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島尾敏雄
0035吾輩は名無しである
垢版 |
2010/10/25(月) 22:55:33
蓮實:だけど、いま柄谷さんが島尾敏雄の小説を読んだのを聞いていて思ったんだけど、すごく日本浪曼派っぽい文体ですね。
柄谷:たぶんそれは一般的な気分としてあったでしょうが、島尾は本当に“人間魚雷”になるわけで、そこにイロニーの余地は一切ありませんよ。
    あれは、むしろ旧約聖書的な終末のイメージでしょう。一方、三島は死ぬはずがないのに、あるいは死ぬはずがないから死の観念、滅亡の
    観念をもてあそんでいたに過ぎない。
浅田:そう。だからそういう意味でいうと、徹底的な偽物としての三島由紀夫が極限的なパラダイムであるのは事実でしょう。戦争で世界が滅び、
    自分も「世界最後の作家」として夭折する筈が、何の意味もなく生き残ってしまった。従って、それはゾンビのような偽物の生であり、後は
    その虚構を美しく磨き上げるだけだ、と。このまことしやかな物語自体を含めて、すべてが嘘なんですね。その完璧な嘘に対抗できるリア
    リティというのは、非常にわずかな人しか持てなかった。
蓮實:大岡昇平ですら、緒戦では三島に負けてるんです。
0036吾輩は名無しである
垢版 |
2010/10/25(月) 22:56:18
三浦:武田泰淳と三島というのは最後の最後まで何か濃いつながりがあったのでしょう。あの二人は外側から見ると両極のような感じがするんだけど。
浅田:両極でしょう。武田泰淳は死ねないことへの軟体動物的なリアリティを持っているから。
蓮實:しかし、武田泰淳は一般的には大陸的で鷹揚としているしてると言われるけれど、実際に作品を読んでみるとどうもそこには達していない。
浅田:よく言って繊細です。
蓮實:そう、武田泰淳は日本的デリケートな配慮の体系の持ち主で、三島の方がはるかに図々しく鈍感でしょう。そしたら三島の方が強いですよ。
    だからこれも不幸なことだけど、小説家たちが確かにある時期リードしたことはしたんだけれど、それが弱かったし、フィクションにすぎない
    ことがすぐに露呈されてしまう。
柄谷:ぼくは個人的には三島より島尾の方が重要だと思っています。三島がイロニーの人であるとすれば、島尾は、武田泰淳もそうだけれどヒューモア
    の人です。『死の棘』なんかも本当はヒューモアなんだ。
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