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そしてナチ婦女子には屈強なスラブ男子の暖かく力強い抱擁が待っていた

あれから半世紀がたった今でも、ヒルデガルド・ブーブリツは、恐怖の記憶におののいている。家族とともに東プロシアを逃げ出したときの体験だ。
ある夜のこと、ブーブリツは家族や仲間と民家の地下室に隠れているところをソ連兵に見つかった。
ソ連兵たちはまず、腕時計を巻き上げた。次に欲しがったのは、女だった。
「私たちの中に女性教師がいた。45歳で男性経験のない人だった。」と、ブーブリツは語る。
「彼女は、10人のソ連兵にレイプされた。血に染まった下着姿で戻ってくると、大声で泣き叫んだ」
この教師の母親は、娘を抱きかかえてこう言ったという。−−「私がカミソリの刃を持っているから」。
そして、親子は外に出ていった。
「二人は森の中で死んでいた」と、ブーブリツは言う。

アンドルー・ナゴースキー「終戦後の『民族大虐殺』」ニューズウィーク日本版1995年5月17日