ご飯は楽しい気分で食べるに限る。美味しく手軽でボリュームのある食事は、どんな兵器よりも即物的な力となる。すると会話が弾んで、幸せスパイラルが形成される。
キラが日本語学に難儀していることといった取り留めない世間話に、ちょっとした思い出話をはじめとして。キラがシンとちょっと打ち解けたキッカケ、響が夕立に憧れたキッカケ、瑞鳳が料理を始めたキッカケ。
楽しかったこと苦しかったこと。互いを知っていくこと。
これまで何気なく心に留めていたものを、何気なく楽しい話題にして。
それは明日、明後日、その先へ、今を繋げていった世界を生きる糧となる。


一人の人間として、こういう時間を大切にして、もっと増やしていきたいと切に願う。


間違いなく、ここ最近で一番楽しい食事と会話だった。
二体のモビルスーツに守護された前線基地で、響と瑞鳳はかつての絆を取り戻しつつあった。
ただ、やはりというか何というか。
状況が状況なだけに、話題はこれからの戦闘のことにシフトしていった。そもそも今を戦わなければ、望む未来へは行けないのだ。

「アンケート?」
「今思いついたんだけどね。艦隊の指針として、これから君達の艤装を強化していくことになったんだけど・・・・・・その指標っていうのかな。
モビルスーツのパーツを使って君達がどういう力を手に入れたいのか知りたいんだ」
「Понимаю。私の場合はコンセプトが分りやすかったけど、他の艦娘・・・・・・特に戦艦級と空母級はそうもいかないか」
「例えばビーム兵器の特徴は直進性にあるけど、それじゃあ水平線越しの攻撃は出来ないから、長射程の戦艦とは相性が悪い。
空母なんかもどう強化すればいいのか、いまいち判らないってのが正直なとこだし、だったらいっそ」
「強化案を募ろうってわけね」

ごちそうさまと合唱して、相談が始まった。

「シンのおかげで想定よりずっと時間が取れるから、みんなの意見を反映できると思うんだ。詳細については明日、明石さんと詰めていこうかなって。多分、昼頃には訊けるようになるのかなって踏んでる」
「良いんじゃないかな。みんな自分が成したい事、ちゃんとイメージしてると思う」
「私も賛成よ。・・・・・・あ、でも・・・・・・う−ん、艦載機って強化できるものなのかな・・・・・・?」

三人の夜はこうして更けていく。
せっかく勝ち取ったこの一時の平穏を無駄にしないように、これからの平穏を勝ち取る為に。
艦娘として人間として、人類と自分達の為に。これまで以上に、絶対に負けられないと感じ入る三人だった。