「最近はなんか、いろんなモノが見えてきてるような・・・・・・そんな気がするんだ。自分のことだけしか見えてなかったって、わかったような気がして。
瑞鳳ともちゃんと話ができてないって、気付いて・・・・・・我ながら薄情だと思うよ。あんなに私のことを気に掛けて、助けてくれてたのに」
「・・・・・・!」
「気付いたら、いてもたってもいられなくなってさ・・・・・・今になってやっとだよ? ・・・・・・なんで私、今まで気にしてなかったんだろうね。昨日だってそうだよ。本当に、どうしてこんな」

一年と半年の歳月を経て、響は白露型駆逐艦娘達と共に佐世保に帰ってきた。それから今日に至るまで、同艦隊として行動していても個人間の交流はすっかり無くなってしまっていた。
あんなに一緒だったのに、かつての絆は喪われた。
端的に言えば疎遠になった。先程、瑞鳳は咄嗟に「言われてみればそうかも」と口走ったが、とんでもない。彼女はずっと疎遠になったことを気に病んでいた。
しかし夕立の弟子として、誰もが一目置く強者として佐世保に戻ってきた響に、姉貴分と自負していた彼女は遂に言葉を掛けてやることが出来なかったのだ。
憚られた。
何故なら、彼女は小さな少女の『圧』に屈したのだ。
あの弱々しい少女が。ずっと何かに怯えてて、ずっと一人で、なにをするにしてもすぐ謝って主張しない少女が。
飄々としたペルソナを被って強さだけを追い求めて、けれど誰にも溶かせない氷塊を抱いた修羅と化してしまった事実に。
昔のようにただ仲良くしたいだけなのに、どうしてかまともに接することができなくなった。
第一線で戦う佐世保第二艦隊の同僚としてお互いを扱う日々が、始まった。どこか他人行儀な、よそよそしい二年間。気遣うだけのありふれた優しさが、更に二人の心を遠ざけた。
瑞鳳にとっては、普通の日常会話を、強いて普通に返すのがやっとの二年間だ。
そんな負い目があったからこそ少女は昨夜、キラに協力体制を迫ったのである。

「そんなの・・・・・・、・・・・・・いいのよ。私だって響のこと、ちょっとわかんなくなっちゃったって、思っちゃって・・・・・・お互い様だもん」
「わからない? 私が?」

まさか響から言い出してくるとは、夢にも思ってなくて。
気付けば瑞鳳も感極まって、俯いた響を抱きしめていた。

「・・・・・・うん。強がってるの、辛いんだろうなってわかってるのに、見てられないぐらいなのに・・・・・・でも私、何もできなくて。
私達を今度こそ護ってみせるって気負うあなたに、どう接したらいいかわかんなくなっちゃって。怖じ気づいて、心配することしかできなくなっちゃったんだもん・・・・・・」
「・・・・・・ごめん。やっぱり私は薄情者だ・・・・・・」
「違うよ。ただ沢山、沢山・・・・・・・頑張りすぎちゃってただけなのよ」

ずっと一緒にいたのに、こうまで近づけたのは、こうまで素直に心情を吐露したのは、それこそ三年ぶりのことで。