私は西の国の研究を一手に担う学徒の博士。我が自由研究院に足りないもの……それは

「なんでしょう……現金ですか?」
「私の苦労など分からぬでしょう我が愚弟よ」
「ここに足りないもの……現金ですか?」
「現金から離れなさい我が愚弟よ」

私は今こそ自由院の博士号を頂いていますが、名門木立家の出身です。
その木立家の弟にして西の国でもっと評価されるべき男と私が思っている男・西暴頭。
振り筒を持たせたら最後、人が変わったように凶暴な戦い方をするのでそう呼ばれています。
自由院に久しぶりに呼んだからでしょうか。なんともテンションが低いです。

「僭越ながら兄、山々様をお呼びになったら良かったのでは?」
「残念ながら緻密様直々の便りが山々様にも届いてね。今年は山々様を呼べなくなったんだよ」
「それは……なるほど、足りないのはもう一人の人材ということですか?」
「そうだね……って西暴頭、もう私と一緒に戦うつもりなんですか?」
「そうでもないと僕のことなんて呼ばないでしょう?」
「それは確かに」

私はそれなりに人脈がある方だと自負しているので人選びには困りません。
しかし私と西暴頭というあまりにも華がない二人では芸術点を稼げません。

「まぁ演習に芸術点は無いですけどね」
「でも私と西暴頭の二人では見ている人がムサ苦しいでしょう?」
「それはそうですね」

そう、つまり何かしら華やかな人間が必要なのです。例えばですが都竜や紫電様などはとても華やかなタイプです。所謂映えを気にするならその辺でしょうか……

「しかし都竜は結婚しましたからね、選びません」
「兄は卑屈な男ですね」
「なんとでも言いなさい。幸せの絶頂期にいる男など浮かれぽんちきで弱いものです」