<計画全てが白紙に戻ったと見なすしかない。全鎮守府連合艦隊による台湾近海解放作戦もだ。少なくとも向こう一ヶ月は我々のみでヤツらと対峙せねばならないだろう>

現在、佐世保鎮守府本来の役割である大規模輸送船団護衛任務(スエズ運河航路確保)を肩代わりし、更にビスマルク隊(出向防衛組)というカタチで佐世保をサポートしてくれている呉も、
西太平洋戦線の維持に全力を尽くさなければならなくなる。
ミッドウェーが突破されれば、ただでさえ衛星の消失に困窮している全世界の戦線が連鎖的に、完全に破綻してしまうのだ。鹿屋基地等のその他軍事拠点にも当然、何かしらアクションがあるだろう。


佐世保は再び孤立するかもしれない。


万全でないまま、ナスカ級という火種を抱えたまま。依然スカイグラスパーやヴァルファウ、【軽巡棲姫】や【Titan】といった超戦力を擁する深海棲艦群と睨み合ったまま。
次々に襲いかかる荒唐無稽な無理難題。
どうしようもなく五里霧中で窮途末路。
戦術どころか戦略レベルで後れをとってしまった。
本質的には防衛戦の頃となんら変わらない、息苦しく生苦しい閉塞感。少女らの受難は、まだまだ終わりそうにない。
受難が続くということは、道が続くことを意味している。

「防衛態勢を見直す必要がありますね。特に、対空と対ビームを最優先で考えないと」
「それなら僕と明石さんに考えがあります。――あの、提督、一つお願いがあるんですけど・・・・・・」
<なにかな?>

まだ終わらない。
まだ抗える。
ナスカ級を中央部のみとはいえ引き入れられたのは、僥倖だった。どんなに苦しくても、元より選んだこの道を貫くだけの力を手に入れられたのだから。C.E. の技術をいかに有効的に使うかが、これからの鍵を握るのだ。
皆で知恵を絞れば、まだ前に征ける筈だと信じている。
衛星撃墜がなんだ。再びの孤立の危機がなんだ。もうあの時とは、未知の技術に一方的にやられていた時とは違う。

「ストライクを、ここまで持ってきてくれませんか?」

反撃の術は、まだこの手の中にある。