藤井四段「いい手でした?」 解説者もうなる驚きの戦略

将棋の中学生棋士、藤井聡太四段(15)が7日、第76期将棋名人戦・C級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の
7回戦に勝ち、開幕から7連勝とした。終盤で解説者も驚くような手を放ってからは徐々にリードを広げ、14時間近い長期戦を制した。

対戦した高野智史四段(24)の順位戦の成績はここまで5勝1敗。50人いる同組で、三つの昇級枠を争う競争相手の一人だ。
後手番の高野四段が、流行中の戦術「雁木(がんぎ)」を選択。その後、互いに戦機をうかがう展開が続き、
午後8時を過ぎてからようやく本格的な戦いが始まった。

藤井四段は一時守勢に立たされたが、戦いの中で玉を安全地帯に移動させることに成功。後手が△8六歩と歩を打った図の
局面を迎えた。次に△8七歩成が狙いだ。
藤井四段はここで▲9七桂と香取りに打った。これが、ネット中継の解説者が「すごい手ですね」と驚きの声を上げた一手だった。

この局面では、▲6四銀と打って、相手の飛車や角を取りにいく手も考えられる。しかし、銀を手放すのはリスクもある。
▲9七桂は▲8五桂と取ってから6四に香を打つ狙いだが、自分の飛車の働きを悪くするような場所である上、相手の玉からも遠いため、
考えにくい。対局後、高野四段も「見えていなかった」と明かした。

ここで持ち時間の差が影響する。高野四段は既に持ち時間を使い切っており、1手1分以内に指さなければいけない。
△8七歩成と攻め合いを選択したが、藤井四段は間髪入れず▲8五桂。自分が指し手を決めている時は、すぐに着手して相手に
考える時間を与えないのも戦略の一つだ。

以下、△7七と▲同金△9三桂と進行したが、これは藤井四段の狙い通りの展開。相手の攻めの主力である飛車を取り、20手ほどで勝ちきった。
終局は午後11時48分。対局開始から13時間48分が経過しており、昨年12月にデビューしてから最も長い戦いだった。

対局後、藤井四段は「最後の最後まで難しい将棋だった」と振り返った。▲9七桂については、「感触が良くないと思ったのですが」。
自信はそれほどなかったようだ。記者が「解説の棋士がほめていた」と伝えると、「いい手でしたか? ありがとうございます」と言って、笑顔を見せた。