増田六段は反則勝ちなんか欲しくなかった。
ただそれだけ。
一重に藤井七段を実力で倒すことだけを望んでいた。
万一藤井七段が格好つけて自分から反則負けを言い出したら、一生恨まれたろうね。
多分一生口利かないだろうね。
だから増田六段が反則だと言わないならそんなものはなかった。
彼は正々堂々実力で藤井七段と互角に渡りあえることを自ら証明しようと、そのためだけに指していた。
そして、投げることで敗け逃げしなかった藤井七段の態度も、十分立派だと思う。
俺だったら反則したかも?と思った時点で、無責任に格好つけて敗け逃げの投了を宣言したと思う。
藤井七段を非難する人達は、増田六段に勝ちを差し出すことがいかに傲慢な行いかよく考えて欲しいものだ。
増田六段はこの日の対決を一年間心かり待ち続けたのだから。