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(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
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前スレ
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https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/shar/1499781545/l50
まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
http://arte.wikiwiki.jp/
新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
VIPQ2_EXTDAT: default:vvvvv:1000:512:----: EXT was configured 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2) ゴミ袋なんてスーパーでもコンビニでもホームセンターでも
どこにでも売ってるじゃねーかwwwwwwwwwwwwwwww
どんだけ世間知らずな汚豚ガイジなんだよwwwwwwwwwwwwwwww マリナ 新たなる戦術 第1話
アザディスタン代表のガンダムファイター、マリナ・イスマイールは都市から離れた荒野に敵ファイターと向かい合っていた。
相手はエジプト代表、レザー・クルスーム。185センチの大男でいかにもパワーのありそうな風体をしている。
「闘いにゃ似つかわしくねえ姉ちゃんだ。皇女様がよくやるぜ。
楽しめるんだろうな?」
どこかサディスティックな笑みを見せるレザーにマリナは静かに、だが毅然と答えた。
「……私にとっては楽しむものではありません。ただ、国の為に闘うだけです。」
「まあいいさ、精々泣かないようにな。ガンダム!」
レザーの大声と共に大地は割れ、ガンダムグレイブは姿を表した。
マッシブな人型ではあるものの、ピラミッドの頂点を思わせる尖ったパーツが複数付いている。
「ガンダム。」
対して静かに呟くマリナに答え、大地から現れるガンダムファーラ。弓と槍の闘いに適した純白の機体だ。
二人のファイターの声が重なる。
「ガンダムファイト!レディーゴー!!」 「喰らいな!」
「なんの!」
グレイブの全身に付いた突起から繰り出される大きな砲弾を得意の弓術で破壊していくマリナ。
「この調子で勝てれば……」
冷静に素早く近付くマリナ。しかし……
「どうかな!?」
突如猛スピードで迫るグレイブ。砂を掻き分けスムーズに走るその様に驚くマリナ。
「これは……!」
「この機体は様々なフィールドに対応できるように換装式になってんだ!
アマゾンなら湿地、海なら水中、砂漠ならホバータイプだ!」
瞬時に接近を許してしまい、弓を叩き落とされるマリナ。
「そんな!」
「非力な姫様には勝機はねえぞ!」
片腕を捕まれ抵抗できなくなるマリナ。
必死で外そうとするも相手は動じない。
それもそのはず。グレイブはパワーに長けているのもあるが、そもそもマリナは他のファイターに比べ非力。
よってパワータイプを操るのは負担になる。
それを補う為の槍と弓だったが落とされ身動きできなくなったとあれば勝ち目はない……。
皇女の戦況は絶望的だ……!
「まだ、諦めない……」 サイドスカートから取り出したスペアアロー……
しかしそれさえも叩き伏せられてしまう。
やはり遠距離でこそ輝く武器。至近距離ではどうしようもない……
「ほら、喰らいな!姉ちゃん!」
「きゃああぁぁ!!」
肩、腰、脚に砲撃を受ける。ファイトのルール上、コクピットを狙うわけにはいかないので必然的に食らうのはそれらの場所になる。
「さあて、頭を狙わせてもらおうか……」
「……!」
ファイターとしての本能とでも言おうか、瞬間的に精神がクリアになったマリナ。
恐れも焦りも心の奥に沈み、反射的に片足を上げて思いきり敵の片目にキックを直撃させた!
「ぎゃぁぁぁ!!」
一瞬の強い攻撃に悲鳴を上げファーラを離すグレイブ。
砂の上に尻餅を着いて何とか距離を取るマリナ。 「やろう、目を……ファイトはお預けだ。また一週間後に来るぜ!」
飛び去っていくグレイブ。
「はぁ、はぁ…………私の武器が通じない……」
汗を拭いながら飛んでいく巨体を見つめるマリナ。
そこに一体の小型飛行機が降り立った。
中から現れた女性を見てマリナは驚いた。
ウェーブのかかった短いブルネット。眼鏡の奥に光るクールな瞳。年はマリナより少し上だろうか。
「あなたは……シーリン?」
「久しぶりね。マリナ。」
マリナは機体から出ると飛行機にいる彼女に駆け寄った。
マリナの秘書をしていた女性、シーリン・バフティヤール……
外交の為、暫く国を留守にしていたのだ今日戻ってきたのだ。
皇女は頬を染めながら……
「あの……今のファイトは……」
「ええ、見ていたわ。一国の代表としては少し酷いわね……」
「言い訳はできないわね。でも、後一週間しかリミットが……」
「そう、それなら私に良い提案があるわ。ここで挽回できなければ……わかるわね?」
「…………」
マリナは首を縦に振った。 マリナ 新たなる戦術 第2話
「きゃっ!」
床の上に倒れ込むマリナ。シーリンはいつも通りの冷静な顔で彼女を見下ろしていた。
「いたた……あなた、いつの間にこんな技を……」
立ち上がる彼女にシーリンは告げる。
「外交中に日本で教わった合気道というものよ。殴らずに相手の勢いを活かして倒す、古くから伝わる武術よ。」
「そんな武術があったの……空手や柔道しか知らなかったから……」
驚くマリナの前にしゃがむシーリンは側近と言うよりは家庭教師という顔だった。
そう……昔彼女に教えていた時のように、政治に携わる今よりは幾分親しみやすい雰囲気だった。
そっと手に触れる。
「私も始めて知ったけど、マスターすればかなり有効な武術。
あなたは努力を重ねてここまで成長した。それでも唯一他のファイターに届かないのはフィジカル……
器用に武器を使いこなしても腕力では敵わないでしょう。
でも、合気道ならその差を埋められる。あのパワーやスピードを兼ね備えた敵にもね。」
「…………期限は一週間だものね。わかったわ。私に教えて頂戴。」
シーリンは首を静かに縦に振った。 そして数時間後……
「私の動きを少し見切れるようになったみたいね。」
「はあ、はあ……!それにしても、シーリンの、手捌き、すごいわ……
対応……精一杯だもの……」
フラフラになりつつ汗を流すマリナ。
彼女が立っている場所を中心に汗が滴り落ちている。
「MF用の訓練室に行きましょう。見せたいものがあるわ。」
「?……」
不思議に思いながらも付いていくと、応急修理を終えたガンダムファーラにワイヤーを使い入っていくシーリン。
前方には、各国のMFを元にした無人の訓練用ダミー機が複数待機している。
「まさか……」
「ええ、今から合気道のファイトを見せるわ。よく見ていて。」 コクピットに入ったシーリンは慣れないその場所を見回す。
旧友にして皇女、そしてファイターであるマリナの居場所。
ファイトにかける想い、焦り、不安、そして勝利の喜び。
マリナが持っているありとあらゆるものがこの戦場にひしめき合っているような気がして、普段冷静な彼女も息を飲む。
「最初会った時は少し危なっかしい所もあると思っていたけど、ここまで強くなるなんてね……」
緑の外交スーツから布製のケースを取りだし、服と下着をパサッと脱ぐと、それは粒子となり消えていく。
マリナより数センチ背の高いシーリンはパッと見彼女より威圧感を与えるかも知れないが、身体は同じくらい細かった。
一言で言うと、適度に軽い運動を嗜む女性と言った趣の体型。
皇女より少し大きい平均サイズの胸。
ファイターでないのでマリナ程でないが、一般人の女性より幾らか引き締まった身体。
艶のある肌は色気を引き立てるのに充分だろう。
流れるような線を描くシルエットも男を昂らせるだろう。 リングに立ち脚を閉じて、両腕をスーっと広げる。
「デミモビルトレースシステム機動!」
叫んだ瞬間にケースから取り出したのはサイズの違う二つの半透明の布。
その内大きい楕円形のものを胸にピタリと吸着させる。
「く、うううぅぅぅ…………!いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛とした揺るがない態度からは想像できないあられもない声。まるで痴漢や強姦に遭ったような悲鳴と共に身体を反らす。
布は大きく広がり、見る見る内に胸から鎖骨、腹、背中と両腕を包んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、最近開発されたモビルトレースシステムの簡易版である。
必要以上に負担のある正規版に比べ1/3の疲労で済むもの。
巨大なスーツが上から降りてくるのではなく、二つの伸縮式布で上半身と下半身に纏う。
云わば訓練生とファイターに憧れた一般人のためのもの。
その分、人間の動きをガンダムにトレースさせる効果は正規の1/3程。特定の武術やスムーズな動きに長けていれば、性能以上のトレースができる者もいるが稀である。
「マリナの、苦しみに、比べれば……!!」
正規程手はないにしろ、全身にかかる圧迫を跳ね退けるように握り拳を作り、両腕を広げる。
そして、シーリンはもう一つ、小型カプセル状の布を性器である谷間に差し込んだ。 「い、いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛としたものとは違う声色を上げてしまうシーリン。
布はやはり性器の比較的奥まで吸着する刺激を与えながら、下腹部、性器周り、尻、脚を包んでいく。
「キ、キツイ……!!」
深いアナルにも行き渡るスーツに腰を揺らしながら、全身に力を込める。
「時間が、ないわ!!マリナの、為に……」
吸着に耐えながら正面にいるダミー達を見据えるクールな瞳。
衝撃は徐々に消えていく。一般人に取っては有り難いシステム。
半透明の美しい、だがどことなくぼやかした色のスーツに包まれたシーリン。
通信機を作動させマリナに呼び掛けるシーリン。
「よく見ていてね。これが合気道よ。」
首を縦に振り旧友が乗ったガンダムを見つめるマリナ。 「はあっ!!」
簡易版とは言え、走り込みと合気道に慣れたシーリンはスムーズに、正確に自分の動きを反映させている。
ファイターではないが一般人としてはかなりのものだ。
ダミーの振り降ろす腕を掴み、瞬く間に投げていく。
バランスを崩した機体は次から次えと間接を初めとするパーツを破壊されて倒れていく。
「凄いわ……こんな戦い方があったなんて……」
その鮮やかさに魅入るマリナ。
皇女は友によって新たな希望を感じていた。 マリナ 新たなる戦術EP3
訓練開始から三日経ち、マリナは苦労しながらも生来の才能ゆえに合気道の技を身に付けていった。
今は晴天の昼下がり、気晴らしに街を歩く。道行く人に挨拶をして、時には軽く談笑すると、人通りのない原っぱに出た。
街の治安が守られていることを皇女として嬉しく思う。
およそ十年前には考えられなかったことだ。
「これも国のみんなが協力してくれたお陰ね……」
(絶対にあんな人に負けはしないわ……シーリンの為、みんなの為にも……!
…………!?)
上空から自分目掛けて何か大きなものが勢いを付けて降ってくるのを感じ、ファイター故の反射神経で素早く身構える。
棍棒を持った長身の男。
「ハッ!……」
瞬時に相手の腕を掴んで捻り、投げ飛ばした。
「いてて……てめえ、避けやがったな……」 背中を強かに地面に打ち付けた男はダメージに痙攣している。
この近くの土は柔らかいとは言え、マリナの今までの訓練で培った腕力と合気道の訓練成果によって、相当の痛みがあるらしい。
棍棒を奪って槍の構えのように突きつけるマリナ。
「エジプトのファイター・レザーの命令?
」
「けっ、誰の命令だろうが関係ねえ!」
男が痛みに耐えながら指を鳴らすと、複数の男達が茂みや木から姿を現す。
殆どは嫌らしい顔でマリナを見ている。
相手を痛め付けたいだけでなく、性的なことを考えてもいるのだろう。それは対面している皇女自身にも伝わっており、ファイターになってからある程度の覚悟はしていた。
皆腕利きの格闘家や元軍人……レザーが雇った相手だろう。
シーリンが言った通り、マリナの弱点は筋力。武器の扱いやスピードはともかく、純粋なパワーだけなら彼女を越える者も二、三人は混じっているかも知れない。
「マリナよ、悪いがここでシメさせてもらうぜ。」
一斉に襲いかかる男達。
戦闘体勢に入ったマリナは次々と相手を殴り、蹴り飛ばしていく。ガンダムファイターとして非力でも、それ以外の格闘家や軍人を圧倒的に凌ぐパワーと格闘センスを持っている彼女は純粋にパワーだけで片付けられる。
そして敵は残り僅かになったのだが……
向かってくる一人の男は凄まじい腕力でマリナのパンチを弾き返す。
一気に原っぱに倒れ込むマリナだがすぐに立ち上がる。ファイターにしては小さい拳は痛みにジンジンとしている。
「キャッ……!」
「フッ、応えたらしいな。俺は腕力に関しちゃ自信があってな。」
その男はテクはイマイチだったのでガンダムファイターの適正はなかったが、パワーはかなりのものだった。
この世界の格闘家の中ではトップクラスまでいかずともかなりのものだろう。 「くらえ!」
更に何発もキック、パンチをマリナの腹、腕、脚等に入れていく。
乱れ内に少しずつ赤くなる皇女の皮膚。
「うぐっ……!(もっと冷静に……敵の動きを読まなきゃ……)」
ふらっよろめくマリナ。周りの男達は手を出さずにいやらしく囃し立てる。
金で雇われたであろうそいつらは暴力に飽きたらず性欲まで強く持っている。
今マリナにダメージを与えた男も同類の表情だった。
「いい格好だな、皇女さまっ!これが終わったら俺達楽しめるな!!」
「はぁ……はぁ……誰があなた達に……
(ここで負けては国を救えないわ……
怖い敵なんて、誰もいない……!)」 心を鎮めて雑音をシャットアウトすると、どこか精神が白く透き通ったような心持ちになる。
自ずと今握った拳は開かれて、身体全体にかかる力は抜けて軽くなったような心境だ。
彼女には怪力の男しか見えていない。
大きな拳が見せる軌道……それを鋭く見つめると、痛む身体を押して腕を掴み、捻り混んだ!!
「ハッ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
そのまま更に捻ると、男の腕の間接が脆くも外れる音がした。
「ひいぃぃぃ!!」
男はそのまま痛みに苦しみながら汗をドッと流していた。
皇女はそれを冷静に見下ろすだけ…… EP4
そして他の男達もマリナに投げられ、間接を捻られた。
全員が彼女の通報で逮捕されたが、敵ファイターの住むエジプトと問題を起こしては国の安全に関わると言うマリナの判断で密かに独房行きになった。
マリナはあの頭が冴え渡るような感覚から元の状態に戻っていたが、何分初めての体験なので混乱しつつ帰路に着いた。
街の人達や通報を受けた警官からは軽い土汚れや痣を心配されたが、本人は笑って心配をかけないように努めた。
ここはアザディスタンの城の皇女専用の個室。少し脚の長いベッドには皇女の純白の下着が丁寧に畳まれて置かれている。
マリナは椅子に座って一糸纏わぬ姿でシーリンのお世話になっていた。
両手を膝に置き真っ直ぐに姿勢良く座っているが、桃色の薄い唇を少し強ばらせている。
控え目な美乳・括れていながらも引き締まった腹・しなやかな手足……痣のできた体の各部に塗り薬が染み渡る。
「いっ、いたい……」
「全く無理をするんだから。たまにそういうところがあるわよね、昔から。」
シーリンは呆れながら出来るだけ優しく薬を塗ってくれていた。
「ありがとう、シーリン。でも不思議なのよ。冷静になろうとしたら頭が冴えたような、余計なものが消えちゃった状態になって……」
シーリンは少しの間考えていたが直に顔を上げると
「それはもしかすると、明鏡止水というものではないかしら……」
「め、明鏡止水……?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる皇女に旧友は続けた。 「一切心が荒まずに、澄み渡った……そうね、とても落ち着いた安定状態というのかしらね。日本で聞いた言葉よ。」
「私が、その状態に……?」
「ただ、誰でもいきなりなれるわけではないわ。もしかしたら……その前段階かも知れないわね……」
「じゃあ、いつもその状態を保っていられれば……」
「そう、だけど決着までに後四日しかないわ。確かに大切な言葉だけど、新しい概念に心を奪われていたらそれこそ元も子もないわ……
言い出した私が言うのも何だけど、忘れて訓練に励みましょう。ただ冷静さだけを心掛けるしかないわ。」
「そうね、ありがとう。シーリン……」
それでも、その言葉はマリナの心を掴んで離さないのを自身が一番わかっていた。
望みと不安を同時に見せる澄んだ水色の瞳……それは旧友に親愛の微笑みをさせてしまうものだった。
「マリナ、あなたって人は……
……所で何か感じない?」
「何って?」
「この部屋、私達だけじゃないわよ?」
「……!?」
敵の襲撃後なので、立ち上がり構えるマリナ。
シーリンはベッドの脚に触れると諭すように「出てきなさい。」
「な、何?」
「あちゃー、ばれちゃったかー、ハハハ。」
ベッドのやや長い脚と床の間から這うように出てきたのは見覚えのある少年……アクバルだった。
前に孤児院で出会い、コクピットのはいりマリナの戦いを目の当たりにしたあの少年……
「アクバル!あなた、いつからそこに……
ずっと、見てたの!?ひどい……」 マリナは立ち上がり、胸と局部を両手で隠す。
子供とは言えスケベな男子。女としては反射的に防御せざるを得ない。
スラリとしつつ引き締まった、つまり二重の意味で美しさを兼ね備えた女体を震わせる。
少し衝撃を与えればすぐに体制を崩して大事なところを公開しかねない危うさ。
普段ファイトで落ち着いた構えを見せる彼女とは別人のようだ。ただ、それはファイトの訓練と経験によって積み上げられたもの。
今の姿は生来の彼女らしさかも知れない。
実は彼に裸を見られたのはこれで二回目。最初の時は目を瞑るよう頼んでから、脱衣してスーツを装着したので恥はあまりなかった。
…………と思ってるのはマリナだけで、アクバルは(ある意味では)勇気を振り絞ってこっそり目を開け、皇女の裸体とスーツの装着に苦しむ様をまざまざと脳裏に焼き付けたのだ。
まだ小さい彼には相当の刺激と高揚を教えてくれたので、それを一人アソビの助けにしているのは秘密だ。
その思い出を孤児院の男子達に語れば相当の反響を呼び、女子達はそれに対し所謂「男子サイテー!」というリアクションを見せ、従業員は青ざめながら説教をしていた。
この孤児院始まって以来の大騒ぎだった……
「いや遊びに来たんだよ。マリナ様にあったことあるって言ったら城の警備の人が入れてくれてさ。
でも、酷いな、今回ヤバいやつらだったんだろ!?
ファイターにも色んなタイプがいるんだな……」 アクバルが心配そうに手を触れようとするのを反射的に武道宛らのモーションで避けるマリナ。
「もう、酷いのはあなたよ……
……でも、ここまで来てくれて嬉しい……ありがとう……」
マリナは呆れながらも険悪な感じはなかった。寧ろチラリと向けた水色の瞳には喜びが見えるので、少年は素直に笑った。
「気付かないなんてまだまだね……皇女様も形無しね……」
「シーリン、からかわないで!
……あっ」
言った拍子に手を広げて、股間を見せてしまうマリナ。
「…………」
時が止まったようなムード。鳩が豆鉄砲食らったような顔になるアクバル。
「いやっ……!!」
「うわぁぁぁ!」
少年は目にも止まらぬ速さで腕を捕まれ床に転んだが悪びれる様子もなく背中を擦る。
「いてて、流石、マリナ様か……」
「ほら、行くわよ。」「はい……」
シーリンに連れられて部屋を後にするアクバル。
着替えたマリナはまた二人を部屋に入れてお茶を人数分淹れた。
「院のみんなは元気?」
「うん、みんなマリナ様が来てからもっと元気になったよ!」
「そう、良かった……私が少しでもみんなの力になれるなら……」
少年の言葉には二重の意味があったのを彼女は知らない……
シーリンだけは何かを察したのか黙ってお茶を啜っていた。 少しストーリーは横道に逸れますが、アザディスタンの内輪揉めです。
昔流行ったビキニアーマー的なのも出てきます
EP5
マリナがアクバルと和気藹々と過ごしている頃、城の別室では何人かの大臣が集まっていた。殆どは年輩で、中には中年も混ざっていた。
アザディスタンは元々女性に参政権のない国。
しかし、ガンダムファイトが制定されたことで戦争は終わり、政治家の尽力により国の経済力も少しずつ上がっている。
皇女となったマリナがガンダムファイターになり、二重の意味で国の代表になったことで、国内の女性の地位も上がり女性政治家も増えた。
それを快く思わないのがここにいる彼らである。
「しかし、参りましたね。ここ最近のマリナ皇女の活躍ってやつは。」
一人が皮肉っぽく告げる。
「全くだ。しかし、遂に完成したじゃないか。新型の《スーツ》が。
何も知らずに開発の話を喜んでいたな、皇女は。
これで彼女の信頼は終わりだろう。」
自信ありげに話す男は中心人物らしい。
すると、隣にいた男は手を上げた。
「しかし、そうなっては国民からの我々の評価も危ないのでは?」
メインの男は首を横に振り
「いや、大丈夫だ。優しい皇女とその直属の部下達なら甘い処罰を選んでくれるだろう。
今回の失敗を糧にこれからもお願いします……という言葉と共にな。」
「確かに。それにエジプトのファイターがこのタイミングに我が国に勝負を仕掛けたのもラッキーですね。
敵に感謝することがあるとはね……」 個室で談笑するマリナ達の元に先程集まっていた大臣の何人かがメカニックスタッフ数人を連れてやってきた。
「マリナ皇女。実は新型のファイティングスーツが完成致しました。」
「本当ですか?それではすぐにテストしましょう。」
嬉しそうに立ち上がるマリナ。
少し不安げに男達を見つめるシーリン。アクバルは好奇心の目でマリナを見つめる。
シーリンとアクバルを連れ立ってガンダムの格納庫に行く一同。
「新しいスーツというのは?」
「これです。」
パッドに映ったデータのイラストを見たマリナは苦笑いして固まる。
脇から覗いたシーリンも絶句した。
そこには「リキッドメタルスーツ」という文字があった。
「こ、これですか……」
「ええ、以前のものとは違いますが軽量なのですよ。エジプトとの闘いも迫ってますし……」
例の一番メインの大臣が説得すると応じるマリナ。
「……そうですね。時間がありませんからね。」
「どれ、どんなの?」
パッドを奪おうとするアクバルを止めるシーリン。
彼女は男達に疑惑の目を向けたが、その視線はテストに臨むマリナの方を向けばすぐに心配の眼差しに変わった。
「あなたが見るものではないわ……
(しかし、こんなものを……彼らは一体何を……)」 緊張しつつガンダムファーラのコクピットに入るマリナ。いつも通り全裸になるが新たなシステムに不安で内股になり、普段の祈るポーズもする余裕がない。
「大丈夫なのかしら……でも、闘えるのは私しかいないから……!
モビルトレースシステム起動!」
恥じらいを消すように発した声と共に天井から降りてきたのはスーツの布ではなく、掌サイズの銀色の液体だった。
それは液体金属……リキッドメタルスーツというものだった。[newpage]
「新型スーツの話は聞いていたけどこれはどういうこと?」
静かに、しかしそこはかとない厳しさを見せるシーリンにリーダー格の大臣は落ち着き払って応えた。
「その名の通り液体金属を使ったものですよ。軽量ですし、新技術を使えば他国への優位性のアピールにもなります。」
「…………」
「ねえ、ホントに大丈夫なのか?」
シーリンは不安がるアクバルの肩に手を置きながらも、大臣達への疑惑の目を向け続けた。
一方マリナは…… 「な、何?これが液体、金属?キャアッ!なに、これ……!」
重力や引力に逆らう技術が使われているのだろうか……銀色のそれは首や肩ではなく、いきなり形の整った胸元に圧迫するようにへばりついた。
更に胸を揉み解すようにモゾモゾと動きながらその面積を広げていく。
「い、いやぁぁ……!キ、キツイ……!!
それに、柔らかくて、ヒンヤリしてて、何だか、こわい……」
あっという間に肩甲骨まで包んでいくと、まるで生き物のようにそこと胸を前後からグイグイと圧迫していく。
「い、いやぁぁぁ!!い、いた、く、苦しいぃぃ……!!」
柔らかいが、同時に強靭な締め付けでマリナを苦しめるメタル。
何度も揉まれていく度にそこを中心に、真っ白かった肌が少しずつ紅くなっていく。
理不尽で未体験の衝撃と羞恥によって……
徐々に固まり、銀の硬質なブラジャーのような形になるメタル。
すると、新たにもう一つの掌サイズ液体金属が降ってきた……
シーリンとアクバルは心配そうにガンダムに目を向けていた。
「マリナ様……どうなるんだ……」
「今は信じましょう……」
少年の肩に置いた手は心なしか力が入っていた。
液体金属に戦くマリナ。
「また一つ?今度は何!? ……まさか……」 「また一つ?今度は何!? ……まさか……」
予感は的中した。それはマリナの胸を通過し下腹部に触れるとジンワリと陰部、尻にその侵略を進めていく。
「いや、やめて、そこだけはぁぁぁ!!」
怯えて悲鳴をあげる姿は皇女ファイターとは思えず、寧ろ怪物に襲われる女性のようだ。
今までずっとスーツの与える羞恥と苦しみと戦い、耐性もかなり付いてきた。
しかし、新しく見たそれは生物のようにマリナに迫る。恐れない方が不自然。
冷たい質感と共に下腹部を全て覆われると、誰も誘い入れたことのない女の場所にグイッと入り込み、深いところまで入っていく……
バイブと圧迫を同時に与えて、マリナはあられもない声をあげる。
腰を上下に揺らす姿は見たものを驚きと邪な感情に駆り立てるかも知れない。
「いやぁぁぁ……何だか、くっつかれてる、みたい……」
下半身をメインにガタガタと震えるマリナをよそに、会陰を伝ってアナルにまで入っていく。
「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」
実際に清潔なのだが場所が場所なので、自分の秘密を見られたような気分になってアナルに手を伸ばそうとするが既に遅い。
深々と入ったそれの与える冷たさに尻を突き出して背中を反らし、天井を仰ぎ見る。
「いやぁぁぁ……!!わたしの、そんなところ、やめて……!!
国の、みんなに、見られたら……」
なぜかふとアクバルの悪戯そうな顔を思いだし赤面する。
アナルに入ったそれは更に小振りな美尻を入念に包んでいく。
腰全体を苦しめるように揺れながらプレッシャーをかける液体金属。
やがて固まり、銀色のパンツになった。
同時にマリナの体にかかる苦しみも少しずつ軽減していく。 「はぁ、はぁ……!……これが……スーツ……!?」
金属が包んだのは全身ではなく、胸と腰だけ。下着のようなアーマーといった方が正しいかも知れない。
データを先に見ていたが、いざ着ると衝撃と恥ずかしさは並みではない。
「あの人達は何を考えているのかしら……!?」
決着まで後僅か。皇女は漠然とした不安を募らせていた。 マリナ 新たなる戦術 第6話
「はぁぁぁ!」
訓練場で無数のダミー機体を蹴散らしていくマリナ。
あるものは槍と弓で、あるものは合気道の投げ技で次々と破壊されていく。
一見格闘とは無縁そうなビキニ状スーツはマリナのモーションを見事機体にリンクさせて滑らかなモーションを実現させてくれる。
「すごい、前のスーツを格段に進歩させてる。」
あまりの成果に自身が纏っている金属の胸当てとパンツを繁々と見つめる。
大臣達の求めにそのままの姿でゆっくりとワイヤーで降りるマリナ。
その場にいる誰もが息を飲んだ。
元々持つ雅な美貌。訓練によりスレンダーさが増した抜群のスタイル。
そこに際どい場所だけをメタルに守られている。注目を集めるのは無理もなかった。
「むう、素晴らしいですな、マリナ皇女。」
「スーツを使いこなしていますね。」
大臣達は口々に誉めるがそれは半分おだて。それを知った上ではにかむ皇女。
「いえ、皆さんの力あってですから……
…………何をしているの、アクバル?」
「……え、これは……?……うわぁぁ!」
お尻に手を伸ばそうとするアクバルの腕をさっと掴んで軽く投げるマリナ。尤も、手加減していたから大丈夫だったが。
「ホントに困った子……」
「いてて、流石だな。マリナ様。」 シーリンはフフっと笑い
「段々勘が鋭くなっていったみたいね、マリナ。」
それ日から三日間、新型スーツでのガンダムの操作と、スーツを着ながらの生身の訓練に力を注いだ。
アクバルもそれを見学したいからという名目で城に泊り、マリナの姿を脳裏に焼き付けるのに注力した。
決着は明後日となったこの日、いつも通りシーリンから合気道を教わった。
「中々の性能ね、そのスーツ。見た目通りかなり身軽になってるわ。」
「ええ、姿は恥ずかしいけど動きやすいし、次の戦いが終わったらデザインを変えてもらわなきゃね……」
その語尾は相当強いものだった……
「全身金属というのも中々斬新よね。他のファイターからの視線が凄そう、色んな意味で……」
「ちょっとやめて、シーリン。全部金属は困り者よね……もっと目立たないようになれば良いんだけど?」
その後、マリナはシーリンと自室に戻ると訝しい顔をした。
「あれ?ない、ないわ。」
「どうしたの?」
「ビキニスーツの解除用リキッドがないの。」
解除用リキッドは、その名の通り金属でできたスーツを溶かす液体。
但し純粋に溶かすだけなので、人間の皮膚には何ら影響はない。
不思議がる二人。
そしてマリナは人差し指を口元に触れて…
「それに、アクバルもずっと帰って来ないのよね…」
「こんな時に人の心配?でも確かに気掛かりね。やんちゃな子だから…」 一方アクバルはまた戻ると言い残し長い間城の近くをブラブラしていた。
20人程客がいる酒場に行くと、早くも皇女のスーツの話を自慢げに切り出した。
様々な年齢の男達が目を輝かせて話に聞き入った。女達は苦笑いしたり、眼前の男達に不快感を示したりして正に十人十色だった。
「……というわけなんだ、すげえだろ!?」
「まじですげえ、ボウズ、いいもん見たな!」
「こぉの、幸福者ぉ!」
しかし、中には無法者もいた……
スキンヘッドの男は王宮の警備員として相当の強者だったが飲酒や暴力などの素行不良でクビになって荒れた生活をしていた。
逆恨みで何をするかわからない……!
彼は近付いてくると、好色な顔をズイッと寄せた。
「おい、姫様は今でも城にいるか?何なら今からでも会いに行きてえと思ってな。」
悪い予感がしたアクバルは自分の軽率さを悔いながら首を横に振った。
「いや、今はもういないと思う。……他に用事があるらしいから……」
「どうだろうな。まあ行ってみるさ……」
(この荒くれたやつ、マリナ様になにするかわからない。今大事な時だし……!
絶対に会わせちゃいけない!!)
「やめなよ!今姫様は大変なんだ!国の未来がかかってんだ!……あんたも国の一員なんだからわかるだろ?」
少年にとって精一杯の説得だった。しかし、元々血の気が多くて最近はそれが酷くなった男は聞くわけがなくアクバルの胸ぐらを掴む。
酒場の店員や他の客は何もできずじっとしていた。 「ガキが何言ってやがる!こっちはクビになってから毎日悲惨なんだ!一泡吹かせなきゃ腹の虫が収まらねえ!!」
「こいつ……!!」
「私に一泡吹かせたいならその子を離して。」
向かい合う二人が振り向くとそこには当の本人、マリナが白いコートを着て立っていた。
馴染みの少年を脅す男に怒りの炎を燃やす水色の目は、宛ら蒼い炎のようだ。
「マリナ様……」
「アクバル、中々帰ってこないから探してたわ。」
「そっちから来てくれるなんて丁度いい……まずはこれを喰らえ!」
襲いかかる男の猛烈なパンチ。それに動じず腕を掴むとそのまま相手を床に倒してしまう。
「この野郎……」男はタフなのか立ち上がってくる。
「ここでは皆さんの迷惑になるわ。どうしてもと言うなら誰もいない場所で…… アクバル、あなたは早く帰りなさい。」
「ありがとう、マリナ様……」
少し離れた空き地に向かい合う二人。
「ファイターになったからって自惚れんじゃねえ!!」
「あなたのような人、クビではなく警察に渡すべきでした。今終わりにします!」
(感情に流されちゃだめ。落ち着いて……今ここには誰もいない、存分に戦えるわ。)
自分に言い聞かせると、原っぱの時のように頭が冴え渡ってくる。
この数日であの冷静さをマスターしつつあった。それでもまだ明鏡止水まではいかないが……
「さっきは油断したがこれで終わりだ!」
男の方も少し落ち着いてきたのだろう。あくら腕っぷしが人並外れて強いとは言え相手はガンダムファイター。一筋縄ではいかないのを実感していた。 ナイフで襲いかかる男、その手はマリナに払われ地面に落ちる。
それからも男の攻撃を受け流し、地面に倒し続けるマリナ。
時にはパンチとキックを交えて柔軟に戦うが、何回も攻撃の応酬を繰り返す度に少しずつ疲れが出てきた。
時が経つ毎にそれは顕著になっていく。
(はあ、はあ……おかしいわ。こんなに早く疲れるなんて……訓練より激しく動いているから……?)
疑問と疲労を頭の中で振り払おうとするが、一瞬のモーションの鈍さを男は見逃さなかった。
「もらったぁぁ!!」
「しまった!」
男は逆にマリナを投げ飛ばすとナイフを拾い、コートを縦一閃に切り裂いた!
「いやぁぁ!」
「ほお、皇女、いいもん着てるじゃねえか。」
コートの下にはあのビキニ状スーツを来た姿。アクバルが心配で急いでコートを羽織ってきた。
「どれ、どんなかんじなのかねえ、マリナ様の素肌……」
「いや、やめて!」
震えている様は普通の女だった。もはやあの冷静さは吹き飛んでいる。
体力の減少も止まらず、息が激しくなっている一方だ。
「はぁ、はぁ……」(さっきより疲労が酷くなってきてる……)
「やめろ!マリナ様に酷いことするな!」
そこにやってきたのはアクバルだった。 「アクバル、なぜここに!?」
「俺を、助けようとして戦いになったから気になって……お前、やめろよ!」
「ほお、ガキがいい度胸だな、まずはお前からだ!」
アクバルに襲いかかる男。
咄嗟に少年の前に出るマリナ。勢いで放ったキックが相手を吹っ飛ばすが、体力の消耗は誤魔化せず、フラフラしている。細い肩を揺らして息をする。
疲労を現すように何滴もの汗が大地に滴り落ちる。
「はぁ、はぁ、負けるわけには……」
(これではアクバルを守りきれない。もっと冷静に……
明鏡止水は……)
疲労と焦燥を無視し、あの原っぱでの戦いを思い出し、再び頭が冴え渡る皇女。
全身に意識を集中させ、頭に幸せな思い出を浮かべる。
今は亡き家族との日々、シーリン達友人との思い出、ファイターに合格した日、喜んでくれる国民の顔。
その全てが彼女を落ち着かせ、穏やかにしてくれる。
そして、身軽さのためにコートを脱ぎ捨てたその体は少しだけ淡い色に輝いていた。
日の光に照らされた麦のような薄い金色……
銀色だったビキニまでも同じ色に変わり輝きを放つ。 「お前……一体……?」
「マリナ、様……?」
他の二人はただ驚き目を見張るしかない。
「この、早く倒れろ!」
飛んでくる拳を俊敏な鳥のように軽々と避けて、腹に凄まじいパンチをぶつける。
「うわぁぁぁ!!」
そしてよろめく相手の肩を掴み、大地に投げ飛ばす。
その音に木々に止まっていた鳥達は逃げ出す。見守るアクバルは茫然とする。
男は強かに打ち付けて気絶してしまった。
「あの、マリナ様!!ついにやったね!!」
「……アクバル。」
駆けて寄ったアクバルが手を伸ばした時、マリナの全身から光は消えて、力なく少年の上に倒れていった。
「うわ、マリナ様!ちょっと……!!」
金属のビキニに包まれた肢体は汗を大量に流しながら少年の真上で眠りについた。
どこか苦しみを見せる表情で…… 第7話
「マ、マリナ様……」
いきなりのことに驚くアクバル。
彼より背が高いとは言えマリナは軽かった。重みは感じない。
(な、なんか前にコクピットに入った時も思ったけど、肌柔らかいな……
でも体型は締まってるし……
元々いい匂いがするし、今は汗かいてるけど嫌な感じはしないし。ドキドキする……)
「いけね、なに考えてんだ俺は。」
不謹慎さに気付いて首を横に振ると、彼女を肩に担いでさっきの酒場に入り、そこの電話で王宮と警察署に報告した。これで敵の男は逮捕され、気絶したマリナはアクバルと共に王宮に運ばれた。
王宮の医務室にあるベッドに横たえられるマリナ。医師はメタルのスーツを外そうとするが 書く順番少し間違ったw
プチ訂正。
シーリンは解除用リキッドがなくなったのを医師達に告げると、メタルスーツを開発推進した大臣達を電話で呼んだ。
その間、念の為医師はメタルのスーツを外そうとするが
「取れないっ……並大抵の人間の力では無理か……ファイターでなければ。
……もしかして、皇女の疲労はこれが原因なのでは?」
心配するアクバルの隣にいたシーリンは不穏な表情で頷く。
程なくして、スーツ装着テストにマリナを読んだ大臣とメカニック達を連れてくるシーリン。
彼女は疑惑と嫌悪に満ちた目を彼らに向けていた。
中心的な大臣は普段の落ち着いたムードを崩さないながらも申し訳なさそうに
「いや、このようなことになるとは。
メタルスーツの開発は完璧だった筈ですが……
危険性に気付かず我が皇女にこんな苦しみを……
本当に面目ない。」
彼の目配せでメカニックがマリナのビキニ部分に液体を垂らした。
皮膚を傷付けずに少しずつ溶けていく液体。いざという時のスーツ解除用のリキッドだった。
「マリナの部屋にあった解除リキッドがなくなっていたんですよ。
心当たりありません?」
それとなく尋ねるシーリンを見て首を横に振る大臣達。
「皇女を初めとした皆さんに御迷惑を御掛けしました。私達は一旦引き上げます。」
帰っていく一同をシーリンは厳しい目で見つめていたが、直属の部下に目配せする。彼は大臣達とは距離を取りながら後を着けていった。 部屋の内側と廊下にはボディーガードを数名付けてある。
そしてシーリンは医師からマリナの着替えを受け取ると、静かな声でアクバルに
「あなたも一旦借りている部屋に戻って。」
「うん……」
脱力したように戻るアクバル。
やがて全て溶けて消えてしまうと、一糸纏わぬ姿になったマリナの汗を冷たいタオルで拭き服を丁寧に着せた。
「ごめんね、マリナ……」
横たわる彼女の手に自分の額を重ねた。その目には雫が……
「シーリンさん、わかりました。やはりあいつら仕組んでいました!」
一時間程してシーリンの部下がRCレコーダーを持って戻ってきた。
いつになくガタッと立ち上がるシーリン。マリナを起こしたかと思い、まだ寝ている彼女を見て安心すると部下に向き直ると、ボディーガード達にその場を任せて部屋を後にした。
「そう、それでは私の部屋に行きましょう。」
二人は録音を真剣に聞いていた。
あの大臣達とメカニックの声が聞こえてくる。
彼女は部下に命じて、彼らの仕事部屋のドアに盗聴機を付けさせた。
例え外側に付けても部屋の内側の音声を録音できる性能だった。 『極度の感情の昂りにより疲労を与える金属。メカニックさんは目の付け所が違いますな。』
『しかし、上手くいきましたな。皇女の汗のかきよう。あのスーツかなりのものですね。
目の保養にもなりますし。メカニックのあなた方のお陰ですよ。』
『お褒めに預り光栄です。それにしてもあなた達はそんなに女性の王様がお嫌いなのですね。
私は報酬をもらえば良いですし、男女どちらでも気にしないのですが。』
『ええ、ずっとアザディスタンは男が強い力を持っていた。それをあの娘が皇女になっただけでなく、ガンダムファイターにも……
男の立つ瀬がないと思いましてな。あのシーリン達の一派からは保守派などと言われ嫌われてますがね、ハハ。』
『まあ、そのお陰で新しいスーツの研究費も頂きましたしウィンウィンですがね。
そう言えば、彼女が次のファイトに負けても新しい男性のファイターを用意していると聞きましたが、その時は是非とも私を頼ってください。
私が彼に新しい装備を作りますから。』
『お願いします。』
シーリンは腕を震わせた。
国のためにずっと歯を食い縛ってきたのに、男のプライドの為に国の足を引っ張るばかりかマリナを苦しめたのだ。
「こいつら……本当に……」
部下はその様子を見守っていたが、そこにもう一人部下が現れUSBメモリを出した。
「ここには、あのスーツのハッキングデータがあります。保守派大臣の差し金でしょうが、とんでもないカラクリがありました。」
「……どんな?」
PCに接続すると、詳細データが表示された。
「……シーリンさん、落ち着いて聞いてください。
このスーツはユーザーの極度の闘争心を関知すると、その体力を減少させるスチール効果があるのです。 ……だからその、冷静さや明鏡止水の状態になっても闘う意思が強過ぎれば危険なことになります。
訓練では問題なくても、いざ実戦になるとスチール効果が発動するというものです。」
「……あいつら、よくも……」
ガタッ……!
その時、ドアの向こうに音がした。用心深く開けると……
「誰……マリナ?」
服を着た皇女がボディーガード数名と共にそこにいた。まだ疲労は完全に取れたわけではないが、顔色は少し良くなっている。
彼女の顔は悲しさと悔しさで溢れていた。
「シーリン……全部聞いたわ……あの人達、私を陥れようと……」
「シーリンさん、マリナ様がどうしても言うので……」
「ええ、私も大臣達が怪しいと思って、シーリン達が調べてくれていると聞いて、無理を言ってボディーガードの人達に連れてきてもらったの。」
シーリンは全員を部屋にいれると、旧友をそっと抱き締める。 「……今回のことはスーツテストを止められなかった私にも責任があるわ。
ごめんなさい。」
「いいのよ……私も気付かなかったし……あなたはいつも通りでいて、お願い。」
そのやさしい声に鉄の女と一部から噂されたシーリンは唇を噛み締めて、重く頷いた。
涙が流れるのを止められず顔を反らす。
泣いているのを見られるのに慣れていないのだ。
マリナは旧友のブルネットを優しく撫でて頭に顎をそっと乗せていたが、やがて上げた顔は「指導者」のそれになっていた。
シーリンも雰囲気の僅かな変化を察知してマリナを見つめる。
「皆さん、お願いがあります。録音テープにあった新しいファイターの存在、もしかしたら新型のMFも用意されているかも知れません。
だから……」
その願いを否定するものはいなかった。 第8話
マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。
「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」
メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて
「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」
トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。
「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」
ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。
背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると
「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。但し、ガンダムは使うな。
今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」
「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」
「まあ、君の父上のことは残念だった……」
トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。 マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。
「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」
メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて
「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」
トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。
「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」
ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると
「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。但し、ガンダムは使うな。
今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」
「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」
「まあ、君の父上のことは残念だった……」
トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。 「事情は全て聞かせてもらったわ。」
もう一つの声はシーリンだった。彼女と数人のボディーガードは銃を構えてこちらを睨んでいる。
彼女はRCレコーダーを再生させると、先程の会話が流れていく。
リーダーの大臣は悔しげに拳を握る。
「調べられていたか……」
次の瞬間、マリナはしなやかな動きで大臣の腕を掴み、一瞬の内に地面に叩き伏せた。
「ぐわぁ!!」
皇女の水色の瞳は落ち着きと共にどこか哀しげに見つめる。
「残念でした……みんなの力で国をされない発展させてきたのに……
あなた達が歓迎してくれないなんて……」
「当然だ、ずっと男が国をまとめてきたんだ。最近現れた小娘に……ぐぅぅ……」
マリナは冷然とした態度で腕を捻った。
「私は国のみんなが好きです。
それに、女性も含めて社会で活躍できるようになった現在(いま)も……
でも、このように邪魔をする人達には断固戦います……ファイターである前に皇女として。」
「ほう、いいねえ。その気合い。何も恐れてない瞳。倒し甲斐があるぜ。」
前に出てきたのはワインレッドの髪をした青年だった。
「……あなたですね、新しくファイターになるのは。」
「ああ……ギルガメッシュ・サムーンだ。覚えておけ。」
両者の間に冷たい熱気のようなものが走った。 次の瞬間、二人の拳がぶつかり合う。
そして、猛スピードで戦いを始める二人。
ギルガメッシュのパンチが飛んでくるが、マリナはそれを受け流し投げ飛ばす。
次の瞬間、ギルのキックが目にめ止まらぬ速さでマリナを蹴る。
技の応酬だった。
一方、こっそり逃げようとする他のメカニックや大臣達。
「逃がさないわ。」
シーリンは敵のボディーガードの銃弾を素早く避けて、急所を避けつつ射撃をして攻撃。
大臣達に素早い動きで追い付くと、彼らを合気道の投げで叩き伏せていく。
「ぐわぁっ」
「……マリナの痛みはこんなものではないわ。しっかり感じなさい……」
更に腕を捻り上げると、ギルガメッシュのトレーナーが襲いかかる。
しかし、その動きを避けて倉庫の壁に向かって投げ飛ばす。
「このっ、女に負けるとは……」
「女を甘く見るからでしょう。私も一応トレーナーよ……!」
そして、マリナを見つめるシーリン。
(きっとあなたなら勝てるわ……!私たちの希望だもの……)
そして、マリナとギルガメッシュは互いに力をぶつけ合い少し息が荒くなっていた。 「中々だな。でもあんた、昨日もっと疲れてたんだろ?回復が早いなんて恐れ入るぜ。」
「……ええ、あれくらい簡単に復活できなければファイターの資格はないわ。
あなたも相当タフね……」
男は演技ががった喋り方で挑発的に続けた。
「疲労が溜まるビキニスーツならもっといやらしい息づかいが聞けただろうな。おしいぜ。」
一瞬怒りが湧きそうになるが瞬時に冷静になり、キックを繰り出す。よろめいて後方に下がるギルガメッシュ。
「……っ、あのシステムは外したわ。」
「そうかい、それじゃあ皇女がいつもの調子に戻った祝いに始めるとしよう。メインディッシュをな。」
ギルガメッシュが携帯型起動スイッチを押すと、自動的に倉庫から飛んできたガンダムオーレス。
「ええ、終わらせるわ。」
マリナもガンダムファーラに乗り込む。
身に付けていたものを全て脱ぎ、全裸になるマリナ。
(シーリンも、みんなも私のために力を尽くしてくれている。
国がまた男性中心になれば、誰もが輝ける社会ではなくなってしまう……
絶対に、あんな人達に負けない……)
ってところ次の瞬間、心を落ち着かせ目を閉じる。今胸の内にあるのは闘いだけ。それ故に冴え渡る心。
胸に手を添えて、ほんのりと脚を開いてコクピット中央に立つ。
「モビルトレースシステム起動。」
布が凄まじい勢いを伴い降ってくる。 肩から腕、胸、脚……ありとあらゆる場所を瞬時に覆い尽くす巨大な布。
冷静な顔は圧迫に対し悩ましいものになり、豊かな黒髪を柳の葉のように揺らす。
「キィ、キツイ……でも、みんなのためを思えば……」
亡き家族、守るべき国民達、慕ってくれるアクバル、支えてくれるシーリンと家臣達……みんなのことを思い浮かべると自然と身体に力が入り、両腕を鶴のように広げる。
「う、うぐっ……このぉぉ……!」
布を千切り纏わせる。
「はぁぁぁぁ!」
身体を反らし、まるで空気椅子でもしているかのように腰と膝を曲げて力を込める。
「いやぁぁぁ!!」
尻を突きだしアナルにグイッと遠慮なく入っていく布。
「はぁぁぁぁ……!!」
膣にも入り込む布。前後からぐいぐいと刺激されるが、下半身に力を集中させ、目をカッと見開くと両足を股が割けると思わせるほど、交互にハイキックをして布を千切る。
こうしてスーツなら装着を完成させた。
「さあ、いきましょう。国のために絶対に負けないわ。」
「いいね、楽しませてくれよ。皇女さん。」
装着を終えた二人は機体越しに睨み合う。
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 第9話
「ハアァァッ!」
槍で襲いかかるマリナのファーラ。それを太い棍棒で受け止めるギルガメッシュのオーレス。
「甘い!!」
ギルの操作で棍棒のスイッチを押すと先端から斧の刃の形をしたビームが発生し、槍の先端を焦がす。
瞬時に後ろに下がるマリナ。
「斧……それがあなたの武器なのね。」
「そうだ、幾多のファイターに勝利するため。そしてお前に勝つためにな!!」
凄まじいギルの猛攻にも動じずに敵の刃を避け、槍と合気道の投げ技・捻り技を駆使して反撃するマリナ。
一連の体捌きに何とかついていけるギルの反射神経とスピード。
正に競り合いといった光景だった。
「やるじゃねえか!大臣達が見せてくれた映像で知ってたが、実物ともなると違うな!」
その声にどこか好戦と憎しみを感じずにはいられないマリナ。
「どうしてあなたはそこまで戦いを……
あなたのような人にはこの国を代表する資格は感じられない……」
「資格、あるさ。男であることと、力と目的があること。それだけで十分だ!!」
想像していた通りの言葉に嫌悪を感じながらも淡々と、しかし真剣に返すマリナ。
「男も女も関係ないわ。大切なのは国の未来よ。」
「関係ない、か……あるんだよ。おれにも、親父にも……」
「……?」
苦虫を噛み潰すような物言いに違和感を覚えながらも、素早く槍でオーレスの腕、脚、時には後ろに回って背中を攻撃するマリナ。 「ぐはっ!……この……舐めるなよ!」
頭に血が登ったような物言いをすると、オーレスの肩、腕、胸、脛、それらの各部からミサイルが発射されファーラの全身を狙う。
「きゃぁぁぁ!!」
体にミサイルの与えた衝撃と熱さを禁じるマリナ。
「はぁ、はぁ、……危険だわ。距離を取らなきゃ……」
弓矢でオーレスに激しい攻撃を加えてから一旦一キロ程離れるマリナ。心を落ち着かせ目を閉じる。冴え渡っていく感覚。
頭が澄んで白くなるようなあの状態になり弓を構える。
「この射撃武装にはこんな機能もある。もっと食らえ。」
再び発射される複数のミサイル。しかし今回は一つ一つが異なったベクトルに舵を切りながら向かっていく。
まるで群れを離れて巣立っていく鳥達のようだ。
あるものはマリナの右に、あるものは左に、背中や斜め上に移動して飛んでいくものもあった。
「囲むつもりね……」
あらゆるベクトルから狙う戦法。遠距離戦としてかなりの効果を持つものだ。
それでもマリナは表情一つ変えない。
寧ろ獲物を狙うハンターのように弓を携えたまま。
「ホーミング、タップリ味わえ、センパイ……」
目と鼻の先にあるミサイル達。
それらを素早く撃ち抜くマリナ。時に撃ち損ねるが、武器を持ったまま肘で払い落とした衝撃で破壊した。
合気道の訓練の傍ら、学んだ戦法だった。
「やるな……だが……」 ギルは猛スピードで斧を振りかぶり突進する。荒々しいだけではなく、マリナの微細な動きを観察し予測している。
「……させない……」
すっと目を閉じて集中力を高めるマリナ。
心の底から真っ白に、クリアになると槍を脚目掛けて突き出そうとする。
「この!」
ギルがキックをする直前、マリナはすっとガゼルのようにジャンプして重火器が入った肩を槍の先端で突き刺した。
「ぐ、おのれ……!!」
そのまま敵の肩を勢い良くキックして頭上に飛ぶ。
「よくも、踏み台に……!!」
「覚悟しなさい!」
雨のようなアローの嵐。それを幾つかが降りかかるが傷付いたのは肩と腕大半。
失格を避けるためか他国以上に頑丈に作られた頭はほぼ無事だった。
そして、斧を回転させ矢の幾つかを弾き返すギルのオーレス。
パワフルさと繊細で柔軟なモーションが合わさった見事な斧捌き。
「きゃぁぁぁ!!」
ダメージ受けつつも体勢を立て直し弓を槍にチェンジさせ突撃するマリナ。
斧で受けとめるオーレス。互いに一歩も引かない鋼の攻防。
「なぜだ、お前はそこまでして闘う?女であるのに……!」
「関係ないわ。私は皇女として皆に幸せになって欲しくて……」
「その言葉、鼻につくな。俺には、国よりも、負けていった男の方が大事だ……!」 「負けていった男……」
次の瞬間、マリナは戦場の空気が一瞬で変わったのに気付いた。
何か鬼気迫るものが張り詰めて自分を捕らえるような気がした。
金縛りではないが、敵の男にはそれを感じる。
ギルの息は上がり、声はまるで地の底から出すような低いものになって……
「俺の親父は、ファイターの選考で女に負けた……
アザディスタンはずっと男が英雄視される国だったのに……!
怨みは俺が晴らす……!!」
「…………」
何も言えずに黙っているマリナ。
アザディスタンでのファイター選考は、国の発展のため女性の活躍を目指す改革派の力も大きかったので、候補者には女性も数人いた。
彼女は元々性別に拘らなかったので、男だけが持て囃される状況が哀しかった。
だからギルの言葉にも哀しみと呆れを覚えていた。
「はぁぁ!!」
「!?」
次の瞬間、一糸乱れぬ速さで猛禽類のように襲いかかるオーレス。
彼の言葉によって反応が遅れたマリナはギリギリで斧を受けとめるも、パワー不足が祟って押し返される。
「親父は、あれからも格闘家を続けながらも落ち込んだまま、だから俺が、屈辱を晴らす……!」
「……ずっと、そういう気持ちで戦ってきたのね……。でも、苦しいだけだわ……」
マリナは意識を集中させると目を閉じた。 (私が選考で勝ってきたファイター達も同じ気持ちだったのかしら……
悔しがっていたのは目にしたけど、ここまでだったなんて……
それなら私は絶対に……)
「終わりだ!!」
ギルの猛攻に身動ぎしないマリナの身体は少しずつ白金色に輝きを増して、ガンダムファーラも同じ色になっていく。
「何だ、これは!!」
突然の事態に驚くギルに構わず、凄まじいスピードで向かうファーラ。
地上で見守るシーリンも叫ばずにいられない。
「あれは、明鏡止水……!マリナ、貴女って人は……!」
「はぁぁぁ……」
「うぐっ!」
槍の攻撃に押され圧倒されるギル。
パワーもスピードも、精度も段違いだ。
「ギル、眠りなさい……」
どこか優しさを含んだ声で告げるマリナ。
槍はガンダムオーレスの頭部を貫き、その機体は誰もいない地上に落下していく。
「ぐわぁぁぁ!!」
悲鳴を上げるギル。遂に激痛と衝撃で意識を失う。
それを察知するとマリナとファーラから輝きは消え、元の状態に戻った。
ギルとそのトレーナーを含む保守派の大臣達は反逆罪で逮捕された。
こうしてマリナ達のファイトを邪魔する者はいなくなった。
「貴女、ああいう風になれるのね。マリナ。教えた側の私も驚いたわ。」
「……ギルガメッシュの気持ちを知った時、ああなったの。
シーリン、私明日もこれからも勝ち抜くわ。そうすれば皆が男女問わず前に進めるようになるわ、きっと……」
マリナの目元は穏やかだった。 >>539
ども、励みになりますノ
第10話
決戦の日、砂漠で向かい合う二人。
眼帯をしたレザーはボキボキと拳を鳴らしているが、対するマリナは落ち着いた佇まいで相手を見ている。
「姉ちゃん、あれから疼くんだよ。あんたにやられたこの片目が。」
「……あなたをそうしたのは私です。しかし勝たなければいけません。」
二人ともガンダムを呼び出すとコクピットに入った。
レザーはニヤニヤと笑っている。
「あの姉ちゃん、今頃目茶苦茶驚いてるだろうな……」
一方マリナは素早く全裸になると、コクピット中央に立った。……その瞬間……
「きゃあっ!!」
真空刃のようなものがマリナを襲った。
程好く引き締まった腹から血が流れる……
不幸中の幸いか、ギリギリで頭への攻撃は避けられたが、傷付いたそこを押さえて見つめた先には細身の黒装束を身に付けた男が立っていた。
手には彼女の鮮血に染まった刃物が握られている。
「あなたは……」
「俺はエジプトの殺し屋。レザーに雇われたエジプシャン忍術の使い手
しかし美味しい仕事だ。皇女様の、それも素肌を拝めるなんてな……」 「殺し屋……どこまでも卑劣ね……」
卑劣という言葉の意味には勿論、自分の産まれたままの姿を見られた恥辱も含まれていた。
胸と股間を隠し、白い肌を赤に染めて唇を噛んでいる。
「と言っても殺しはしない。レザーにもファイターとして止めを刺したいプライドがあるからな。
少しでも弱らせて欲しいって話だ。」
「そんなもの、プライドではないわ!」
珍しく語気を強める自分に気付き頭を冷やすマリナ。
(いけない……ここで怒っては相手の思う壺だわ……
私と、みんなの努力が水の泡になってしまう。)
少しずつ赤みが引いていく皇女の柔肌。
向かってくる相手の動きをかわして肘にチョップしてから投げ飛ばす。
「ぐはっ!」
衝撃で気絶する殺し屋。
「闘いを汚さないで……」
そのまま合気道の要領で相手を砂漠に放り投げると、完全にハッチを閉めた。
「……忘れなきゃ。モビルトレースシステム起動!」
凄まじいリングが下りてくる。
全身を覆うように張り付いていくスーツ。これがマリナの羞恥を忘れさせてくれる気がした。
しかし性的なことには潔癖で繊細な彼女。
見知らぬ暗殺者の視線に照らされた体はスーツの与えるいつものプレッシャーに一層ナイーブに反応してしまう。
控え目な美乳を布でホールドされて、小刻みにピクピク動く華奢な全身。 「い、いやぁぁぁ!!」
乳首は自ずと激しく主張するのを自覚して頬を赤らめる。
「キ、キツイィィィ……!でも、負けない……!!」
既にいない暗殺者を殴るつもりで、握り拳を宙に振り上げて布を千切る。
「いたい、このぉぉ…………!!」
切られた腹部から出血が滲み、蒼系スーツと混ざり合い、赤みの強い紫色になる。
それでも耐え胴体を激しく動かし、布を上半身に定着させた。
見られた羞恥は未だ僅かに残り、スーツに股間とアナルを締められれば、脳と下腹部から熱が込み上げるような感覚を禁じ得ない。
「ここも、見られたのよねぇ…………!
でも、切り替えなきゃ……
ハッ……!」
グイグイと食い込み摩擦を無遠慮に与えるスーツ。
僅かに汁が漏れて、スーツを濡らしたのを知るが構っておれず両足を強かにスイングして布を千切る。
「ふぅ、何とか終わったわ……!
正直お腹の傷が少し気になるけどあの時に比べればどうということはないわ……」
彼女の頭を過ったのは、あのビキニスーツで苦しんだ記憶。
ファイターとしてあんなことになるとは思っても見なかったが、あれ程の疲労を思えば今のダメージをあれこれ言ってはいられない。
「さあ、いきましょう。」
二人の声が重なる……
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 第11話
時は少し遡り、マリナが砂漠に出撃した少し後……
アザディスタンの少年アクバルはマリナの王宮にある小さな部屋でパソコンを開いていた。
彼はマリナと会った以降プログラムやカメラ機能の勉強を少ししていた。
(皇女のスーツ装着を目の当たりにしてから……というのが正確だが。)
それを活かしてやはり個人的にファイトのサポートをしようとしていた……はずだった。
「俺もマリナ様の力になるからな。」
少年らしくエッチに笑う彼。実はマリナの乗ってきた小型飛行船とガンダムファーラに小型発信器と小型カメラを付けており、いつでもパソコンを通して彼女の様子を見れていた。
「一国民としてマリナ様の様子を見守らなきゃな。……とその前に……」
言い訳のように言うと、キーを操作してもう一人の女性ファイターの姿を拝み始めた。
実はマリナの機体だけでなく、彼女のものにも同じ装置を付けていたのだ。
「あの人のことだからマリナ様を気遣ってるはずだし。
それに……皇女様と甲乙着けがたいスタイルだからな。」
件の彼女は純白のイナクトに乗っていた。
それもモビルトレースシステムを搭載したタイプ。
「さて、行きましょうか。」
(今のマリナならきっと……
だけど敵はあの男……卑劣な罠があるに違いないわ……!)
マリナの秘書・シーリンはワイヤーで登っていった。
鋭く冷静な目にはマリナへの友情と心配の念が込められていた。 いつもは滅多にその思いを口にすることはないが、今回の一連の出来事があったのだ。今回のような影のサポートに及ぶのも無理はない。
……で、それを知りつつも男子特有のエッチな気持ちに駈られて彼女の様子をパソコンで盗み見るアクバル。
「許してくれよシーリン。俺は皇女様のサポーターだから、秘書のサポートも必要だからさ。
……どれどれ?シーリンさんの勇姿は、と。何だこれ?」
アングルやズームを巧みに使いながら、画面に食い入るように迫る少年。
しかし彼女が持った薄いケースに首をかしげる。
「まあいいや。それはともかく始まった♪」
普段着ているグリーンのスーツ、白い下着をアッサリ脱ぐと、スマートな肢体が姿を見せた。
ファイターのマリナ程ではないが、僅かに引き締まった体。
モデルのような細いボディー。
軽いスポーツを嗜む女性といったスタイルだった。
「おお、流石シーリン♪抜群のスタイルだよな〜眼福眼福。
皇女様より胸大きくて背が高いから迫力あるな〜」
昂り始めるアクバル。アソコも大きくなりピクピクしている。
然程筋肉がないこと以外は、マリナよりいくらか迫力のあるボディーをしている。
(外交相手の政治家とは違った意味で)王宮と多少の縁を持ったことは年頃の少年にはかなりのメリットだろう。
そして例のケースから取り出したのは半透明の布二枚。
MFとトレースシステムに明るくない彼は不思議がる。
「あれは一体……?」
「デミモビルトレースシステム起動!」
コクピット中央に立つと凛とした低い声と共に布の一枚をその豊満な胸に貼り付けた。 それは見る見る内に面積を拡大し、彼女の腹、腕に広がっていく。
「う、いやぁぁぁ……」
「な、どうしたんだ。呻いちゃって。
いつもはあんなにしっかりしてるのに。
……それにしても、あれがスーツ?」
広がるだけでなく、キュウキュウと彼女の上半身を締め付けながら纏われていく布。
下腹部を覆えば当然の如く女性器にも伸びて入り込んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、いざという時の為に、ガンダムファイターに準ずる力を持つ者や装着に不馴れな軍人に用意されたシステム。
小型布製パッドにより、あまり大きな負担をかけずに纏えるものだ。
スーツはファイターの性器を守るため、そこに徹底して密着する必要がある。
しかしそれが偶然にも、苦しみと同時にある種の喜びを与えてもいるのは否めない。
「い、いやぁぁぁぁ!……ううう……!」
思わず内股になりワナワナと震える才女を見て、アクバルは興奮を禁じ得ない。
我慢の証がズボンにシミを作る。
そして思わず股間に手が延びる少年。
「あの冷静なシーリンがあんなに興奮してる……
シ、シーリン……俺もやばいよ……!」
今の彼女をガードするのは、両腕と胴体、女性の秘所。
素肌を晒している背中や下半身は心なしか震えている。
これからのことを思い羞恥しているのか期待しているのか……
負担の少ないスーツの性質上、すぐに苦しみは消えるともう一つのパッドを見つめるシーリン。
「はあ、はあ……!あとはこれね……」
それをゆっくりとアナルに嵌め込むと、キュウウウと音を立てて谷間に吸い込まれていく。
「き、きゃぁぁぁ!」
いつも動じない彼女の悲鳴に益々エキサイトするアクバル。
「す、すげえ。マリナ様も凄かったけど、シーリンも凄い……」 アナルにピッタリ張り付いたそれは勝手に尻全体を覆い、しまいには背中と両脚に延びていく。
美しい肩甲骨も、スラリとした脚も覆われて装着を終えた。苦しみもなくなり汗を拭うと……
「アクバル、見てるんでしょ?」
「え、何でわかったのさ!?」
いきなり焦り出すのを尻目に彼女は淡々と続けて。
「小型のメカがあったから。あんなの簡単にわかるわよ。」
怒るでもなくクスッと笑う彼女にはマリナにはない余裕が見てとれた。
それがまたアクバルをこそばゆい気持ちにさせて頬を赤らめさせる。
「さあ、今から行くわ。」
既に表情を切り替えて勢い良く出撃するシーリン。
そこにはまだ見ぬ敵を探し求めるハンターの色があった。 第12話
シーリンはイナクトのコクピット内のモニターからマリナの様子を見守っていた。
アクバルのサポートの下、ハッキリとした解像度だった。
ファイトの場所を目指す飛行船内のマリナの姿が見てとれた。
それはいつもの健気さだけでなく、今までのファイトに裏打ちされた自信が感じ取れて旧友としてフフッと笑みを漏らした。
そこには生来の淑やかさだけではない強さがあった。
「こんなに強くなって……」
「おっ、シーリンもそういう顔するんだね。」
アクバルの言葉に一瞬顔を強張らせて、どこか凄みのある笑顔を作ると……
「アクバル、ありがとう。あなたのお陰で助かるわ。
でも、彼女にあなたの覗きを知らせたら……」
「わ、わかったよ。」
黙り込むアクバル。
(スーツ装着を見られてもビクともしなかったのに、笑顔見られただけでこれだもんな……
よくわからないや……)
一見冷徹に見えるシーリンは自分の役目だけでなく、友人を助けるのにも全力を尽くし集中力を傾ける。
だからこそ、スーツ装着を見られても動じないのだが、普段の自分とは違うギャップを見られるのが恥ずかしいのだろう。
マリナを乗せた小型飛行船と並んで飛行する自動操縦モードのガンダムファーラ。
しかし、何か細いワイヤーがどこからともなくガンダムの胴体にマウントされると、細い人影がスルスルと内部に入っていった。
「あれは一体……? マリナ、聞こえる!?今あなたの……
…………何? 通信がジャックされてる……」 急いで通信で声をかけようとするが、シーリン側の画面は砂嵐。一向に繋がらない。
マリナのガンダムコクピットにも通信しようとするがやはり繋がらない。
「どうしよ、シーリン……」
「落ち着きなさい、アクバル。今国の自衛隊に救援信号を送ったわ。」
(あの敵パイロット、やはり卑劣ね。
スパイを送ったのね……)
少し時は流れてマリナはエジプトのファイター、レザー・クルスームが駆るガンダムグレイブと対戦していた。
「どうだ!」
レザーが放つ大型の砲弾。それを時に交わし、時に手で払うマリナ。勿論弓矢で貫くのも忘れてはいない。
素早く近付き、ランスモードに変形させた武器を向ける。
(暗殺者にやられたお腹は痛むけど、今は大事になってないわ……)
傷付いた腹部に意識をある程度傾けながら闘うマリナ。
「この、噂には聞いていたがこの短期間に新しい武術をマスターするとは!」
「覚悟!」
「この!」
回転させた槍で突撃するが、交わされる。
「そんな!」
「強くなったのはお前だけじゃねえ!俺もお前にやられた片目を補うために動きを見切るテクを覚えたのさ!」
そして砂漠用のホバー機能を活かしてマリナの機体に突き進むレザーのガンダム。
ライトブラウンの砂塵をマリナに吹き掛けながら迫り行く鋼の巨人。 しかしマリナも負けてはいない。
この一週間に身に付けた冷静さを発揮し、ホバーの駆動音から正確に位置を割り出し槍を突く。
だが、ダメージは少しだけ。固い装甲に手こずり中々決定打を与えられない。
防御力もアップしたのだろう。
短期間にあらゆる面をアップさせるのは至難。パワーやスピードよりも優先事項だったようだ。
「手応えが違う……なら、速さの源を!」
後退し距離を取ると、アローを放つ。
鋼の鳥のようにホバーの至る箇所に見える機械同士のジョイント部を撃ち抜くマリナ。
しかし、弾き飛ばされた無数のアローがマリナの元に飛んでいく。
「やはり全てタフなのね。」
手捌きで凪ぎ払った瞬間……
「喰らえ!」
「きゃあ!」
レザーのラリアットがマリナの腹部に決まった。
暗殺者にやられた腹部は少し開いて血が少しずつ流れていく。
「こんな時に……!」
しかし経験は裏切らない。すぐに頭をクリアにすると、迫るグレイブの腕を掴んで見事に投げ飛ばす。
「ぐわあ!!」
ホバー時とは比較にならない程の砂塵を四方に飛ばしながら熱砂に倒れるレザーのグレイブ。
「この……!」 何とか立ち上がり殴りかかるレザー。そこには最初に見せた見切りのテクはない。
更に腕を掴んでは投げ、倒れる直前にまた投げるマリナ。
砂漠に点在する岩場に当たった傷も手伝って、グレイブのホバー部分は破壊されていた。
脆くなったホバーを弓で跡形もなく撃ち抜くマリナ。
「もうすぐね……うっ、……」
弓を落としてしまうマリナ。
暗殺者にやられた傷はやはりファイトの妨害になっていた。
「あいつを雇って良かったぜ……」
ニヤリとするレザー。そして、巨大な鋼のケースを吊り下げたジエットがレザーの隣に降り立った。
「さて、換装型の本領発揮といくか……」 第13話
突如現れた箱に驚くマリナ。
「これは一体……?」
得意気に語るレザー。
「これはな、新しい戦場だよ。いや、あんたにお披露目するステージだ。」
「新しい?まさか……」
マリナは思い出した。レザーは初対戦で語った、ガンダムグレイブは様々なエリアでパーツを換装する特徴があるのを。
ホバーを破壊されたなら、それに替わる装備で対抗するということを悟った。
そして巨大な鋼のケースは砂漠の中にあって、砂漠ではない「ドコカ」……
レザーはグレイブの砂漠ホバーをパージすると、ファーラに掴みかかり怪力でケースに落としてしまった。
「きゃあ!ここは……水?」
ケースの底にはぶつからなかった。寧ろ冷たい水の中でプカプカ浮いている自分と機体。
「水中戦ね……」
「その通り、そしてこれがマリンタイプだ!」
ケースを運んだジェット機から射出されたパーツを装備したグレイブ。
背中にはエネルギータンクを内蔵したパックパック。
砂漠用に替わるパーツとして、水中用軽量エンジンを秘めた新たな手足。
薄いマリンブルーのモードだ。
勢い良く水中にダイブしてタックルするグレイブ。
「きゃぁぁぁ!!」 「きゃぁぁぁ!!」
(何て突進力なの!それに水中は初めて……)
生身では泳げるがガンダムを用いた水中行動は未経験。
地上や空中とは違い、水がスムーズな動きを妨げている。
腹の傷も痛む。
吹き飛ばされた勢いを利用して壁際を蹴り飛ばし、水中で体勢を建て直す。
(冷静に……)
頭をクリアにして冷静になるが、初めてのシチュエーション。
パーフェクトな冷静さではなく、明鏡止水には遠い。
(もっとメンタルトレーニングが必要ね……)
(このままでは外にある弓を拾えことも難しいわね。合気道だけでなんとかしないと……)
「あんた水中は慣れねえみたいだな。これがデビューにしてラストだ!」
「そうはいかないわ。ハッ!」
猛スピードで繰り出される砲弾をいなし、時にチョップやキックで破壊しながら接近するマリナ。
そして、腕を掴んで数回投げる。
「うわっ……!!」
と言っても壁や大地のある他のフィールドとは違い、ただ投げるだけでは意味がない。
できるだけ腕の捻りとベクトルを意識してケースの壁や床に叩きつける。
レザーとしては、ケースという鋼で囲われたフィールドを選んだのが裏目に出た。
マリナの技とケースの硬さが与える衝撃によりグレイブは所々傷付き、機体のシルエットは歪んでいく。
砲弾の発射口も幾つか破壊されていた。 「流石合気道をマスターしただけのことはあるな……!だが切り札があるぜ!」
グレイブが腰にマウントしていたライフルを構えると、放たれたのはビームでも砲弾でもなく、「水」だった。
今までの攻撃とは比較にならないスピードで鮫のように狙ってくる「水」。
「きゃぁぁぁ!」
ファーラの腹部にヒットすると、自身の腹の傷に応えて悲鳴を上げるマリナ。
「これは、一体……!!」
息を強めてフラッとする皇女。決して傷が広がったわけではないが、モビルトレースシステムは機体のダメージがファイターにも伝わる仕組み。
腹を押さえて傾けるしなやかな体。
「これはな、ウォーターガンだ。圧縮した海水を高速で打ち出す為のな。
皇女様にはキツいだろ。」
「本当に、卑怯ね……!」
沸き上がる怒りを押さえて何とか頭をクリアにしようとするマリナ。
一方シーリンのイナクトは確実に近付いていた。 第14話
暗殺者がマリナに倒されても、彼が仕掛けた通信妨害は解除されずに残っていた。
不安を抱えたままイナクトで飛んできたシーリン。
「マリナ!
レザー、相変わらず卑劣ね……!」
敵のやり口に怒りを燃やす彼女の近くに何体かのイナクトが現れた。
エジプト政府が雇った、ファイト開始以前に軍事や格闘に携わった者達が操る機体のグループ。
勿論、シーリン同様デミトレースシステムを使っている。
「やはりサポートがいたのね。来て正解だったわ。
しかし、ファイトに他人の手出しは御法度。
私はただ、レザーが用意しそうな邪魔物を倒してマリナを勝利に導きたいだけ。」
「あんたと皇女の関係は調べがついてる。
親しい間柄らしいからな、サポートに来ると思ってたぜ。
レザーのやり方は好きじゃないがこっちにも生活があるんでな。
サポーター同士のファイト、勝たせてもらう!」
「その言葉、そのまま返すわ。」
凄まじいスピードと合気道の洗練された技量で敵を倒していくシーリン。
鋼のオアシスに目を向ければマリナは苦しみながらも闘っている。
気付けば硬く手を握っている自分がいた。
(ファイターには手を貸すのはルール違反。でもあなたはきっと……!)
腹部に受けた海水の痛みに耐えている時、親友の機体を偶然目にするマリナ。
「シーリン!私のために……負けていられないわ!」 既に冷静さを意識し始めていた彼女のメンタルはポジティブさを増し、少しずつ生まれる余裕……
クールさを取り戻し、痛みを堪えてジャンプ!
咄嗟にグレイブの背後に回り、ウォーターガンを手刀で叩き落とす!
素早く構えるマリナにレザーは焦る。
「しまった!アジな真似を……!」
「お返しよ!」
「ぐわあぁぁぁ!」
弓と銃では僅かに勝手が違うが、普段のファイトで射撃はお手の物。
手足のパーツを装甲と手足に設置された銃口が破壊され、グレイブのモーションは鈍くなっていた。
マリナのような傷はないとは言え、圧縮・高速の海水に痛みと戸惑いを隠せないレザー。
「よくも……」
「エネルギー切れ?、仕方ないわ。」
心をクリアにしたとは言え偽れぬ息切れ。それでも力を振り絞り水槽の壁を蹴ってジャンプ。
それを背後から追うグレイブ。
「逃がすか……!!」
外に落ちた弓矢を拾うと水槽ごとグレイブを高速で撃ち抜いていった。
「ぎゃぁぁぁ!」
当たり一面金属と爆炎、そして水満たされた砂漠。
「はあ、はあ……!勝ったのかしら……明鏡止水になれなかったのが残念だわ。
……!」
爆炎からゆっくり立ち上がるグレイブ。 「まだまだだぜ。俺は終わっちゃいねえ……」
更に新たな飛行船がやってくる。
そこから射出されたのは、豪腕と両脚。
中破した水中装備をパージすると、新たなそれらを瞬時に装備したグレイブ。
その姿は最初の砂漠用装備とほぼ変わらない形状。
脚にホバーは付いているが、色はホワイトなので少し軽量なイメージを受ける。
「また同じ……」
「いや、一味違うぜ。野性動物の如く鋭いセンサーを備えたモードだ。
お前の明鏡止水とやらに対抗するためにな。」
「……いいわ。続けましょう。(ここまで来たら腹の傷なんて気にしていられないわ。)」
ゆっくり立ち上がり、今までの幸せな出来事を走馬灯のように素早く思い返すと、
次第に黒い髪は黄金色に、肌とスーツは薄い金色……所謂プラチナブロンドに染まっていた。
腹の痛みはあってないようなもの。
互いに迫っていく二体。
それを見つめるシーリン。
「マリナ、遂にやったわね……
あら?アクバル。通信接続直してくれたの?
ありがとう……助かったわ。」
シーリンのコクピットの右側スクリーンに映るアクバルの顔。
「ああ、俺もこれでもメカを多少は知ってるからね。あ、シーリンやばいよ!」 第15話
その声に反応すると、また数台のイナクトが飛んできた。
エジプトからの援軍だ。
「また何体も……いいわ、来なさい。ここはマリナの正念場。だから……」
果敢に向かっていくシーリンの機体。
「邪魔はさせないわ!」
華麗な合気道と射撃で敵を撃破しようとするシーリンのイナクト。
しかし、敵のモーションはかなり繊細かつ正確。
しかも、機体のパワーも少し以前のものより上がっている。
「きゃあ!」
「今度の敵は更にファイト慣れしてるわね。エジプトの代表候補だった格闘家達かしら……」
腹部を殴られて砂漠に落ちるシーリンの機体。
ファイターほどの筋力はないので痛みはかなりのものだ。
落ち着いた美貌を歪ませつつ救援信号を送るシーリン。
いざという時の二段構えだ。
その間、砂漠の地面に射撃して、砂塵を飛ばし敵を翻弄するシーリン。
当たりを逃げつつサポートが来るのを待って一分もしない内にもう一機のイナクトが来た。
「何だ。たったの一体じゃねえか。」
「その一体が侮れないわ。」
瞬時に今の機体を捨て、新たなイナクトに乗り込むシーリン。
自動操縦させた状態で遠くに飛ぶ新型イナクト。それを敵も追う。 アクバルは通信でその一部始終を息を飲んで見守った。
(シーリン、また……)
突如今まで来ていたスーツを破り生まれたままの姿になるシーリン。
先の戦闘で美しい華奢な身体は汗に濡れて、少年を一層興奮させた。
「き、今日は何て日だよ……」
一方少しふらつきながらコクピット中央に立つと凛とした声で……
「モビルトレースシステム起動!」[newpage]降りてきたのはスーツの布ではなく、銀色の無機質な物体……リキッドメタルスーツだった。
マリナが以前付けたそれをイナクトに装備したものだ。
より自分のモーションを機体に反映させる、謂わば切り札。
但し、感情が昂る程ファイターの体力が減少してしまう諸刃の剣。
マリナの苦しみを目にした彼女は覚悟を決めながら臨んだ。
(マリナが明鏡止水を会得した今、私も感情に振り回される訳にはいかない……
いつも通りに闘って、素早く勝つ。)
「うぐっ……!」
冷たい金属はシーリンの胸に張り付き、肩甲骨までその面積を拡大していく。
より良いフィットを実現するため、正規のスーツ同様圧迫が凄いのだが、これはシーリンの為にかなりマイルドな強度に設定されている。
従って傷や骨折の心配はないが、今まで素人や準ファイター用のデミスーツしか着ていない彼女にはやはり負担だった。
「ひ、冷える……それにキ、キツイ……!!」
歯を食い縛るシーリン。苦しさゆえに少しずつ赤みを差す肌。
金属特有の冷たさにより一時的にできる鳥肌。 胸を覆うと、シーリンは膝に手を着いて息切れしていた。
「だ、大丈夫か、シーリン!!」
「ええ、何てことはないわ……」
思わず声を出すアクバル。それに苦し気に微笑んで応えるシーリン。
そして第二波が来た。新たなリキッドがシーリンの会陰にフィットした。
「あああぁぁぁ……!」
その冷たさにナイーブなそこはピクンとして、霰もない声を上げる。
会陰をセンターにして、膣とアナルに延びるそれに女特有の高揚を隠せないシーリン。
爪先を伸ばし、尻を突きだし下半身全体を震わせる。
「ぐぐっ、ぐ、やはり、キツイ……
でも、マリナの苦しみに比べれば……」
下腹部と尻を覆って装着は完了した。
振り返って追ってくる敵を滑らかなモーションで翻弄し、時に投げ飛ばし、時に撃ち抜くシーリン。
「……流石ね、このスーツ。かなりの反映だわ。作った大臣達は酷い連中だったけど。」
残り三体になった敵。
彼等は相手のコクピット内をモニターで見ると目を輝かせた。
「うひょー、めっちゃ別嬪じゃねえか!」
「しかもあのスーツ、戦闘用とは思えねえ!」
「これは色々使えそうだな。」
口々に交わされる言葉を通信で聞いたシーリンは「やっぱり」という態度で呆れていた。
「終わらせるわ!」 しかし、今の敵は何れも熟練。ファイターの候補の中でも特に強いのだろう。
シーリンの攻撃を何度か受けつつも、基本的に隙のない攻撃で追い詰めていく。
「きゃぁぁぁ!」
ライフルによる射撃、パンチやキックを受け次第に消耗するシーリン。
凡そそれが10分程続くと、さしものクールな彼女も冷静さを欠いてくる。
「はあ、はあ……手強いわね。敵が送り込んだだけはあるわ。」
やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。 大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。
いざという時の為に持ってきた服だが……
次の瞬間、イナクトはビームを受けてよろめいた。
「うぐっ……敵襲……?」
倒れるシーリンの前にコクピットハッチが轟音と共に歪んで破られていく。
疲労に包まれた彼女は抵抗できない。
そして入ってくる敵の男達。
「どうする、この女。ここで……」
「いや、お楽しみはちゃんと人質として利用してからだ。」
それが意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった。 最終話
いくつもの矢をグレイブに放つマリナ。
明鏡止水故のエネルギーにより、鋼のそれらは熱い光に包まれ凄まじいスピードを伴い遅い来る。
対する相手は持ち前の高精度センサーを活かして回避するが、半分は命中しダメージを負っていた。
それでもタフさがウリの名うてのファイターと、防御に長けた機体。
簡単には折れずにいた。
「明鏡止水……なんつうもんをマスターしやがった……」
機体をセンサーモードにしたことで明鏡止水状態のマリナに対応し、五分五分のファイトができるレザー。
しかし、彼本人は会得しておらず、感覚もマリナ程クリアではない。
よって機体とファイターのバランスが取れているのはマリナの方。どうしても疲れが出てしまう。
「はあ!」
「……はっ!」
いくつものミサイルを機体から発射するが、それらを槍で破壊しながら進むマリナ。
グレイブの腹に膝蹴りを食らわせ、よろめいたところを投げる。
「うわぁぁぁ!!」
砂の中に倒れ込みながらも起き上がるレザー。
(前よりもパワーが上がっている……!
明鏡止水が身体能力をアップさせるのは聞いていたが、非力なマリナをここまで強くするたあ……)
「ここでケリをつけるわ。シーリンを探さなきゃいけないし。
……この音は?」
上を向くと三体のエジプト用イナクトが飛んできた。
モニター操作でアップにすると黄金の皇女は我が目を疑った。 「シーリン……!!」
一体のイナクトの肩に設置された木製の十字架。そこに縛られているのは一糸纏わぬ姿のシーリンだった。
しかも先程の戦いで疲労して気絶しており、クールで知的な顔には苦しみが見える。
更にこの熱い砂漠によって大量の発汗、更に上空で飛んでいる機体に捕らわれている。
熱で体力を奪われているシーリンは危険な状態だ。
「あなた達、シーリンに何を……!?」
シーリンを捕まえているパイロットがモニター通信に顔を見せた。
「この女には人質になってもらったのさ。
お優しい皇女様には親友を無視できねえだろ?
それともファイト優先するか?」
「……どこまで卑劣なの……!」
今まで見せたことのない怒りの表情……空色の穏やかな瞳は宛ら青い炎のようにユラユラと……
マリナとファーラの黄金色は光をなくし元の色に戻っていく。
ファーラが握った弓を思わず壊しそうな程力を込める拳。
不自然に熱い汗が頬を、喉を、胸元を伝えば己の思いに気付く。
「…………」
(ここで感情に任せればシーリンは犠牲になってしまう……ならば私にできることは……)
汗に濡れながらも鎮める心、そこに浮かべるのは今シーリンと共に過ごした数えきれない日々。
二人で微笑んだこと、そして厳しい言葉をかけられながらも支えてくれたこと。
ずっと一緒だった時間…… 「…………」
再び輝く彼女と機体。
さっきよりも眩しく、淡い金色に包まれると、レザー達の視界から一瞬姿を消した。
「……どうなって……!?」
全ての敵が驚いた次の瞬間、ファーラはイナクトの腕を優しく捻りシーリンは零れそうになる。[newpage]…………しかし、すぐに彼女を鋼の掌で掬い光のような速さで何処かに飛んでいった。
同時に凄まじい閃光がレザー達を襲い、それが治まった時には再び皇女は姿を消していた。
「……何だ、一体何が起きた!?」
あまりの早さにグレイブのセンサーも反応できなかった。
一方ここはある岩場。
マリナはそこに隠れると、シーリンを丁寧にコクピットまで運んだ。
悲しそうに、慈しむように親友の顔を撫でるマリナ。
「シーリン……私のために……ここまで傷付いて……
今、終わらせるからね。
そこで見守っていて……」
熱と疲労に包まれたその裸体に布をかけ、コクピットに設置された安全ベルトで固定した。
「漸く見つけたぜ!覚悟しろ、皇女。」
上空にいるのはレザー達。
相手を見据え飛んでいくマリナ。
「ハッ……」 呟いて放った矢によって打ち砕かれるイナクト達。
瞬時に落下して見えなくなる。
それらの内、シーリンを人質にしていた男が機体から投げ出されると、ファーラの手がスッとその体を叩いた。
「うわぁぁぁ!!」
男は凄まじい絶叫を上げて砂漠に激突した。
仇討ちとは言え、人殺しを望まないマリナは手加減を心得ている。
しかし、大きなダメージだ。
「この……やってくれるじゃねえか!!」
接近するレザー。しかし、内心後悔していた。
ガンダムグレイブをセンサーモードに切り替えたとは言え、自分の予想を上回るマリナは驚異。
明鏡止水を会得しないで、ほぼ機体性能に頼ったことを悔いるが後の祭。
(しかし、ここで俺も相手を見極めなきゃいけねえ!)
瞬時に冷静になり殴りかかるが、マリナは何食わぬ顔でその豪腕を受け止め、捻って投げる。
「ぐわぁぁぁ……!!」
青空に昇る大男の悲鳴。
しかし、上空からいくつもの矢が雨のように降り注ぐ。
敢えなくボロボロになるグレイブの装甲。
「ぎゃぁぁぁ!!」
光のような速さで降り立つファーラ。
「シーリンの痛みはこんなものではないわ……!」
更に投げ飛ばすと、あまりの衝撃にグレイブの頭部は歪んでいき、その動きを止めた。 「…………?……マリナ……?」
ゆっくりと開かれていくシーリンの視界。
そこには見慣れた華奢なシルエット、しかし見たことのない輝きを放つ友がいた。
ゆっくりと振り向いたその顔はいつもより柔らかく、喜びに満ちていた。
「シーリン……良かった、気が付いたのね……」
「マリナ、あなた、その姿……」
「みんなが、そしてあなたがいてくれたから勝てたのよ。
ありがとう、一緒に戻りましょう、シーリン……」
金色の皇女は友を優しく抱いた。 これで終わりです。
最後に個人的に考えたマリナのファイターとしてのスペックです。(機体の方ではないです)
ノーマル状態と明鏡止水状態の各ステータスを
10段階評価です。
因みに両方の状態共に、レベル10は全盛期のマスターアジアの強さです。
ノーマル状態
パワー 3
スピード 7
スタミナ 4
格闘 3⬅合気道を含めれば8
反射神経 9
明鏡止水状態
パワー 8
スピード 10
スタミナ 7
格闘 9⬅拳闘ではなく殆ど合気道による強さ
反射神経 9
以上です。
今までありがとうございました! これで終わりです。
最後に個人的に考えたマリナのファイターとしてのスペックです。(機体の方ではないです)
ノーマル状態と明鏡止水状態の各ステータスを
10段階評価です。
因みに両方の状態共に、レベル10は全盛期のマスターアジアの強さです。
ノーマル状態
パワー 3
スピード 7
スタミナ 4
格闘 3⬅合気道を含めれば8
反射神経 9
明鏡止水状態
パワー 8
スピード 10
スタミナ 7
格闘 9⬅拳闘ではなく殆ど合気道による強さ
反射神経 9
以上です。
今までありがとうございました! >>568
カイさん、完結乙であります!
まだ新規投下分を熟読&編集していないので
まとまった感想はまた後ほどとさせていただきますが
とりあえずちょっと一言
リョナ心を大変くすぐられる作品でした…後半はシーリンまでとは
いやはや >>570
住人さん、今まで読んで頂いて光栄です。
ホントにありがとうございます!
リョナ……意識はしていませんでしたが、言われてみればそのタイプに入りますねw
真剣に戦う女戦士とそのピンチと勝利を描きたい目的で書きましたが、
それはリョナに通じるものがありますよねw
何て言うかな、書いてる時の自分を客観視したら、女子プロレスを見て興奮してる客と似たような感じだったかもw
住人さんのお陰で新しい発見がありましたw
後、これは書き忘れてたんですが元々一連の作品は自分がpixivに書いたのを新たに載せたものなんですよ。
予め書いておけば良かったですよね……失礼しました。
纏めて投下するより、反応を見て時間を空けて……という判断でしたが、(決して格好つけて勿体つけてたわけではないんですよw)
こうして読んで下さる方がいて嬉しいです。
ここに載せるに当たって足りない部分を付け加えるのができたのも個人的に良かったです。
長くなっちゃいましたが、ラストスパートをそちらのペースでごゆっくり読んで頂けたら嬉しいです。
それではノ 今まで保守して下さった皆さん、ありがとうございました❗
お陰でスレが流れずに済みました。
&お礼書くの遅れちゃってごめんなさい💧 ども。
今度AGEのレイナを主役にした短編or中編を書こうと思ってます。
本編の彼女は殺伐としたハードな感じでしたが、今回は悲しいトラウマ要素を除いたライトな話です。 件の小説、頭の方だけできました。
短編になりそうですね。
原作では地球連邦の卑劣な保身に嫌気が差して敵のヴェイガンに寝返ったレイナでしたが、この話ではダークな要素は無くしました。
『とにかく明るいレイナ』
A.G.150年代……ヴェイガンとの戦いを制する為に地球連邦軍は最新鋭の機体を開発し、その実用化に励んでいた。
ここで描くのはその直前のステップ、つまり試験に力を傾けたテストパイロットの物語。
「はい!お疲れ様ー!」
高機動型の機体、Gバウンサーの発展型から降りてきたのは筋骨隆々の歴戦パイロットではなく、20代の女性パイロット。
凛とした高らか声で他のテストパイロットとスタッフ達に呼び掛ける。
ヘルメットを脱いで露になったのは、柔らかい植物をイメージさせる薄いグリーンのサラサラヘアー。
爽やかなブルーの瞳。
疲れを微塵も感じさせない健康的な表情。
連邦の中でも期待の星、レイナ・スプリガン。
パイロットとしてだけでなく、Xラウンダーとしても一際鋭い感覚を持っていた。 何人かの男性スタッフは涼しげな綺麗さに表情を綻ばせている。
「いやー、凄かったね。今日も。あんなに素早い機体を乗りこなせるなんて。」
スタッフの一人が誉めると彼女は自分の頭に手を当てて
「いえ、皆がいい機体を作ってくれたからよ。
それにチューンナップもバッチリだったし。」
他のスタッフやテストパイロット達にも挨拶して帰ろうとするが、こんな声が聞こえてきた。
「腕は凄いし美人だけどさ、何かデカいじゃん?男並みだし。」
「しっ!聞こえるぞ!」
「…………」
それは彼女が気にしていることだった。
何しろ身長182センチ。
体型は女性らしいスレンダーさがあるが、彼女にメロメロな男でも気後れしてしまうかもしれない。
これでも男装の麗人的なムードがあるらしく、女性からの告白も何度かあったが全て丁寧に断っている。
麗人よろしく澄まし顔で格納庫を後にする。
(あいつ……なんてことを……)
「…………あー、私だってもっと普通の背丈になりたかったよ!」
「おいおい、どうしたんだい?」
「…………え?」 清涼な声を珍しく荒げていると、反対に落ち着いた男性の声が聞こえたので振り返ると……
そこにいたのは茶髪の同年代の男性だった。
普段は余裕のある凛とした顔を赤らめて、蒼い目を左右にキョロキョロするレイナ。
薄い唇は微妙な三日月型を作って引きっている。
「え、あの……私ついついおっきな声だしちゃって……
あの……確かあなたは……」
「最近赴任したジラード・フォーネル。因みに少佐だよ。
君は確か……レイナ・スプリガン少尉だっけ?」
「しょ、少佐です……」
(あ、いけないまたキツい言い方になっちゃった……)
軍隊なので階級は重要だが、今の訂正の仕方はどこか子供っぽい不機嫌さがあるのに気付いて恥ずかしくなるレイナ。
「ああ、これは失礼。同格だね。
さっきの奴の言葉は気にすることないさ。
それじゃあ。」
爽やかに笑って去って行くジラードを私はポツンと見ているだけだった。 支援サンキューです。
続き書きました。
「しかし、今日もレイナ凄かったな。」
「ケッ、あいつのこと誉めるなよ。コーヒーが不味くならぁ。」
同僚の言葉に不機嫌になる連邦のテストパイロット。彼の名はマイケル・バリス。
ギザギザした青空のような色の髪。鋭い金色の目。
前にレイナをデカ女扱いした男だ。
腕は確かだが態度は悪く、僻みが強い。それは勿論レイナにも向けられていた。
機体や装備の特徴を理解し活かすスキル、これが彼以上であるのが嫉妬の理由だった。
事故が起きない限りテスト操作は命の危険はないが、前述したスキルは前線にいるパイロットが実戦を難なく潜り抜けるには必要不可欠なものだった。
謂わば実戦の為の土台だった。
同僚は『やっちまったなー』と思いつつ苦笑いして。
「でもお前も凄いじゃん。かなりの高成績だし。」
「ああ……ありがとよ。でもレイナが来てから俺の影は薄くなっちまった……
しかも、しかもだぜ?最近来たジラードって奴も相当強いし。
ああ〜どうすりゃいんだ……」
「ああ、あの人か。割とフランクだしリラックスした感じだけど強いよな……
肩の力抜いた感じが強さの秘密なのかな……
でもそもそもXラウンダーだからな……」
「肩の力……どう抜きゃいんだか……」
「ま、俺らはあくまでもテスター。裏方さんだ。あんま競い合っても仕方ねえさ。」 一時間後、テスト用の宙域で新装備を施したGバウンサーが2体並んでいる。
乗っているのは各々レイナとジラード。
最強クラスのテスター同士の模擬戦にスタッフ達は心を踊らせた。
今回の装備は両機共黒いアーマーを被せた防御モード。
機体本来の持ち味であるスピードを多少犠牲にしてはいるが、そのアーマー内に収納した多数のミサイル及び小型シグルブレイドを射出する機能を有している。
謂わば防御と射撃に重きを置いた拠点防衛型である。
レイナは初めてのことに柄にもなくドキドキしていた。
普段は余裕で臨んでいるが、今回は自分とあのジラードとの戦い。
彼のテスト中の光景を何度か見たが、流石流石Xラウンダーと言うべきか、機体を活かす能力は自分と互角と思える。
模擬とはいえ緊張するのが自然だった。
そしてスキル云々以前に彼の存在が頭から離れないのだ。
コクピット内でレバーを握り締めて唇を固く結んでいるが、喉は僅かに震えている。
(ジラード、あなたの力を身を持って体験することになるのね……)
「レイナ、ねえレイナ!?」
「……ハッ……」
物思いに耽っていたので呼び掛ける声に気付かなかったようだ。
慌ててモニターに映る彼に作り笑いをして見せる。
「アハ、ごめんなさい、聞き逃したみたいで……」
「はは、模擬戦よろしくね。」
「ええ、こちらこそ……」 「テストスタート!」
監督の声と共に飛行し出す両者。
順調に操作して互いに距離を少しずつ詰める二人。
「…………」
(やはりいつもよりは機体が重いわね……
でも操作はしやすいわ。
それに、以外と私の手が軽くなったような気がする……
ジラードが声をかけてくれたから……?)
そう思うと気が軽くなりいつもの調子が瞬時に戻ってきた。
意識を集中すればいつも通り、Xラウンダーとしてのクリアでシャープな感覚が心を包む。
「ハッ……!(ジラード、避けられる?)」
凛とした掛け声で小型シグルブレイドを打ち出すレイナ。
それを紙一重で回避するジラード。
刃は背後の隕石を砕いていく。
「凄い威力だな。それじゃ俺も。」
余裕の態度でミサイルを3発連射するジラード。
「…………」
敢えて避けずに突き進むレイナ。
防御に徹したモードなので自信があったのだろう。
予想通りミサイルの爆発を受けても、傷一つ付かないアーマーにその場にいた誰もが感心する。
「ハッ……!」 更にブレイドを発射するレイナ。
武器の発射スピードと飛行スピードは軽量なブレイドの方に分がある。
しかし、スピードだけで決まらないのが戦いであり……
ジラードの方はミサイルを更に打ち出す。
「そんな大きなミサイルじゃ……いえ、違う!」
レイナは自分の誤解と油断を瞬時に悟った。
大振りなミサイルだが、ジラードの射撃は正に正確無比そのもの。
鋭い感覚を持ったレイナの打ち出す小型刃……一見回避は難しそうだが、その弾道をクリティカルに瞬時に見極め打ったジラード。
「これは……」
Xラウンダー特有の繊細なセンスと操作で放ったミサイルはストレートにブレイドを破壊していく。
「凄い……こんな人がいたなんて……」
今まで卓越した操縦能力とXラウンダー能力で他の追随を許さなかったレイナ。
しかし、自分の発射弾道に沿った射撃ができるジラードに驚きを隠せない……
「よし、次は接近戦に移ってくれ!」
監督の指示で近付いていく二機。
機体の仕様通りスピードは多少犠牲になってはいるが、両者共美しいラインを描くかの如く互いに組付く。
「ハア!」
レイナが相手の肩を掴むと同時にジラードも肩を掴む。
機体のマニュピレーターと両脚を互いに素早くぶつけ合う格闘戦。
その後、(接触は避けているが)ビームサーベルの斬り合いを果たすが甲乙付けがたい戦い。 「よし、テストは終了!ありがとう!皆のお陰でいいデータが取れた!」
監督の一声でテストは終了。
格納庫に戻ると二人のパイロットは機体から降りてくる。
「レイナ!凄いな。流石君もXラウンダーだな。」
当の彼女はまだ驚きと興奮で声が出なかった。
……それにある種の気恥ずかしさがある。
顔は前を向いているが伏し目がちで。
「……ええ、あなたみたいな人初めて見たわ。
…………その、何て言うか、アリガトウ。
……いい、模擬戦ができて……」
「ハハッ。それは俺も同じだよ。ありがとう。」
屈託なく笑うジラードを見て高揚が高まるのを誤魔化せない…… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています