ここで一旦、
所謂「日本海軍が追求した全軍のアウトレンジ戦法」
について、その“概念”を確認します。

かつては上に例示されているような
戦艦大和の主砲、酸素魚雷
等の長射程(最大射程距離)から
「日本海軍は水上艦隊決戦を行えば、米艦隊の射程外から一方的に有利な戦闘を行えたはずだ」
「それは机上の空論であり、そんな出来の悪いシミュレーションゲームのような御都合主義は実際の戦闘では望めない。」
といった両極端な事が海戦本等に記載されていました。
(恐ろしい事にライターや研究者だけではなく、旧軍関係者や海自の現役高級幹部ですらそんなことを執筆しています)

しかしここ十年くらいの歴史群像の記事等で、以下の内容が一般にも知られるようになりました。
「実際の日本海軍が構想した所謂全軍アウトレンジ戦法とは、戦闘の要訣である先制と集中を実現するための手段である。
即ち砲雷撃等の先制により敵に先んじて一撃を加えることで敵の隊列等を乱し混乱させ、
事後の決戦距離(場合によっては副砲で敵戦艦を射撃できる距離)での体勢を有利にする手段である。
艦隊戦闘の最終段階では決定的戦機を捉えて全軍突撃を発し、各隊が協同しつつ決死的肉薄攻撃を行う。
つまり、敵の射程外から一方的な攻撃を行い自らは攻撃を受けない、というような御都合主義な戦法ではない。
ただし、砲戦距離の延長自体は当然ながら研究を続行している。」

最も上記の説明は、戦史叢書や砲雷関係の専門書等で40年以上前から記述されているのですが。