が来る。トオルの3年間の総決算、旅立ちの時が。

 宇宙行には両親、友人たちから恩師の先生、果てはトオルに恋し破れた女子たちまで
見送りに詰め掛けてくれていた、まるでちょっとしたVIP扱いである。
しかし横断幕はどう考えてもやりすぎだろう・・・

−サイド2からのシャトルが接岸しました、お出迎えの型は8番ゲートまでお越しください
 なお、このシャトルは、サイド6行きとなります、ご搭乗の方は8番−

465三流(ry2018/07/14(土) 11:24:40.51ID:XV1w1Mtw0
 トオルの乗るシャトルが到着する。ゲートから降りてくる乗客、彼らが降りた後、
自分はあの船で宇宙に行く。アイツがいるあの空へ・・・
「じゃあ、気をつけてな」
「危ない所には近寄らないのよ」
親と別れの挨拶をする。
「しっかりやってこい」
「結果報告、よろしくな」
「彼女の写真、送ってね〜」
友人たちから激励を受ける。
「みんな、ありがとう。必ず目的を達成するよ!」
一人一人と握手をし、最後に右手を挙げてエスカレーターのステップに足をかける。

−3年越しのトオルの旅が、始まる−


「あ、やっぱりトオルだ!久しぶりっ♪」
対面のエスカレーターから降りてくる少女に声をかけられる。あれ?なんか聞いた声・・・
ゆるくウェーブのかかった金緑の髪を揺らし、エスカレーターから飛び降りてトオルの前に来て手を取る。
「忘れちゃった?わたし、ほらほら。」
「い、いや・・・そりゃ覚えてるけど、なぁ。」
絶句しつつ見送りの連中に目をやる。いぶかしげな両親の横で、旧友たちが腹を抱えて笑い転げている。
というかなんで君がここにいるんだよ!
「あれ、トオルこれから宇宙旅行?せっかく会いに来たのに・・・」
見送りの連中を見やり、事情を半分察する。心底残念な表情を見せるセリカ・ナーレッド。

−こうしてトオルの旅は、始まることなく終わった−

4話でした。酷い話ですが今後の伏線の一つでもありますw

466通常の名無しさんの3倍2018/07/15(日) 18:12:26.28ID:UtaReFT70
ワロタ
3年間の努力が完全に無駄骨やんw

あとセリカ、会いに来たって言ってるけど目的は何だろう
何気に気になる

467通常の名無しさんの3倍2018/07/15(日) 23:06:06.59ID:s0xaqCKW0
乙です

しかしまぁ、彼女はもう「ナニカサレタ」可能性もあるわけですよねぇ、現状のところは

468三流(ry2018/07/18(水) 01:44:14.18ID:1amxvnQo0
>>446
>>447
感想どもです、次の話はお二方の疑問に対する回答になってます。
というわけで第5話・・・

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第5話 あっちむいて、ほいっ!

 夏の終わりの海岸線、太陽を受けて輝く波の反射を浴びつつ、堤防の上を歩く二つの影。
3年ぶりに再会を果たした少年と少女、トオル・ランドウとセリカ・ナーレッド。
少し気恥ずかしそうなトオルに対して、先を歩くセリカは上機嫌。
クルリと振り向き、トオルに向き直って話す。
「夕べは楽しかったね♪」
「・・・あの状況を楽しめるお前に感心するよ。」

 昨日、まさかの再会劇となった二人。結局そのまま両親や友人たちなど、周囲の人間を
巻き込んでの再会パーティに突入してのどんちゃん騒ぎ。
当然トオルとセリカは上座に祭り上げられ、さんざんツマミとして冷やかしの対象にされた。
そんな中でも、セリカはあっさりトオルの両親や友人たち、恋敵であるはずの女子たちと
打ち解けていった。
 そして今日、周囲の連中の強引な誘導により、二人はこの海岸線に放り出されたのだ。
連中の目的は見え見えだ。外堀が自分から埋まっておいて本丸から敵陣に告白させるっておい・・・

「でもお前、なんか変わったよな。」
「そう?」
昔のセリカは、周囲に対して愛想笑いこそ浮かべていたが、積極的にコミュニケーションを
取るほうではなかった、しかし昨日は自分から押せ押せで打ち解けていくように見えたから。
「むしろトオルだよ、変わったのは。ずいぶんたくましくなったんじゃない?」
「え!そうかな?ま、まぁJUDOとかやってるし、な。」
「へぇー。で、私はどこが変わった?」
スカートをなびかせ、クルリと1回転して自分を見せるセリカ。
「(いや、変わったのは性格のことなんだが、まぁ見た目も・・・)」
身長比は昔とそう変わらないのだが、その体は明らかに女性としての成長が見て取れる。
初恋の相手は、再会してみると直視がきつい程に「異性」を意識させた。

469三流(ry2018/07/18(水) 01:45:05.20ID:1amxvnQo0
「ねぇ、どこどこ?」
腰を曲げ、トオルに顔を近づけて回答を迫るセリカ。
「まぁなんつーか、愛想よくなったっていうか、あっさりみんなと打ち解けたよな。」
「あ、そっか。」
ひと息ついて続けるセリカ。
「成長したんじゃなくて、要領がよくなっただけだよ。」
「それを成長って言うんだと思うぞ。」
「・・違うよ」
少し表情を曇らせ、目線を外してつぶやく。
「・・・私ね、普通じゃないんだ。」
「ああ、知ってるよ。つかお前みたいなスーパーガールがそこらに大勢いたら泣くぞ俺。」
「そうじゃないよ。」
それきり背を向け、しばらく天を仰いで考え込む。ほっそりとした白い体に金緑の髪が揺れる、
見た目の神秘性もさらに成長し、トオルにとってはさらに特別な存在に映る。

ふと振り向き、提案するセリカ。
「ねぇ、あっちむいてほい、しよっか。」
「へ?」
「トオル日本人だから知ってるでしょ?あっちむいてほい。」
「そ、そりゃ知ってるけど、なんで突然?」
「いいから、いいから。だたしノンストップで20回連続。勝敗がついても止まらずにね。」
「あ、ああ・・・?」
妙な提案ではある。この遊びは普通なかなか決着はつかない、それゆえどんどんスピードを上げ
反応速度と判断速度をタイトにしていく遊びなのだが、決着がついても止まらないって一体・・・

「じゃあ、いくよー」
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいて、ほい」
あれ?勝った、いともあっさりと、あのセリカに。
「ほらほら、止まらず次々!」
笑顔で次をせかすセリカ。じゃ、じゃあ・・・
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいて、ほい」
また勝った。
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいて、ほい」
3連勝・・・
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいて、ほい」
え?4連勝って
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいて、ほい」
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいてほい」
「「じゃんけんぽん!」」「あっちむいてほい」
「「じゃんけんぽん!」」「あちむいてほい」
「「じゃんけんぽん!」」「あちむいてほい」

470三流(ry2018/07/18(水) 01:45:38.90ID:1amxvnQo0
何が起こっている?何回やってもトオルはじゃんけんに勝ち、指さした方向に確実に
セリカは顔を向けてくる、こんなことってあるか?
10回を超えたころから、トオルはなんとか引き分け、または負けようかと意識する、
しかしジャンケンはあいこにすらならず、指差しで25%をかわすことができない、
スピードはもはや最高速にまで上がっているにもかかわらず、だ。
「あちむいてふぉいっ!!」
20回目、トオルの指は上、セリカはアゴを上げて天を仰いでいた。
言葉もないトオルに、セリカは向き直って言う。

「・・・分かるんだ、私。他人の考えてることが。」

 そんな現実味のない言葉が、今のトオルには心底信じられた。
あっちむいてほい20連敗、そんな芸当ができるとしたら未来が読めるか、心が読めるかしかない。
思えばセリカのスーパーガールっぷりも、この能力を前提に考えたら納得がいく。
ドッヂボールで四方からの攻撃をかわすのも、二人三脚で完璧にトオルに合わせて走る芸当も。
「け、けど、それじゃうるさくて仕方ないだろう、いくらなんでも」
周囲を撫でまわす仕草でトオルが反論する、周囲の人間の考えが皆理解出来たら脳みそパンクは必至だ。

「全部わかるわけじゃないよ、強い意思をもった思考がわかるの、たとえばじゃんけんの手とか
指さす方向とか、『勝ちに行く』意思は特に。」
「昨日もみんな私に興味津々だったから、どう対応すればいいかよくわかったの。
だから、成長してるわけじゃないわ、一種のズルね。」
少し悲しい笑顔をトオルに向けるセリカ。そして一言、こう発した。

「ね、私って化け物でしょ。」
返す言葉がトオルには見つからなかった。

471通常の名無しさんの3倍2018/07/18(水) 01:45:51.42ID:tMUPnyR30
回避

472三流(ry2018/07/18(水) 01:46:30.18ID:1amxvnQo0
 堤防に座り込み、、トオルを見ずに話すセリカ。
「私、いろいろウソついてた。ホントはね、サイド2じゃなくてサイド6の出身なの。」
言葉を区切りながら続ける少女。
「名前もね、ホントは別の名前。この髪も生まれつきじゃなくて、ムリに変えてるの。
私みたいな力があると、いろいろ良くない人が寄ってくるのよ、だから見た目を変えて、引っ越して・・・」

そこでようやくトオルは、話に割って入るキッカケを見つける、昨日までトオルが手がかりにしていたアレ。
「特殊能力研究開発機関、とかいうヤツか?」
「・・・え?なんでトオルが、その名前を。」
説明する。中学に上がる前、そのスカウトが形だけの勧誘に来たこと、セリカがてっきりそこに
行ったと思っていたこと。
「そう・・・うん。あの人たちが来たから、私は黙って引っ越したの。あの人たちにかかわると
私が実験台みたいにされるのがわかっていたから。」
背筋の凍る話だ、科学者の闇、研究の名のもとに他人を犠牲にして厭わない存在。

「私みたいな人を、ニュータイプって呼ぶんだって。」

 宇宙に適応し、新たな能力を身につけた新人類。サイド3の首相ジオン・ダイクンの吹聴する人間の
新たな可能性。そんなおとぎ話のような少女が、今、現実に目の前にある。
「ジオンに寄っている思想だから、私は地球に来たの。ここなら、って思ったんだけど、ダメだった
あの人たちはここまで私の噂を聞きつけてやってきた、だから転校したの。連邦政府寄りのサイド2に。」
そういえば昨日、彼女が降りてきたシャトルはサイド2からのものだった。
「この3年、私はずっと『普通』を演じてきた。周囲の誰にもバレないように。
つまらなかったよ、すごく。そんなだからずっと思ってた、トオルと競ったプライマリーの日々−」

 そこでようやくトオルに向き直るセリカ、涙で潤む目を、まっすぐトオルに向ける。
「だから会いに来たの。もう一度、一目見ておきたくて・・・私はこれからずっと、
そう生きなきゃいけないから・・・」

473三流(ry2018/07/18(水) 01:47:08.96ID:1amxvnQo0
 あれほど強かった少女の見せる、儚く悲しい表情と胸の内。今にも消え入りそうなセリカに
トオルはどう声をかけるか迷っていた。が、最後のセリフを聞いて言葉を見つける。
「そんなつまらねぇ生き方しなくていい!」
トオルの強い語気に、思わずきょとんとした表情を向けるセリカ。
「持って生まれた能力を使うのがなんでズルなんだよ、いいじゃねぇか、奴らにバレない程度に使ったら!」
トオルは少し腹が立っていた、彼女の置かれた理不尽な状況にもだが、それより
この3年のトオルの思いも知らず、自分の事ばかり話して悲劇のヒロインを気取るかつてのライバルに対して。
「競う相手が欲しいんだったらいつでも相手になってやるよ。」
「でも・・・私は」
「言っとくが心が読めるくらいで勝てると思うなよ!知った以上、対策はいくらでもある。」
「だけど・・・ずっとそうするわけにもいかないし・・・」
トオルと競えるのも一時の事、お互いの人生が分かれれば、彼女はまた孤独に放り込まれる
セリカの目はそう言っていた。

ぶちっ!
トオルの中で何かが切れた、セリカの肩を掴んで引き寄せ、叫ぶ。
「じゃあ、俺と結婚しろ!一生相手になってやるよ!!」
告白をすっ飛ばしてのいきなりプロポーズ!まだハイスクールにすら入学していない年齢だというのに。

しばらくトオルを見つめるセリカ、呆然とした表情は、やがて笑顔へと変わる。
その表情を見て、トオルはようやく自分の爆弾発言に気付き、赤面する。
「あ、あぐ・・・あ、あの・・・」
ゆでダコのように真っ赤になったトオルに、セリカは体を預け、その胸に顔を埋める。
「よかった、来た甲斐あった。」
「・・・え?」
まるでその結末が予想済みであったかのような発言に、トオルはセリカの肩を抱いたまましばらく考え込む。
「強い意志」が「読める」少女・・・

474三流(ry2018/07/18(水) 01:48:16.57ID:1amxvnQo0
「ちょ、ちょっと待てえっ!まさか・・・」
腕を伸ばし、抱いてる少女を正面に見据え、さらに赤面して問うトオル、
満面の笑顔を向けてセリカが返す。
「うん、知ってた。あの2人3脚のときから、トオルが私のコト、どう思っているか。」
「そ、それじゃあ・・・」
「どうしてトオルが宇宙に来ようとしたのかも、周囲の友達がどうして私たちを
ここに来させたのかも、全部分かってた。」
もう駄目だ、セリカの顔を直視すら出来ない、自分の恋はよりによって相手に全部お見通しだったとは。
穴がなければ掘って入りたい気分だ、この悪女め。
そんなトオルの手をそっと取り、頬に当ててセリカがささやく。

「ホントはね、すがる様な気持ちで来たの。もしトオルに化け物扱いされたら、私は終わりだな、って。」
その言葉を聞いて、トオルは自分がすごく優しい気持ちになっているのを、自分の外から理解した。

「・・・しないよ、俺のライバルなんだから」
「え、フィアンセ、でしょ?」
「う・・・言っとくが、交換日記からだからな!」
「えー!ポロポーズしておいて、そこから〜?」
「それが正しい男女交際!」
赤面して視線を外す、そんなトオルを見てセリカは一歩後退し、右手を上げ・・・
「じゃーん、けーん、ぽんっ!」
思わずグーを出すトオル、セリカはパーだ。その指をそのままトオルの額に当てる。
「こっち、むいてぇ〜」
え?何それ。
「ほい。」
言うなりトオルに突進し、そのままキスするセリカ。完全なる不意打ち、心が読める少女相手には
避けようもない攻撃にトオルは完全に固まる。

「ぷはっ!」
トオルから離れ、海岸に駆け出すセリカ、棒立ちで失神寸前のトオルに声をかける。
「じゃあ今度は、泳ぎで勝負〜〜!」
「ちょ、ズルいぞそれは・・・俺が泳げないの知ってるだろっ!」

言いながらも半分夢心地でセリカを追いかけるトオル、ハイスクール入学前の夏休み最後の日であった。


第5話でした。おーい壁が足りんぞw

475通常の名無しさんの3倍2018/07/18(水) 19:16:24.21ID:gHHn7u/a0
乙でした
全体的に明るい話なのに所々に見える重たい要素のせいで先行きが不安だ
二人に残された幸せな時間、あとどれくらいなのだろう…

476三流(ry2018/07/25(水) 00:55:21.64ID:+P0DUDM30
>>475
よく読み込んで頂いてますね、ありがたいことです。
では、6話いきます。

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第6話 コロニーと父と母

「すげえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「でっかぁーーーーーーーっ!!」
貨客船の窓に張り付いて叫ぶ少年二人、トオル・ランドウとジャック・フィリップス。
彼らの眼には天体レベルと言っていいスケールの建造物、スペースコロニーが映し出されている、
しかも1基ではない、全方に広がる宇宙空間に所狭しと無数にひしめき存在する。
人類の手によるその雄大な眺めは、地球では絶対にお目にかかれないものだ。

「やっぱすげーな宇宙コロニー」
「実物見ると圧倒されるなぁ、やっぱ。」
人類のフロンティアスピリットの集大成ともいうべき宇宙居住区、スペースコロニー。
その巨大さは人類が作り出したことが信じられないスケールでありながら、その機械的な外見は
確かに人類の創造物であることを示している。
遠方からは天体にしか見えないその表面は、近づいてみると確かに金属の板とビスと
ワイヤーなどによって構成されており、それが人の手によるもの、かつ膨大な苦労と最新鋭の
技術を結集したものであることがわかる。
例え自分たちがかかわっていなくても、それを成した人類の一員であることに誇りすら持ててしまう。

−当船は間もなくサイド2・8バンチ。通称「アイランド・イフィッシュ」に接岸します−

船内アナウンスが告げる。二人はハイスクールの一年の冬休みを利用してここにやって来た。
トオルはもちろんセリカに会いに、そしてジャックは・・・
「いよいよだな、ここがお前の新たな生活の場になる、頑張れよ。」
トオルの悪友ジャック。中学時代、彼の父親のエクステリア会社で一緒にバイトした仲間、
彼は2学期からこっちの機械工学の専門の親方に弟子入りする手はずになっていた。
メカニック志望の彼にとって、地球にいたのでは必要な技術の半分しか習得できない、
宇宙の真空、無重力の中で使える技術と経験を得てこそ、これからの時代に通用するメカマンになれる。
そう考えた彼は思い切って家を出て、このコロニーで新たな生活を切る決心をしたのだ。

「ああ、こんなデカい建造物を見たら否応なしにテンションアガるよ。」
「お前の名前のコロニーが出来るのを楽しみにしてるぜ!」
「いや、さすがにそれ無理だろ。」
冗談を飛ばしながら下船準備をする二人、やがてコロニーに空いた穴の中に船が入り、ようやく彼らの知る
現実的な光景、宇宙港が姿を現す。非現実的なパノラマとはしばしお別れだ。

477三流(ry2018/07/25(水) 00:56:09.71ID:+P0DUDM30
 船を降り、検疫を受けて荷物を受け取る、ここはいわばコロニーの外側と内側の中間部、
ここではまだ重力は外からコロニー中心に向かってかかっている、これからコロニー内部に入ると
回転するコロニーの遠心力とGコンによって外側に重力がかかることになる。
荷物を抱え、内部行きのエレベーターに向かう二人。

「トオルっ♪」
柱の陰からいきなり抱き着いてきた少女に押し倒されるトオル、荷物が多いせいでロクに抵抗もできん。
「セ、セリカ!来てたのか・・・」
「うん。」
金緑の髪をなびかせトオルの上で四つん這いになって微笑むセリカ。
全く、内緒で来て驚かそうと思ったのに何で知ってるんだよ。これもニュータイプとやらの・・・
「あ、ミアが教えてくれたよ、トオルが今日来るの。」
「そっちかいっ!」
というか今トオルの心を読んだほうがニュータイプの力なのか・・・

「どーでもいーけど、目立ってますぜお二人さん。」
ジャックが視線をそらして言う、まぁ当然のごとく周囲の注目の的だ。
赤くなって立ち上がり、パンパンとズボンを払うトオル、その腕にセリカが笑顔で腕を絡める。
「いや、だから目立ってるから…」
「ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」
「大きな声で何を言っとんだお前わあぁぁぁぁっ!て、ジャックちょっと待て、
他人のふりして先に行くなあぁぁっ!」
腕を絡めたまま、セリカを引きずるように駆け出しジャックを追うトオル、
先に行くジャックは背中で夫婦漫才を聴きながら決心する、俺も絶対かわいい彼女作ってやる!と。

大型のエレベーターで内部に向かう3人含む数10人。最初はコロニー内に「降りて」いくのだが
道中でゆっくりと反転し、気が付くと「昇って」いく感覚に代わる。
エレベーターが止まり、トアが空き外に出る、その瞬間観客の大部分から歓声が上がる。
「おおーーーっ!!」
「すごーい、地面がせり上がってるーっ!」
「すげぇ、真上にも町がある、すげぇ光景だな!」
再び現れた非現実的なパノラマ、地球出身の客から、コロニー内独特の光景に次々と感想が上がる、
むろんトオルもジャックも例外ではない。

 人がバラけたところで、セリカがぴょんと一跳ねし、笑顔で言う。
「ようこそ、スペースコロニー、アイランド・イフィッシュへ!」

478三流(ry2018/07/25(水) 00:56:46.33ID:+P0DUDM30
 出口の際にあるバスターミナルに向かう3人。
「じゃあ俺、こっちだから。」
「ああ、また連絡するよ。」
ここからはトオル&セリカとジャックは別行動だ、彼はお約束の冷やかしを投げてよこす。
「結婚式には呼んでくれよな。」
「やかましい!」
出発するバスの窓からツッコむトオルと、笑顔で手を振るセリカを見やってから、ジャックも自分の
バス停に向かう。
「やれやれ、あの分じゃマジで結婚式もそう遠くないな、すでに夫婦じゃねぇか。」
呆れ顔で自分の乗るバスに向かう。

 その姿を物陰から、無数の目が追いかけている、
黒服に身を包んだその連中は、ジャックが乗り込んだバスの行き先を確認し、携帯で連絡を取る−


「で、これからどうする?」
「もちろん、わたしの家に行くの。」
「え・・・いいのか?」
「うん、パパもママも待ってるよ、トオルのコト。」
「えええぇぇぇっ!?」
バスの中で絶叫するトオル、まさかの超展開に緊張が走る。
「な、なぁ、念のために聞くが、俺は一体ご両親にとって、今どういうポジションなんだ・・・?」
「ん、もちろん私のフィアンセだけど?」
血の気が引く音がした気がした。コロニーの雄大さを楽しんでいた時間はどこへやら、サイド2ツアーは
処刑場への直行便になってしまった。
「あはは、大丈夫だよ。パパもママも楽しみにしてるよ、トオルと会うの。」
いやお前はそれでいいのか、しかし押せ押せで来るなぁセリカ、というかセリカの両親って
一体どんな人なんだ、全く想像できんが。

 コロニーを4分の1ほど回った所の住宅街、その前の停留所で降り歩くこと数分、
青い屋根の1件屋の玄関に進むセリカ、ここが彼女の家か。ウチよりだいぶ大きい。
むろんコロニーが宇宙移民の住処であることを考えれば、土地割りは大きくなって当然かもしれない。
地価が上がる原因は人口過密にあるのだから、その対策として宇宙に移民した人は広い土地が得やすい。

479通常の名無しさんの3倍2018/07/25(水) 00:58:12.57ID:k7XqMKGK0
回避

480三流(ry2018/07/25(水) 00:59:19.71ID:+P0DUDM30
「ただいまーっ!」
ドアを開け、上機嫌で叫ぶセリカ。奥からおかえりー、と男性の声。父親かな?と思った瞬間
いきなり背後から何者かに羽交い絞めにされるトオル。
「う、うわっ!?」
「いらっしゃーい、このコがセリカのいい人かい、なかなか可愛いじゃないの。」
羽交い絞めを解き、トオルの肩を掴んで180度回して正面からトオルを見る長身の女性、
紺の髪をポニーテールに束ね、袖なしの上着に短いパンツルックが活発な印象を与える。
「よろしく!セリカの母親、アーチェス・ナーレッドだよ。」
ニヤリと笑って、白い歯を見せる。肝っ玉母ちゃんと若奥様の両方の印象を持った女性。
「トオル・ランドウです、よろしく!」
威勢に当てられてか、強気で返すトオル、元々こういうノリは嫌いじゃない。
「元気だねぇ、よしよし、そうこなくっちゃ。ほらほら、入った入った。」
家の中に引っ張り込まれるトオル、すでに上がっているセリカが笑顔で言う、
ね、大丈夫でしょ?と。
ま、まぁ母親はなんとかなるとして、問題は父親なんだが・・・

「さ、ここよ、入って。」
二人に促され、居間らしきドアを開けるトオル。そのドアの目の前に「彼」は立っていた。
眼鏡をかけ、無精ひげを生やした、やや痩せ型の銀髪の中年男性。
いきなりのことに一歩後ずさるトオル、それに呼応するように一歩前に出、居間から廊下に出てくる父親。
「・・・ふむ」
固まったままのトオルを値踏みするかのように上から下まで視線で舐める、やがて手を出し、一言。
「合格。」
親指を立て、ニヤリ笑ってそう一言。一体何を値踏みされたんだ俺・・・
「悪い人じゃなさそうで安心したよ、セリカ。」
あ、ひょっとして、この人も・・・
「リャン・ナーレッドだ。よろしくな、ランドウ君。」
まぁ、能力はともかく、セリカの不思議ちゃんな感覚はこの父親譲り、押せ押せの陽気さは母親か。
なんか納得。

481通常の名無しさんの3倍2018/07/25(水) 01:00:03.37ID:+P0DUDM30
「そうかそうか、プライマリーの頃からセリカと勝負を、ねぇ。」
「あー、2人3脚してた子だねぇ、覚えてる覚えてる。」
あの頃はセリカの家族にまで気がいかなかったが、いたのかあの時。
「で、この子とはどこまで行ったんだい?」
母親の下世話な質問に、平然と返そうとするセリカ。
「んっとねぇ、とりあえずー」
「交換日記中ですっ!!」
迂闊なことを言われないように、語気を荒げてセリカを制するトオル。
その態度に思わず吹き出す両親。
「ははは、ご両親の教育の良さが見えるねぇ。」
「そんなノンキなこと言ってないの、アンタみたいにお堅いと実る恋も実らないよ
男の子ならガンガン行きな!」
よっぽど自分の娘をキズモノにしたいらしいな、この母親は。

「ちなみに、お二人の馴れ初めはどうだったんですか?」
トオルの反撃の一言に、母親がドライアイスを詰め込まれたように凍り付く。
「あ、えと・・・とりあえずお茶入れてくるから、テレビでも見てゆっくりしてな。」
バタバタと走り、つまづきながら台所へ逃走する母アーチェス、それを見てセリカとリャンは
同じ表情で含み笑いをしている。さすが親子、笑い顔がそっくりだ。
しかし一体どんな馴れ初めだったんだ、この夫婦・・・

 つけられたTVがニュースを流している、地球と違うエリアだけに、流してる放送も
毛色の違うものになっている。しばしニュースに見入るトオル達。

482三流(ry2018/07/25(水) 01:00:33.34ID:+P0DUDM30
−次に、ジオン公国を名乗るサイド3は今日、政治体制の新しい人事を発表しました−
「ジオン公国」を正式に認めていないことを暗に示す放送、もっとも地球じゃ「ジオン」という表現すら
公的には認めてはいないけど。
−外政担当大臣、ミケ・リヒャルト、能力開発省、フラナガン・ロム、技術開発局、アルベルト−
・・・え?
「セリカ!今の。」
「うん!あの機関の・・・」
確かサイド6の「特殊能力研究開発機関」とかいうトコの代表者、セリカが「研究対象を実験動物扱いする」
ことを見抜き、避けてきた組織。ジオンに走ったのか、背中で冷や汗をかくトオル。
「まぁ心配あるまい、ここは地球連邦に近いし、遠くジオンに行ったのならむしろ一安心だよ。」
父親の言葉にほっとする二人、そこに母親がお茶を運んでくる。
「安心すんのはまだ早いよ、ああいう輩が権力を手に入れると、何しでかすか
わかったもんじゃないからねぇ。」
湯呑をテーブルに並べながら物騒なセリフを吐くアーチェス、そして続ける。
「だからさ、さっさとヤる事ヤっちゃいな、今夜は離れにベッド用意してるからさ♪」
おい母親・・・

と、その時、トオルの携帯に着信が鳴る。モニターの画面を見てトオルが固まる。
そこには拘束され、黒服に囲まれた悪友の姿が映し出されていた。

−君の友人、ジャックは預かった。彼の身を案ずるなら、今から指定の場所に出頭すべし−



6話でした、いやー1話以来の難産でした。
コロニーの雄大さの表現は、瀬戸大橋を渡った時の感想を使ってみました。
機会があったら是非渡ってみてください、マジで凄いよあの橋連・・・

483通常の名無しさんの3倍2018/07/27(金) 18:22:26.58ID:uyrl0hhl0
乙でした
ジャック君のフルネームがジャック・フィリップスだったことに吃驚
でもシドニー在住でファーストネームはジャック、という時点で察しのいい人は気づいてたんでしょうな
そしていきなりの誘拐、さあどうなる?

484三流(ry2018/07/29(日) 11:34:38.72ID:21AGCOD70
>>483
いやいやいや、私の前のSSの主人公名を覚えてる人なんていませんって、普通。
ホントによく読んで頂いていて感謝感激でございます。では7話です。

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第7話 ささやかな戦いの裏で 

 携帯に表示された地図を頼りに、トオルはコロニーを走る。
とりあえずセリカ達には「友人から急な呼び出しを受けた」と言っておいた、嘘ではない、うん。
しかしなぜジャックが・・・手口からしてプロの仕業じゃあなさそうだが。
今時金目当てなら、もっと気の利いたペテンを使ってくるはずだ、直球であんな画像を
送りつけるところに幼稚な印象を受ける。

 多分そこいらのチンピラの類だろう、アースノイドは金持ち、という誤解を持つスペースノイドは
多いと聞く。ジャックから巻きあげた挙句、一緒にいた俺もカモろうという腹だろう。
 しかし、あんなニュースを見た後だけに、一抹の不安は拭い切れない。もし奴らが
セリカに近い人間を利用しているとしたら・・・悪い想像が広がる、それを振り切るように
指定された工場の倉庫に向かうトオル。

「あれか。」
目視できる距離まで近づいたところで足を止め、物陰に身を潜めて呼吸を整える。
真っ正直に行く必要はない、ぐるり周囲を回って様子をうかがう。
ドア前には見張りが一人、やはりというかプロではなさそうだ。それは立ち姿を見ればすぐに分かる、
体幹悪く、落ち着きなくぶらぶらしながら時折きょろきょろしたり、携帯をいじったりと
場慣れしていないこと甚だしい。

 裏手に回り、見張りが前を見た瞬間を見計らって、気配と足音を消して歩いて近づく
10メートル、5メートル・・・うまい具合に見張りの背後まで気付かれずに近づけた。
携帯を取り出すと、わざとらしく大きな声で言う。
「ここが指定してきた倉庫か!」
「うえぇェわぁあぁっ!!」
突然背後に現れたトオルに仰天する見張り、しどろもどろに動転しながら、ようやくゲストが来たことに気付く。
「ちょ、ちょっと待ってろ!」
そう言うとおもむろにドアを開け中に入ってドアを閉める、倉庫の中で声。
『お、おい来たぞ、もうそこまで来てる!』
『もっと早く報告しろよ!』
『ちょ、あんたはそっち、てか早く縛って・・・』
数人の人間がバタバタする露骨な気配を感じながらトオルは確信する、機関とやらは無関係だなこりゃ。
1分後、中の喧騒が収まったのを感じて、ドアノブに手をかけ、ドアを開ける。

485三流(ry2018/07/29(日) 11:35:30.57ID:21AGCOD70
「ジャック、無事か!?」
開けて叫ぶ、倉庫の奥に縛られ、さるぐつわをかけられた状態でイスに座らされているジャック。
その横のテーブルには、散らかした菓子の袋やジュースのボトルが散乱している。
さるぐつわの中で何か咀嚼して飲み込んだジャックのリアクションは見なかったことにしよう。

「トオル・ランドウだな。」
際の資材に腰かけていた男が立ち上がり、ジャックの前、トオルの正面に立つ。
周囲には黒服が十数人、よく見るとスカート、つまり女の姿もちらほら見える。
「そうだ、一体なんのマネだ!ジャックは返してもらうぞ。」
男を睨むトオル、黒服の中でもトオルより頭一つ大きい体格のいいその男は、
なるほど先ほどの見張りとは違い、荒事に慣れてはいるようだ。
「ああ、いいぜ。ただし、こちらの質問に答えたら、だがな。」
「質問、だと?」
今日コロニーに来たばかりのアースノイドになんの質問があるというのか、わざわざ友人を拉致ってまで。

「手前ぇ、あの人の、ナーレッドさんの一体何だ!」
語気を強めて吐き捨てる男、意外な質問に拍子抜けするトオル。
「えーと・・・」
なんだ、セリカの知り合いなのか。そういやこいつらの黒服はスーツというより
ハイスクールの制服っぽくも見える、確かに年の頃も同じ位だ。
さてどう答えたものか、向こうはフィアンセ指定のようだが、俺にとってはライバルであり、
初恋の君であり、プロポーズした相手で、えーっと・・・
「何だって聞いてるんだよ!とっとと答えねぇかっ!!」
怒鳴る男の態度でカチンと来る、返答は決まった。すーーーっ・・・
「幼馴染でライバルで初恋の相手で恋人でプロポーズしてフィアンセになった俺のライバルだっ!!!」
面倒臭いから全部言ってやった、ライバルを2回言ったのは多分そこが一番重要だからかもしれない。

486通常の名無しさんの3倍2018/07/29(日) 11:36:04.43ID:21AGCOD70
「キャー、なんかドラマチック。」
「うわ、かっこいい〜」
「ヒューヒュー」
数人いる女子が女子高生そのままの反応をする、その前で男が愕然とした表情を見せる、
後ろの男たちも落胆の表情を隠そうとしない、肩を落とす者、特大のため息をつく者、わかりやすい。
「ざけやがって・・・二度とンな口きけねぇようにしてやるよ。」
「ダチを誘拐して人を呼び出して、すいぶん勝手な言い草だな。」
指関節を鳴らして威嚇する男に対し、トオルは足の指の付け根でドンドンと地面を踏む、
JUDOでよくやってた簡略型の足首のウォーミングアップだが、慣れた者がやると格闘技者独特の
威圧感を発することができる。
「ちょ、ちょっとスティーブ、本気でやる気?」
「そろそろシャレにならないんだけど・・・」
後ろの女子が、トオルの本気を感じ取って少々引き気味に言う。それで忘れていた質問を思い出す。
「というか、お前らは一体何者だよ。」
まぁ大体の見当はついている、多分セリカに片思いしてる輩か、あるいはフられた連中なんだろう。
「俺たちは・・・俺らはなぁ、セリカ・ナーレッドさんのファンクラブだああぁぁっ!!」

「西暦かっ!!!」
思いっきり突っ込む、古っ!宇宙世紀のこの現代で女の子のファンクラブとかどんだけ前時代的な考え方だ、
西暦の頃には歌手とかでそういった存在もいたらしいが、今時そんなことを真顔で言う輩がいるとは・・・
「うるせぇ!手前ェは知らないだろう、あの『窓際の妖精』がどんだけウチの学校で人気か!」
そうだそうだ、と後ろの連中がガヤを飛ばす。
「誰からも少し距離を置いて、おっとりおしとやかな表情で窓辺で佇むその姿は
全校男子の憧れなんだよっ!それを・・・それを・・・フィアンセだとぁっ!」

おっとり・・・おしとやか?あの押せ押せ娘が?
いや、そう言えば彼女は機関に目をつけられないように、目立たないように生きていくって言ってた、
それを実践した結果、やっぱり目立ちまくっていたらしい、天才にステルス能力は無いということか。
妙なところで不器用な奴だ。

487通常の名無しさんの3倍2018/07/29(日) 11:37:06.20
ティータイム

488通常の名無しさんの3倍2018/07/29(日) 11:37:10.75ID:6GH6xyzE0
規制回避

489三流(ry2018/07/29(日) 11:37:41.19ID:21AGCOD70
「100回殴る!」
「せやあぁぁっ!」
喧嘩屋の怒声と格闘技者の気合を合図に戦いが始まる、両腕を振り回して殴りかかるスティーブだが
JUDOで組手争いを嫌という程してきたトオルにとってかわせない攻撃ではない、
間合いを離し、時には逆にくっついて拳を躱す。が、スティーブもそれに呼応し、
小さくファイティングポーズを取り、短く早いパンチとローキックの攻撃に切り替える。
こうなるとさすがに全てを躱すのは困難だ、トオルの顔面を、足の脛を、スティーブの攻撃が捕らえる。
組みつこうにも警戒され、小さなパンチで押し返されてままならない。

 ここでトオルは奇襲に出る。両手を下ろし、いからせてた肩をストンと落とす。
重心を自然体に戻し、全身の力を抜く。そしてすっ、と相手に近づく。
いきなり闘争心を無くしたように見えたトオルに、スティーブも少し呆気に取られ、接近を許す。
相手の右手を掴んだトオルは、そのまま右腕を首に巻き付けるような一本背負いに持っていく、
瞬時、スティーブもそのアクションに気付く、持っていかれてなるものかと、重心を後ろに落とす。

しかし勝負はもうついていた、トオルはそのまま背負いに行かず、スティーブの右手をマフラーのように
首に巻き付けて1回転、右わきの懐に入り込むと、左手でスティーブの右足モモを抱える、
そのまま肩と足を極め、全身のバネでスティーブを持ち上げ、裏投げにもっていく。
ジュニアハイスクールから得意にしていた「巻き付け式1本背負い」、州大会ベスト4の原動力になった技、
初見で防げる技ではない。
スティーブの巨漢が弧を描き、背中から地面に叩きつけられ派手な音を立てる。
ズドォーン!

「いっぽーん!」
悶絶するスティーブ、勝負あった。
手加減する余裕はなかったが、まぁこの男なら万が一はあるまい、それほどの体幹の強さを感じていたから。
起き上がり、スティーブから気をそらさずに周囲を警戒する。取り巻きは皆凍り付いている。
そうだろうそうだろう、俺が勝つとは思っていなかっただろう、さぁ尊敬と恐れの視線を俺に・・・
あれ?どこ見てるんだお前ら。皆の視線を追った、その先には・・・

490三流(ry2018/07/29(日) 11:38:08.21ID:21AGCOD70
「勝者、トオル・ランドウーっ!」
「おいっ!」
ドアの入り口に立って審判よろしくトオルのいる方向の右手を上げる渦中の人、セリカ・ナーレッド。
何故ここにいる、つけられたのか?そもそもここには絶対いちゃいけない存在なんだが、空気的に。
「あ、あはは、ナーレッドさん、いつからここに・・・?」
取り巻きの一人が狼狽えながら聞く。
「ん、トオルが来た直後から。」
つかつかと入ってきて、取り巻きの前まで歩いて問う。
「へー、みんな、私のファンクラブとか作ってたんだ。ふーん。」
全員を見まわすセリカ、どいつもこいつもバツの悪そうに視線を逸らす、
「よっ!男殺し。」
てかアーチェスさんまで来てるよ、ドアの入り口でニヤニヤしながらからかってくる。
「あたた・・・やってくれたなぁ、おい。」
スティーブが起き上がる、腕をゆっくり回しながら肩関節を鳴らし、トオルを睨む。
トオルも正眼に構え見返す、再び対峙する両者。
「ちっ・・・カッコ悪いったりゃありゃしねぇ、やめだ止め!」
スティーブのその一言で弛緩する場の空気。セリカは小走りでトオルに近づき、ぴょんと飛びついて抱き着く。
「カッコよかったよ、お疲れ様♪」
「ひっつくなって、この状況で!」
一呼吸おいて、どっと笑いが溢れる倉庫内。周囲から起こる笑いと冷やかしの渦。

 どうやら最初、宇宙港でトオルに抱き着いたシーンを、セリカのクラスメイト(女子)が
目撃してたらしい。そのあまりに普段と違う彼女の態度に、仲間内の電子通信で拡散した結果
スティーブはじめファンクラブの面々にも知れ渡ってしまったようだ。
で、ジャックを巻き込んで誘拐ゴッコを企画して、その真相を確かめたかっただけらしい、
アイランド・イフィッシュにはヒマで下世話な奴しかおらんのか・・・
「それにしてもねぇ〜」
「あのセリカがこんなに大胆なんて、いつもの大人しさはどうしたのよ。」
「あはは、ちょっとワケありでね。」
クラスメイトの女子は知らない、セリカが特殊な能力を持ってることも、それを隠すために
感情を抑えて生活していたことも。
「ま、良かったじゃねえか、こっちでも公認カップルになれて。」
「やかましい!大体お前、最初っからグルだっただろ!」
餅菓子をかじりながら言うジャックにヘッドロックをかけるトオル。
やっぱりさっきまでここでみんなと和気藹々してたなコイツ・・・

491三流(ry2018/07/29(日) 11:40:22.40ID:21AGCOD70
「で、お前らどこまで行ってんだ?」
スティーブの質問に全員の関心と注目が集まる!
「んーっとねぇ」
「現在絶賛交換日記中っ!」
これ以上さらし者になってたまるか、本日二度目の迂闊なセリブロックっ!
「ぷっ!」
「ぎゃはははははっ・・・」
「どんだけ奥手なのよこの人〜」
何故か大受けしてしまった。スティーブニヤつきながらが肩をバンバン叩いて言う。
「どっちが西暦だよおい、その年でなぁ。」
「な〜に、今夜あたり一線を越えるから大丈夫だよ。」
アーチェスさん、爆弾発言は止めてください頼むから。
「(ねぇねぇ、ホントはどうなの?)」
セリカに耳打ちするクラスの女子。
「そこ!聞き出そうとしない!!」
止めにかかるトオルを見てセリカは立ち上がり、指一本突き上げて宣言する。
「はーい、今夜一線を越えま〜す。」
「本人も爆弾発言するなっ!」

ちなみにトオルは分かっていない、開拓民でもあるスペースノイドにとって恋愛観は
アースノイドよりもかなり進んでいることに。地球に比べての娯楽の少なさ、
血縁と人口を増やすため生めや増やせの社会観、冗談レベルならその程度の発言は日常だ。
・・・もっとも、セリカが冗談で言ったのか、本気なのかは本人にしか分からないのだが。
 その後も拡散された情報を聞きつけたクラスメイトが続々集まってくる、
二人を囲んでサカナにしての倉庫懇談会は、その日遅くまで続いた。

 解散後、ファンクラブの一人の少年が、帰宅しすぐにパソコンをつける。
パスワードを入力し、文章を暗号化するソフトを立ち上げ、文章を入力する。

−セリカ・ナーレッド、本名ココロ・スンに関する報告書。
 その能力は未だ未確認ながら、ニュータイプの特徴の一つともいえる社会性の無さ、
 コミュニケーション能力の欠如は見られず、該当者としての可能性は薄いと思われる
 発:アクト・イレイズ。着:フラナガン機関リビル・イレイズ−

492三流(ry2018/07/29(日) 11:41:50.37ID:21AGCOD70
7話でした。すでにガンダム関係なしの稚拙なラブコメになっとる・・・
クライマックスには何とかしたいものだw

493通常の名無しさんの3倍2018/07/29(日) 22:57:39.52ID:MjOpB1i50
乙でした
確かにこれはタイトル通りの『ささやかな戦い』だ
でも当事者達にとっては一生の思い出、それが青春の一時というものである(遠い目)

そして本名:ココロ・スン、だと…
この話、これからどう転がるんだ?

494三流(ry2018/08/03(金) 02:26:36.26ID:ouFTJHJR0
>>493
青春・・・TV画面の向こうではよく見るんんですがねぇw
では8話です。

1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第8話 一瞬の思い、永遠の誓い

 天頂に輝く夏の日差しに、ジングルベルが鳴り響く、南半球の12月。
ハイスクール2yearの終わり、トオルもすっかり慣れた夏のクリスマス・イブの日、
彼は両親と宇宙港にいた。
今日はトオルにとっても、彼女にとっても、お互いの家族にとっても特別な日だ。
やがてシャトルが到着したアナウンスが流れ、乗客が次々と降りてくる。
そんな人ごみの中でもひときわ目立つ金緑の髪の毛を揺らし、「愛しの君」が
家族と共にやってくる。

「おーいセリカ、こっちこっち。」
やや照れ臭そうに、あらかじめ打ち合わせていたセリフでナーレッド一家を呼ぶ。
「トオル、半年ぶりだね〜会いたかったっ!」
こちらもあらかじめ打ち合わせてたセリフのあと、筋書き通りトオルに抱き着く。
二人の後ろではお互いの両親が、ぎこちなく挨拶する。
そしてその様子を、幾人ものスタッフがカメラやマイクを構えながら撮影している、
さらに距離を置いて、大勢の野次馬が取り囲んでいる。
「はーいカット、OKです。じゃあ次いきますよー」

−シドニーとアイランド・イフィッシュで遠距離恋愛するカップル、半年ぶり再会−

そんなテロップがランドウ家のテロップに映り、数時間前の再会シーンが流れる。
「いやぁ、若いのに演技派だねぇ二人とも。」
トオルの父、カク・ランドウがTVに映った二人を見て感心する。
「まぁ、8割は本気でしたけど。」
セリカが笑顔で返す。お父様、と付け加えて。
「トオル君もなかなかのもんじゃないかい、演技とは思えないよ〜」
アーチェスさんは相変わらずのからかい口調で、トオルをヒジでうりうりとこじる。
「まぁ、初めてじゃないですしね、セリカと演技するのは。」
トオルは思い出す。セリカと会って間もないころの、赤ずきんの朗読を。

495三流(ry2018/08/03(金) 02:27:03.99ID:ouFTJHJR0
 二人は結婚の約束をしていた。そして今日はそんな二人の両親の初顔合わせ、
その情報を聞きつけたトオルの悪友たちは、そのソースをTVに売りやがったのだ。
しかもサイド2のジャックを通じて、向こうの局にまで企画が通ってしまった。
普通ならそんな企画は通るはずもないが、今現在ではそれはTV局にとっておいしい題材だった。

 宇宙世紀0078、12月。地球連邦とジオン公国の緊張はもはや限界に達しようとしている、
両国にもはや交渉の余地はなく、戦争も時間の問題と思われた。
地球連邦にとって、この戦争の図式がスペースノイドとアースノイドの戦争、と取られるのは
他のコロニーの手前避けたかった、あくまでジオンとの戦争であり、他のスペースノイドまで
敵に回すのは得策ではなかった、よって他のコロニーとの友好なイメージは大切だった。
 連邦寄りのサイド2にとっても、連邦との蜜月を示すのは重要な要素だった。
そんなわけで連邦とサイド2のマスコミは、半ばプロバガンダに近い形で両者の友好性を
逐一アピールするようになっていた。
その一環として、トオルとセリカは恋人の祭典、クリスマスに放送するネタにされてしまったわけだ。

「そういやジャックももうすぐ帰ってくるって。」
「アイツもうしっかり客取ってるらしいな、大したもんだ。」
両親を交えての世間話に花が咲く。お互いの友人のこと、両親の生活や風習、さらには
お互いの子の昔話まで、話題は尽きない、この両家ならうまくいくことは間違いなさそうだ。

「それでそれで、明日はどこいくの?」
興味津々でセリカが聞いてくる。が、まだ明かすわけにはいかない。せっかくのサプライズなんだし
セリカの能力に悟られないよう、平静を装って質問をかわす。
「ま、それは明日のお楽しみってことで。」
今回のナーレッド家の地球来訪、その目的は両親との顔合わせともうひとつ、
1年後に控えた結婚の式場の下見だ。

496三流(ry2018/08/03(金) 02:27:39.78ID:ouFTJHJR0
ハイスクール卒業と同時に結婚する、それが二人で出した結論だった。
トオルの両親は、早すぎるのではと乗り気ではなかったが、トオルは熱心に説得した。
彼にとって伴侶はセリカ以外考えられなかったし、お互い遠距離恋愛する身の上ならば
できるだけ早く一緒に暮らしたいと思うのは自然な流れだった。
また、ここしばらく音沙汰ないとはいえ、例の機関のような組織がまたセリカに
近づかないとも限らない、トオルとしては目の届くところで守ってやりたかった。
加えるならば、ニュースが流すような世情の不安もある、吉事は早いほうがいい、というわけだ。

 翌日、両家の車がシドニーを走る。西暦の頃から大都会だったこの街は現在、
自然と文明が共存する南半球の名物都市、モデルシティとなっている。
自然を多く残す広い公園、快適なインフラに娯楽施設、密集しすぎないビルや居住区、
そして交通の要所としてのシステムを兼ね備えている。

 その街の一角に、ひときわ高いタワーがそびえている。昨年完成した超高層ビル
「クラウド・カッティング」と呼ばれる、高度2000メートル級のシンボルタワー。
文字通り雲をも切り裂くごとくそびえたつその姿は、新たなこの街の名所として期待されている。
「うっわー、おっきぃー!」
「ホントだよ、コロニーの直径くらいあるんじゃないかい?」
セリカとアーチェスは車から身を乗り出して大はしゃぎだ。しかしまさか二人とも、
目的地がその塔自体だとはつゆぞ思うまい、ひそかに顔を見合わせてにやつくランドウ一家。
平静を装い、さりげなく話を振るトオル。
「んじゃ、ちょっと寄ってみようか。」

 入場手続きをしてパスをもらい、最上階直通のシースルーエレベーターに乗る。
6人を乗せた箱が音もなく加速して上昇。地面が、近隣のビルが、シドニーの街が、
またたくまにミニチュアになっていく。
外の景色に夢中の女性陣に対し、リャンさんだけはエレベーターの案内板にある
「最上階:クラウドパレス・チャペル」の文字に気付き、笑顔でトオルにアイコンタクトする。
ニュータイプなのかどうかは分からないけど、相変わらず勘のいいヒトだ。

497通常の名無しさんの3倍2018/08/03(金) 02:28:59.69ID:qlhp1pn60
規制回避

498三流(ry2018/08/03(金) 02:29:35.30ID:ouFTJHJR0
「ランドウ様でございますね、承っております。ようこそ、クラウドパレス・チャペルへ。」
最上階の教会前、やや白髪の混じった神父が一家を祭壇に招く。さすがに女性陣も
挙式がココであることに気付いたようだ。
目を潤ませ、顔を赤らめて感動してるセリカ、こんな彼女の表情は見たことが無い。
結婚前にようやく会心の一撃を入れられたようだ。
 教会は全面がステンドグラスで覆われ、その外の空と雲と太陽と、そして眼下にシドニーの街、
結婚式のロケーションとしてこれ以上の舞台はまずないだろう。
「夕焼け時の眺めは絶品ですよ、もちろん挙式もその時間にセッティングしております。」
神父の説明にセリカはキュンキュンしっ放しだ、予定を明日にしようとか言いだしかねないな。
「ね、ねぇトオル、もう今日ここで結婚式しちゃおうよ。」
予想の斜め上を行かれた、さすがセリカ。両家の両親と神父が思わず笑う。
が、その話をきっかけに、神父は二人にちょっとしたエピソードを話しはじめる。
「今の気持ちを大事になさい。お二人には過去も未来もある、しかし神様に誓うのは
今その時の気持ちなのですから。」

 神父は話す。かつて何組もの挙式を導いてきた彼が、式の前にとあるカップルと話していた時の事、
新郎側の青年が、神父と新婦にとんでもないことを打ち明けたことを。
彼は式で「永遠に愛する事」を誓う自信がない、と告白する、今は確かに彼女を愛している、
しかし未来の自分が変わらず彼女を愛せるかは分からない、と。
青ざめる新婦を前にして、神父はにこやかに諭す。あなたのその誠実さ、嘘をつけない正直さがあれば
将来のあなたが今日の誓いを裏切るはずはないと。
今の一瞬を胸に刻むことがあなたの、そして将来の二人の未来を創る。今の一歩を示さずして
次の一歩は刻めない、だから誓いなさい、今の気持ちを。それが未来につながるのだから、と。
 現在、その夫婦は3人の子供に恵まれ、幸せな生活を送っているそうだ、

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