宇宙でカンパイ!
2017年4月14日 エヴゲニー・レフコヴィチ

宇宙飛行士というのは、地上の人々が想像するほど、ロマンチックな職業ではない。 飛行経験者なら誰しも言うだろう。
自由時間もほぼないし、身体に多大なストレスを受ける、たいへんな重労働なのだ、と。

そんな日々にあっては、ロシア人というもの、たとえそこが宇宙であろうとも、お祝い事と飲み会なしでは生きてはいられない。
では、宇宙飛行士たちはいかに知恵を絞り、ステーションに酒を持ち込んだのか?

宇宙にはじめて酒類が持ち込まれたのは1971年のこと。 送り先は宇宙ステーション「サリュート7号」だ。
ある飛行士が宇宙滞在中に誕生日を迎えることになっていたので、友人の技師らがスタート前にプレゼントを用意した。
血圧計のベルト部にアルメニア・コニャックをひと瓶、忍ばせておいたのだ。
 
のち検査局が調べたところ、ほとんどどのステーションにも酒の隠し場所があった。 その数、数十か所。
当局高官もこの事実を認めている。 宇宙飛行士選別総局共同代表のヴャチェスラフ・ロゴジニコフ氏によれば、宇宙飛行士の
ほぼ全員にこうした「裏ポケット」があった。
「厳に禁じられていることではあるが、アルコールは出てくるのだ。どこから出てくるかなど、私は知らない」?

ロゴジニコフ氏はシラを切ったのに違いない。
どのような手口で宇宙船に「必需品」が積み込まれていたかについては、「ソ連英雄」受賞飛行士イーゴリ・ヴォルク氏の証言も
上がっている。 氏は1984年、ソユーズ宇宙船での出発に先立ち、塩漬けキュウリをバケツ2杯、それからコニャックを買った。
 
「宇宙船の座席の重心位置に規定されているより多くの重量を持ち込むことは不可能だった。
しかし、パートナーのヴォロージャ・ジャニベコフと一計を案じた。
出発前の一週間はお茶とパン以外何も食べないでおいて、体重を1.5〜2sしぼり、すべての品をセロファン包みに封入。
そうして宇宙服の下に、装着の際に収容したのだ。 こうしてスタートしたのさ。 塩漬けキュウリを腹巻にして」(続く)