<本当は佐世保に・・・・・・福江島の方に行きたかったんでしょ?>
「それは・・・・・・まぁ、な」

図星ではあった。
アイツがここで終わっていいわけがない。嫌いだけど、大っ嫌いだけど、それとこれとは話が別で、直接助けにいけるものなら行きたいと切に思っている。我ながら複雑だとシンは唸った。
しかし、何事にも優先順位というものがあるし、この機体で出来る事などたかが知れている。
だから、図星だからこそシンはあえて不敵な笑みを返してやった。いつまでも分からず屋のガキでいられない。

「でも俺は、俺が思う最良を、やりたいようにやってるだけだ。そういう風の吹き回しってことだ。礼だったら無事に帰ってきてからにしろよ」
<ええ。アナタが実現してくれたこの作戦、必ず完遂してみせるわ。みんなでちゃんと、ね。・・・・・・――大丈夫よ、いい風が吹いているもの>
「ああ。・・・・・・いくぞ!」

背部と両腰に備えた大型ウイングスラスターを展開、見る者全てを魅了する光の翼を発振。光圧による繊細な推進力が、機体をフワリと滑らかに離陸させる。
続けてミラージュコロイド展開、アクティブステルス。可視光線等の電磁波を偏向するガス状物質を球状に固定し、光の翼含めてデスティニーは何者にも感知できない透明存在になる。
出撃準備完了。
あとは心のままに。

「シン・アスカ。デスティニー、発進する!!」

久しぶりの常套句を口にして、まるで運命を切り拓くようにして。
【紅蓮の剣】が呉の空に飛び立った。