吉本隆明

「文句なしにいい文学だって、言えるのは鴎外と漱石の二人です。
この二人の生み出してきた文学作品というのは文句なしにいいものです。
けちをつける余地がないくらい、つまり、人によっては
好きじゃないって人がいるかもしれないけど、鴎外と漱石だけは、
とにかく好ききらいとかそういうことを抜きにせざるをえないくらいな作家だし、
言うまでもなく世界的です。」

「鴎外と漱石だけは、どんなに「好きでない」とか、
「どうも自分には向かない」とかいうことを誰が言っても、
「それはおまえのほうが間違いだ」ってすぐに言えますね。
「おまえの読み方が足りないんだ」って言えちゃいます。
そういう意味合いでいえば、やっぱり鴎外、漱石が圧倒的にすごい。

「この二人の作品を、一語、一句、はしょったりしないで読んでみれば、
間違いなく骨の髄までちゃんとはいってきます。
鴎外と漱石をちゃんと読んだら、もうこれ以上
自分の生きる力になる日本文学はないと、
断言できる。それが文学の真髄なんです。」