本格的なコーヒーの風味が楽しめるソフトクリームは、大人にも人気となる。
1970年代に女性誌『アンアン』や『ノンノ』を愛読する女性“アンノン族”に支持され、
モカソフト片手に歩くオシャレな女性の姿は当時の軽井沢の風物詩だった。
 今でも人気のモカソフトは、夏の最盛期に軽井沢地区の店を合わせて1日に3000本近く売れる。
 「モカソフトのつくり方は発売当時から変わらない。
深煎りしたコーヒー豆をドリップして淹いれ、そのコーヒーにミルクを混ぜ合わせて、
少し冷ました後でアイスクリームの機械に入れてつくる『コーヒー屋のソフト』です。
1日で売り切れる分だけを仕込み、つくり置きもほとんどしない」
 ミカド珈琲商会社長の鳴島佳津子さん(金坂さんの娘)はこう話す。
 大量生産する製品とは違い手間はかかるが、その手づくり感が支持されている。
モカソフトは限られた従業員しか扱うことができず、
社内では“巻き手”と呼ばれていることも教えてくれた。

広島にある「モーニング」発祥の店
 愛知県や岐阜県の喫茶店は、朝の時間帯にドリンクを頼めば、
無料でパンやゆで卵、フルーツなどがつく「モーニングサービス」で有名だ。
このモーニングの発祥については、諸説あるが、広島説が有力のようだ。
 その元祖とされる店が、広島市にある「ルーエぶらじる」だ。
広島電鉄・鷹野橋電停近くにあり、現在はコーヒーに、パン、サンドイッチ、
カレーライス、トーストがセットになったモーニングを提供する。
 終戦直後の1946年に広島駅前で創業。51年に現在の場所に移った。
モーニングセットが生まれたのは55年という。現店主の末広克久さんは
「先代(父の故・武次さん)は新しもの好きでアイデアマン。
モーニングについては、お客様に『夢の3点セットを出したい』と言っていました。
コーヒーとパンと卵料理のことです」と振り返る。
 こうして生まれたのが、コーヒーに目玉焼きがのったトーストのセット。
当時、コーヒーは1杯50円。モーニングは60円で提供した。これが評判を呼び、
週刊誌が記事として取り上げたことで全国に広まった。
56年に撮影された店の外観写真にも「モーニング」の文字が写っており、
モーニング発祥の証拠とされている。