サザの特徴は“茨城愛”だ。独自の商品開発(モノづくり)や販売促進(コトづくり)を行っている。
 店頭で販売するコーヒー豆の一つに「徳川将軍珈琲」という商品がある。
水戸徳川藩主斉昭の七男で江戸幕府最後の将軍となった徳川慶喜にちなんで開発した。
焙煎は慶喜のひ孫・徳川慶朝氏(今年9月死去)が担当した。
200グラムで1500円もするが、月に1000袋以上売れる。
 このほかにも、茨城大や筑波大と共同開発したコーヒーなどもあり、地元色を前面に打ち出す。
コーヒーとケーキを頼めば1000円を超えるが、焙煎ばいせんや抽出に
手間をかけた味や香りは地元ファンの心をつかんでいる。
 創業は1969年。創業者で会長の鈴木誉志男さんは、コーヒーの栽培・焙煎・抽出にこだわってきた。
南米コロンビアに自社農園も持ち、息子の太郎さん(副社長)は、
コーヒー品評会の国際審査員としても活躍する。
 最高級として知られるコーヒー豆「パナマ・ゲイシャ」をいち早く日本に紹介した。
サザは「コーヒー情報の宝庫」として、コーヒー好きの客や従業員が自然と集まる。

今も人気の「モカソフト」
 長野県軽井沢町や神奈川県鎌倉市などに店がある「ミカドコーヒー」(本店・東京都中央区)も名店だ。
創業1948年の老舗のカフェは、日本のコーヒー文化史に残る業績が二つある。
 その一つが、国内で始めて「セルフカフェ」を導入したことだ。
購入した商品を自ら席へ運ぶセルフカフェ方式は、ドトールが元祖と思われているが、
実際はミカドコーヒーの創業者・金坂景助さん(故人)が1955年ごろに導入した
「スタンドコーヒー」(立ち飲み)がさきがけとされる。
 もう一つは、コーヒーを使ったスイーツ「モカソフト」の開発だ。
1952年に開業した軽井沢旧道店から69年に生まれた商品。
夏の避暑に来る別荘族の「コーヒーが飲めない子供向け」につくられたソフトクリームだった。