大山は53歳のときにも『勝負のこころ』という著作があり、これを読んだ中原が「家に帰ってページをめくるにしたがって、どんどん引き込まれ、いつしかペンを手にし、心に留まった箇所に線を引き、ことに強く訴える箇所には二重まるをつけた。こんなにまで手の内を明かしていいものか。正直なところ大変驚いた」という。

読んだのは大山が64歳になってからのことであったらしく、「もし、発刊当時に読んだとすれば、度肝を抜くほどに驚いたことだろう」と語っていた
なぜなら棋士は勝負の極意などは人に語らぬものであり、作戦上のこと、勝負の場にのぞむ心の在り方などは企業秘密と同じで自分一人の胸に秘めておくものだからだと