昔の人は言いました。
腹が減っては戦は出来ぬ。軍隊は胃袋で動く。世界は美味いご飯で廻っている。個人も組織も状況も古今東西も問わず、気力体力共に充実してなければ良い仕事なぞ到底不可能なのだ。
料理作りを趣味としている瑞鳳と雷にとってはある意味、厨房こそが真の戦場なのかもしれない。
その構成員は瑞鳳と響、暁と雷と電の計五人で、この人選の裏には「響はもっと色んな人と接するのが良いかもしれない」と考えるキラと瑞鳳が噛んでいたりする。例の協力体制の一環だ。
ともあれ今日の食事当番の二人で、これまで作ってきた食事をみんなに配り歩いていたのだ。速報を耳にしたのはその途中、最後の一人であるキラの下に向かっている時のことだった。
ご飯は楽しい気分で食べるに限る。
今ならきっとキラも美味しく食べてくれるではないかと、響と瑞鳳は考えた。

「私達もこれからだったから、一緒に食べていい?」
「もちろん。ってか、断る理由がないよ。・・・・・・待ってて、ちょっとセンサーの設定だけ弄ってくるから」
「どうするの?」
「僕の端末と連動させるんだ。この距離なら無線届くし」
「じゃあ工廠の中で準備してるね。流石に外じゃ寒いから」

考えたら自然と、一緒に食べようと提案していた。本来の予定であれば名残惜しいけれど、時期尚早だとして、ご飯を渡したら二人は解散しようと瑞鳳は考えていたのだが。提案しといて後の祭りだが、少し緊張してきた。

「・・・・・・キラ、携帯端末持ってたんだ」
「提督のお古じゃない? あの旧式の折畳み型、見覚えあるわ。ま、とりあえず準備しちゃいましょ」

悟られてはならない。
大丈夫。普通の日常会話ならこれまでのように、普通にできる。昨夜も上手くやれた。
再びコクピットに潜ったキラと一旦別れ、新設した工廠の隅っこに陣取った二人は手分けして食事の用意を進めていく。

「みんなに使わないって言われたけど、持ってきて良かったわね、紙皿」
「備えあればなんとやらだね」

本日のメインは、パリッと焼きあげた半身の鯖をカリふわフランスパンで挟んだサバサンドになります。
お昼に【はやて丸】にて摩耶が釣り上げていた新鮮なサバは旬なだけあって、味も大きさも一級品。これを塩胡椒とバター、レモン、オリーブオイルだけで味付けして各種野菜とサンドするだけという
シンプルかつ豪快なファストフードだが、これがまた病みつき必至の美味しさなのだ。人によってはマヨネーズちょい足しもオススメで、もし機会があれば試して頂きたい。
これに加えて、瑞鳳謹製のカマスの唐揚げとロレーヌ風キッシュ、会議終了後に金剛と榛名に淹れてもらったダージリンティーがセットになって、艦隊の遅めの晩ご飯となる。
もちろん戦闘糧食なのでそれぞれ作業しながら手軽に食べられるよう工夫しているが、今回はゆっくり腰を落ち着けられそうなので、ちゃんと紙皿に盛り付ける。一応持ってきていたのが幸いだった。
今回は自信作だと、自画自賛する瑞鳳である。近年はなんとなく避けていたバケットサンドだがなんとなく、たまには良いかなと、昔は割と頻繁に作っていた定番メニューなだけあって彼にも気に入ってもらえると良いが。