老婆心 日色恵(ひいろ・けい=観戦記者)

このたび、報知新聞社の後援で第1期の女流名人位戦が行われることになったのは誠に喜ばしい。これからは、男性だけでなく女性に対しても普及を進めていかなければならない。

ところでここに一つ、懸念される問題があった。あった、と過去形で書いたのは懸念が多少は解消されたからである。もったいぶらずにずばり言えば、奨励会の少年たちのことである。

彼らは明日の四段、明日の名人を夢見て精進しているが、志半ばで棋士への道を断念した者も多い。雌伏13年、26歳でようやくプロ入りした椎橋金司四段などは、さぞや辛苦に満ちた13年だったろうと想像される。

奨励会員は対局・研究、それに記録係などが日常生活の多くを占め、まさに将棋漬けの日々を送っているが、彼らの作品の発表場所はない。いっぽう女流名人位戦に出場するのは昨日までお稽古ごととして将棋を習ってきた奥さん・お嬢さんであり、厳しい修行をしてきた訳ではない。それなのに女性というだけで報知新聞という立派な土俵が与えられた。
昨年までは古豪新鋭戦に奨励会の出場枠があり、成績優秀な三段が出場できたが、この棋戦は昨年限りで終了となってしまった。

古豪新鋭戦の打ち切りに加えて女流名人位戦の新設は、三段にとってはダブルショックであろう。「あ〜ああ、俺も性転換でもしたいなァ」などと考える三段が出てはこないかと老婆心で心配したのだが、捨てる神あれば拾う神ありで、次期新人王戦に三段の出場枠が設けられることになり、私は胸をなでおろしたのであった。
男女を問わず、第二軍の育成は重要な課題であることを忘れてはならない。