最近、谷川・羽生戦について「完全に升田大山レベルを抜いた」とある若手が言ったということだが、
それは若気の至りから生まれた発言である。若手のレベルが著しく上がったことは事実で、多くの若手は
力をつけ四段で早くもトップの座を脅かしたり、タイトルを取ったりする。驚くばかりの成長ぶりを見せている。
その層の厚さに感心する。しかし各時代にそびえ立った巨木にはまだ到達していない。いまその若い樹木の
中で一頭地を抜いている二つの樹も、真の巨木になるかどうか、これからの課題である−と私は考える。
(内藤國雄、1993年)