【飯島栄治七段の解説】
https://www.sanspo.com/geino/news/20200710/sot20071005000004-n1.html

藤井七段の攻略ポイントとして、渡辺棋聖は〔1〕終盤力を発揮させる前に中盤で攻める
〔2〕攻めは強いが受け(守り)には弱さがある−と見抜いたのだろう。

中盤戦で主導権を握るため、渡辺棋聖は仕掛けた。36手目から4手続けて銀と玉を動かしては
元の位置に戻し、手待ちした。「攻めてこい」というサインだ。
千日手を嫌がる藤井七段は応じ、攻めさせられた。そして渡辺棋聖は反撃に転じた。

藤井七段はぎりぎりで連打をかわしていたが、90手目の△9九飛で決定的にペースを乱された。
自玉に危機が迫っているのを自覚しておらず対応に迷い、83分の大長考。ここで勝負の流れは渡辺棋聖へ傾いた。

藤井七段には、第1、2局でみせた圧倒的な強さが感じられなかった。あと1勝でタイトルが取れるという力みがあったのだろう。

後がない渡辺棋聖は開き直っていた。彼の持ち味は用意周到さと緻密さ。藤井七段が王位戦第1局で
木村一基王位(47)を破った「角換わり腰掛け銀」からの戦い方を分析したのだろう。
序盤から迷いなく指したことで持ち時間に余裕ができ、精神的な重圧をかけた。

この完勝で渡辺棋聖は手応えを感じたはずだ。藤井七段は弱点を露呈し、これまでの流れを変えかねない敗戦となった。