《第14話:明日、明後日、その先へ、今を繋げて》



艦娘用の、対ビームシールドとアンチビーム爆雷。
対空用の、ビーム兵器と高精度射撃管制システム。
ストライクがあれば、不思議存在に変貌したキラとストライクを媒介にすれば、コレらをある程度量産できるのではないかと、キラと明石は踏んでいた。量産できれば艦隊の防御力は大きく向上する。
戦力温存の為かここ最近姿を見せない【Titan】は勿論、スカイグラスパー相手にも優位に立ち回れるようになる筈。
材料は充分にある。
自壊寸前のナスカ級それ自体と、搭載されていた兵装や大破したモビルスーツを使えば、佐世保鎮守府所属艦娘全員の防御能力を底上げできる程だ。
実績も充分にある。
コンバートしたC.E.製パーツをふんだんに組み込んだ響の特装試作型改式艤装の性能は、彼女自身の実力を差し引いても誰もが認めるモノだった。
ならば、キラとストライクと明石が揃えば実現可能である。
そして勿論、こんな場当たり的な対症療法では終わらない。
ゆくゆくは反撃に転じるべく、攻撃用の兵器も開発してみせる。既存技術の延長である響の試製ライフル型13.5cm単装砲とは異なる、新体系の兵器群を。
問題は当のストライクを佐世保工廠に修理中のまま置いてきてしまったことだが、幸いフレームにはまだ手をつけていなかったので、コンテナ船で輸送可能な状態であった。
修理の続きここ福江基地工廠にて、新兵器開発の後に行えばいい。


新たな計画が発動した。
あとは時間との勝負だ。


ストライクの移送は明日12日の昼頃に予定されており、そこから計画が軌道に乗るまで最短三日はかかる見込みで、その間に敵が襲撃してこない訳がない。敵が戦力の消耗を嫌っていると仮定しても、
まさか放置してくれるとは思えず、むしろ航続距離に優れた航空戦力や長距離砲撃でちょっかいを出してくるものと思われた。もしかしたら、迎撃困難なスカイグラスパーを差し向けてくる可能性もある。
そういった意味では現状、デュエルは艦隊の進退に大きく関わる存在と言えた。なにせ、索敵と対ビームに最も優れているのは、この機体だけだから。たとえ黎明期の試作機だとしても。
諸々の準備が整うまで、ストライクとデュエルという二機のモビルスーツは、それぞれの役割でもって佐世保を守護する盾になる。
艦隊の強化が整うまで。
基地の防備が整うまで。
孤立してしまっても、この先ずっと戦っていけるようになるまで。老体に鞭打ってとはズバリこのことだ。
持てる全てを駆使しなければ、生き残れない。